当院は1984(昭和59)年10月に開院後,富山県のリハ医療のみならず北陸のリハ医療の中核的役割を果たし現在に至っている.2000(平成12)年8月には北陸で初めて回復期リハ病棟を設立し,主に回復期,維持期を中心としたリハを施行しつつ,同じ敷地内に存在する療護ホーム,更生ホーム,授産施設,職業訓練センター,高志学園,養護学校,母子通園センターを合わせた富山県総合リハセンターの中心的役割を果たしている.
現在,リハ専門医3名,他科常勤医師7名,PT 9名,OT 5名,ST 4名,SW 2名に加え義肢装具士1名,臨床心理士1名,リハ工学士2名も常勤しており,各部門の特徴を生かしつつ,全人的,総合的,専門的リハが行われている.回復期病棟のほかにも障害者施設等病棟,手術適応患者を受け入れられる一般病棟をそれぞれ50床有し,重度身体障害者,重度意識障害患者,脳性麻痺患者など,リハ医として経験すべき症例をすべて網羅しているのが特徴である.
外来診療に関しては,外来リハ訓練に加えて装具外来を週3回行い,各種装具のほか義肢にも対応できる体制を整えている.また運転シミュレーションによる自動車運転評価,改造アドバイス,歩行解析による適切な装具,治療の選択,臨床心理士によるグループ療法などを行い,維持期に入った患者のQOL向上にも積極的に取り組んでいる.さらに当院の特徴として,「まんさく会」と呼ばれる,主に退院した患者同士で組織される会があり,年1回の研修旅行が行われている.病院職員の同伴のもと,本年度は九州地方へ2泊3日の旅行が行われた.参加者の中には重度の障害を持つ方も多かったが,事故なく終了しリハ医療の究極の目的を達成していると評価を受け,今後のますますの発展が期待されている.
以上のように,当院では回復期,維持期を中心に機能向上,ADLの向上を目指すのは当然のこと,障害を持った方々が社会に復帰し,真に高いQOLを獲得するまでを包括的にアプローチしている.また各病棟の食堂からは雄大な立山連峰を望むことができ,入院された患者さんは当院でリハに励みながら大自然に囲まれ,ゆっくりと人生について考えることもできる.
このような優れた活動にもかかわらず,北陸全体においてリハ医が極端に少ないこと,北陸の各大学においてはほとんどリハ医の養成がなされていないことから,常に人材不足に悩まされているのが現状である.この美しい大自然に囲まれ,真に患者さんのQOL向上とはなにかを一緒に考えていきたい方を歓迎します.(池永康規)
雄大な立山連峰を背にして:病院屋上で リハ科担当医師(右から藤木,野村,池永)
富山県高志リハビリテーション病院/〒931 -8443 富山県富山市下飯野36/TEL076 -438 -2233,FAX076 -437 -5390,URL:
http://www.koshi-rehabili.or.jp/(リハニュース16号:2003年1月15日)