<学術集会>

第36回 日本リハビリテーション医学会 学術集会学術集会開催にあたって

田中 信行 (鹿児島大学医学部リハビリテーション医学講座)


春の鹿児島への誘い

桜前線もぐんぐん北上し,日本全国“春”です.この度第36回日本リハビリテーション医学会学術集会を5月20日(木)〜22日(土)の3日間にわたり,鹿児島市で開催いたします.一般演題も645題というこれまで最高の応募で,嬉しく思います.

5月の鹿児島は空は青く,街には光溢れ,紺碧の錦江湾に,煙吐く桜島がどっしりと座り,“わが胸の燃ゆる思いに比ぶれば,煙はうすし桜島山”の句が思い出されます.

メインテーマ「共生のための科学と文化を求めて」

21世紀を間近かに控え,高齢化社会から医学への最大のメッセージは,「長生き」から「長生きして良かった」への転換,すなわち「From Longevity to Quality」でしょう.長寿社会は長い人類の「夢の実現」であり,健康者,病者,障害者,そして子供・大人・老人が「共生の意識」で,共に分け合えば十分な富(車1台の維持費は月約4万円,介護保険料は月約3千円)を我々は持っています.

物質的欲望のみでなく,共生への社会的合意となるべき新しい理念を創り,法律やシステム,そして医療,福祉予算やマンパワーの充実を図らねばなりません.そして現実の機能・心理・社会的自立のために,リハ医学のより深い科学的基盤が求められています.

特別講演,シンポジウム,パネル等について

まずあいち健康の森・健康科学総合センター長の井形昭弘先生に「21世紀の長寿科学の展望」の特別講演をお願いし,シンポジウム「共生のための保健・医療・福祉の展望」の中で,共生のための理念やシステム,医療・福祉予算のわが国のあり方への提言が期待されます. 

またリハ医学の医学的基盤は“機能の再建,強化”にあり,前京都大学霊長類研究所長の久保田競先生の「前頭葉の機能とリハ」の特別講演,またカロリンスカ研究所のPer Hansson先生の「Neurogenic Pain」の招待講演を企画しました.さらにリハに伴う脳の可塑性や筋,骨,心臓機能の改善は,“遺伝子転写の促進”による蛋白合成の促進に帰結されます.シンポジウム「リハ医学における分子生物学」において,リハ,教育,訓練という言葉が,遺伝子の転写促進という共通の分子生物学的言葉で語られるようになるでしょう.

より現実的課題としての「DRG/PPSとリハ医療」「介護保険におけるリハ医学の位置付け」,また「骨粗鬆症の予防とリハ」「高次脳機能のリハと長期予後」「温熱,水治療の新しい展開」も多くの人に関心を持っていただけるでしょう.

「錦江湾サンセットクルーズ」,市民参加セミナー等

5月20日(木)学会1日目の夕方,会員懇親会「錦江湾サンセットクルーズ」を美しい客船の上で行います.もちろん,郷土料理やビール,焼酎付きで,晴天なら上甲板でジャズ演奏会も開催する予定です.市内観光や桜島,霧島,指宿への旅や,朝鮮陶工の里として有名な薩摩陶苑のツアーも企画されています.

市民参加セミナー「バリアを超えて」は,最終日5月22日(土)午後2時から市民文化ホールで行われます.脊損や脳卒中を乗り越えてスポーツや社会で活躍中の方々に,スライドやビデオをまじえて話してもらう予定で,多くの市民の参加が予想されます.

学術的な勉強と共に,「楽しかった」と言われる学会にしたいと思います.皆様の御協力と多数の御参加をお待ちいたします.