<医局だより>

国立身体障害者リハビリテーションセンター


 当センターは,障害者の職業訓練を主体とした更生施設である更生訓練所,リハ工学から障害者の社会生活まで幅広く研究を行っている研究所,リハ関連職種養成のための学院,障害者のリハ・一般的治療および入所者の健康管理を役割とする病院より構成され,昨年20周年を迎えた.病院は現在200床で,脳損傷・神経筋疾患などを主体としたリハ病棟50床,脊損・切断などを主体としたリハ病棟50床,眼科・耳鼻科・整形外科など手術的治療を目的とした病棟50床,高位頚損・泌尿器科・内科などの病棟50床に分けられている.診療科は13科あり,医師は常勤医21名・レジデント4名よりなるが大学の医局形態とは違いリハ科としてまとまっているわけではない.各科の医師がそれぞれの専門分野でリハ医療に携わっており,お互い連携を取り合いながら障害者のリハだけでなく,障害者のプライマリケアから一般的な健康管理まで幅広く障害者に対しての総合的医療を行っている.そのなかで当院における特色ある診療内容をいくつか取り上げて簡単に紹介する.
 外傷性脳損傷において問題となる高次脳機能障害に対し,神経内科医が中心となりチームによる認知リハを行っている.脊損関係では,昨年度のリハ科の入院患者の約半数が頚損であり,C4レベル以上の高位頚損者も受け入れて呼吸管理も含めリハを行っている.整形外科では,他院で治療に苦労しているような難治性褥瘡に対して治療効果を上げている.眼科では白内障や緑内障,糖尿病性網膜症など手術で視機能の改善・視機能低下の予防を図るだけでなく,低視力者に対してロービジョンクリニックで専門的なリハ指導も行っている.耳鼻科では人工内耳埋め込み手術を施行しており,今後は幼児への適応拡大も含め充実を図っている.泌尿器科では脊損者の障害者の排泄障害だけでなく性機能障害に対しても検査・治療を行っており,実際に挙児が現実的となってきている.内科・消化器内科では,車椅子でも安心して検査が受けられるように検査機器や検査法を工夫し,障害者の健康管理の一環として人間ドックを随時行っている.歯科では重度な障害者の歯科治療や口腔衛生指導を行っている.昨年度に精神科医師も常勤となり,障害者の抱える様々な精神的問題に対してもより専門的な治療アプローチができるようになった.
 リハ患者に関しては数年前より院内LANを活用し,脳卒中における予後予測データベースシステムである「RES-4」をもとに他の障害にも対応しうるリハデータベースシステムを新たに構築し,各種障害のリハデータベース化とそのデータのカンファランスなどへの活用を図っている.(草野修輔)

国立身体障害者リハビリテーションセンター
〒359-8555 埼玉県所沢市並木4-1
URL: http://www.rehab.go.jp
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