<質問箱>

?? 質 問 箱 !!
構音障害の客観的評価法は?



Q 構音障害の客観的評価法がありましたら教えてください。
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A 構音とは、堀口1)によれば「下顎骨・舌・口蓋帆・口唇などの発語器官を動かすことによって、口腔・咽頭・鼻腔の形態を変化させ、言語音として必要な特性を音声波に与える操作」と定義される。一般的には発音、また専門領域によっては調音とも言われる。発語器官の変化によって日本語の子音や母音、半母音などが作り出されるが、さまざまな原因によってこれらに異常を来した場合、構音障害と呼ぶ。通常、機能性構音障害(functional articulation disorders)、器質性構音障害(organic articulation disorders)、運動障害性構音障害(dysarthria)の3つに分けられる。
 以上のような構音障害の評価法であるが、聴覚的評価と、機器による評価の2通りが用いられる。聴覚的評価は、聞き取りによる方法で、実際的、かつ総合的であるが主観的である。評価者によって、あるいは同じ評価者によっても時期によって聴取成績が異なる可能性がある。しかし、経験を積んだ言語聴覚士によって実施される検査では再現性が高い。他に発話明瞭度検査(5段階評価)2)や、日本語100単音節を用いた発語明瞭度検査(%)3)などが使われる場合もあり、主観的評価の客観化の工夫がなされている。
 一方で、機器を用いた評価では、分析の条件を同じくすれば再現性は高く、客観的評価が可能である。具体的には、構音時の舌と硬口蓋の接触パターンを分析するダイナミック・パラトグラム、舌の運動を任意の矢状断、前額断で観察する超音波断層法、さらにX線による口腔・咽頭造影検査、近年ではダイナミックMRIによる解析なども試みられている。また、舌の硬口蓋への最大押しつけ力、持続時間など測定する舌圧計も普及しつつある。なお、発話時の共鳴異常を評価する方法として、従来のフローネイザリティグラフに代わってナゾメーターが用いられるようになっている。さらに音響分析を行えば声質、構音、共鳴の障害などを多面的に分析することも可能である。しかし、いずれにしてもこれらの方法は、あくまでも発話の部分的、要素的評価となり、構音障害を、実際的、総合的に評価することは困難である。
 日常臨床においては、上記の主観的・客観的評価法が組み合わされたテストバッテリーが用いられている。
文献
1) 堀口申作編:聴覚言語障害、医歯薬出版、東京、1980
2) 熊倉勇美編著:運動障害性構音障害、建帛社、東京、2001
3) 溝尻源太郎・熊倉勇美編著:口腔・中咽頭がんのリハビリテーション−構音障害、摂食・嚥下障害−、医歯薬出版、東京、2000

(川崎医療福祉大学医療技術学部 熊倉勇美)

(リハニュース23号:2004年10月15日)