東京大学医学部組織改革とリハビリテーション医学

東京大学医学部附属病院リハビリテーション部
江藤 文夫 


 東大病院では1963年,リハビリテーション医学の展開を目指し,院内措置として中央診療部に運動療法室を開設した.整形外科の理学療法室や内科の物理療法室とは独立して企図されたものである.次いで1966年には,運動療法室に加えて作業療法室,水治療法室等を設置開設し,院内名称として,「中央診療部リハビリテーションセンター」と称した.さらに1969年度に理学療法部設置の予算措置がなされ,1970年1月より院内名称「リハビリテーション部」として独立した.
 1984年に専任部長(教授)新設,翌年には専任副部長(講師)新設の予算措置がなされたが,名称について病院理学療法部であった.同じ頃には形成外科,小児外科,神経内科など,あるいは輸血部,救急部,中央検査部,手術部などが不完全診療科(講座)あるいは診療部という呼び方をされ,それぞれ整備充実を求めており,リハ部もその1つに加えられていた.
 当時から医学部の将来構想がさまざまに議論されていたわけであるが,東京大学の大学院重点化構想に沿って,1995年から97年にかけて医学部の旧講座を廃止して大学院講座制への移行がなされた.その結果,大学院医学系研究科には11の専攻とそれぞれに属する27の講座が誕生し,従来の診療科講座は分野としてそれぞれの講座に属することとなった.前述の部門はすべて分野として大学院化されたが,リハ医学分野のみは設置されなかった.
 大学院講座制への移行が完了し,その中に多くの新しい臨床医学分野が生まれたことに伴い,1998年に病院診療科の再編成がなされた.その際に感覚運動機能医学診療部門の中に教官定員0のままリハ科の名称も加えられた.診療科名はそれぞれ大学院の分野に対応することが原則のようであり,感覚運動機能医学講座内にリハ医学分野が想定されていたわけである.このことは現医学部長が非常に案じてくれたことで,2001年(本年度)から東大病院において理学療法部よりリハ部への名称変更,ならびに大学院医学系研究科にリハ医学分野設置の予算措置がなされることとなった.見様によっては,病院理学療法部部長(教授)が東京大学大学院医学系研究科外科学専攻感覚運動機能学講座リハ医学分野教授に振り替えられただけのことである.
 名称を同じくする中央診療部門と診療科(リハ部とリハ科)の関係説明をはじめ,リハ関連コメディカル職種の統合,リハ科としての展開,研究室のない医学系研究科での活動など課題は山積している.
 昨今の国立大学を巡る豊富な話題に関連して,東京大学でも組織改革の議論が活発化していて,医学部固有の問題も含めて近い将来大きな変化を生じる可能性は大である.東京大学の組織変更については別の機会か他者に譲るとして,その末端の東大病院リハ部で生じつつある変化について,沿革を含めて紹介させていただいた.この変化を意義のあるものにしたいと願っている.
(リハニュース11号:2001年10月15日)