医局だより | 宮崎県立こども療育センター |
宮崎県立こども療育センター
療育の父といわれる故高木憲次東大名誉教授が全国の先駆けとなる肢体不自由児施設を創られた際、その施設の英語名に、"hospital, home and school " と入れておられました。日本の肢体不自由児施設はこの流れをくみ、その発足の当初から、こどもの全人的発達を目指す組織として 機能して参りました。当センターも宮崎県においてその一翼を担うべく1959 年に設立され、約20 年前に組織改編・移転し現在に及んでいます。初期のポリオを中心とした元気なこどもの時代から、今はほとんど全介助のこどもが入所児の7 割を占める重度脳性麻痺児中心の時代ですが、看板は今でも児童福祉法に基づく肢体不自由児施設です。
施設としては一般65 床、母子棟5床の病棟を中心に通園保育(定員20名)、重症心身障がい児(者)通園事業B 型(定員5 名)を設置し、近隣の在宅の方々の支援にも努めています。最近はショートステイの利用が急増し、数年前には年間利用が2 桁 だったのが、今は延べ1,600 件を超え、長期入所児の減少に伴う空きベッドの有効利用につながっています。し かし在宅児の方が重度化が進んでい て病棟の設備・システムが追いつか ない、保護者の高い要望に十分応え られないなどトラブルも起きやすく 対応に苦慮しているところです。リ ハ関連スタッフは、常勤医師はリハ1 名、整形外科2 名、小児科1 名( 他 に泌尿器科・歯科の非常勤医師3 名)、 PT 8 名、OT 2 名、ST 1 名、看護師46 名、保育士15 名、臨床心理士2 名、 コーディネーター1 名等が主なとこ ろです(非常勤を含む)。
小児リハを中心に整形外科手術等 も活発で、数年前に当センターも含 めて全国の肢体不自由児施設の整形 外科医の有志が集まり、脳性麻痺手 術評価表を完成させました。また歩 行分析装置も新しくなって脳性麻痺 児の手術前後の歩行の解析を行い、 よりEBM に基づく医療を実践してい るところです。
また、こどもは本来親と共にいる ものであり、療育とはすなわち地域 療育であるとの信念の元、しかし、 ただ入所を拒否し入所児を地元に返 したのでは、施設から追い出したに過ぎない、地域・家庭の子育て機能 が不十分ならこちらから出かけて支 援していこうと随分以前からチーム を組んで積極的に地域巡回療育相談 を行い、北は延岡・高千穂、南は日南・ 小林と各地に出かけています(会場 は主に保健所や児童相談所を使用)。 その一環として養護学校にも出向き、 親も交え学校の先生方と連携して一 人ひとりの子供に関して情報交換を 行っています。また隣接する養護学 校の医療的ケアを必要とする通学児 には、当センターから看護師を派遣 しケアに当たるなど教育関係との連 携も密接です。
まだ古い組織体系と建物・設備の ままで大変身の機会がありませんが、 「どがんかせんといかん」という話題 の東風が療育の場にも吹いてくるこ とを期待している今日この頃です。
(山口和正)