回復期リハビリテーション病棟では
NTT東日本伊豆病院診療センター 黒沢 崇四
当院は総病床数196床の内科系病院で,一般・精神病床を除く全100床の療養病床を回復期リハ病棟として運用している.回復期リハビリテーション(以下,リハ)の対象患者の8割以上は脳血管障害で,その紹介元は近隣の脳神経外科が主体である.平成13年実績で回復期リハ対象者が89%と回復期リハ病棟の要件を十分に満たし,対象患者の確保という点では関連急性期病院を持たない独立型の回復期リハ病院でも何とか維持可能という実績を示してきた.しかし,今回のリハ関連の診療報酬改定は当院の回復期リハ病棟の運営面で大きな影響を与えることになった.以下にその問題点と当院への影響について述べる.
まず最も根本的な改定は,従来は単なる40分以上と時間軸のみによって評価されていた複雑・簡単の規定が,新たに20分1単位の個別および集団療法に整理されたことである.しかも個別療法は療法士1人当たり一日18単位が上限と明記されたが,これは従来の複雑換算9コマに相当し,実質10〜12コマを採択できていた地域では,時間当たりリハ料が全般に引き下げられたことと共に大幅な減収の要因となる.しかし,回復期リハの対象者では個別は1日6単位まで可能とされた.このことは患者個人の能力や体力に応じてきめの細かいリハ時間が設定できるとともに,最大1日2時間(20分×6単位)まで可能となり,十分なPT・OTが配置されている病院では,リハ効果の増大とともに急性期リハ加算が可能ならば,さらに増収になる可能性がある.
また今回の改定ではリハの急性期に対する評価が一段と進められた.早期リハ加算の期間も14日(100点),30日(80点),さらに90日以内(30点)とかなりの早さで加算額とともに逓減され,より早期になるほど手厚い急性期加算がなされた.しかし,当院では加算上有利な30日以内に転入できる患者は10%以下の少数であるのが現状で,急性期加算のメリットを享受する状況にない.
さらに今回改定の目玉の1つとして言語聴覚療法(ST)の改定が挙げられる.STの施設基準が示されると同時に,STのリハ料がPT・OT並に引き上げられた.STが3人以上在籍する施設では,さらにSTの増員やSTのリハ時間を増やすことがPT・OTのリハ料減少を補う有力な選択となる.
これらの今回の診療報酬改定によるメリット・デメリットを勘案して,多くの回復期リハ病棟を有する施設では,潤沢なPT・OT・STの雇用を行った結果,今年度の4〜5月の実績で回復期リハ病棟の実質的な減収は1〜5%にとどまるという報告がある.しかし,当院のようにPT・OT・STが十分に配置されていない施設では,多くの回復期リハ病棟でかなりの減収となった可能性が高い.実際,当院ではこの4〜5月のリハ料の減少は入院で26%減,外来で19%減におよび,その結果,回復期リハの入院単金は前年同期と比較して26,577円→24,088円となり,約9.4%の減少となった.これは100床の回復期リハ病棟の入院のみで約6360万円/年の減収となり大きな痛手である.
今後,回復期リハ病棟を有する病院において,良質なリハ医療と安定した経営を確保するためには,リハ総合承認施設と言語聴覚療法(T)の施設基準を満たした上で,(1)早期入院・早期退院,(2)十分なPT・OT・STの雇用,(3)土日リハの実施など,患者1人当たりのリハ時間拡大の徹底につきると言える.
(リハニュース14号:2002年7月15日)