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特集:回復期リハ病棟―そのねらいと対策
回復期リハ病棟入院料について
新村 和哉
厚生省保険局医療課
平成12年度診療報酬改定においては,医療機関の機能分担と連携,医療技術の適正評価,出来高と包括の組み合わせ等が主要な検討項目とされたが,これと同時に,同年4月からの介護保険の本格実施を目前にして,寝たきり等による要介護状態の発生を防ぐためのリハビリテーション(以下,リハ)の充実も重要な課題であった.
リハには,時間的な推移から見ると急性期,回復期,維持期といった区分がなされているようであり,また,提供施設も病院,老人保健施設,福祉施設,市町村等さまざまである.制度としても医療保険のほか,従来で言えば老人福祉,老人保健事業があり,今後は介護保険下でもリハが行われることとなるが,医療保険としては,脳血管疾患等の患者の急性期から回復期のリハを強化することにより早急にADLの向上を図り,要介護状態を作らない,あるいは軽い要介護度を目指すことが最も重要なことと考えられた.
このような問題意識の下に,リハ医学の関係者との非公式な意見交換を行う中で,リハの診療報酬上の評価方法について模索していたが,リハ施設・病院協会がかねてよりリハ専門病棟の評価を提案し,12年改定に向けても要望を行っていたことから,この提案を参考にしつつ新設点数の検討を進めることとした.
一方,昨年来,中医協では中長期的な診療報酬体系のあり方を検討していたが,リハの充実評価について,総論的には診療側,支払い側ともにほぼ合意が得られていた.昨年12月に出された「診療報酬体系のあり方に関する審議の中間報告」においては,「医療法による病床区分を基本として,急性期医療,慢性期医療,リハ,長期療養等の疾病,病状に応じた患者の医療ニーズの視点から,現行の診療報酬体系における既存の機能分担の見直しや新たな機能分担の設定,及びその連携の強化方法について検討する」とされた.
政府予算がらみの診療報酬改定率が年末にセットされた以降,年明けには,中医協で診療報酬改定の具体的な検討項目を示すこととなり,「回復期リハ病棟入院料」について,おおまかな施設基準を含めて事務局として提案を行った.中医協では,「回復期リハ」という言葉が耳慣れなかったためか,支払い側から回復期の概念等についての質問があったが,その背景には,回復期リハの名の下に病状の軽い患者を対象とした維持期のリハまで入ってしまうのではないかとの懸念があったようである.これに対しては,同入院料の対象患者の疾患を明示するとともに発症後受け入れまでの期間を3カ月に限定し,かつ,算定期間を6カ月と区切ることにより理解を求めることとした.
施設基準については,看護3:1以上,看護補助6:1以上,病棟に医師1名以上,PT2名以上,OT1名以上の配置,病床面積6.4m2以上等としたが,これらは病棟を中心として集中的なリハを行うためには必要な要件と考えられたものである.これを見てわかるように,人員配置面では一般病棟に近く,構造設備面では療養病棟に近い基準である.リハ専門病棟を有する病院には,一般病棟で従来の新看護を届け出ているところと,療養病棟で行っているところがあるようだが,回復期リハ病棟は,その施設要件を満たすならば一般病棟,療養病棟のいずれでも算定可能とした.特に療養病棟に関しては,構造面では要件を満たしており,人員配置面の改善と対象患者受け入れの努力を行うことにより同点数が算定できることになる.介護保険の実施に伴い,療養病棟は介護保険適用のものと医療保険適用のものに分かれることになるが,後者の重要な機能としてリハが挙げられていることから,この入院料の活用が強く期待されるところである.