◎最優秀賞◎小口和代,才藤栄一,水野雅康,馬場 尊,奥井美枝,鈴木美保:機能的嚥下障害スクリーニングテスト「反復唾液嚥下テスト」(the Repetitive Saliva Swallowing Test: RSST)の検討.
(1) 正常値の検討.リハ医学2000;37:375-382
小口和代,才藤栄一,馬場 尊,楠戸正子,田中ともみ,小野木啓子:
(2) 妥当性の検討.リハ医学2000;37:383-388
◎優 秀 賞◎辻内和人:脳血管障害患者の下肢感覚機能と体性感覚誘発電位に関する研究.リハ医学2000;37:274-281
◎奨 励 賞◎田中尚文:ラット長腓骨筋の電気刺激に関する生理・組織化学的研究.リハ医学2000;37:445-452

「最優秀賞」受賞に際して
小口 和代
今回受賞しました研究は,主に,平成7〜9年度厚生省・健康政策調査研究事業(個人の摂食能力に応じた味わいのある食事内容・指導等に関する研究,分担研究者:才藤栄一)の中で行ったものです.私は,平成8年度から参加させていただきました.平成8年は私が内科からリハビリテーション科に所属を変更した年でした.そこで出会った初めての研究がこのように高い評価をいただき,大変光栄に存じます.
RSSTは大変シンプルな手法で摂食・嚥下障害をスクリーニングするものです.予備的検討の段階で,脳卒中患者のRSSTから3回/30秒がスクリーニング値として妥当?という仮説が立てられていました.藤田学園の警備員さんたちから採取させてもらった正常高齢者の空嚥下の積算時間から,3回/30秒というスクリーニング値を算出した時は,本当に胸躍る瞬間でした.と同時に才藤教授の臨床における慧眼に驚嘆いたしました.この値の妥当性はその後,他の複数の研究者により多数例のデータで追試,確認されました.私もRSSTを治療効果判定に用いることができるか,検討を行っているところです.
現在,総合病院で多くの摂食・嚥下障害の患者さんに向き合い,摂食・嚥下リハビリテーションのニーズの高さを痛感しております.評価,治療法,チームアプローチに,試行錯誤の日々です.常に探求心を持って臨床にのぞむこと…受賞を機に思いを新たにしております.
最後になりましたが,この場を借りて,ご指導いただきました才藤教授,医局の先生方に心より感謝申し上げます.
略歴:平成3年名古屋大学医学部卒業.平成3〜6年佐久総合病院内科.平成6〜8年渥美病院内科.平成8〜12年藤田保健衛生大学医学部リハ医学講座.平成12年〜現在,刈谷総合病院リハ科.

「優秀賞」を受賞して
辻内 和人
このたびは,日本リハ医学会論文賞「優秀賞」をいただきありがとうございました.受賞の対象となった論文「脳血管障害患者の下肢感覚機能と体性感覚誘発電位に関する研究」は,私の学位論文であり,難産の上の産物であったことから,感慨ひとしおです.才藤栄一先生(現藤田保健衛生大学教授)が指導教官で始めた研究でしたが,研究の途中で先生が栄転され,その上,当初予定していたSEP波形の分析法では良い結果が得られず,研究開始から掲載までに7年もかかってしまいました.結局,慶應義塾大学理工学部の富田教授の一言で解決の糸口が見つかったのですが,論文が完成したときにお礼の挨拶をしたところ,「ぼく,そんなこと言いましたっけ」とまったく覚えておられず,つくづくうまくいって良かったと思いました.
現在は,神奈川県小田原市にある小林病院という民間病院で働いています.それまで,公立のリハビリテーションセンターで働いていましたので,それらの施設のできないこと,入院を待たせない,入院期間は柔軟に運用する,90歳でも可能性があれば入院させるという方針のもと,急性期から亜急性期のPT訓練を徹底的にやり,リハビリテーションセンターへの転院が必要な人は転院させています.
最後に,この紙面を借りて臨床検査技師の高橋修先生に感謝の言葉を贈ります.「たくさんのSEP波形をきれいに記録してくれてありがとうございました!」
略歴:昭和62年日本医科大学医学部卒業後,慶應義塾大学医学部リハ科入局.その後慶應義塾大学月が瀬リハセンター,国立療養所村山病院,国立塩原温泉病院,東京都リハ病院,埼玉県総合リハセンター勤務.平成12年より医療法人小林病院リハ科に勤務し現在に至る.平成5年日本リハ医学会専門医取得.

「奨励賞」受賞に際して
田中 尚文
このたびは,奨励賞を授与いただき,このように認めていただいたことを大変名誉に思っております.ご存知の通り,廃用筋や麻痺筋に対するTESは臨床でよく用いられ,特にFESの導入では,電気刺激により十分な筋張力を生じさせ,さらに,いかに筋疲労を起こしにくくするかが臨床的な課題です.刺激周波数は20Hz以下で行われるのが多いようですが,臨床的経験から決められているのが実状です.本論文では,持続的低頻度電気刺激の刺激周波数が速筋の疲労抵抗性に及ぼす効果を検討した結果,刺激周波数が10Hzと20Hzとで効果が異なることをはじめて明らかにすることができました.あらためて,ご指導いただいた慶應義塾大学リハ医学教室 千野直一教授をはじめ,藤枝南クリニック 峯尾喜好博士,慶應義塾大学月が瀬リハセンター 岡島康友助教授,同大学物理情報工学部 富田豊教授,池田盛人修士に感謝します.
私は,今年の5月より,カナダ・エドモントンにありますアルバータ大学Division of NeuroscienceのRichard B. Stein教授のもとへ留学しており,下肢の相反抑制に関する研究を始めたところです.うれしいことに,研究室がすぐ隣にあるTessaGordon教授は,本論文に非常な興味を示されて,ここでさらなる実験を行うことを提案してくれています.カナダの自然に関する研究にも少々熱心になりすぎている感がありますが,リハ医学に関する研究も頑張ってまいります.今後ともご指導の程よろしくお願い申し上げます.
略歴:平成3年慶應義塾大学医学部卒業.平成3〜8年同大学医学部リハ科.平成8年同大学月が瀬リハセンターリハ科.平成13年5月よりカナダ・アルバータ大学留学,現在Divisionof Neuroscience, University of Alberta.
【お詫び】リハニュース10号掲載の田中氏のお名前と略歴に誤りがありましたことをお詫びいたします.下記の箇所を訂正しております.■田中尚人(誤)→田中尚文(正).略歴:平成3〜12年同大学医学部リハ科.平成12年同大学月が瀬リハセンターリハ科(誤)→平成3〜8年同大学医学部リハ科.平成8年同大学月が瀬リハセンターリハ科(正)
2001.7.15: リハニュースNo.10