第31回国際福祉機器展(31st. Int. Home Care & Rehabilitation Exhibition:
HCR2004)は2004年10月13日から3日間、東京ビッグサイトで開催されました。広報委員会では前回に引き続き、日本リハビリテーション医学会の展示ブースを出展しました(写真上)。前回は、突然の出展決定で十分な準備期間もなく、展示会の全体像も分からないまま、大急ぎでリハ医学会の紹介パネルを製作し展示しましたが、準備不足に展示ブースが会場の隅っことなる不幸も重なり、訪れる参加者はまばらで淋しい思いをいたしました。この反省から、今回は年度当初より本展示会参加を決定し、広報委員会で展示内容を協議し、それなりの準備をして展示に望むことができました。
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本展示会は1974(昭和49)年に大手町の都立産業会館で行われた、『社会福祉施設の近代化機器展』が前身で、全国社会福祉協議会と厚生省の共催で開催されました。1975(昭和50)年の第2回から社会福祉機器展と名称を変え、さらに1986(昭和61)年からは『国際保健福祉機器展』に名称を変え、海外企業も出展するわが国最初の福祉機器の国際展示会となって現在の形に発展してきました。1990(平成2)年の第17回からは主催が保健福祉広報協会と全国社会福祉協議会の共催となり、保健福祉広報協会が運営事務を担っています。第1回の出展者数は64社、来場者数は9,641人でしたが、今年の出展社は国内568社、海外14カ国77社で、実に25,000点以上の福祉機器が展示されたとのことです。リハ医学会のような非営利団体も出展社に含まれ、日本理学療法士協会、日本作業療法士協会、日本義肢協会、日本リハビリテーション工学協会、テクノエイド協会などが参加しています。今年の来場者は主催者発表で3日間累計138,726人、うち34.7%が一般参加者でした。
リハ医学会は本展示会の協賛団体として名を連ねているだけでなく、石神重信常任理事が保健福祉広報協会の理事を務めておられ、長くその運営に協力をされてきました。2002年までは石神先生がお一人でシンポジウムや講演会の企画をされ、リハ医学会の務めを果たして来られました。昨年から広報委員会が本展示会に向けた活動を開始したことで少しは石神理事のご負担を軽くできたのではないかと思っています。
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今回の展示は、リハ科専門医の存在を一般の方々や福祉機器業界の方々に広報する点と、リハ科専門医が福祉機器や補装具に深く関わっていることを印象付けることに重点をおきました。具体的にはリハ科医の存在をアピールする目的で、新たにリーフフレット『リハビリテーション科医って何ですか』を作成しました。すでに評議員の先生方には配布してありますが、その内容は、リハ医学の特徴、リハ科医の診療内容や研究領域、リハ医療チームの構成、リハ医学会の歩みなどを簡単に解説したもので、担当した道免委員のデザインで美しいリーフレットに仕上がりました。さらに、才藤担当理事のアイデアでリハ科専門医が関わっている福祉機器開発研究の一覧表を作成し、リハ科専門医の県別一覧表と伴に配布しました。福祉機器開発研究の一覧は学会誌で募集したところ、商品化された機器から現在開発中のものまで24件もの情報が寄せられ、立派な資料に仕上がりました。他にパネル展示として、補装具処方から製作、適用までの流れ図と、リハ科医が関わる行程について図示し、補装具、福祉機器にリハ科医が深く関わっていることを印象付ける内容にしました。
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前回は広報委員とリハ医学会事務局員で業務を行いましたが、今回は委員会メンバー以外の先生方にもご協力をいただきました。平日に休暇をとってご協力いただいた先生方に篤く御礼申し上げます。
展示ブースは前回と違って会場中央部分にあり、手渡しできる配布資料を用意したため、前回よりも多くの参加者がブースを訪れてくれた気がいたします。リハ医学会ブースの周りは、日本PT協会、日本OT協会、日本義肢協会などの専門職団体のブースと、国立リハセンター、神奈川リハセンター、東京都高齢者福祉振興財団、労災リハ工学センター、総合せき損センターなどの公共機関の展示ブースが並び、それぞれが趣向を凝らした展示を行っていました。効果的な展示という点では他の団体に一日の長があり、展示内容については今後さらなる努力が必要と感じました。
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また、今回石神重信理事の発案で、主催者企画として、『福祉機器・リハビリ相談コーナー』を設け、日本シーティングコンサルタント協会、国立リハセンター研究所、埼玉県総合リハセンターなどの団体の協力を得て福祉機器の利用やリハビリに関する相談に、リハ科専門医、OT,PT,エンジニア、社会福祉士などが無料で相談に応じました。リハ医学会からは、石神重信理事、立野勝彦理事らが、参加者からの質問に答えていました(写真下)。我々からすると質問するのも気後れするような錚々たるメンバーなのですが、石神理事に現在のリハ医療の不満をぶつける参加者もいて、リハ科医を身近に感じていただくのに一役買っていただきました。
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この展示会に参加された患者さんやご家族が福祉機器の最新情報を仕入れ、外来受診の際に、『先生、私が使っている車椅子よりずっとかっこよい車椅子があるんですね』とか、カタログを手にして、『今度バギーを作るときはこれにしてください』などと言われて、『へー、そんな新しい製品が出たの?』なんて、患者さんに教えてもらった経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。本展示会のweb siteをご覧になれば分かりますが、インターネットも利用して、患者さんは新しい情報を容易に収集できる時代になりました。患者さんに遅れを取らないように、我々も日頃から情報収集に心がけておかないといけません。
IT社会でのこれからの医療は、いかにユーザーに有益な情報を提供し、ユーザーからのアクセスを容易にし、ユーザーの満足するサービスを展開していくかが専門領域発展の鍵になるのではないかと思います。診察室にこもって患者さんを待っているようでは生活に密着した医療を志向するリハ科医としては失格でしょう。病院から外に出て、自らの役割と重要性を、そして専門技術の内容を広く世間に知らしめる努力が我々に求められているのです。
*本文で紹介したリーフレット『リハビリテーション科医って何ですか』は事務局に在庫がありますので、ご希望があれば事務局までご請求ください。待合室に置いて患者さん用に使いたい、学生教育に利用したいという意見が多ければ、増刷してより多くの方々に利用していただきたいと考えております。
*展示会にご協力いただいた会員の先生 方、ありがとうございました。
武原格先生、高田耕太郎先生(慈恵医大)、小川真司先生(市川市リハ病院)、鈴木亨先生(藤田保健衛生大学)、栗林環先生、武藤里佳先生、菊地尚久先生(横浜市立大学)、高柳友子先生(横浜リハセンター)、高倉朋和先生(横浜市脳血管センター)、斎藤薫先生(れいんぼう川崎)。
*リハ相談コーナーにご協力いただいた先生方、お疲れさまでした。
石神重信常任理事、立野勝彦理事、住田幹男理事、西村尚志先生、田島文博先生
*国際福祉機器展の詳しい情報は
国際福祉機器展のweb site:http://www.hcr.or.jp/でご覧ください。
(リハニュース24号:2005年1月15日)