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リハビリテーション科女性医師ネットワーク(RJN)

第18回「この先生に聞きたい!」女性リハビリテーション科専門医キャリアパス

日時 2017年9月1日(金)
場所 久留米大学 整形外科医局
ゲスト 志波 直人 先生(久留米大学理事長特別補佐 / 久留米大学医学部整形外科学講座 主任教授)
インタビュアー 八木橋 恵 先生(藤田保健衛生大学七栗記念病院)
西坂 智佳 先生(国立病院機構 東京病院)
司会 永吉 美砂子 先生(福岡県障がい者リハビリテーションセンター)
オブザーバー 大串 幹 先生(兵庫県立総合リハビリテーションセンター中央病院)
同席者 橋田 竜騎 先生(久留米大学病院)

リハビリテーション科医にとって必要なスキル、コミュニケーション能力
リーダーシップをもったリーダーというリハビリテーション科医のロール
ワークライフバランスとキャリア形成、ロールモデルの存在
新専門医制度について

 


司会(永吉):
本日、司会進行を務めさせていただきます、産業医科大学卒業で、現在福岡県障がい者リハビリテーションセンターに勤務しております永吉と申します。本日はお忙しい中、志波先生、お時間を取っていただき、そして、今日はたくさん(久留米大学整形外科医局員、同女性医師)の先生方にもご協力いただきましてありがとうございます。簡単ではございますが、第18回「この先生に聞きたい! 女性リハ科専門医キャリアパス」の趣旨をご紹介申し上げます。

本企画は日本全国でご活躍されているリハビリテーション科の教授ならびに日本リハビリテーション医学会理事の先生方の所属施設にお伺いしまして、リハビリテーション医療や仕事を行っていく中で、若手医師が日ごろ疑問に思うことなどを質問し、これからのリハビリテーション医療、仕事・ライフワークについて考えていくことを目的としたインタビューでございます。

本日は、多くのリハビリテーション科医の育成に尽力されておられる久留米大学整形外科の志波先生をお訪ねしています。まずはインタビュアーのお二人の先生方から自己紹介をお願いいたします。
では、八木橋先生から自己紹介をお願いします。

八木橋:藤田保健衛生大学の七栗記念病院に勤めています八木橋と申します。医者4年目、リハビリテーション科は入局2年目です。青森出身、青森育ちです。

研修2年目で志望科を悩んだときに、私はどうして医者になったんだろうとふと考えました。思いついたことは、人間が好きだということ。そして生きるか死ぬかの次に来る、よりよく生きるというところ、最終的に人の生きがいに応えられる医療者になりたいなと思って、リハビリテーション科医になろうと決めました。今日はいろいろお話しをお聞きできたらなと思います。よろしくお願いします。

志波:弘前大学のご出身なんですね。

八木橋:そうです。はい。

西坂:私は、国立病院機構東京病院のリハビリテーション科に勤めています西坂と申します。よろしくお願いします。私は、初期研修2年が終わった後、3年目に東京大学のリハビリテーション科医局に入局し、関連病院を回り、現在は、国立病院機構の東京病院に勤めています。よろしくお願いします。

司会(永吉):よろしくお願いいたします。では、オブザーバーの大串先生、どうぞ。

大串:兵庫県立総合リハビリテーションセンター中央病院の大串です。この企画に参加させていただいて、経験豊かな先生方のお話を拝聴する機会をたくさん得ることができ、大変うれしく思っています。よろしくお願いいたします。

志波:大串先生はもともと九州ご出身で、熊本大学におられたので、僕も昔からいろいろお世話になっております。

 

 

リハビリテーション科医にとって必要なスキル、コミュニケーション能力

司会(永吉):それでは早速、質問を始めさせていただきます。じゃあ、西坂先生から、どうぞ。

西坂:私は、これまで大学からの派遣でいろんなところを、1年ずつ回っているんですけれども、大学病院では急性期のリハビリテーション医療、その次にリハビリテーション専門病院に行きまして、今は急性期病院ではあるんですけど、リハビリテーション病棟として回復期リハビリテーション病棟にいます。

どの病院も、整形外科疾患の患者さんのリハビリテーション治療を受け持つことはよくあります。急性期病院、大学病院では、先ほど、この病院(久留米大学)でも主科からリハビリテーション治療依頼が出ているというお話をちょっとお伺いしました。

急性期では整形外科の患者さんはリハビリテーション科医を通さず、整形の先生からの依頼で、PTやスタッフが入ってというかたちを取っていたんですけれども、リハビリテーション専門病院や今いるような回復期病棟では、私たちが荷重制限ですとか、可動域制限の指示を出さなくてはいけなくて、ちょっと不安に思いながらやっている部分もあるんです。

先生方の病院ではどのようにされているのかというところと、逆にリハビリテーション科医は、急性期で整形の先生から直接スタッフにリハビリテーション治療指示が行ってしまう場合、どうやって関わっていけばいいのかなというところも、ちょっと疑問に思うところです。どういう関わり方を、整形外科の先生たちからしたら、リハビリテーション科医に何を期待されているのかというところを、ちょっとお伺いできればと思っています。

志波:それはみんな悩んでいるところかもしれませんね。だから整形外科とリハビリテーション科は、同じ医局であっても、大学病院の中ではリハビリテーション科と整形外科はやっぱり別々に仕事をしています。急性期のリハビリテーション治療としては、グループ的には運動器、脳神経関係、呼吸器、心大血管のいわゆる四大疾患別リハビリテーション治療、プラス「がんのリハビリテーション治療」ですね。加えて救命救急センターは別にやっています。一番は、リハビリテーション科医の数が十分であれば、整形外科でも急性期からリハビリテーション科医に入ってもらったほうがいいと思っています。

直接、整形の医者や、主治医がリハビリテーション治療の指示を出すようにしていますが、一番の問題はマンパワーの問題です。藤田保健衛生大学ではリハビリテーション科医が、整形も含めて診察を行い処方していますね。

八木橋:はい、そうです。

志波:リハビリテーション科のドクターが十分にいたら、本来はそうすべきだと思います。診療上のいろんな問題を解決する意味で。大学にはリハビリテーション医学の独立した診療科をつくって、できれば講座もつくってというのが大きな流れだと思うので、整形外科とは別にリハビリテーション科があって、診療したほうがいいと思っています。

久留米大ではリハビリテーション医学講座が無いので、整形外科の中にリハビリテーション治療の部門、リハビリテーション科があるのですが、これはリハビリテーション医療という視点からは不十分と考えています。また、今は大学病院の高度高齢の患者さんが特に増えていて、統計とか見ても、これから30年間は筋骨格系の患者さんはまだまだ増え続けると考えられています。このような背景もあり、救命センターの6割以上は運動器関係となっています。高度救命で診なければならない重症の患者さんにも対応できるリハビリテーション科のドクターがいるというのが理想的だと思っています。

藤田保健衛生大学は、リハビリテーション医療を積極的に実践しておられ、これは特定機能病院である本院でもしっかりやっておられる。

八木橋:はい。

志波:なかなか私たちの施設ではそこまでカバーできません。
例えばわれわれの整形外科では月曜日に総回診前に術後のカンファレンスをして、その時にリハビリテーション科の医師もPT、OTも出てきてもらって、そこで確認し、さらに回診のときにも必ず確認するようにしています。整形外科はまた脊椎と骨折外傷と骨軟部腫瘍と3つのグループに分かれていて、それぞれがまた別に回診とカンファをしています。われわれのリハビリテーション科では当然ながら、4大疾患、がんリハビリテーション診療や多職種のカンファも行っています。

橋田:僕個人の考えとしては、例えば合併症の取り扱いとかに関しては、やはりリハビリテーション科医の腕の見せどころかなと思います。外傷治療後の骨の状態とか靱帯の状態については手術した先生が一番、分かっていると思うので、執刀していないリハビリテーション科医には、こういうことは難しいかなと思います。なので、そこは主治医の先生や手術した先生に直接聞いて、手術の状態はどうだったかを確認してから、可動域とか荷重、もしおかしいなと思ったら少し相談するようにしています。

この間も救命で、肘の内側靱帯を縫合した症例があって、実際にOTのほうから、可動域をどのくらい曲げていいかということを聞かれたことがあったんですけど、正直手術のオペの記録を見ても、その部分はあまりはっきり書いてなかったので、直接手術した先生に聞きました。PT、OTからは直接やっぱり聞きにくいところもあるので、僕が代わりに電話して、どのくらい曲げていいかとか、本当にオペレコどおりに動かしていいかというのを確認して再度、指示を書き直すことはあります。

やっぱり術後症例は手術を見ないと分からないこともあるので、手術した先生や、ほかのスタッフの人に確認しながら総合的に決めていくということをすれば、あまり患者さんにも不利益は起きずに、円滑にリハビリテーション治療ができるんじゃないかなと思っています。

司会(永吉):志波先生が先程「急性期からリハビリテーション科医が関わってくれるといい」とおっしゃいましたので思い出しましたが、以前私が勤めていた病院で、整形外科の先生から「リハビリテーション医が荷重を決めるんだったらオペから入るように」と言われたんですよね。

志波:それはなかなか難しい問題ですね。

司会(永吉):それで、なかなかそこまではちょっと難しいなと思いました、時間的にも難しですしね。先生はどの辺の急性期から、どんなふうに関わっておられましたか。

橋田:整形外科の先生から見た視点かなと思います。

志波:そうですね。けど、これはなかなか難しい問題と思います。

橋田:やっぱり脳卒中合併していて骨折した方とか。

志波:そのような患者さんも結構な数がおられますね。

橋田:そういう何か併存疾患がある方のリハビリテーション治療とかは、やはりリハビリテーション科医の先生のほうが脳卒中とかを診ているので、もっとその人に適した歩容とか、装具も選べると思うので、そういうときにしっかりと関わってあげたほうがいいのかなと思う。合併症のない純粋に若い人の骨折とかは、やはり実際に手術した整形の先生の指示による。

司会(永吉):どうですか、八木橋先生。どうぞ。

八木橋:今、お話に出脳卒中を合併した骨折の例ですが、リハビリテーション科医が関わるのと、整形外科医が関わるのとで、具体的に治療がどのように変わるんでしょうか。

橋田:そうですね、どうしても整形外科の先生だと、脳梗塞が広がるから手術をしなくていいとか、どうしても保存に回ろうとする先生も僕は経験したことがあるんですけど。僕自身はそうじゃなくて、やはり骨折治療が可能であれば、早期離床、拘縮予防のために、必要があれば手術も検討していただくように相談しようかなと思っています。

志波:リハの経験から、腰部脊柱管狭窄の診断で手術予定の方で、パーキンソンの増悪による歩行障害があったのが分かって、それを術前カンファレンスでディスカッションするようなことも当然あります。

医療に関わる者として、お互いに目的は同じ、患者さんをよくすることなので、そのためにはどうしたらいいかというところを考えて、診療に臨むことが重要と思います。

八木橋:はい、ありがとうございました。

志波:多職種連携で一つのことをやり遂げていくこと、これは、リハビリテーション医療がチーム医療の先駆けと思います。医師がリーダーとして多職種をまとめていくときに、どうしますかというのは、リハビリテーション科が他の診療科より一歩も二歩も先に行っていたと思います。

他の診療科とうまくコミュニケーションを取っていくというのは、リハビリテーション科医からそれを作っていかないかなければならないということがあるかなと思っています。リハビリテーション科医には卓越したコミュニケーション能力が求められると思います。

 

 

リーダーシップをもったリーダーというリハビリテーション科医のロール

永吉:八木橋先生もチームリーダーの育て方とか、リーダーシップについて、どうしたらいいですかという質問をお持ちなんですけど。

志波:そうですね。

八木橋:すごい今、それが悩みです。まず、内科医として、医者として、あとは、まあリハ医としての能力とか知識も少ないんですけど、でもやっぱり現場では、何年目であろうとチームのリーダーとして「要る」という。

志波:その通りと思います。

八木橋:でも、ちょっと情けないですけど、正直リーダーと言われても、私…みたいなところもあって。

志波:私は、先生は立派なリーダーだと思いますよ。

八木橋:はい。(苦笑)リーダーシップの育て方、というか、先生が後輩へ指導するとしたらどのように伝えますか。

志波:僕がいつも机の上に貼っている「ある文章」があります。

司会(永吉):座右の銘ですか。

八木橋:なんか難しいです。いろんな職種の人がいて、いろんな性格の人がいて、いろんな立場の人がいて、そのなかで、必要な情報を取捨選択して、意見をまとめる、決めるというのが、難しい。

西坂:療法士のほうが年上で、私よりも経験豊富な人たちに指示を出さないといけないんですよね。

八木橋:年上。

司会(永吉):先生方も今その辺の悩みがあるんですね。同じ悩みですよね、リハビリテーションスタッフの方も。

志波:僕がアメリカのメイヨー・クリニックに留学していたときの、1991年、26年前に買ったリハビリテーション医学の教科書を紹介します。

八木橋:(私が)生まれた年。

志波:生まれた年ですか(笑)。『Delisa Rehabilitation Medicine』(別紙参照)という本で、これでリハビリテーション医学を学んだ、自分にとってはリハビリテーション医学のバイブルです。その中に、「リーダーとは:Leadership」というのがあります。

八木橋:ありがとうございます。

志波:その中に「Some Qualities of a Leader」というのがあって、僕はこれを学生の講義のときに紹介するのですけど。こういうことを書いてある医学書というのは、リハビリテーション医学の清書の特徴で、その時すごく新鮮だったので、これをこの本から抜き出して書いて、机の前に貼っています。読みましょうか。

八木橋:はい。

志波:「Knows where he or she is going」、彼とか彼女が何をしようとしているのかを知りなさい。
「Knows how to get there」、それを達成するにはどうしたらいいかを知りなさい。
「Has courage and persistence」、勇気と忍耐を持ちなさい。
次は「Can be believed」、信頼されなさい。
「Can be trusted」。believeとtrustは、trustのほうが重い、人間性という意味で。
「not to “sell out” a cause for personal advantage」、sell outは、売り切るという意味じゃなくて、裏切るという意味があります。causeは、理由じゃなくて、大義とか正義とか、そういう意味がある。だから、正しいことを曲げて、自分の利益になるようなことはしてはいけない、それは信頼を得るためにそうしなさいと。

「Makes the mission seem important, exciting, and possible to accomplish」、やろうとしているミッションに対して、すごく大切だとか、すごくエキサイティングだけれども、実行できる、完結できるという雰囲気をつくっていかなければならないとか、そういうことですね。

「Makes each person’s role in the mission seem important」、これも、非常にミッションが大事であるということを、それぞれの人の役割が分かるようにしなさい。

「Makes each member feel capable of performing his or her role」、それぞれの人の役割がcapable、つまり、みんなができるような雰囲気をつくりなさいということが書いてある。抽象的ですけど、今でも時々、僕はこれを見返すことがあります。

メイヨー・クリニックではリハビリテーション科のBasford教授にいろいろ見せてもらい、先生に「何か良い教科書」といったら、その一冊としてこれを教えてもらったのだけども、その中でもすごく印象に残っていたのはこの「リーダーシップ」です。自分の行動を周りが見て、それで信用を得る、言葉のアピールじゃなく行動で。

八木橋:自分が何をするか。

志波: causeというのは、映画『スター・ウォーズ』を見たら、共和国軍と何だっけ。

橋田:帝国軍ですか。

志波:帝国軍。共和国が戦う前に、「causeのために」と言って戦うんです。causeは、先ほども言ったように大義や正義という意味です。国の大義や正義もいろいろあって。

だから、われわれのcauseは何か。リハビリテーション科医のわれわれがやるところの大義・正義とは何かを考えて、何が正しいかということを考えています。抽象的な話ですみません。

八木橋:いえ、ありがとうございます!

司会(永吉):今の話を伺っていて思ったんですが、もともと整形外科を専門になさっていたのにメイヨー・クリニックの留学期間にリハビリテーション医学に興味を持たれた理由というのは何ですか。

志波:やっぱり運動機能からですね。特に筋肉と、股関節のバイオメカをやっていたので、歩くときに中臀筋が働く、股関節にそれで体重の3倍の負荷かかるとかいうのを知ったとき、これは衝撃でした。それからすごく興味を持って、Mayoでも筋肉とか関節のバイオメカニクスの研究を行いました。そこにはリハビリテーション科医も関わっていた。

永吉:西坂先生からのご質問の中にありましたが、最初からリハビリテーション科に入局された方がどの時点で、例えば脊損を専門にする、運動器や、脳血管を専門にするとか、どのようなタイミングで「専門」分野を得ていくのが良いのか悩んでおられますよね?

志波:僕が一番期待しているのは、初めからリハビリテーション科を志望する人達です。僕は整形からリハビリテーション医療をやったんで、運動器のほうにどうしてもアイデアとか、自分の思考がそれを起点にしている感じがするのです。最初からリハビリテーション医療をやっている人の思考と僕の考えていることは、違うところがあるんじゃないかなと。梅津先生(梅津祐一先生:現小倉リハビリテーション病院院長)に久留米大学に准教授で来ていただいて、久留米大学医療センターの回復期の立ち上げで尽力していただきました。アイデアとか、患者さんのアプローチというのは、僕たちとは違ったものがあるというのを感じました。

久留米大のリハビリテーション科は、今は整形の一部ですが、独立した診療科にすべきと思っています。これは残念ながら自分の代にはできませんでした。若い人たちにはとても期待しています。私も現在の自分の立場で協力は惜しまないつもりです。九州内の産業医科大学と鹿児島大学のリハビリテーション医学講座は、私がリハビリテーション科医を志した時からのお手本で、今後のさらなる発展とリーダーシップにすごく期待しています。

司会(永吉):ありがとうございます。西坂先生安心されましたか。

西坂:はい。とても。

司会(永吉):リハビリテーション科の先生は他の専門科をもっていて、リハビリテーション科に転科される先生方も多いですが、西坂先生は初期研修終了後すぐにリハビリテーション科へ入局され、範囲の広いリハビリテーション医療という分野にいることが、逆に専門分野を持っていないことに不安を感じておられたということですが。

西坂:はい。結構、医局の先輩方とかも、もともと整形外科でリハビリテーション科に来られたとか、神経内科からリハビリテーション科に来られたという方が多いので、専門は何々ですって言えるし、そこの分野は、もう任せてと言えるようなものが皆さんあるように私は感じていて。でも自分は、整形外科の患者さんなら任せてとも言えませんし、脳卒中後の患者さんなら任せてというところもありませんし、何かこう、自分これはできますというのをつくりたいなと思いつつ。

志波:先生は何年目ですかね。

西坂:私は今、7年目です。

志波:入局してから、5年目。

西坂:5年目です。どういう時期に、これから研究していくもの、そういうのを決めていくのがいいのかなと。

志波:東京大学は、博士号を取るのは大学院に入らないといけないのですか。

西坂:そうですね。

志波:最近の国立はそうですね。臨床しながら大学院に、いわゆる乙号が難しくなってきていますね。大学院の入学がきっかけになり、テーマをもらって、それで掘り下げていく。八木橋先生はどうですか。何をやっていこうとか。

八木橋:リハビリテーション医療の中での専攻ですか。

志波:そうですね。

八木橋:うーん。でも、今はこれがやりたいというよりは、どれもやってみたいという段階です。嚥下リハビリテーションには、すごく興味があります。

志波:そうですね。藤田保健衛生大学リハ医学講座は嚥下の臨床、研究ともに、積極的にやっていますね。

八木橋:はい。

志波:リハビリテーション科のドクターとしては、大串さんが今いるところはどのような特徴がありますか。

大串:先生方がおっしゃる今までの経験は生かせています。私は、整形外科から入って、リハビリテーション医学としては義肢装具を中心にしていましたので。兵庫県総合リハビリテーションセンターは、日本で最初の県立の総合リハビリテーションセンターとお聞きしてます。通常の回復期もありますけど、脊髄損傷と義肢(義手義足)の専門病院としての機能が殊に充実しています。障害者病棟や自立生活訓練センターや能力開発センターがあり、適応のある方には就労や在宅自立支援をしっかりと行う方針ですので、兵庫県だけでなく、近隣県や時には全国から患者さんが来られています。頸損で自立される方もおられます。また研究機関として福祉のまちづくり研究所があって、広く医療福祉関連の研究が行われています。

志波:そうなんですね。

大串:以前は、急性期病院でしたからICU、SCUを行ったり来たりで、障害を長期に見ていくリハビリテーション科医としてのスキルが身につかない、十分に使えないと感じていたところもありました。今はこれ前までの知識やスキルを確認しながら、それらを活かせていただいているなあというところです。あと、もともと地域リハビリテーション発祥の地であることと阪神淡路大震災の経験を持つところでもあり、JRATについても地域リハビリテーションとして災害への備えとしての地域づくりもありかと考えて、関連のセミナーを開いたり、人材育成もさせていただいています。

志波:新しい経験ができることは素晴らしいことだと思います。

大串:私だけでなく、リハビリテーション科医のアイデアが生かされて、あちこちでいろんなベースを持った先生方との交流でさらに発想が広がり、患者さや地域に役立つものになればいいなと思っています。志波先生のこれまでのお仕事は私にとってたくさんの刺激をいただきました。特に股関節外転装具とか。もう20年ぐらい前ですね。

志波:いやいや、もうあれは20年以上前ですね。

大串:志波先生、外転モーメントに着目したものすごく良い装具をつくられていて。当時から志波先生はすごいなと。

志波:あれは結局、股関節の負荷を減らして痛みをどうしても取りたくて。専門が股関節から入っていったので、重力がかかったところの反対の筋肉は必ず収縮をするというのが分かって、カウンターみたいなかたちになってるんだろうな、というアイデアからです。それが、今の宇宙医学のハイブリッド訓練に進んでいった、そのオリジナルのアイデアになったものです。

 

ワークライフバランスとキャリア形成、ロールモデルの存在

司会(永吉):結婚、出産と仕事のバランス、先生方もたぶん悩みの部分だと思いますけど。あと、場合によっては、これに介護が入ったりという、そのバランスも難しいですよね?

志波:僕がリハビリテーション科で科長を務めていたころ、一番初めに僕の下で働いた女性医師が結婚、妊娠されました。その時は、直属の部下で同じような経験が無くいろいろな苦労をしました。2人目の女性医師のときは、その時の様々な経験から、万全の準備を備えました。でもやっぱりきちんとした保障制度がまだまだだと思いました。様々な制度があっても、いざやろうとすると、なかなかな適合しないことが多くて。もっともっと女性医師が働きやすい環境にしなければいけない、それは僕たちの世代の仕事と思っています。

久留米大学整形外科の女性ドクターの会というのがあります。「整女の会」と言いますが、総勢23名の女性医師が医局、同門におられます。その中にはリハビリテーション専門医が2名、志望している医師も数名います。私は出席して、参加できる女性医師は皆集合して、それで一緒に食事をして、いろいろな話を伺います。その際に子どもさんを連れてこられるのは自由です。小さな子供さんは走り回ったり、私としては子どもさんの成長を見せてもらうのも楽しみです。先生のところは女性のドクター、多いでしょう。

八木橋:多いです。身近にロールモデルになる女性の先生が。

志波:いらっしゃるんだ。

八木橋:います。

志波:七栗記念病院は、あそこは都会ではないですよね。

八木橋:田舎ですね。自然がすごい豊かで。

志波:大学のリハビリテーション科は、どこにでもあるわけじゃないから、いろんな大学からの先生が、やっぱり多いですよね。

大串:先生のところも、たくさん来ていらっしゃいますね。

志波:久留米大学自体は、入局する人の半分は、他大学出身です。

大串:ここが選ばれているということですね。

志波:ありがとうございます。

一同:はははは(笑)。

志波:藤田(保健衛生大学)はリハビリテーション科の医師数も多く、いろいろな大学から来られますよね。

八木橋:そうですね。うちの同期の半分は他大学出身です。

志波:藤田(保健衛生大学)のリハビリテーション科は学ぶべきことがたくさんある。

八木橋:はい、学生さんもたくさん来ています。学生さんの指導も頑張ります。

志波:やっぱりね。その時の雰囲気で全然、違ってくる。入局するかどうかは・・・・。カンファレンスのときのこととか、いろいろやっぱり入局した人もきっとそう、それがすごく影響する。

 

新専門医制度について

司会(永吉):では、そろそろインタビューのまとめをさせていただきたいと思います。
まず一言、志波先生からお言葉をいただいて、インタビュアーのお二人に今日の感想をお願いします。

志波:今日は、お越しいただいてありがとうございました。リハビリテーション科医を目指す若い方とお話しできて、よかったです。それは、男性、女性に限らず、僕は、リハビリテーション科というのは新専門医制度において基本診療科でもありますし、これからの若いリハビリテーション科専門医に大きな期待を寄せています。

久留米大学のリハビリテーション科がさらに発展して、独立したリハビリテーション科がつくれるように、若い世代の先生方は、ここにいる橋田君も頑張ってもらわないといけないと思っています。

それと、やっぱり女性の力が必要、これだけ女性がいらっしゃる中で、女性が働きやすい環境をつくらないといけないと思っています。女性の活躍無くして医療そのものが今からは成り立たない時代になると思うんで、僕たちがその責任を担っていると思っています。これは僕の課題ですけど、しっかり若い方たちも頑張ってください(笑)。よろしくお願いします。

司会(永吉):では、インタビュアーの先生方、一言ずつ今日の感想をどうぞ。

八木橋:今日は先輩方とお話しできて、すごくうれしく思います。頂いたリーダーシップ座右の銘、ありがとうございます。自分も含めて、メンバー一人一人のよさを活かして、活発な話し合いができる、そんなチームのリーダーになれるように。リハビリテーション科医としても人としても、成長していきたいなと思います。ありがとうございます。

司会(永吉):ありがとうございました。西坂先生どうぞ。

西坂:今日は、整形外科の女性の先生方ともお話しさせていただいて、大学病院にいたころリハビリテーション科にいても、大学ってすごく大きい組織なので、ほかの科の先生方とお話ができる機会がほとんどなくて・・・・。荷重のことだとかその他のことも、気軽にほかの科、整形の先生方、脳外の先生方に聞きに行けるような形だといいですね。今日お話しさせていただいたら、すごく温かくて、こういう先生方だと。「私はリハビリテーション科なんですけど」と言って聞きに行きやすいなというところで、これからほかの科の先生とお話をさせていただくところから始めようかと思って頑張ります。ありがとうございました。

司会(永吉):今日は、志波先生、お忙しいところお時間いただきましてありがとうございます。それから参加してくださった久留米大学医局員の先生方もご協力ありがとうございました。遠くから来てくださったインタビュアーの先生方、ありがとうございました。
これをもちまして、第18回のインタビューを終了させていただきます。

一同:ありがとうございます。

(永吉 美砂子)