<質問箱>

一般用語としての認知症」と学術用語としての対応


Q 一般用語としては、「認知症」という言葉が広まりつつありますが、学術用語としてはどのように対応したらよいのでしょうか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

A 厚生労働省では2004年12月24日付けで、一般的な用語や行政用語として『痴呆』に替わって『認知症』を用いることを決めました。これは『痴呆』という用語が侮蔑的な表現である上に、『痴呆』の実態を正確に表しておらず、早期発見・早期診断等の取り組みの支障になっていることから速やかな変更が必要であり、また『痴呆』に替わる新たな用語としては、『認知障害』『記憶症』なども検討されましたが最終的に『認知症』が最も適当であると結論しています。これに関して医学会の対応としましては、「日本老年精神医学会」は行政用語と医学用語は別個のものではあるが、全く無関係ということも問題があり、同学会内に検討委員会を設置し、2006年の総会で学会としての結論を出すとしています。また、日本認知心理学会、認知科学会、基礎心理学会では、「日本認知心理学会・認知科学会・基礎心理学会では、『認知症』という呼称に対し、その不適切さを指摘し、代案として『認知失調症』を提起する意見書を厚生労働省に提出しました」とコメントしています。日本痴呆症学会では、「本学会の対応(学会の名称を含む)は現在『日本痴呆学会あり方委員会』にて検討中であり,その提案を受けて2005年秋の第24回総会において討議する予定です」としていましたが、10月1日の総会におきまして、同日から学会名を『日本認知症学会』に変更することを決定いたしました。日本リハ医学会においてもその対応については検討中ですが、広報委員会におきましては、当面のところ、著者の意向を尊重して、『痴呆』および『認知症』の表記をさせていただいております。
 また、厚生労働省および各学会におきましても、単に名称変更のみを議論するのではなく、『痴呆』もしくは『認知症』に対する誤解や偏見の解消等に努める努力の重要性をあらためて強調しています。
(日本リハビリテーション医学会広報委員会)

(リハニュース27号:2005年10月15日)