<専門医コーナー>

第11回リハ・カレントトピックス&レクチャー 印象記

吉永 勝訓(千葉大学医学部附属病院リハビリテーション部)


平成11年10月2日〜3日に第11回リハ・カレントトピックス&レクチャーが,横浜市大・水落和也先生の幹事で新横浜にある横浜ラポールにて開催されました.横浜の新しい医療・文化の中心地区の真ん中に位置するこの会場は,横浜市総合リハセンターに隣接し,障害者関係のスポーツ・文化施設を備えた新しくてきれいな会場でした.

初日はカレントトピックスに先立ち,大学病院リハ連絡協議会ワークショップが開催され,私の参加した国立大学部会では鹿児島大・田中信行教授の進行で,独立行政法人化に関連する話題を宮崎医大・田島直也教授,医科歯科大・森田定雄先生,東京大・江藤文夫教授が発表されました.現在国立大学ではこの問題に加えて附属病院の診療科再編成の動き,入院期間の短縮,さらには新研修医制度の導入など,行き先の見えにくいものも含めて新たな問題が同時進行しており,それでなくても私立医大等に比べて整備の遅れているリハ部門を,その流れの中でどう運営・改革していくべきか,今後の状況の変化に応じて各大学内部での十分な検討と大学間での情報交換がさらに必要であると感じました.

カレントトピックス1の「脳卒中の新たな展開」では,鹿児島大・川平和美先生が麻痺肢への分離促通的運動パターン反復訓練,温水足浴,さらには蛋白同化ホルモン併用についての効果について,防衛医大・高橋紳一先生は早期からの立ち上がり訓練と装具歩行を中心とした急性期リハのoutcomeについて,埼玉医大・間嶋満教授はATレベルでの全身持久力訓練の効果について,また長寿医療研・大川弥生先生はQOL向上のための目的指向的・積極的リハビリテーションプログラムの効果についてそれぞれ発表されました.どれもEBM指向を感じさせる説得力のある発表であり,聴衆の期待を裏切らない内容でありました.コメンテーター役の横浜市大・菊地尚久先生もどうもご苦労さまでした.

その晩は新横浜プリンスホテルで懇親会が開かれました.仲間同士で飲みに行かれた方,自宅へ帰られた方なども多かったようで,会場が広かったせいか少し寂しい感じがしました.また新たに専門医になられた方の出席が今年も少なく残念に思いました.幹事の方も例年苦心されているとは思いますが,専門医会として新しい専門医の方々を積極的に招待して,仲間が増えたことをもっと派手なセレモニーで祝い,みんなで喜んでもよいのではないでしょうか.

第二日は横浜市大薬理学・五嶋良郎先生のレクチャー「神経軸索伸長抑制(反発)因子」に引き続き,トピックス2「医療福祉制度改革とリハビリテーション専門医」が開かれました.時計台病院・大島峻先生と坂総合病院・冨山陽介先生の,地域中核病院における医療制度改革に向けての対応策に対する苦心の話を伺うことで,制度の問題点とリハ医の果たすべき役割がよく理解でき,私のような大学病院勤務者には大変勉強になりました.開業医・近藤健先生の奮闘ぶりには,とにかく応援したくなった先生方が私も含めて多かったと思います.

最後に発表された横浜市障害者更生相談所・小池純子先生に対しフロアから,「身体障害者手帳診断でも記載医により等級判断にばらつきが多いのに,介護保険導入にあたり介護認定の実施等について,地域によってはリハ医が何ら関わることもなく準備が進められており,制度の公平・円滑な実施を危惧しているが如何か」という質問がありました.小池先生が,「横浜市では総合リハセンターや更生相談所の指導のもとに学習会を繰り返し,市の各機関と連絡を取り合い周到に準備を行ってきたし,地域のほとんどの中核病院にはリハ医がいるので,介護保険については余り心配しておりません」という内容のことをきっぱりと返答され,一瞬会場に沈黙が流れました.やはり横浜市はスゴイ・ と感じた2日間であり,盛会のうちに幕を閉じました.