質 問 箱 | 経頭蓋磁気刺激(TMS) |
質 問 箱
Q | 経頭蓋磁気刺激(TMS) のリハビリテーションへ の臨床応用について教えてください。 |
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A | TMS は様々な中枢神経機能の研究に用いられてき ました。運動系における運動皮質と脊髄の統合や 皮質内・皮質間相互作用、反復TMS による中枢神経系の 可塑的変化が報告され、これらの知見に基づき反復TMS による片麻痺や左半側空間無視などに対する治療効果が 検討されてきました。市販の機器でどのような臨床応用 が可能かを脳卒中片麻痺を例に解説します。 1.運動誘発電位(MEP) は帰結予測に有用か:錐体路 の支配を強く受ける遠位筋ではMEP の出現が良好な予後 を示唆します。急性期に完全麻痺でもMEP が記録されれ ば機能回復を見込めます。 2.MEP は片麻痺重症度の客観的指標となるか:MEP の振幅、潜時、静止期は片麻痺の重症度と関係します。 ただし計測方法を標準化する必要があり、また標準化さ れた計測を行っても個人差が大きく、回復段階を判別す るには限界があります。 3.治療効果の判定に使えるか:片麻痺上肢の機能回復 とMEP は必ずしも相関しません。MEP が増大すれば機 能も回復していますが、機能が回復してもMEP が増大し ない場合があります。これはMEP が錐体路の機能を反映 するのに対して、片麻痺の回復は錐体路以外も関与しう るからです。 4.回復の機序を説明できるか:非損傷半球のTMS に よる患側上肢のMEP は、回復不良群でみられやすく、 同側路が回復に有利にはたらいているとはいえません。 ただし咽頭筋などは同側半球からの支配が強く、たとえ ば非損傷半球が嚥下障害の回復に関与しうることが報告 されています。また回復に関与した部位を検索する方法 として、TMS による反応時間への干渉実験があります。 たとえば合図の100 msec 後に閾値上刺激を行って反応 時間が延長すれば、その部位が当該運動に関与している ことになります。 5.反復TMS による治療:上肢の麻痺に対して損傷 半球の高頻度刺激によって運動野をup-regulate する 方法と、非損傷半球を低頻度刺激(約1 Hz)でdownregulate して、損傷半球の興奮性を増大させる方法とが あります。低頻度刺激でも、随意運動や求心性入力を併 用すると運動路の興奮性が高まります。安全性について は、単発あるいは2 連発刺激では問題なく、低頻度刺激 であれば、刺激回数の上限を1週間に5000 発とするこ とが日本臨床神経生理学会から提案されています。同学会の提言は文献をご参照ください。 文献 1)Izumi SI, Kondo T, Shindo K: Transcranial magnetic stimulation synchronised with maximal movement effort of the hemiplegic hand after stroke: a doubleblinded controlled pilot study. J Rehabil Med 2008 ; 1 : 49-54 2) 磁気刺激法に関する委員会:磁気刺激法に関する委員会 報告No.10. 臨床神経生理学2006 ; 34 : 71-72 3) 磁気刺激法に関する委員会:磁気刺激法に関する委員会 からのお知らせ. 臨床神経生理学2007 ; 35 : 565 |
(東北大学 出江紳一)
質 問 箱 | フェノールブロックとボツリヌス毒素注射の違い |
Q | ボツリヌス毒素が近年臨床応用されるケースが増えており、近いうちに四肢の筋の痙縮にも 応用可能と聞きましたが、その際、フェノールブロックとの違い(どちらが患者にとってメ リットが大きいのか)などについて教えてください。 | ||
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A | 現在、脳性麻痺の痙縮に対して痙性斜頸にのみ使用が許可されていますが、脳性麻痺下肢痙 縮への適応拡大が検討されています。
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(信濃医療福祉センター 朝貝芳美)