<質問箱>

筋力増強訓練の overuse


Q ギラン・バレー症候群やCIDPなどの脱髄疾患の筋力増強訓練ではoveruseに注意する必要があると記載されていますが、overuseという言葉には明確な定義があるのでしょうか。


A 1958年、Bennettは、ポリオ後遺症、ギラン・バレー症候群、脱髄疾患といった末梢神経障害で患者が筋力増強訓練をやりすぎると逆に筋力が低下してしまう現象を報告し、リハの臨床現場に警鐘を鳴らしました。彼はこの現象をoverwork weaknessと呼びましたが、その後の臨床報告ではoverworkの同義語としてoveruseという言葉が多く用いられるようになるに至っています。類似した現象は筋疾患でも認められました。
 神経筋疾患以外でoveruseという言葉を最も耳にするのは、スポーツや運動のやり過ぎによる筋・腱・靱帯などの炎症、部分断裂、関節痛などが現れる場合です。特に発育期における子どものスポーツ活動で問題になっているのは周知のことと思います。
 蜂須賀は、疾患や原因に拠らず、広く使い過ぎによって生じるさまざまな症状をoveruse syndrome過用症候群としてまとめ、disuse syndrome廃用症候群と対比した概念としてはどうかと提唱しており、これが現状に対する定義として適切であると思われます。なお、治療医学分野では治療目的の薬物を過度に使用した場合に、かえって症状が増悪する現象にoveruseという言葉が使われます。

文献

蜂須賀研二・他:神経・筋疾患のリハビリテーション:ポリオ後遺症にみられた過用性筋力低下。総合リハ 1988; 16: 513-518

(評価・用語委員会 塚本芳久)
(リハニュース21号:2004年4月15日)