<特集:社会福祉に関する諸問題の動向-3>

障害者ケアマネジメントに関して予想される問題点とリハ医の関わり

障害保健福祉委員会 住居 広士


 「障害者介護等サービス体制整備支援推進事業」は,厚生労働省が各県に事業の実施を促し,試行的な事業として実施している.内容は,@体制整備検討委員会の設置,A介護等支援専門員養成研修の実施,B推進事業の実施の3事業からなる.推進事業では,各県で実際に現場で障害者を訪問し,アセスメントからケアプラン作成・実施までケアマネジメント過程を実施する.通常は市町村に委託し,市町村はさらにどこかの施設に委託する.
 障害者介護等サービス体制整備支援推進事業の目的は,@自立を自己決定とし,ADL的自立だけではなく,サービスを選択できる環境を目指す,A自立支援を重視し,社会生活力を自ら獲得していくことを目指す,B権利擁護やアドボカシーを,本人に代わり,障害者ケアマネジャーがすることなどを想定している.これらは幅広い対応力と深い知識が必要である点から,障害者ケアマネジメントの専門家の仕事として位置づけられる.
 1. 障害者ケアマネジメントとは何か
 ケアマネジメントは,ニーズと社会資源を結びつける手続きで.ニーズがきちんと把握され,それに見合った社会資源サービスを調整するプロセスである.
1) ニーズの発見
 アセスメントにて,ニーズを見つけていく.本人の自立支援につながる要素を,主訴やアセスメント結果から見出すために,主訴を重要視しながらアセスメントから気になる点や気づいた点を挙げ,さらにその要因を考慮する.ニーズの発見時のプロセスに「本人が望んでいる尊厳のある生活」という視点を持つことが重要である.その目的のために,リハ医がサポートできるのある.
 2) ケアプランの作成
 利用者の複合的なニーズを明らかにするとともに,活用できる社会サービスを検討する.その結果に基づきケアプランを作成し,それを利用者に示し,利用者の同意を得る.
 ケアマネジャーがコーディネーターとなり,利用者のニーズに関わる専門職種(医師,保健婦,看護婦,PT,OT,ST,MSW,PSW,CSW,介護福祉士,ピアカウンセラー等),市町村の担当者等が参加し,チームアプローチで行う.
 ケアプランを作成する際には,公的サービス,民間サービス,インフォーマルサポートなど活用できるサービスすべてを検討する.これらについて十分に説明して,どの提供先からサービスを利用するかについては,利用者との相談によりサービス決定の範囲と程度を取り決めることが必要である.

 2. 障害者ケアマネジメントの課題
 介護保険により障害者ケアマネジメントが注目されるも,障害者分野でそれより以前から,高齢者より先に障害者の分野でケアマネジメントは発展していた.ケアマネジメントは対象となるニーズや社会資源の幅が広ければ広いほど,その効果が大きい.その他の分野のサービスを活用することで,より活性化する.平成15(2003)年度から実施される措置制度から契約制度への変革は,将来のわが国の障害者ケアマネジメントシステムに影響を与えるものである.特に,契約制度における基準としての従来の身体障害者手帳制度から,支援費制度があらたに構築される.しかしその障害者ケアマネジメントや支援費制度へのリハ医の関心と参加が非常に乏しい.障害者ケアマネジメントは,医学を含めてその他の分野も包括するシステムである.日本リハ医学会として,この障害者ケアマネジメントについての対応を検討しておくことは,極めて重要である.

 3. 支援費制度とは何か
 平成15(2003)年より行政が障害者サービスの受け手を特定し,サービス内容を決定していた「措置制度」から新たな支援費制度に移行する.市町村が,支援費の支給の要否を決定し,居宅は支給量と支給期間を,施設では障害程度区分と支給期間を定める.(身障法第17条,知障法第15条,児福法第21条)
 その障害者区分と支給期間の決定のために,勘案すべき事項として,@障害の種類とその程度,Aその他の心身の状況,B介護を行う者の状況,C居宅受給の状況,D施設受給の状況,Eサービスの利用状況,F利用意向の具体的内容,G環境,H供給体制の整備の状況が提示されている.支給期間として,施設は3年間,居宅は1年間,グループホームは3年間で,再申請となる.
 その障害程度区分については

 決定事務機関としては,市区町村の聞き取り調査で決定する.決定のための新たな審査・判定機関は想定していない.必要に応じて,特に専門的な二次判定に更生相談所を絡ませる方向で検討されている.事業者はサービスの提供拒否は,空き定員がない場合・医療機関に入院が必要な場合が想定されている.従来の措置制度は介護者の急死・入院,家族からの虐待などあくまで例外的である.

 4. 障害者ケアマネジメントと支援支給費との関係
 平成15(2003)年より,社会福祉基礎構造改革である社会福祉法の制定により,いままでの措置制度が,契約制度に移行する.その利用者のサービスを選択する際の指標として,支援費制度が実施される.市町村において,一定期間内における複数のサービスの調整をする場合に重要となる.いままでの身体障害者手帳制度における障害程度等級から,障害程度区分に移行する.しかし障害者ケアマネジメントやケアマネジャーについては,その支援費支給制度においては,現時点では制度上に位置づけは未定である.医療保険制度以外での障害者への対応である支援費制度については,日本リハ医学会として注目しなければならない.
(リハニュース12号:2002年1月15日)