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リハビリテーション科女性医師ネットワーク(RJN)

第4回「この先生に聞きたい!」女性リハ専門医キャリアパス

日時 2011年6月24日(金) 15:00~17:00
場所 東北大学医学部附属病院
ゲスト 上月正博 先生 (東北大学大学院内部障害学分野 教授)
インタビュアー 濱田有紀 先生 (北海道大学病院リハビリテーション部)
稲澤明香 先生 (横浜市総合リハビリテーションセンター)
司会 豊岡志保 (国立病院機構山形病院)
オブザーバー 菊菊地尚久 先生 (横浜市立大学病院 専門医会幹事長)
大串幹 先生 (熊本大学 RJN担当幹事)

司会:「この先生に聞きたい!女性リハ専門医キャリアパス 第4回」の今回のゲストは東北大学内部障害学の教授の上月正博先生です。インタビュアーは横浜市総合リハセンターに勤務している稲澤明香先生と、北海道大学病院リハ科の濱田有紀先生です。よろしくお願いします。それでは上月先生にまず、開会のごあいさつをお願いします。

上月:東北大学病院の上月です。皆さん、よくいらっしゃいました。東日本大震災が起きたのが3月11日ですので、もう丸3カ月たちました。仙台の街や東北大学病院もだいぶ落ち着きました。東北大学でもリハ科の女性医師が頑張っているということを全国の皆さんにデモンストレーションするのに非常に良い機会だと思います。このような機会を与えていただいてどうもありがとうございます。よろしくお願いします。

--よろしくお願いします。

1. 東日本大震災を経験して
2. 女性のリハ科医師に望むこと
3. 研修と患者の内科的管理について
4. リハ分野での研究について
司会を終えて


1. 東日本大震災を経験して

司会:上月先生は3月11日の大震災では避難所生活を経験なさったとうかがいました。その時のご苦労を伺えればと思います。

上月:私は震災の当日は、たまたま福島県会津若松市の病院にいました。会津若松市は震源からかなり離れていたので震度5強ですみましたので、病院も崩れず、停電は少しあったものの、水道も止まりませんでした。ただ、携帯電話が全く通じなくなりました。

私は、翌日、リハ医学会の役員会に行く必要があったので、とにかく郡山市まで病院車で送ってもらいました。しかし、郡山では長距離タクシーはつかまらず、南にも北にも行けないという状況だったので、結局3日間の避難所暮らしを余儀なくされました。

避難所では食べ物も足りない、寒く、眠れず、疲れました。避難所で廃用症候群になるのはこういう気持ちなのかということがよくわかりました。まあ、3日だから廃用症候群にならなかったのですが、被災地では避難所暮らしの長い人も多いわけですが、そこで簡単に「運動しましょう」と言っても反発されたりするわけで、正しいことを伝えても、それが必ずしも受け入れられるものではないというのが実感でした。

大震災の時には宮城県内はもとより、東日本の広範囲で、一時的にライフラインが同時に断たれた状況になりました。今は、大震災から3ヶ月余り経過したので、皆さんご覧になったように、仙台市内は大分回復しました。しかし、被災地の中の格差が表面に出てしまったのです。大きな傷を心に負った人を、どういうふうにリハという技術を使って負担を軽くしてあげるかというのが今の課題ですね。

司会:そういった面で、若い女性医師や若いドクターに期待することは何かありますか。

上月:リハ医師としてではなくてもいいですから、できればやはり現場を、石巻や気仙沼あたりをご覧になると、その被害の状況がわかるので見て欲しいです。またこのような状況下では、理想的なことと、現実的にやれることが同じではないということもわかると思います。被災者にリハが必要だから「病院に来たらどうですか」と誘っても、経済的な問題や家族と離れたくないなどの様々な理由で来たくないという被災者の気持ちもわかってくるのですね。


2. 女性のリハ科医師に望むこと

司会:それでは、濱田先生から最初の質問をお願いします。

濱田:はい。よろしくお願いします。女性リハ科医師が、最も期待されていることがなんなのかというのが、なかなか自分たちではわかりにくいところがありまして、上月先生のお考えになっていることをお話しいただけましたら・・・よろしくお願いします。

上月:はい。私自身は男性医師・女性医師に対して、特別に区別した考え方を持っているわけではありません。女性のほうがどちらかというと具体的な日常の物事をよく知っているというか、リハは実学ですから、そういう意味でも女性医師が十分活躍できる領域であると思っております。

濱田:子育てをされつつ臨床に参加されている先生もいらっしゃると伺ったのですが、時間が制限されることで、実際臨床の場面でほかの先生にご迷惑を掛けたり、キャリア自体に影響が出たりということは、あるのでしょうか。

上月:一般的には他の先生が働く時間と同じだけ仕事ができなければ、仕事の密度が同じであればキャリアとしては少し遅れる可能性はあるかもしれません。ただ、リハ科ではあまり長時間労働や力仕事といったものがありませんし、子育てもキャリアとして大事な体験の一つなので、リハ科ではそれほどマイナス要因にはならない、あるいはむしろ逆に役に立つのではないかなと思います。ただ、出産前にある程度、一緒に仕事をすることで組織内での信頼を勝ち得るといいますか、そういうふうな前提が必要になるかとは思います。

濱田:はい。ありがとうございます。

司会:稲澤先生、今のようなことで、実際にお仕事をしていていかがですか。

稲澤:はい。そうですね。女性医師として初期研修終了して、これからいろいろ自分がしたいことでてきた時に、出産や子育てと時期が重なるようなこともあって、自分でもどのように考えていったらよいか悩んでいます。

上月:人生を振り返ったときに自分にはそうだったとしても、これから歩もうとする若い相手に対して、これが正しい道だとか、これが一番の近道だということはなかなか言うことはできないだろうと思います。

時間の使い方は、結婚、家事、妊娠、出産、育児など多くのことをこなしていくうちに、一部を他の人に委託したり、能率を上げたり、ちょっとした隙間の時間の効率的な利用など、工夫を凝らすことによりうまくこなしていけるようになるではないかと。女性医師のほうがその辺の時間の使い方は上手にこなしていけるのではないかなという気がします。そうすると絶対量としての診療時間や研究時間は男性医師より短かったとしても、それほどキャリアには大きな差はつかないだろうと思いますね。

リハの専門医になるというのは非常に大事なことですね。でも、皆が金太郎飴のように同じような医師になってはつまらないし、学問も発展しません。やはり特徴のあるリハ医になってほしいと思います、リハ医は一人一人みんな違って良いのだと思います。恐らく自分がこうありたいという理想像がしっかりしていれば、結構仕事や生活は能率よくこなせるのではないかなという気がします。結論を先に言ってしまいました(笑)。

司会:実際に、稲澤先生は結婚の予定はいかがですか?

稲澤:まだ、これからというところです。ただ、そういったことを考えつつ今仕事をしていて、いろいろ考えると...

上月:私のところには東北大学の女子医学生が臨床実習で回ってきます。彼女たちに冗談めかして言うのですが、「女性医師としてのキャリアを全うするためには、結婚相手をよく考えなくてはいけない」と。「“俺についてこい”というような男性が相手の場合は、家事や子育てをあまり手伝ってくれないかもしれない。そうすると相手の男性はキャリアを全うできても、あなたは医師としてのキャリアを積むときに障害になるかもしれない。だから、どういう人と一緒に人生を築いていくかはよく考えたほうが良い。」と言うんです。ただ、そうすると決まって女子学生たちに言われるのは、「頼りない男性医師は、私たちは好きになれない」と(笑)。

やはりお相手との話し合いが一番だと思います。私の妻も皮膚科医ですが、私が豪州に留学した時に彼女も一緒に行って同じ病院で皮膚科の研修をして、そう意味ではお互いに良い体験をすることができました。

濱田:上月先生は具体的に何かルールを作られたとか、そういうことはその都度話し合われたのですか。

上月:私の場合は、留学中はまだ子供がなかったので、私は研究をしていましたし、妻は臨床で、それぞれある程度自由なことをやったので、特に衝突することはなかったです。日本に帰って子供が生まれてからは、時間で区切って分担してやっていました。私は夕食を自宅に帰って食べて、その後少し子供の面倒を見て風呂に入れて、それから大学に戻ったりしました・・・

濱田:今、めいが身近にいるのですが、全介助と言ったらおかしいのですが何もかもしてあげなければいけないということで、一つのことをするのでも、すごく時間が取られてしまって、子育てというのはイメージしたよりも体力の要ることなのだなと思います。

上月:そうですね。体力と気力が必要です。ただ、子育ても80点ぐらいをめざすので良いのではないですかね。初期研修期間はとても大事ですが、初期研修期間だけが勉強する時期ではく、医師は一生勉強していかなくてはなりません。一度にいろいろなものを抱え込んでしまったからといって、あまり焦って、全てに対して100点をとろうと頑張らなくても良いと思います。


3. 研修と患者の内科的管理について

司会:東北大学でのほかのリハ科の先生方との連携について教えてください。

上月:東北大学病院には現在3つのリハ科があって、内部障害リハ科のほかに、出江教授の肢体不自由リハ科、森教授の高次脳機能障害科の3科の医師が一緒になって総回診していた時期がありました。現在では入院患者さんの数が多くなり、各リハ科独自に回診しています。しかし、毎週1回のミーティングは今も合同で行なっており、入退院患者の説明などの情報を共有しています。また、研究や新しい診療の話題のようなレクチャーを持ち回りで行なっています。また、患者さんを持っている医師たちは、毎日病棟で3科の先生と一緒にいますから、そこで例えばMRIの読影や機能評価をし合うなどいろいろな交流があります。広い視野でバランスのとれた診療や知識の獲得ができ、リハ医養成にはとても有利であると思います。

司会:ほかの大学ではない、複数のリハ科があるメリットですね。

上月:また、大学病院でのリハ経験だけでは一般的なリハ医としてはまだ足りないところが出てきます。そこで、私の教室では、大学病院で3つのリハ科を回る他に、1年くらい市中病院のリハセンターでゼネラルなリハも見てもらうようにしています。このようにしてリハ医療をオールラウンドに見られるようなシステムにしています。

司会:インタビュアーの先生方は初期研修をどこでなさったのですか?

稲澤:自治医科大学で初期研修を受けました。内科系のリハに興味があったので、内科系を中心にローテートして、初期研修の2年の後のもう1年内科をローテーションして、その後、どうしようかなと決めていた時にリハ科という存在を知って、横浜市立大学のリハ科に入りました。

濱田:私は、初期研修は北大のプログラムに沿って、循環器内科、一般内科、外科、救急を回って、2年目は小児精神科、地域医療を回らせていただいて、その後脳外科と内科をもう少し勉強したいと思って研修して、2年間を修了したのです。2年目の研修医の終わる2カ月前にリハ科に行こうと決めて、3年目で入局しました。

司会:リハ科医を希望する時は初期研修での他の科の選択をどういうふうしたら良いでしょうか?

上月:初期研修が義務化されていて、2年間はいろいろな科を回ることになっていますので、私の教室では、「内部障害のリハをするなら、内科認定医は取ったほうがいいよ。」と指導しています。つまり、初期研修の義務化で2年の研修を行うのであと1年間私のところか研修病院で内科の後期研修をすれば、内科認定医の受験資格を得るわけです。試験に合格する力があれば、どんな良いことがあるかというと、病気の診断、検査の仕方、薬の処方、生活指導など、診断から治療まで一通りのことができるのです。私の教室では、その上リハのことをガッチリやるので、医師としても自信も持って患者さんを診られるし、その後は研究に集中する心理的余裕も出てきます。

リハ医になるとして内科で必要なのは、運動できるのか、運動させていいのかといった呼吸循環ですね。あとは摂食嚥下、栄養補給、排泄などで重要になる内分泌代謝、腎臓でしょうね。

結局は、あるリハ医が大学にいる時は少し特化した形で、突出した専門性を持つリハ医として働き、そのリハ医が一般病院に行ったら少しゼネラルにまた復習をしてといった繰り返しで、バランスの取れたリハ医になってくるのだと思います。

司会:濱田先生は専門医を今年取られたそうですが、どういうお勉強を・・・

上月:その情報は読者にはとても大事ですね(笑)。

濱田:リハの専門医を受けるに際して、30症例のレポートを提出するのですが、どうしても項目の中で手薄になってしまう項目がありまして。

司会:具体的には。

濱田:具体的には小児科と熱傷ですね。短期間で転院してしまうため、なかなかリハ科としてしっかりと介入することが難しいところがありました。試験の勉強に関しては、以前出ていた問題を見てどういった問題が出されるのかを確認しながら、周辺知識を固めていくという勉強方法でした。一つ上の先輩が、面接の練習をしてくださったり、一緒に勉強会を開いてくださったりという形で勉強は進めていきました。

稲澤:総合リハセンターという所は、今常勤の内科医の先生がいないので、入院の慢性的な患者さまの全身的な管理は私のようなリハ科医がおこないます。内科の勉強が足りないと、私自身感じているところがあります。研修でいらっしゃる先生方も、内科の勉強はどのくらいしたらいいですかと私に聞いてくることが結構多くて、どういうアドバイスをしてあげたらいいかというところを・・・

上月:私自身は東北大学を卒業してから出身大学の内科の医局に入るまで、3年間外部の病院にいました。当時はローテーションといっても外科を回らないで、内科、麻酔科、救急ぐらいしか回りませんでしたが、3年やればだいたいのことはできるようになりました。要するに、初期研修病院でどれだけ濃密にやるかというところが大事ですね。私の教室員は、内科専門医あるいは内科認定医をほとんどの皆さん持っているのです。リハ科に来てからも、身近にそういう人がいるというのは結構大事ですね。内科医のいないリハセンターでリハ医が内科の処方までやるというのは、これはこれで、責任を伴いますからよく勉強せざるを得ないのでとても良いことと思います。一方、内科の先生がリハ患者の再発予防をガッチリやっている病院は、その先生に再発予防の処方のやり方をしっかり聞けば、非常に勉強になるはずです。要するにどんな環境でも工夫次第で自己研鑽を行うことは可能だと思います。

司会:逆に元整形外科の先生が総合リハセンターで、内科がわからなくて困るわというようなことがあれば教えてください(笑)。

稲澤:そうですね。実は昨日も整形手術目的の入院の方がマイコプラズマ肺炎で、急きょ対応してきたということがあって。やはり内科的知識が必要だなと感じます。

上月:ただ、内科を知っていればそれで良いというわけでもありません。私が内科からリハ科に移った理由というのは、内科の先生は頭のてっぺんから足の先まで診察や診断はできるけれども、治療手段はほとんど薬しかない。薬を出しても患者さんはある程度しか良くなりません。ましてや、運動機能やQOLに関して内科はかなり手薄なわけで、そこを補おうということでリハ科に入りました。

一方、リハ科以外の診療科で少しリハがわかる先生と、われわれリハ医との決定的な違いは、やはり重複障害をどのように評価し、扱えるかだと思います。神経内科の先生は心臓が悪いとか、肺が悪い患者さん、あるいは整形疾患の患者さんのリハはかなり難しいと思います。それはやはりわれわれリハ医のように、いろいろな重複障害を診た医師でなければ、適切なリハ処方ができないと思います。そうすると今後を考えた場合に、日本のような超高齢社会で単一疾患・単一障害の患者さんは稀になる時代でしょ。そのためにはやはりリハ専門医として、ゼネラルに最低限の知識を身につけるということはとても大事ですね。

濱田:そのために、研修として初期研修とは別に研修科を選択したほうがいいということはありますか。

上月:そこは難しいですね。確かにいろいろ選択したほうは経験としては良いと思うのですが、私は内科からリハ科に来て、比較的短い時間でリハ科の教授になったのですが、なぜ、短い期間で内部障害リハをある程度自分でマスターすることができたかというと、それはやっぱり東北大学病院にいたからだと思います。東北大学病院では臓器移植が必要な患者さん、いわゆる心不全、呼吸不全、肝不全、腎不全や神経難病の方のリハを担当するチャンスがあったのです。一度重症の方のリハをやると、もっと軽症の人のリハは簡単なわけですよ。一般の病院にいると、重症の患者さんを大学病院やそういう症例を得意とするセンターに送りますよね。そうすると、一般の病院では中等、軽等症の患者さんはたくさん診る機会があるのですが、重症を診ないということがあるのです。

私はたまたま大学で、重度の内部障害リハ患者を診るチャンスがあったので、内部障害リハを早くマスターできたということです。だから、大学病院に勤務している場合はそのチャンスを活かすべき重症例、複雑例、特殊例がありますね。どれだけ深く、難しい複雑な症例を診たか、どれだけ一生懸命それを診たかです。それで、良い臨床医、リハ医になれるわけで、リハ専門医試験申請のときの自験例30例は非常に大事に書いてほしいと思いますね。

濱田:重症の症例で、できるだけ考察を加えて突き詰めて・・・

上月:そうそう。重症例を積極的に体験することです。ただ、リハの方法を自分の頭で考えただけではもちろん足りないですよ。周囲の先輩によく相談したり、症例報告、原著論文やテキストにあたったりして、さらに自分で考えるのです。重症例がなかなか自分に順番が回ってこない時には、オーベンの先生が診ている重症例を一緒に見せてもらう。そうするとオーベンの先生がどういう指示を出して、その結果患者さんの機能の帰結がどうなるかというのを見られますよね。

やはり同じような症例ではなくて、いろいろな程度の症例を、特に重症の人を診るというのはとても大事なのだと思いますね。

濱田:はい。わかりました。ありがとうございます。


4. リハ分野での研究について

濱田:先ほど教室に伺った時に、本当に多職種の方が勉強しに教室に集まっていらっしゃるのですが、どうやったら学生さんや見学に来てくださる人にリハの魅力を伝えやすいのだろうと、何か工夫されていることがあるのですか。

上月:そうですね。nonMDを入れますと大学院生はお陰様で20人います。内部障害リハは寿命も延ばしQOLもよくするしADL もよくします。生命予後の改善や、再発予防や動脈硬化疾患の初発予防まで関係してくるわけですから、内部障害リハは医学・医療の「王道」だよということを伝えます。

臓器別医療が「縦糸」でリハ医療が「横糸」と言われます。それはそうなのですが、「縦糸」と「横糸」は交わるとはいえ、すきまの残った布(医療)ができるきらいがあることは否定できないと思います。それなら、すきまをできるだけ減らすために、僕は「斜めの糸」があっても良いと思うのです。つまり、リハ専門医を目指す人がリハ専門医を取った後は、なるべくそれと違う仕事、基礎医学などもどんどん経験してもらって、穴が多くてボロボロ抜け落ちる布の隙間を、「斜め糸」でふさぐような役割のリハ医もどんどん増えてきてほしいと思いますね。

司会:そういうことを、どういう機会に学生さんたちや若いリハ医に伝えられるのでしょうか?

上月:医学生のときに講義したり実習させたりすると、リハの重要性はかなりわかってはくれるのです。ただ、研修中にリハやリハ医のことを忘れてしまうのではないでしょうか。当面は、リハ専門医をなるべくたくさん養成して、多くの初期臨床研修病院にリハ医を張り付けるということが、リハ医を増やす一番の近道かなという気がします。リハ医にお願いしたいことは、そのような病院で明るく、バリバリ、仕事をしてもらいたいということですね。

濱田、稲澤:ありがとうございます。

上月:先週プエルトリコで開催されたISPRM(国際リハ医学会議)に参加しました。そこでは、エビデンスに根差した研究をどう持っていくかという教育セッションがあったのです。菊地先生もご一緒でしたね、そこで驚いたのですが、日本のリハに関する進行中のRCT(ランダム化比較試験)が今、中国、韓国より一けた少ないのです。

リハはなかなかエビデンスができないのだと、よく言われてきたけれども、海外でこれだけRCTが行われているわけですから、リハ医療を特別扱いすることはもう許されない時期にきているのだろうと思います。

本当に学問的に納得させられるような臨床研究をやっていかなくてはいけないだろうと思います。データベース化を本学会では昨年度から本格的に始めていますので、多施設RCTが始まる土壌はできてきたものと期待します。

また、リハ専門医になるということは本学会員の一つの到達点として当然ながら重要です。ただ、それが終着点ではいけない。リハの分野は実に広範ですから、その中での得意分野をどんどん伸ばして、リハ医学・医療を進歩させる志を持つべきだし、他の関連学会に顔を出して、リハ医はこんなことをしているのだということをアピールすることがとても大事です。本学会会員9,700人各自がやっていけば、医学界や国民におけるリハ医の認知度があっという間にものすごく上がると思います。特に、若い先生方にはほかの学会でもぜひリハの重要性をアピールしてほしいと思います。

司会:ありがとうございます。オブザーバーの先生方どうでしょうか。

菊地:今の上月先生のお話の中で心に残ったのは、「リハ医である前に臨床医であれ」という、アメリカのリハ医はもっと内科医的な仕事をやっていて、僕は、患者さんをパッと前にした時に、入院であれ外来であれ、ちゃんと基本的な医療ができるというのは、それは医者としての前提なので、それはすごく大事なことだなと思いました。

リハ医学の発展に対しても、いわゆる医学の中の一つがリハ医学であるという概念で研究を進めていくべきだなと思っています。

大串:外に向けてリハ医がいかに大事な存在だということを知らせていくことで、やはり新しい先生ももっと意欲を持って仕事しやすくなると思います。RCTを行うのが難しいところがあるのですが、リハデータベースに参加していますと、よりエビデンスレベルの高い分析方ができるなど、研究の質を底上げするようなシステムを、本学会全体で行っていることをアピールするのが、これからのポイントではないかと感じました。

上月:最後にリハ医としてのメリット、デメリットをそれぞれ一つずつ言わせてください。

まず、リハ医の数が少ないことでおきるデメリットです。先輩リハ医は一人きりとか、あるいはあなた一人しかいなくて、整形外科の先生や神経内科の先生からちょっと聞きながら、なんとなくやっているようなところもあると思うのです。そうするといわゆるリハ医としての良きロールモデルになるような人に会うチャンスが少ないですね。これはデメリットだと思います。リハでは先輩医師の数をすぐに増やすことなどできませんね。このような不利な状況を打開するためには、いろいろな学会で外部のいろいろな先生の発表を聞くとか、いろいろな病院を短期間でも見てくるとかをすることが重要ではないでしょうか、もちろん、今回のような訪問インタビューでももちろん良いですしね。

また、リハの領域以外の先生でも、在宅医療や老年医学をやっている人などでは、リハの考え方や技術を知らない間に身につけている人もいるのです。ですからいろいろな先生の良いところを盗んでくるためには、やはり自分があちこち動いて情報を仕入れるということがとても大事です。

一方、大きなメリットを1つあげます。リハ医の数が少ないことでおきるメリットです。私は以前内科にいたから良くわかるのですが、リハでは少し努力するだけで、世界の第一線、あるいは世界のトップに躍り出ることは可能です。リハを研究している人は幸い、世界で少ないですね。ですからリハ医はどんどん自分のやりたいリハ研究をやれるし、論文も発表できるし、科研費などの外部競争的資金を獲得しやすいのです。今の「リハ医学、福祉工学」という科研費の項目は、米本恭三先生や私の恩師の佐藤徳太郎先生などが文科省にかけ合って作ってくれたのですが、皆さんもぜひ果敢に獲得していっていただきたいと思います。


司会を終えて

まさかこのような自然災害が起こるとは思わず、九州から北海道までオブザーバー、インタビュアーの先生方に集まっていただくことになりました。交通手段など参加の皆様にはご心配をおかけしました。しかし、偶然ながら、大震災から3ヶ月という復興半ばのこの時期に仙台でインタビューを行ったことが意義深いと思っています。二人の若手医師は過去の私と同じことを悩んでいます。仕事も面白いけど大事な人との時間も大切にしたい、選ぶに選べないせっぱ詰まった気持ちを思い出しました。インタビューのなかで等身大の先輩の姿に魅力を感じて、リハ医を目指してくださる方が増えてくだされば、嬉しいと思います。オブザーバーの先生方はじめ、東北大学内部障害分野の皆様ご協力ありがとうございました。