EBMセンターのSackett教授によるとEBMは以下の5つのステップで構成される1).
@情報の必要性を解答可能な質問の形に変換する.
Aそれらの質問に答えるための最良の根拠(診察,検査,文献その他の情報源)を最も能率的な方法で追求する.
B根拠の妥当性や有用性について批判的に検証評価する.
Cこの検証評価の結果を臨床業務に応用する.D実行したことの事後評価を行う.
具体例を示す.ある症例の治療に対していくつかの方法が考えられる場合,まずそれぞれの治療効果やその比較に関する研究成果を種々のデータベースから抽出する(ステップA).次にこれらの情報を,理論的モデルに基づいているか,対照群の設定は適切か,客観的な評価に基づいているか,バイアスはないか,統計手法は正しいか,など多くの視点から批判的に検証し,研究結果の妥当性を吟味する(ステップB).その上で,抽出された「証拠(根拠)」に基づいて実際の治療を行う(ステップC)ものである.
この過程で最も重要なのはステップABであるが,近年のコンピューター通信技術の発展により,多くの情報が手軽に入手できるようになっている.MEDLINEなどはデータベースとして定着しているが,近年,EBMの概念に則って系統的レビューを行ったコクラン共同計画3,4)の成果もCD-ROM化されている.また,このCochrane Libraryを1つの情報源として発展させ,ネットワークで入手可能なOvid社のEBMR(Evidence-Based Medicine Review)(詳細は文献5,またはe-media@usaco.co.jp)も紹介されている.一方,文献の批判的検証の手続きについては実践的なワークブックも出版されているので参照されたい(文献1).
参考文献
1) 野崎定彦・他(訳): EBMワークブック. 医歯薬出版, 1999
2) 里宇明元: EBM(evidence-based medicine). 臨床リハ1999; 8: 1100-1110
3) 津谷喜一郎: コクラン共同計画とは. 医学図書館1996; 43: 119-120
4) 別府宏圀・他: コクラン共同計画資料集. サイエンティスト社, 1997
5) 角田亮子: Ovid evidence-based medicine reviews. 医学図書館1998; 45: 484-486