[リハ医学 第 39巻第5号, pp. 236-244 (2002); 原 著]


長期非荷重に伴う筋萎縮とミオシン重鎖分子種の発現変化

山内 秀樹,刈谷 文彦,田端 淳一,宮野 佐年

東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座体力医学研究室

(受付: 2002年1月23日; 受理: 2002年4月6日)

要 旨: 生後6カ月齢のFischer 344系雌ラットを用い,1,3,8週間の非荷重による筋萎縮とミオシン重鎖(MHC)分子種の発現変化について検討した.ヒラメ筋(SOL)では筋原線維蛋白濃度の減少が非荷重3週間以降に観察されたが,足底筋(PLA)と内側腓腹筋(MG)では非荷重8週間まで変化が認められなかった.したがって,速筋における筋重量変化は,機能的な萎縮率を反映するが,SOLでは筋原線維蛋白濃度の低下を伴うため,筋重量変化は機能的な萎縮率を過小評価すると考えられた.MHC分子種組成はSOLではMHC Iの減少とMHC IIxの増加が,PLAではMHC I,IIaの減少とMHC IIbの増加が,MGではMHC IIxの減少とMHC IIbの増加が観察された.すなわち,MHC分子種は,いずれの筋においてもMHC IからIIb方向への発現変化が認められたが,筋により変化の程度は異なるものであった.PLAとMGではMHC分子種の発現変化は非荷重8週間においてのみ観察されたが,ヒラメ筋では非荷重3週間でMHCIIaが減少し,通常ほとんど発現していないMHC IIxの発現が認められた.以上の結果は,MHC分子種の発現変化は速筋に比べて遅筋のSOLで先行し,また,そのシフトはMHC IからIIaへの変化に比べMHC IIaからIIxへの変化が先行することを示唆する.

キーワード: 非荷重(unloading),筋萎縮(muscle atrophy),ミオシン重鎖(myosin heavy chain)


[English abstract]