<特集:国際学会の動向>

ISPRMの誕生をめぐって

日本リハビリテーション医学会 理事長 千野 直一


 2001年はニューミレニアム,つまり,21世紀の幕開けの年であり,日本リハビリテーション(以下,リハ)医学会にとっても国際化へ向けて大きな飛躍の記念すべき年となった.それは,本医学会主催による,2001年2月17日から2日間のA New Millennium Asian Symposium on Rehabilitation Medicine(東京)に始まる.アジア近隣の14カ国・地域からの23名の招待者と日本から約200名の参加者をえて,盛会裏に催すことができた.一方,世界レベルでの新たな国際リハ医学会ISPRM(International Society of Physical and Rehabilitation Medicine)の第1回学術集会が2001年7月7〜13日にオランダにて開催された.ここで,新しく組織されたISPRMについて,その誕生の経緯を説明しておきたい.

 ISPRMは1999年に,今までの2つの国際学会,つまり,IFPMR(Int. Feder Phys. Med. & Rehabil.)とIRMA(Int. Rehabil. Med. Assoc.)を統合し,米国のJ. Melvin教授が初代会長として発足した.2つの国際医学会のうち,前者のIFPMRはリハ医学に関係する学術団体を国単位で構成してきた比較的古い団体であり,我が国では日本温泉気候物理医学会が代表として参加していた.一方,後者のIRMAは米国のSidney Licht教授により,リハ医学に関心のある医師が個人の資格で加入する国際学会であった.この2つの国際リハ医学会は会員構成の重複,リハ医学の国別による発展度の違い,統括事務局のあり方,さらには,学術会議開催期日や開催場所などで競合するような事態も生じてきた.その結果,先に述べたように,1999年の米国リハ医学アカデミーと同時期に,IFPMRとIRMAがワシントンDC で開催され,この2つの国際医学会を併合してISPRMの発足となった.

 ISPRM組織委員会活動は,2001年7月のオランダでの第1回理事会と総会に向けて,定款の作成から始まった.筆者は定款委員会の責務の一端を担った関係で,ISPRMと過去の2つの学会との違いや,今後のISPRMに期待するところを以下に述べる.
 まず,第1は,ISPRMでは国際学術集会とは別に,理事会組織をもち,恒常的な事務局(ベルギー)をおいたことである(実施されるのは2007年の第4回国際会議から).過去の国際学会では学術集会会長が学会組織,事務局,会計管理などすべての責任を負っていた.しかし,会員数が増加する程に会議体としての機能が十分に果たせなくなってしまったことなどの苦い経験を踏まえての理事会設置である.
 第2として,ISPRM会員として各国にあるリハ医学会を団体会員(Society member)とし,また,個人としても加入できる個人会員(Individual member)との2通りの会員構成にした.これは,IFPMRとIRMAとを併合したために会員構成を団体と個人の両者を構成メンバーとすること,また,リハ医学の発展途上国・地域ではリハ専門医が多くないために,学術団体を構成できず,個人の資格で加入せざるを得ないなどの理由による.

 今回のオランダでの理事会と総会において,ISPRMの定款が承認され,これから本格的な学会活動が開始されることとなる.日本リハ医学会は団体会員として参画しており,今後,ISPRMの活動状況,学会開催などの情報は日本リハ医学会事務局に寄せられ,学会誌やリハニュース等で報告される.また,日本から個人会員としてISPRMに加入することも歓迎される.その際,恩典として,個人会員として直接ISPRM事務局に意見を述べることや,ISPRMのニュース “News and Views” が直接事務局より送付されること,さらに,学術雑誌 “Disability and Rehabilitation” が低価格で購入できることなどである.

 団体会員として,日本リハ医学会は9,500余名と,米国リハ医学アカデミーの6,000余名をはるかに凌いで一番大きな参加団体となった.そのため,これからISPRMでの日本リハ医学会に期待されることはますます増えるであろう.

 今回の理事会と総会で日本からの役員(敬称略)には,上田 敏,石神重信,宮野佐年,千野直一が就任しているISPRM役員表
 また,第2回ISPRM学術集会は2003年にイスラエルで,2005年はブラジル,2007年に韓国での開催が決まっている.
 このような国際化のなかで,日本リハ医学会はアジア太平洋諸国をまとめる要と期待されており,先に述べたA New Millennium Asian Symposium on Rehabilitation Medicineに続いて,Korean-Japanese Joint Conference on Rehabilitation Medicine 2002が2002年4月19〜20日に韓国のGyeongju市で開催される.この日韓合同会議は2年ごとに,日本と韓国で交互に開催され,近隣諸国との交流がさらに高まるであろう.

 本医学会でも外国人会員の推薦,海外学術交流派遣への奨励金制度が発足し,まさに国際化の波は加速度を増して来ている.このような時期に,日本リハ医学会の,一人ひとりの会員,殊に若手会員諸氏が大きく世界に飛躍することを期待したい.国際会議では英語が公用語となる場合が多いが,ジャパニーズ・イングリッシュでも十分通用する.
 日本のみならず,世界の趨勢をみても,今後,5,6年のうちリハ医学会の世代交代が必要であろうし,リハ医学の進歩とともに世界をリードするリハ専門医が日本リハ医学会の若手会員の中から続々と輩出することを願ってやまない.
(リハニュース11号:2001年10月15日)

ISPRM役員表(日本代表者には下線)
▼July 2001-June 2002▼
President: J. Melvin
IFPMR Past President: R. Oakeshott
IRMA Past President: S. Ueda
Executive Vice President: W. Peek
President Elect: H. Ring
Vice President: L. Battistella
▼July 2002-June 2004▼
President: H. Ring
Past President: J. Melvin
President Elect: L. Battistella
▼July 2001-June 2003▼
Secretary: M. Grabois
Treasurer: M. Lissens
Members at Large
Society: N. Chino
Individual: T. Strax
Regional Vice Presidents
Africa/Middle East: A.A.M. Eyadeh
Asia/Pacific: S. Chun
North America: G. Tardif
Europe: D. Wever
Caribbean, Latin, Central&South America: V. Rodriguez
Individual Members at Large: 
M. Jadid, T. Bochandansky, I. Ziv-Ner, C. Park, S. Ishigami, K. Under, M. Terburg, J. Li, P. Marano, B. Mi-hai, M. Imamura, W. Micheo
Nominating Committee: 
W. Peek, M. Grabois, V. Rodriguez, S. Miyano, M. Sposito and S. Aksarana-traha. 
Chair: S. Ueda, ex-officio as Past-President.
Audit Committee:
Chair:S. Ishigami
Central Office: 
Werner Van Cleemputte, Executive Director, the MediCongress, Belgium. 
e-mail: werner@medicongress. com