●報 告● 日本リハビリテーション医学会

 

介護保険制度と障害福祉制度等の利用に関わる調査報告

日本リハビリテーション医学会 障害保健福祉委員会
担当理事 君塚 葵
委 員 長 山口 明
委員 原 行弘(担当),小池純子,近藤克則,佐伯 覚,陶山哲夫,柳原幸治

 現在,障害保健福祉のあり方について国レベルで盛んに検討・見直しが行われている.そこで本医学会として,介護保険と身体障害者福祉法等の利用に関わる問題について,本医学会の認定している研修施設の指導責任者を対象にアンケート調査を行った.
 調査票の発送は336件で,回収したのは188件,回収率は55.9%であった.以下に,取り急ぎ調査結果の概要を報告する.

 1. 医療保険,介護保険,障害福祉のはざまの問題

 1) 医療保険による外来リハビリテーション(以下,リハ)・在宅訪問リハと介護保険による通所リハ・訪問リハの選択は,選択指針がないために,医療担当側と介護提供側との連携および棲み分けができていない状況がうかがわれた.
 2) 医療保険から介護保険への移行は,医師による「症状固定」との判断が主要な理由とされ,この円滑な移行調整には,ケアマネジャーと医師との連携が重要との回答が45.9%と多かった.
 3) 40歳以下の介護保険対象外の成人障害者(脊髄損傷,頭部外傷など)では,身体障害者福祉法の利用までに時間がかかりすぎること,重度の若年成人中途障害者の行き場がないことなど,大きな課題があることが判明した.
 4) リハ医療の立場からみた介護保険に関する意見としては,(1)年齢や原因疾患で区分せず障害程度で判定すべき,(2)増税,財源の確保,(3)ケアマネジャーのリハ研修,(4)施設のリハ機能の強化,(5)支援費制度と介護保険制度の統合,(6)リハ前置主義の徹底,(7)サービスメニューの充実,などが挙げられた.

 2. 福祉用具に関する身体障害者福祉法による給付と介護保険による貸与

 1) 身体障害者福祉法による車いすの給付(個別対応が必要)申請が,介護保険の貸与に変更された経験があるとの回答が23%(回答中央値5件)認められた.
 2) 車いすについて,身体障害者福祉法による給付か介護保険による貸与かの選択の迷いについては,迷いがあるとの回答は35.5%で,その具体例としては,(1)施設入所中の患者,(2)下肢切断,(3)65歳以上脊髄損傷者,(4)若年特定疾患患者,(5)関節リウマチ,(6)長期間車いす使用が必要な症例,(7)体格の問題により給付適応はあるが使用頻度が高くない場合,(8)サイズ・構造から既製の車いすで充分だが,経済的な理由で身体障害者福祉法を利用せざるをえない場合等さまざまであった.
 3) 介護保険による貸与と身体障害者福祉法による給付の適応判断については,適応指針があいまいとの回答が35.1%,介護保険による車いすの貸与の決定に関しても身体障害者福祉法15条指定医の意見を反映すべしとの回答が30.5%認められ,費用,効果,現実と制度上の問題などの現場の苦悩がうかがえた.
 4) 車いすの介護保険制度による貸与と身体障害者福祉法による給付の選択を判断すべき職種については,医師が40.1%,ケアマネジャーと医師との連携によるとの回答が34.0%であった.
 5) 介護保険や身体障害者福祉法による福祉用具提供に関する意見としては,(1)車いすや歩行器等の処方が不適切であり,リハ医の判定が必要,(2)テクニカルエイドセンターの設置など,行政による情報提供の場や車いすのリサイクルシステムの導入,(3)施設等の備え付け車いすの充実,(4)施設入所後の車いすレンタルの継続,(5)療養病床入院中の患者への車いす貸与,(6)福祉用具の貸与は医療も福祉の現場も混乱しているので,混乱を除外すべき,などが挙げられた.

 最後に,調査にご協力くださいました諸先生方には多くの貴重なご意見をいただき,厚く御礼申し上げます.本委員会として,今後の活動に反映させるべく努力する所存です.


リハ医学 42巻1号掲載