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2005(平成17)年度 日本リハビリテーション医学会論文賞 受賞者紹介
最優秀賞 荏原実千代 氏
このたび、このような名誉ある賞をいただきましたことを大変光栄に思っております。共著者のみならず、千葉リハビリテーションセンター開設以来、脳性麻痺のお子さんの診療に従事されてきた小児神経科の先生方、臨床心理士の方々、作業療法士の方々にこの場をお借りしてお礼申し上げます。また、編集委員の先生にも大変貴重なアドバイスをいただきこのような論文になりましたことを感謝しております。
この論文を書くきっかけとなったのは、鳥取県立総合療育センターの北原佶先生から、平成14年度から16年度にかけて行われていた厚生労働省障害保健福祉総合研究事業へのお誘いがあったことです。すぐに参加させていただきますとお答えいたしましたが、統計的処理もさることながらその結果の解釈に四苦八苦いたしました。しかし、このような臨床研究をすることがリハ医学の進歩につながると信じておりますので、論文の完成は苦しいながらも楽しいひと時でした。今後もリハ医学の発展にお役に立てるよう、精進していきたいと思っております。
略歴:1978年千葉大学医学部卒業、同小児科学教室入局、1984年千葉リハビリテーションセンター小児神経科勤務、1987年日本小児科学会認定医(専門医)、1989年より同小児神経科部長(現職)、1992年日本小児神経学会認定医(専門医)、2004年日本リハビリテーション医学会専門医。
最優秀賞受賞論文◎荏原実千代、太田令子、伊藤孝子、北原 佶:低出生体重児における視知覚の発達特性―Frostig視知覚発達検査とWechsler系知能検査の結果から.リハ医学 2005 ; 42 : 447-456
優秀賞 鈴木幹次郎 氏
このたびは、このような名誉ある賞をいただき、身に余る光栄なことと思っております。誠にありがとうございました。本研究は、「運動イメージ」が脳卒中片麻痺患者においても運動機能促通に影響を及ぼすことを、経頭蓋磁気刺激を用いて検討したものです。「運動イメージ」「イメージトレーニング」といった言葉は、日常的にはよく用いられますが、その生理学的なメカニズムや効果は、あまり詳細に検証されていませんでした。最近、fMRIやPETなどの機能画像検査の発達とともに研究が進みつつあり、また運動心理学の面からもさまざまな研究が行われています。リハビリテーションへの応用が期待されますが、しっかりとしたエビデンスを基に治療が行われるべきだと考えます。今後もさまざまな手法を用いて、リハビリテーション医学の基礎的研究を行っていきたいと思います。
実験の計画から遂行、論文作成まで、細部にわたりアドバイスとご助力いただきました村岡慶裕先生、辻哲也先生、大田哲生先生、正門由久先生に深謝いたします。また、終始適切な指導を賜りました木村彰男教授、里宇明元教授,研究にご協力くださいました慶應義塾大学月が瀬リハビリテーションセンターのスタッフの皆様に心からお礼申し上げます。
略歴:1998年三重大学医学部卒業。国立療養所村山病院、慶應義塾大学月が瀬リハビリテーションセンター、慶應義塾大学病院リハビリテーション科、国立病院機構村山医療センターなどを経て2006年4月から永生病院リハビリテーション科(現職)。2004年3月日本リハビリテーション医学会専門医。
優秀賞受賞論文◎鈴木幹次郎、辻 哲也、村岡慶裕、大田哲生、正門由久、木村彰男、里宇明元:脳卒中片麻痺患者における運動イメージ時の運動誘発電位変化について.リハ医学 2005 ; 42 : 457-462
奨励賞 三石敬之 氏
今回の論文が第三者的に評価を受けるとは夢にも思っていなかった私にとって、論文賞受賞は喜びよりも驚きが大きいというところが正直な感想です。
思えば8年前、とにかく臨床の最前線で患者さんの役に立ちたいという思いから、臨床を徹底的に学ぶことを決心しました。民間病院という臨床最前線に飛び出し、そこで目の前に現れたものが嚥下障害の臨床の悲惨な現状でした。誰も指導者がいない状態の中、手探りで臨床に立ち向かっていると、教科書に書いていない多くの疑問が降りかかり、その一つが球麻痺嚥下障害の代償法でした。何故か食塊が健側優位に通る症例が存在することに気づき、今まで記録してきた嚥下造影をすべて見直してみたところ教科書にない事実が分かり、まとめてみたものが今回の論文です。単純なケースシリーズで考察も憶測に過ぎないものですが、今後、嚥下障害の臨床や、障害の基礎的研究の一助になればと思う次第です。民間病院の臨床の最前線で仕事をしている現状では系統だった研究は困難ですが、今後も臨床の最前線であるからこそ気付く疑問をまとめることで、少しでも多くの臨床の場で役に立つ報告ができればと存じております。
略歴:1994年産業医科大学医学部卒業後、同学リハビリテーション医学講座に入局。各地労災病院などの派遣の後、1998年熊本機能病院リハビリテーション科に入職。2004年近森リハビリテーション病院リハビリテーション科に入職。専門分野:リハビリテーション一般、嚥下障害、痙縮コントロール、高次脳機能障害。日本リハビリテーション医学会認定医、専門医。日本摂食・嚥下リハビリテーション学会評議員。
奨励賞受賞論文◎三石敬之、三石京子、中西亮二、山永裕明:Wallenberg 症候群における食塊の輪状咽頭部優位通過側.リハ医学 2005 ; 42 : 412-417