<質問箱>

functional outcome

評価・用語委員会
千田富義


Q 欧米の文献で盛んに見かけるfunctional outcomeについて,私も学会発表でoutcome study(リハの成果に関する研究)の報告をしていますが,発表の際になかなか良い和訳がないので困っています.機能的帰結,機能的成果などと言葉を変えて発表しましたが,リハ医学会として推奨する和訳があれば教えてください.また,他の医学会ではoutcomeをどのように訳しているのでしょうか.(横浜市大 水落和也)

A  Outcomeとは「転帰,帰結」と訳され,結果,結末などの意味がある.医学の分野では予測因子と関連させて用いられる1).予測因子は転帰に影響し,転帰に先行する要因である.治療的介入,危険因子,予後因子などがこれに当たる.転帰はこれらの予測因子に影響されたある時点での結果である.治療的介入によって退院時点で死亡,軽快,不変などの転帰となる.危険因子の有無によって発病するかどうかの転帰が問題となる.

転帰は種々の測定尺度によって評価される2).死亡率,発症率などで転帰を検討する場合,疾病の特性についての分析となる.これはより疾病を指向した視点からの転帰である.これに対して日常生活活動などで転帰を検討する場合,疾病に罹患した個人の機能的状態,一個人としての外界への働きかけについての分析となる.これはより機能を指向した視点からの転帰である.これがfunctional outcomeであり,機能的転帰または機能的帰結と訳される.リハ医療の分野では,国際障害分類に基づき,機能障害,能力低下,社会的不利の各側面から転帰を表現することが重視されている.例えばパーキンソン病患者について,Yahrの分類,Barthel Index,QOL尺度をそれぞれ評価することである.機能的転帰と類似用語に機能的利得(functional gain)がある3).これは,治療的介入の前後を比較する概念で,介入前後の差,変化率で示される.10m最大歩行速度が20m/min 改善したなどと表現する.機能的転帰がどのレベルに到達したかを問題にするのに対して,機能的利得は変化の量を問題とする.

予後(prognosis)も疾病の経過,変化を論ずるときに用いられる4).これはある疾病の経過および結末を予測することを意味している.予測であること,経過を含むことが転帰すなわち結果とは異なった概念である.

参考文献
1) Friedland DJ: Guide for assessing the validity of study. in Evidence-based Medicine. A framework for clinical practice (eds by Friedland DJ, et al). Appleton&Lange, Stanford, 1998; pp153-182
2) Good DC: Outcome assessment in chronic neurological disease. in Handbook of Neurorehabilitation (eds by Good DC, Couch JR Jr). Marcel Dekker, New York, 1994; pp105-128
3) 中村隆一(編): 脳卒中のリハビリテーション. 永井書店, 大阪, 1986; pp186-201
4) 上田 敏, 大川弥生: リハビリテーション医学大辞典. 医歯薬出版, 東京, 1996; p600