脳性麻痺のリハでは、その病態像、障害像が多様であり、かつ発達期にあるお子さんを対象とするため全人的な取り組みが必要ということで「療育」の名のもとに各分野でさまざまな介入が行われてきた。しかし、近年欧米から脳性麻痺治療のエビデンスをもとにしたレビューが散見されるようになり、有効な治療オプションが紹介されている。わが国でも、とりとめのない逸話的な治療法を野放しにしないためにも(根拠のない訓練法をいつまでも子どもに強いるのは人権侵害である)、各分野で共通して用いることのできるエビデンスをもとにした「ガイドライン」が望まれる。リハのガイドラインは当学会が中心になって提唱されるべきである。
●活動内容
脳性麻痺のリハガイドラインを作成する。脳性麻痺診療では遭遇する臨床的諸問題に対して、今までの研究データの信頼性を調べて妥当性のある医療行為、ケア、サービスを適用することになるが、そのエビデンスを調べる手間を省いて最も合意のある選択ができるための「ガイドライン」を作成する。
●今後の流れ
図2のような作業の流れとなる。
第1回のガイドライン策定委員会は9月2日に開かれたばかりで、コア委員会委員長の里宇先生からは当初の2年間でまとまったものを作り上げること、そのためには1年間で草案作成までいくことと提案があった。また関連諸学会との連携のためには「小委員会」でなく「策定委員会(案)」の呼称にしたほうが適当ということになった。
今後の委員会活動の流れは、[1] クリニカル・クエスチョンの提起と選択(ガイドライン項目の決定)を次回の第2回委員会で終了すること、[2] 選ばれたクエスチョン項目のエビデンス収集(手分けして文献検索)、[3] 委員会のディスカッションによるエビデンスレベルの決定、[4] ファイルメーカープロを用いて「エビデンステーブル」を作成、[5] 日本の現状とエビデンスレベルを踏まえて推奨レベルを決定し「勧告の作成」にいたる。
図2 今後の流れ
臨床的問題の選択・定義
↓
文献検索 → 証拠の収集
↓
批判的吟味 → 証拠のレベル分け
↓
エビデンステーブルの作成
↓
勧告の作成 |
●関連諸学会
協力要請は、まず長く脳性麻痺児の療育にあたってきた全国肢体不自由児施設運営協議会に協力を求め、ここを通じて関連諸学会との連携・合意形成をはかる。
●リハ医として知っておくべきこと
よくセラピーの理念や技法、手術方法の違いが論争のまとになることがあるが、治療の目標は脳性麻痺児・者のADL能力あるいは社会参加能力・チャンスの向上にあることは論をまたない。また信頼性や妥当性のよく検討された評価法によってアウトカムは判定されるべきである。
(リハニュース27号:2005年10月15日)