<医局だより>

心身障害児総合医療療育センター


心身障害児総合医療療育センターは肢体不自由児施設の整肢療護園と重症心身障害児施設のむらさき愛育園からなり,約220名の入院児と外来(年間新患は約1,000名),研修所などに306名の職員が勤務している.昭和17年5月に武蔵野の面影の濃い板橋の地に2万坪の敷地を求め,民立民営としてスタートし,昭和23年に児童福祉法の制定に伴い国立民営となり,現在に至っている.リハビリテーションという言葉をわが国に定着させたのは前センター長の小池文英先生であるときく.日本リハ医学会の事務局が当施設のなかにおかれたのも久しい.また,理学療法士の国家試験の受験資格を得るための講習を開催していたことも語り草となっている. 

現在の医局は14名の常勤医と8科22名の非常勤医師の構成で,常勤医の殆どは日本リハ医学会の臨床認定医である.20年以上の勤務者が5名ほどであり,大学からのローテーションドクターが1〜2名である.「時代の科学を総動員して」との療育の理念のもと,理学療法士18名,作業療法士14名,言語聴覚士5名を核にチームとして障害児のリハに当たっている.ボバース法を中心に発達を促進すべく種々のアプローチを行っている. 

脳性麻痺・二分脊椎などの手術は年間170件ほどであり,もっとも多い脳性麻痺では重度化を反映して股関節軟部組織の解離手術が多くなっている.麻痺足の再建手術や異常な肢位に拘縮したパターンの再構築手術が多く,麻酔はリスクを伴っている場合が多いが,この35年間の6,500に登る手術で事故は皆無である.母子入園・緊急一時保護(重度例のレスパイトケアが多い)・医療急患・家庭の崩壊などによる重度例の養護入院などを含めて年間600〜700名が入院していて,養護の社会的入院を除くと入院期間の短縮がみられる.入院では筑波大学付属の養護学校が隣接していて,1カ月以上の入院では転校して治療とともに教育を中断しないようにしている.また,就学前の児童については保育士による幼児保育が行われている.これらのスタッフをまじえた考察会議と呼んでいるカンファランスや術前回診では家族との連携を密にしている.外来は月〜金曜日の毎日と一部土曜日に開いている.ブレースクリニックは週2回あり,座位保持装置や外国製の種々の新規のものが増大してきている(小児科は予約制).重度・重複の障害の進む中,エアーウエイやポジショニングさらには気管切開(いままでに約65例)などの呼吸管理・各種の摂食指導の必要な例が増大している.ビデオフルオログラフィーの結果に沿っての指導外来での点滴をうける障害児の延べ数は年間700名を超えてきている.外来訓練とは別に訓練・心理・看護・医師のスタッフによる通園にも在籍数約40名が通ってきている. 

在宅・地域療育への支援として,保健所での発達・療育相談(5カ所),肢体不自由児養護学校の校医(8カ所),通園施設での診察・指導(9カ所),作業所への定期診察(1カ所),保育園指導など専門性を必要とするところとのネットワークを形作っている.また,在宅健診に小児科医師を中心に地域へ出かけている.このように社会のニーズに応じて多様な役割を医局も担っている昨今である.(君塚 葵)


心身障害児総合医療療育センター
〒173-0037 東京都板橋区小茂根1-1-10
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