<特集◎診療ガイドラインの動向と課題>
脳卒中治療ガイドライン策定委員会
委員長
正門 由久
●脳卒中治療ガイドライン2004策定 までの経緯
1999年、脳卒中学会および神経治療学会にて、本邦独自の脳卒中ガイドライン作成の必要性が提起され、2000年11月脳卒中関連5学会(リハ医学会、脳卒中学会、神経治療学会、神経学会、脳神経外科学会)が合同でエビデンスに基づいたガイドラインを策定することが合意された。2001年11月リハ医学会にガイドライン策定委員会が設置され、作業を開始、6回の委員会、4回の合同委員会、外部評価を経て、2003年5月に「脳卒中治療ガイドライン2003」が完成した。その後、若干の修正を経て、2004年3月に「脳卒中治療ガイドライン2004」が出版された。AGREE(Appraisal
of Guidelines for Research & Evaluation instrument)による評価を受け、良好な結果であった。
●改定に向けて
脳卒中治療ガイドライン2004でカバーされているエビデンスは、2001年ごろまでのものであり、最近脳卒中関連の論文、特にRCT(ランダム化比較試験)が飛躍的に増加しており、それにガイドラインが追いついていない。そこで改訂作業を早急に具体化する必要があり、2005年4月脳卒中学会にて、リニューアルのための合同ガイドライン委員会(リハ医学会から:木村彰男常任理事)が開催された。前回、脳卒中治療ガイドライン作成に深く関わったメンバーを中心に(正門由久、越智文雄、中馬孝容、渡邉修)に診療ガイドライン委員会からのサポートメンバー(里宇明元、園田茂)も加わって小委員会が発足し、2005年5月第1回小委員会が開催され、改訂の基本的方向、タイムスケジュールを確認し、2006年4月に向けリニューアル中である。
●今後の課題
今後取り組むべき課題としては、策定されたガイドライン公表の実務(ホームページ掲載によるパブリックコメントの募集など)、ガイドラインの普及のための改定(専門医、一般医家向け、一般市民向け)、ガイドラインのコンパクト化〔PDA端末(個人用携帯情報端末)での使用など〕などが考えられる。
また新しい医学的知見を吸収していくために、常設委員会となる必要があると考えられる。それは、得られた情報をデータベース化し、改定に向けて、常に準備を重ねていくことが必要であると思われるからである。そして、ガイドラインに対するフィードバックの集約、新たなエビデンスの収集、改訂のタイミングの判断など行っていく必要性がある。
さらにはエビデンスが欠けている領域を明確にし、取り組むべき重要な研究テーマについて、今後リハ関連職種とともに、学会主導による、大規模な多施設臨床研究を行うことが必要であろう。
(リハニュース27号:2005年10月15日)