呼吸器疾患のリハビリテーション:イラスト1呼吸のしくみ

人間は呼吸によって、空気中から酸素を体に取り込み、二酸化炭素を体外に出しています。酸素と二酸化炭素を交換する場所が肺で、肺は胸郭が動いて胸腔の内圧が変化することによって、膨らんだり縮んだりします。胸郭は肋骨や胸骨、脊椎などから構成されていて外からは見えにくいですが、それぞれに関節があって手足と同じように関節を中心に動いています。この胸郭を動かす筋肉が呼吸筋です。吸うための筋肉は横隔膜や肋間筋などです。胸郭はバネのように弾力がありますので、息を吸った後にリラックスすると自然にはくことができます。強くはくときには腹筋などがはたらきます。

呼吸機能の障害

さて、呼吸に関わる身体の部分のどこかに障害があらわれると、大切なガス交換の機能が低下してしまいます。そして、血液中に酸素を取り込んだり、二酸化炭素を捨てる機能が落ちてしまい、ちょっとした運動でも息切れをして動けなくなってしまいます。その場合、原因となる病気の内科的な治療はもちろん大切ですが、動けなくなる、日常生活が困難になるという点で、他の病気と同じようにリハビリテーション治療も大切です。

呼吸器疾患のリハビリテーション:イラスト2対象疾患とリハビリテーションの方法

呼吸器リハビリテーションの対象となる病気は、肺気腫、慢性気管支炎のような慢性閉塞性肺疾患、肺炎、神経や筋肉の病気による呼吸機能の低下、人工呼吸器をつけた状態、手術後で痰を出しにくい状態などです。慢性閉塞性肺疾患の呼吸リハビリテーションの最も基本的な方法は、エルゴメーター等による下肢運動です。その他、病気によって変わってきますが、呼吸に合わせて理学療法士が胸郭を押すことによって、胸郭を動かしやすくする呼吸介助手技もあります。また、痰は重力に引かれて身体の下の方にたまりやすくなるので、痰がたまっている部分を上にして体外に痰を出しやすくします(体位排痰法)。呼吸筋の筋力増強訓練、リラクセーション、腹式呼吸訓練などが行われます。呼吸器の病気自体が改善しにくい場合でも、在宅酸素療法を行ったり、日常生活動作をするときの姿勢や動作の方法を工夫することによって、呼吸困難を改善できる場合があります(日常生活動作の効率化)。また、全身の軽い運動が胸郭全体の動きを良くしたり、使わないために廃用になっている筋肉を強めることによって、呼吸器の症状も改善する場合があります。その意味で、呼吸器のリハビリテーションは、肺という臓器のリハビリテーションよりも、全身的に広く包括的に行われます。個々の患者さんのリハビリテーション法については、病気の種類や肺の状態によってかなり変わってきますので、かならず主治医やリハビリテーション科専門医の指示に従ってください。