社会福祉基礎構造改革の概要- 利用者とサービス提供者との対等な関係
@ 利用者の保護:情報提供,福祉サービスの利用援助,苦情解決システムetc.
A 利用者本位の福祉サービスの提供
措置制度から利用契約制度へ:障害程度区分の創設→支援費の支給
- 福祉サービスの質的向上
@ 福祉サービスに関する評価の実施:福祉施設に評価システムを導入
A 社会福祉従事者の専門性確保:障害者ケアマネジメントの普及と障害者ケアマネジャーの養成etc.
- 社会福祉事業の拡充・活性化
@ 障害者関係事業の拡充:福祉サービス利用援助事業,障害者(児)相談支援事業,情報伝達/意思伝達の支援事業(手話通訳),盲導犬育成事業,知的障害者デイサービス事業,知的障害者デイサービスセンター
A 多様なサービス供給主体の参入:民間事業者,NPO,当事者組織etc.
- 地域福祉の推進
@ 地域福祉計画の策定:市民参加,障害者の自己決定による自立生活の実現etc.
A 知的障害者福祉の市町村への委譲
リハ医学・医療に関わる問題
1. 障害程度区分 身体障害者福祉法や知的障害者福祉法が改定され,身体障害者手帳診断に基づく障害程度等級や療育手帳の区分とは別に,厚生労働省から,あらたに能力障害に介護負担度などを加味した「障害程度区分」が示される予定である.
障害程度区分の決定は市町村が行い,それにしたがって,これまでの措置費に代わって支援費(施設支援費&居宅支援費)が支給される.なお障害者更生相談所は,市町村からの要請によって,とくに医学的,心理学的,職能的判定を必要とする場合には意見を述べる立場にあるが,障害程度区分の決定はあくまでも市町村が責任をもって行うこととされている.
これにより手帳診断は,支援費支給の前提となる「障害者」であることの証明,支援費支給の基準となる「障害程度区分」を決定する参考資料,という役割に限定されることになろう.
2.
支援費の支給システム(図1:クリックすると大きくなります) 図に示したように,従来の措置制度(行政処分)による福祉サービスの提供システムが市町村による支援費の支給制度に移行する.新制度への改訂のポイントは,措置権者が市町村に代わったこと,利用者が指定事業者と直接契約を結ぶこと,このため,制度的には利用者が指定事業者を選択することができることである.
ちなみに支援費制度では,支援費基準や利用者負担および支給量などについて,介護保険と同様に,国として支援費支給に関する統一的なシステム開発などは考えておらず,それぞれの市町村が当該地域の実情などを踏まえて決定するものとされている.したがって,今後は全国の地域格差が今以上に拡大するものと思われる.
リハ医との関係で重要な点は,本制度では,これまで福祉施設を利用する場合に必須とされていた障害者更生相談所の入所判定が不要となり,形式的には,それに伴う医学的判定の役割がなくなることである(更生相談所は個別障害者に対して自ら入所判定を行うのではなく,市町村が行う支給決定に係る援助・指導の役割を担う).
もちろん,今後も施設や市町村からの要請により何らかの医学的意見書(診断書)を求められることになろうが,更生施設などの利用にあたって,障害者更生相談所の判定を受ける煩雑さが省略されることは大きな改善である.
3. 福祉施設などにおけるサービスの評価システム 福祉サービスの質的な向上を担保するため,施設などの事業者は適切なサービス提供に努めるとともに,自らのサービスを評価して自助努力することが求められている.これは旧制度下における施設評価が,年に一度,ある時期におけるベッドの占有率のみであったことを考えると大きな前進である.
しかし,現在試験的に提示されている評価内容は,施設サービスの内容を情報提供しているか,利用者に対する個別支援計画が策定されているか,それが利用者の合意を得ているか,計画に沿ってサービスが行われているか,家族に対して日常的に情報が提供されているかなど,サービス事業者の利用者に対する倫理的姿勢や態度を問うものに限られている.
そこで障害保健福祉委員会(日本リハ医学会)としては,身体障害者更生施設のサービス向上を計る指標として,リハの実施状況や効果に関する評価項目を追加すべきであると考え,現在,全国更生援護施設の実態調査を基に評価内容の具体化について検討しているところである.
いうまでもなく身体障害者更生施設は,医学的リハに加えて社会リハの実施拠点として大きな役割を果たしている.したがって,身体障害者更生施設においてリハの実施と効果に関する評価を導入することは意義深く,今年度中に評価試案を作成したうえで,平成15(2003)年度の本格実施に向けて厚生労働省に働きかける予定である.
(リハニュース12号:2002年1月15日)