<会員の声>

「維持期リハビリテーション」と「維持的リハビリテーション」

佐直 信彦 (東北文化学園大学医療福祉学部リハ学科)


 何時の頃からか「維持期リハビリテーション」という用語が跋扈するようになった.多分,老人保健法の機能訓練が「医療終了後も継続して心身の機能の維持回復するための訓練」と規定されてから,「医療終了後」が「維持期」と重なるように,使われ出したのが始まりではないかと推察している.
 疾病は発症,経過から急性疾患,慢性疾患に大別される.急性疾患では病態の経過は「発病-修復-治癒」で,対応する病期は,「急性期―回復期〜症状固定・障害残存(期)」となる.治癒についての定義も曖昧で,病理過程の修復の終焉とするか,機能の回復の終焉とするか,いろいろな考えがある.さらに,障害モデルに対応して,臓器レベル―個体レベル―社会レベルの機能的状態の帰結を視野に入れた考えもある.慢性疾患の病態の経過は,「発病不詳―進行・増悪・寛解〜障害併存」で,対応する病期は,「慢性期」のみとなる.「維持期」とは何れを指すのであろうか.強いて言えば,急性疾患にのみ当てはまり,治癒過程のある時期から症状固定期に該当すると考えられる.当然,介護保険法でいう加齢現象,「特定疾病」の大方の疾患に「維持期」はない.
 一方,リハビリテーション的介入は概念的には予防的リハビリテーション,回復的リハビリテーション,維持的リハビリテーションに区分される.申すまでもなく,予防的リハビリテーションとは急性期の治療の過程で起こる廃用症候群の予防,回復的リハビリテーションは一次障害,廃用症候群をはじめとする二次障害の治療,維持的リハビリテーションとは到達された機能的状態を維持すること,その多くは生活習慣によって起こる廃用症候群の予防である.いずれにせよ,WHOの障害への対応が「障害予防とリハビリテーション」であったことを想起すれば了解できる.それぞれの病期において,何を予防し,何を治療回復させるかの介入の問題と言える.
 維持的リハビリテーションには,医療,保健,福祉の社会資源をいかに利用するかが,鍵になることは論を待たない.身体的な機能的状態に限っても,長期ケアにおけるリハビリテーションでは,維持的・予防的配慮だけでは,生活習慣によって起こる廃用症候群を防ぎきれず,時に応じて積極的な,回復を目的とした治療的介入(理学療法,作業療法等)が必要となることも少なくない.それを見抜くのもリハビリテーション医の技量である.
 「維持期」「維持的」についてのこだわりは私だけなのであろうか.会員諸氏の御意見を伺いたい.