[リハ医学 第 39巻第6号, pp. 322-330 (2002); 原 著]


咀嚼が食塊の咽頭進入に及ぼす影響

武田 斉子,才藤 栄一,松尾浩一郎,馬 場  尊,藤 井  航,Jeffery B PALMER

藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学講座

(受付: 2002年3月25日; 受理: 2002年5月31日)

要 旨: 咀嚼嚥下の評価法の確立のため,健常成人10名を対象として,4食物条件下で咀嚼が嚥下反射開始前の食塊位置および嚥下時間経過に及ぼす影響を嚥下造影検査を用いて検討した.液体命令嚥下に比し全咀嚼条件で食塊先端位置の中〜下咽頭への到達率が高く,食塊進入には咀嚼の存在が一義的に関与し,食物形態はそれを修飾する役割を担うと思われた.混合咀嚼条件では食塊は全例で嚥下前に中〜下咽頭へ到達しており,信頼性の高い負荷法といえた.液体を含む咀嚼嚥下では,下咽頭到達が高率で下咽頭通過時間も長く,誤嚥防止の観点から興味深い所見であった.咀嚼嚥下は命令嚥下とは別様式であり「食べる」機能の評価と位置づけられた.

キーワード: 嚥下障害(swallowing disorder),咀嚼(mastication),食物形態(food consistency),ビデオ嚥下造影検査(videofluorography)


[English abstract]