脊髄損傷のリハビリテーション:イラスト1脊髄損傷とは

脊髄とは脳と身体を繋ぐ神経の束であり、これを損傷されると手足に麻痺を生じたり肺や内蔵がうまく働かなくなったりします。損傷の原因としては圧倒的に交通事故や高所転落、転倒といった外傷性のものが多いですが、腫瘍や血行障害など非外傷性の原因もあります。損傷が頸髄ならば手足ともに、腰髄ならば足のみといったように、損傷される部位により症状は様々です。高齢者の転倒などに多い中心性頸髄損傷では手足ともに麻痺が出現するものの、足の麻痺は手よりも軽度という場合もあります。

急性期の治療

急性期にはまず全身状態を安定させ、損傷を最小限に抑えることが重要になります。薬や手術で脊髄の圧迫を緩和する治療をすることもあります。特に頸髄損傷や上位胸髄損傷では肺の機能が低下するために呼吸器を使うこともありますし、肺炎も合併しやすくなります。また、全身の筋肉の緊張が著しく低下し褥瘡(床ずれ)を起こしたり、深部静脈血栓症や肺塞栓といった動かないことによる二次的な合併症も起こしやすくなったりします。そういった合併症を予防するために、リハビリテーションとして頻繁な体位変換や呼吸の訓練、関節が固まらないように関節可動域訓練などを行います。今後どのような障害が残るかを急性期から予測し、それに向けた対応を早期から行うことが重要です。

脊髄損傷のリハビリテーション:イラスト2急性期を過ぎてからのリハビリテーション

全身状態が安定すればより積極的なリハビリテーションに移ります。脊髄損傷では比較的早期に将来の後遺症が決まる場合が多いため、より具体的な対応を障害ごとに考え実践していく必要があります。例えば両下肢の麻痺(対麻痺)の場合、麻痺のない上肢に今後必要になる能力は、重たいものを持ち上げるということよりも自分の身体を持ち上げることになってきます。損傷部位によっては例えば着替える動作のために普通では考えられないような柔軟性を要求されることもありますし、その柔軟性を獲得しなくてはいけないのに骨折などのために訓練がなかなかできない場合もあります。筋力トレーニングや関節可動域の訓練はこのように将来の必要性に応じて計画的に行う必要があります。残念ながら現在の医療では脊髄損傷の障害を元に戻すことは困難です。なるべく脊髄損傷受傷前の状態に戻すということではなく、今後の生活の自立度を上げるための身体を作り上げていくということが目標になります。

今後の課題

脊髄損傷患者の職業への復帰はわが国ではまだ低い状況です。また、障害者のスポーツへの参加も十分とはいえません。全国規模での脊損センターの建設も今後の課題です。現在再生医療による脊髄損傷の治療も研究されています。

2014年4月改訂