当教室は1988年に国立大学初のリハ医学講座、リハ科として開設され、研究施設を鹿児島市の桜ヶ丘キャンパスに、臨床施設を霧島リハセンターに置くという形をとっている。2003年の大学院大学への改組により、教室名称が運動機能修復学講座 機能再建医学となった。初代教授の田中信行先生が当教室の礎を築かれ、2005年6月に川平和美が第二代教授に就任した。開講17年が経過し、これまでに日本リハ医学会認定リハ科専門医35名を輩出し、着実にその臨床、研究、教育における実力を高めつつある。
霧島リハセンターの外来は地域の病院として生活習慣病や一般内科診療も行い、患者数は年間延べ1万名を越える。病床は50床で年間約360名の入院患者があり(稼働率約95%)、中枢神経疾患が全体の6割以上を占める。2005年4月に訓練室の拡張とセラピストの増員が図られ(現在、PT 5名、OT 3名、ST 1名)、リハ総合承認施設となった。これまでに多くの新たな治療法として、促通反復療法(川平法、他)、機能的振動刺激法、外眼筋麻痺への迷路性眼球反射を用いた促通法、機能的経頭蓋磁気刺激法、コンピューターと連動した自動訓練装置(鹿児島大学工学部との共同開発)、蛋白同化ホルモンの応用等も提唱してきた。また、運動浴やサウナの利用など温泉(温熱)利用の治療と研究も積極的に行っている。教育面では講義の他、医学部5年生の臨床実習は各グループ2週間ずつ霧島リハセンターで行っている。
大学病院本院リハ室では、入院患者を中心にほぼ全ての診療科から年間約1,000名の新患紹介があり、需要は増える一方だが、セラピストの配置が5名しかないためマンパワー不足が問題である。本院研究室では、筋力増強の分子生物学的研究として筋特異的転写因子のmRNA発現の研究や、筋成長因子のMGFmRNAなどの測定、さらにラット脳梗塞片麻痺モデルを用いて、リハアプローチによる麻痺の改善や神経栄養因子発現の基礎的検討を行っている。また、膀胱の筋収縮標本を用いた薬理学的研究やラット脊髄損傷モデルで膀胱内圧を測定し、薬剤の膀胱平滑筋への作用を解析して神経因性膀胱治療への応用も模索している。
新体制のもと、さらなるリハ医学の発展を教室員一丸となって進める所存である。
(下堂薗 恵、川平 和美)
*****************************************
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科
運動機能修復学講座 機能再建医学
〒890-8320 鹿児島市桜ヶ丘8-35-1
TEL 099-275-5339、FAX 099-275-1273
鹿児島大学医学部・歯学部附属病院
霧島リハビリテーションセンター
〒899-6603 霧島市牧園町高千穂3930-7
TEL 0995-78-2538、FAX 0995-78-8390