[リハ医学 第 42巻第6号, pp. 412-417 (2005); 短 報]


Wallenberg 症候群における食塊の輪状咽頭部優位通過側

三石敬之  三石京子  中西亮二  山永裕明 

熊本機能病院総合リハビリテーション部

(受付: 2005年3月21日; 受理: 2005年4月11日)

要 旨: 嚥下障害を呈した Wallenberg 症候群において,食塊の輪状咽頭部優位通過側とその経時的変化を検討した.対象は,Wallenberg症候群29例.嚥下造影の正面像を観察し,優位通過側を決定した.9例に患側が優位通過側である時期がみられた.5例は患側優位の通過が見られた後,健側優位の通過へ移行した.1例は両側不通過,患側優位,健側優位の順に変化した.3例は患側優位の通過のみみられた.20例は患側優位の時期が確認できなかった.Wallenberg症候群における食塊の輪状咽頭部優位通過側は患側の場合があり,また,経時的に変化する症例が存在することが確認された.直接的嚥下訓練における代償法として一側嚥下や頸部回旋を行う際には,優位通過側の経時的確認が重要であると考えられた.Wallenberg症候群における嚥下障害の病態理解に際して,患側輪状咽頭筋の弛緩状態を加味する必要があると考えられた.

キーワード: 嚥下障害(swallowing disorder),Wallenberg症候群(Wallenberg's syndrome),球麻痺(bulbar palsy),輪状咽頭筋(cricopharyngeal muscle),嚥下造影(videofluorography)


[English abstract]