<REPORT>
第9回日本摂食・嚥下リハビリテーション学会学術大会◎報告
産業医科大学リハビリテーション医学講座 千坂 洋巳

去る9月5日(金),6日(土),福岡市の福岡国際会議場にて第9回日本摂食・嚥下リハビリテーション学会学術大会(大会長:蜂須賀研二 産業医科大学リハ医学講座教授(写真))が開催されました.九州で初めての本学術大会開催となり,また,天候にも恵まれ(今年は冷夏でしたが,9月に入ってからは暑い晴天が続きました),九州一円はもとより,全国から2,500名もの方々が参加されました(当学術大会参加人数は年々増加しています!).さらに,一般講演は昨年の約2倍の220演題で,摂食・嚥下障害を持つ患者さんに対する各施設での取り組みに関する発表が多く,摂食・嚥下障害への取り組みの全国的な盛り上がりを実感しました.
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会長講演は,「摂食・嚥下リハビリテーション:食事と服薬」で,今回のテーマである“チーム・アプローチ”の重要性を中心とした講演でした.特別講演は佐々木英忠教授(東北大学内科病態学講座老年・呼吸器病態学分野)による「高齢者の誤嚥性肺炎とその対策」で,高齢者の誤嚥性肺炎に関する豊富なデータを示しながらの,ユーモアにあふれ,かつ説得力のある講演でした.
教育講演は,北島茂樹助教授(産業医科大学産業保健学部人間科学講座)による「チーム・アプローチとコミュニケーション能力」,城田知子教授(中村学園大学短期大学部食物栄養科),黒田留美子栄養管理室長(介護老人保健施設ひむか苑)による「栄養学の基礎と嚥下食の実際」,山田好秋教授(新潟大学大学院医歯学総合研究科摂食環境制御学講座顎顔面機能学分野)による「嚥下の神経生理学」,Professor&Chairman
Tai Ryoon Han (Department of Rehabilitation Medicine, Seoul National University
College of Medicine)による「Therapeutic meals for dysphagia patients in
Korea」の4講演が行われました.“韓国の嚥下食”は食文化の違いのため,若干メニューが異なっており興味深い内容でした.
ワークショップは,「摂食・嚥下リハビリテーション・チーム―各職種が持っているとっておき―」「地域における摂食・嚥下障害のアプローチ―その連携を探る―」のテーマで活発な討議が行われました.
一般口演(スライド,PC,ポスター)においても活発な討議が行われ,一部の会場は超満員の状態でした.
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今後は,国内のどの地域の患者さんでもあまねく,標準的な摂食・嚥下リハを受けることが可能となるよう学会員を通じた啓蒙が必要と感じています.また,“摂食・嚥下”においては未だEBM(evidence-based
medicine)が不十分な点もあり,更なる研究が望まれるところです. ◎
最後に紙上をお借りして,本学会学術大会に,様々なご支援ご協力をいただいた多くの方々にお礼申し上げます.
(リハニュース19号:2003年10月15日)