質 問 箱筋再教育

質 問 箱


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片麻痺のリハビリテーションの中で、しばしば、「筋再教育(muscle reeducation)」「促通手技(facilitation technique)」「神経生理学的アプローチ(neurophysiological approach)」「固有受容性神経筋促通法(PNF)」などの用語が出てきますが、これらの相違について教えてください。

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1930年代にもっぱらポリオに対する訓練法として確立されたいわゆる末梢神経障害に対する古典的な運動療法理論に対抗して、脳血管障害や脳性麻痺などの中枢神経障害に対する訓練理論として神経生理学的な法則性を利用した独自の理論体系が1950年代に発達しました。これらの理論体系は、1950年代にFray、KabatとKnott、Bobath夫妻、Brunnstrom、Rood等によって別々の理論として体系化されましたが、この彼らによる中枢神経麻痺に対する治療手技の体系こそが一般に、促通手技(facilitation technique)といわれるものです。また同時にその手法が神経生理学的な法則性を利用している点から神経生理学的アプローチ(neurophysiological approach)とも総称されるようになりました。そしてこれらの手技の中でKabatとKnottによって体系化された手技が固有受容性神経筋促通法(PNF)といわれるものです。詳細な内容は成書に譲りますが、他に有名なものとしてBobath法、Rood法、Vojta法などがあります。しかしながらどの手技も古典的な手技との比較において明らかな違いは認められず、EBMを確立するには至っていないのが現状です。

筋再教育(muscle reeducation)という言葉も臨床において頻繁に使われています。一般には中枢神経や末梢神経が傷害されたことによって筋活動の随意性が失われたとき、麻痺筋に対して活動性を促し、正しい運動を再獲得させることまたはさせる手技を総称して筋の再教育といいます。特に中枢性疾患などによる片麻痺に対する筋の再教育は、麻痺筋の活動性を促通する他に、痙性などの抑制を図り、筋の正常な運動の再獲得を目指します。

以上から片麻痺の麻痺筋に対する筋の活動性を再獲得させる手技全般を筋再教育といい、その中で神経生理学的法則性を用いた手技を神経生理学的アプローチ(neurophysiological approach)、または促通手技(facilitation technique)といいます。そして多数あるそれらの手技の一つとして固有受容性神経筋促通法(PNF)があるということになります。

評価・用語委員会 美津島 隆)