<会員の声>

リハビリテーションと機能訓練

佐直 信彦 (東北文化学園大学医療福祉学部リハ学科)


 我々はリハビリテーション医療,デイケア,機能訓練事業,デイサービスの場で,「訓練治療」に関わる用語を無造作に使ってきたきらいがある.しかし,法制度上は病院,療養型病床群,診療所等の医療機関で行う理学療法,作業療法等は診療報酬上はリハビリテーション(料)と呼ばれ,各種福祉法,老人保健法の下では機能訓練であり,明確に区分されていた.診療報酬上のリハビリテーション医療は基本的動作能力,応用的動作能力,社会的適応能力,言語能力の回復を図ることを目的としているのに対して,機能訓練は老人保健法(医療等以外の保健事業の実施基準)によると,「医療終了後も継続して心身の機能の維持回復するための訓練」と規定されている.その内容はおおむね「@歩行,上肢機能等の基本動作訓練,A食事,衣服の着脱等の日常生活動作訓練,B手工芸,Cレクリエーション及びスポーツ」で,「医師の判定を受けた上で,医師,理学療法士,作業療法士,保健婦その他の者が行う」とある.現実は保健婦その他が主体となって実施している.因みに,総合承認施設のリハビリテーションは当然医師も行えるが,理学療法士,作業療法士が行うとなっている(Uでは,理学療法士・作業療法士以外の従事者が行った場合はVに準じて算定するとなっているが,Tについてはその規定はない).
 ところが,介護保険法下では用語の使い方は渾沌としている.一例としてあげるなら,老人保健施設での機能訓練は入所者および通所者を合わせた利用者に対して理学療法士または作業療法士の基準が決められており,通所者の機能訓練は「通所者施設療養費」で賄われていたが,介護保険法では基準はそのままで,通所リハビリテーション(料)となる.逆に,療養型病床群でリハビリテーション(料)と称されていた理学療法,作業療法は,介護療養型医療施設ではリハビリテーション(料)ではなく,特定診療費扱いとなる.
 その意図は,@理学療法(士),作業療法(士)の独自性の希薄化(低料金化)の布石なのか,A機能訓練は医師の必要性の認定というだけの縛りである.言語聴覚士法の場合のように一部を除いて,医師の指示から分離する布石なのか,B高齢者医療制度と介護制度の一体化とその方向性の布石なのか,不明である.
 以上のようなことを考慮すると,法制度の文脈で論ずる場合は,リハビリテーション,機能訓練の用語の使い方に,もう少し注意を払って欲しいと感じている.