<特集◎介護保険制度・障害者自立支援法 ― こう変わった・こう変わる>

介護保険制度改革の全体像

日本リハビリテーション医学会 障害保健福祉委員会

近藤 克則


 厚生労働省の介護制度改革本部の「介護保険制度改革の全体像−持続可能な介護保険制度の構築」と題する資料にもとづき、全体像の概要と日本リハビリテーション医学会の会員に関心の高いであろう内容を主に紹介する。
 介護保険制度については、制度の基本理念である、高齢者の「自立支援」「尊厳の保持」を基本としつつ、制度の持続可能性を高めていくため、以下の改革が行われる(施設給付の見直しは、2005年10月から実施済み)。

◎介護保険制度の改革の全体像

1.予防重視型システムへの転換

 「明るく活力ある超高齢社会」を目指し、市町村を責任主体とし、一貫性・連続性のある「総合的な介護予防システム」を確立する。⇒新予防給付の創設、地域支援事業の創設

2.施設給付の見直し

 介護保険と年金給付の重複の是正、在宅と施設の利用者負担の公平性の観点から、介護保険施設に係る給付の在り方を見直す。⇒居住費用・食費の見直し、低所得者等に対する措置

3.新たなサービス体系の確立

 痴呆ケアや地域ケアを推進するため、身近な地域で地域の特性に応じた多様で柔軟なサービス提供を可能とする体系の確立を目指す。⇒地域密着型サービス・地域包括支援センター(仮称)の創設、医療と介護の連携の強化

4.サービスの質の向上

 サービスの質の向上を図るため、情報開示の徹底、事業者規制の見直し等を行う。⇒情報開示の標準化、事業者規制の見直し、ケアマネジメントの見直し

5.負担の在り方・制度運 営の見直し

 低所得者に配慮した保険料設定を可能とするとともに、市町村の保険者機能の強化等を図る。

◎各改革の概要

1.予防重視型システムへの転換 〈平成18年4月施行〉(図1参照)

(1) 新予防給付の創設:軽度者を対象とする新たな予防給付を創設する。マネジメントは市町村が責任主体となり、地域包括支援センター(仮称)等において実施。新予防給付のサービス内容については、
既存サービスを評価・検証し、有効なものをメニューに位置付け。運動器の機能向上や栄養改善など効果の明らかなサービスについては、市町村モデル事業の評価等を踏まえ位置付けを決定。現在の要介護1を、新予防給付が適切か否かで、要支援2と要介護1とに区分する。要支援1・2が新予防給付の給付対象者となる。
(2) 地域支援事業の創設:要支援、要介護になるおそれのある高齢者(高齢者人口の5%程度)を対象とした効果的な介護予防事業を介護保険制度に位置付ける。事業実施の責任主体は市町村とする。
図1 予防重視型システムへの転換(全体概要)
厚生労働省老健局:介護保険制度改革関連法案 参考資料より

2.施設給付の見直し 〈平成17年10月施行〉

(1) 居住費用・食費の見直し:介護保険と年金給付の重複の是正、在宅と施設の利用者負担の公平性の観点から、介護保険3施設(ショートステイを含む)の居住費用や食費について、保険給付の対象外とする。
 但し、低所得者については、負担軽減を図る観点から新たな補足的給付を創設する。
 通所系サービスの食費についても保険給付の対象外とする。詳しくは、厚生労働省:介護保険制度改正パンフレット―平成17年10月から介護保険施設などの利用料が変わる―http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/topics/0508/index.htmlなどを参照のこと。
(2) 低所得者等に対する措置
高額介護サービス費の見直し:保険料段階の「新第2段階」(年金収入が概ね基礎年金[=約80万円/年]以下など)については、現行の月額上限を引下げ。月額上限 2.5万円→1.5万円

3.新たなサービス体系の確立 〈平成18年4月施行〉

(1) 地域密着型サービスの創設:身近な地域で、地域の特性に応じた多様で柔軟なサービス提供が可能となるよう、「地域密着型サービス」を創設する。地域密着型サービスの例は図2参照。
(2) 地域包括支援センターの創設:地域における総合的なマネジメントを担う中核機関として、 総合的な相談窓口機能、 介護予防マネジメント、 包括的・継続的マネジメントの支援の機能を持つ「地域包括支援センター」を創設する。
(3) 医療と介護の連携の強化:医療と介護の連携を強化する観点から、介護予防における医療との連携、介護施設やグループホームにおける医療機能の強化を図る。
図2 地域密着型サービスの創設
厚生労働省介護制度改革本部「介護保険制度の見直しについて」より

4. サービスの質の向上 〈平成18年4月施行〉

 (1) 情報開示の標準化(2) 事業者規制の見直しと並び(3) ケアマネジメントの見直しとして、 包括的・継続的マネジメントの強化(地域包括支援センターの創設)、 ケアマネジャーの資質の向上(資格の更新制の導入等)、 独立性・中立性の確保(1人当たり標準担当件数の見直し等)などを行う。(4) 人材育成に関しては、介護職員については、将来的には「介護福祉士」を基本とする。

これらの改革により、日本リハ医学会の会員には、従来から担ってきた役割に加え新たに介護予防分野での活動への期待が高まると思われる。

(リハニュース28号:2006年1月15日)