【はじめに】 来年4月は,2年ごとの診療報酬の改正の時期にあたり,医療をとりまく環境に厳しさが増すことや,老人医療費の総額にキャップがかかるのではないかとさまざまな憶測が流れています.また,会員の先生方には日常診療の中でリハビリテーションの診療報酬に関するさまざまな疑問がおありのことと思います.その主な疑問点である診療報酬改正の当学会での要望書作成プロセスについてQ&A方式でお答えいたします.
Q:日本リハ医学会からの診療報酬改正の要望はどのように行われるのですか?
A:まず各種委員会の一つである社会保険等委員会でさまざまな角度から改正を希望する項目を抽出して,新設,改正ごとに整理します.社会保険等委員会委員の構成は利害が偏らないように,大学病院,公的病院,半公的病院(労災病院など),リハビリテーション(以下,リハ)病院,一般病院,肢体不自由施設などからの委員より成り,幅広い意見が吸い上げられるようになっています.委員会で,項目が外保連(外科系学会社会保険連合)にふさわしい内容なのか内保連(内科系学会社会保険連合)にふさわしいのかを検討してそれぞれへの要望書を作成します.また,新設のなかで新しい技術や新たな解釈を必要とする内容に関しては,内保連と外保連とは別に,日本医師会の疑義解釈委員会にその内容と要望点数を添えて要望書を送ります.●委員会案作成にあたっては関連する日本理学療法士協会,日本作業療法士協会,日本言語聴覚士学会,日本義肢装具士協会と数回情報交換と意見調整を行い,整合性のある内容に仕上げていきます.委員会案は理事会に提出され,そこで内容を検討され,必要なら一部修正が加えられたうえで外保連あるいは内保連に提出されます.●提出の時期は例年6月の下旬で医療費の改正がある2年ごとが原則ですが,外保連の場合は要望書の作成に限って毎年この作業が行われます.平成14年には医療費の改正があるため,本年は外保連,内保連とも平成13年6月の要望書の提出になります.
Q:最近の保険診療報酬改正の傾向は?
A:後述する外保連方式など,診療報酬の客観的な算定内容を示すことが強く求められてきています.それぞれの診療行為のtime study(どれだけの時間を要したのか)を行い,コストを算定し診療報酬に反映していく方法がとられつつあります.本学会も早急に各診療行為の客観的根拠を示すべく調査を始める必要があります.また,「物より技術」すなわちdoctor fee重視の傾向が出てきております.そのためリハ医が行う技術(筋電図,VF,運動点ブロックなど)を更に拡げていくと同時に,明確にそれらを報酬として反映していくことが大切です.治療技術に対しては有効性の根拠を示すことが求められ,導入の結果どれだけの効果(入院期間の短縮にどれだけ貢献できたかなど)があがるのかのデータも時には求められます.また,将来的にはリハの出来高払いも聖域ではなくなる恐れがあり,包括医療のなかでどのようにpositionを確保しておくかも重要な課題と考えます.
Q:外保連とはどんな集まりなのですか?
A:1967年に外科系の主な学会が集まり設立され,現在52の学会が所属しています.外保連では現在,診察,診断および治療という診療行為において,現実の数字を基にした評価体系を「手術報酬」「生体検査報酬」「処置報酬」の試案として算出し,診療報酬改正の参考資料として行政に提示しています.
Q:外保連における診療報酬案はどのようにして算出されるのですか?
A:診療行為にかかる経費は,直接経費(主に人件費と特定医療材料など)と間接経費(直接経費以外のもので建物維持管理費・租税公課・支払利息など)に分けられます.●間接経費は,(1) それを計算する専門家(公認会計士など)によっては算出の不一致が見られる,(2) 根拠を持って算出した額を直接経費に加算して現行の診療報酬と比較した場合,常識を逸脱した価格になる場合が非常に多い,(3) 現行の診療報酬体系において,厚生労働省は間接経費の多くを入院基本料の中に含まれると見なしていること等の理由で,とりあえず現在では,直接経費のみを診療報酬の試案として算出する方向性が示されています.●直接経費の要素としての人件費は非常に重要で,施行医ならびに協力医・看護婦や技師および療法士等の費用が加算されます.この場合,医療行為に要した時間,また国家公務員の俸給を参考にした経験年数に対する給与指数や,行為の難易度に応じた技術度指数も考慮して,最終的な経費が算出されます.
Q:内保連とはどんな集まりですか?
A:内保連は1968年に設立され,現在は62の内科系学会が所属しています.最近は必ずしも内科系学会に留まらず,外保連に所属している学会からも入会の申請があります.●内保連は外保連と同様,新設,改正の項目にそれぞれ申請の根拠を添えて提出します.外保連は新設,改正それぞれ3項目以内ですが,内保連は数の制限がありません.しかし,順位の高いほうが要望度が高いとみなされます.●内保連所属の各学会から提出された項目で類似の内容は小委員会で調節が行われます.同じ内容で別々に申請が行われると採択されることはほとんどありません.●各学会から提出されたリハ関連の内容はすべてリハ小委員会(石田 暉小委員長)で調整が行われます(例えば呼吸器学会から提出された「呼吸器リハビリテーション料」は点数の調整を行い,リハ医学会と共同提案となるなど).逆に当学会と関連の非常に深い筋電図関連項目は日本神経生理学会(旧日本脳波筋電図学会)が幹事学会として関連学会の意見を取りまとめます.●内保連は最近,新しい算定方式として米国で用いられているRBRVs(Resource Base Relative Value Score)について検討を始めました.
>会員の皆様へ建設的なご意見があれば学会事務局を通してお寄せいただければ幸いです.