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リハビリテーション科女性医師ネットワーク(RJN)

第27回「この先生に聞きたい!」女性リハビリテーション科専門医キャリアパス

 

日時 2021年7月9日(金)14時30分~17時
場所 国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
ゲスト 近藤 和泉 先生(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 副院長)
インタビュアー 佐藤 知香 先生(女川町地域医療センター )
河村 好香 先生(北九州市立総合療育センター 整形外科)
司会 小口 和代 先生(医療法人豊田会刈谷豊田総合病院 リハビリテーション科)
オブザーバー 中馬 孝容 先生(滋賀県立総合病院 リハビリテーション科)

自己紹介
リハビリテーション科選択のきっかけ
小児リハビリテーションとの出会い〜Bobath Centerの思い出
GMFM・GMFCS誕生からの道のり
リハビリテーション経営で大切なこと
最先端リハビリテーションと介護ロボット
訪問リハビリテーションの意義
ストレス解消法と趣味
未来のリハビリテーション科専門医に

 

自己紹介

司会:ただ今より第27回「この先生に聞きたい!」近藤和泉先生のインタビューを開始させていただきます。司会の男女共同参画委員、小口と申します。よろしくお願いします。

まずは、皆様に自己紹介と今日のインタビューに懸ける思いを語っていただきたいと思います。

河村:北九州市立総合療育センターから来ました、整形外科の河村好香と申します。

平成17年卒で、九州労災病院で2年間臨床研修をし、その後九州大学整形外科に入局しました。現在、療育センターで働いています。私がとても尊敬している上司で前所長の松尾圭介先生と元所長の佐伯満先生は、近藤先生とご一緒に仕事されたと伺っていますので、すごく今日は楽しみにしてまいりました。よろしくお願いします。

佐藤:女川町地域医療センターから来ました、佐藤知香と申します。平成26年卒の医師8年目になります。自治医科大学卒で、今はお礼奉公中の内科診療をしているという状況です。

地元は宮城ですけど、夫が和歌山出身だったので、和歌山医大で初期研修をし、リハビリテーション(以下本文中リハ)に興味を持ったという流れです。那智勝浦町立温泉病院で内科とリハ科を兼任して3年勤め、専門医試験も受けさせてもらいました。取りたてほやほや、2020年8月の延期になった年の試験で取りました。(注:COVID-19感染流行のため試験日程が当初予定の2020年3月から延期)

近藤:大変だった時だね。

河村:去年の夏なら一緒ですね。

佐藤:そうなんですね。

河村:専門医同期です。

佐藤:今は女川町の有床診療所で一般内科をやっています。今日は久しぶりにリハの最先端に触れられると、本当に楽しみにしてまいりました。どうぞよろしくお願いします。

 

 

リハビリテーション科選択のきっかけ

司会:ちょうど専門医になりたてのお二人がインタビュアーですので、先生がリハ科に進路を決められたきっかけから、お聞かせいただけるとうれしいです。

近藤:最初は整形外科医、脊髄外科医になりたかったんですよね。ただ、目が悪くなってしまい、硬膜の血管がつぶせなくなったので、どうしようかなと思っていたころ、八戸のはまなす学園(現:青森県立はまなす医療療育センター)という小児の肢体不自由施設に研修に行って。

そこの岩崎光茂先生が、非常にきめ細かくリスクベビーの診察の仕方とか、小児整形の、例えば内反足のギプスの巻き方とか教えてくださって。リハが中心の施設だったので、整形が駄目だったら、リハでもやろうかなみたいな感じで、この道に入ったのがきっかけです。

ただ、もちろん、入ったら入ったで面白くて。今からすると、整形じゃなくて良かったかなみたいなところはあるんですけど。そんなきっかけです。

司会:ありがとうございます。河村先生は今、療育センターでお仕事をされていますけど、先生のきっかけは?

河村:もともと、いわゆる小児整形の中でも骨関節疾患のリハしか知らなかったんです。たまたま縁があって、療育センターのほうに勤めることになったときに、整形の先生方の診察を見て、おや、これは自分が知っているリハビリとは違うなと。発達を診たり、環境調整、家族の背景を調整するとか、その辺を見てびっくりして。小児整形と小児リハは、ほとんどかぶっているところがあることに初めて気づきました。すごく面白いな、深いなと思って、勉強させてもらっています。

今日は小児リハのことを、ぜひ掘り下げて聞かせていただきたいなと思って来ました。

 

 

小児リハビリテーションとの出会い〜Bobath Centerの思い出

近藤:リハをやろうと決めたのですが、当時弘前大学にリハ科はなく、脳研のリハ部門の大学院に入りました。ところが、「リハビリの臨床を教えてください」と言ったら、教授も講師も「臨床は自分で勉強してね」と言われ、困ってしまいました。そこで岩崎先生に、「先生、もうお先真っ暗になりました」と電話したら、「旅に出ろ」と言われ、「どこに旅に出ればいいんですか」と聞いたら、「まあ、しようがないな、ロンドンに行ってこい」と。

留学ではなく研修だったのですが、Bobath Centerへの推薦状を書いてもらって8週間コースに行くことになりました。ただ、Bobath Centerは、セラピストには大変人気があるので、なかなか順番が回ってこず、結局3年間程待ちました。

そこで学んだことは、正に私の今やっていることの根幹になっています。脳性麻痺児のお子さん特有の運動発達の仕方とか、発達の過程で起こる様々な運動の変化とか。もちろん、そのころはニューロサイエンスとか全然発展していなかった時代なので、観察で積み上げられた知見を8週間で密に詰め込まれました。

ただ、英語は書くことはできても、当時は全然しゃべれませんでした。勉強しようと思って、ロンドンの町の中の本屋をうろうろしていたら、たまたまニューロサイエンスの本がありまして。そのニューロサイエンスの本を一生懸命読んでレポートで提出したら、「おまえ、すごいな。どこでこれを勉強した」と言われて…それがニューロサイエンスとの出会いでしたね。

今、私はニューロリハ学会の理事長をやっているのですが、ニューロリハの基礎医学はニューロサイエンスなので、そこからもう一つ展開があった感じはしますね。

普通の医学の基礎は病理なんですね。例えば、子どもは0歳から2歳までの間に、だいたい脳の構造が決定されてしまいます。生まれた時に障害を受けた脳は、その障害を前提にして発達していくんですけど、その障害を前提に発達するというメカニズムは、医学部では全然教えてくれないですよね。発達学は、生まれる前のことしか教えてくれないし。要するに、正常な発達をする場合、脳の中でどういう変化が起こっていくかは、ニューロサイエンスの知見しかなかったので、それがまた本当に新しくて面白かったのです。まあ、知らないことはどんどん吸収できますから、それが楽しくて小児リハをやっていたというのはありますね、やはり。

今でも心掛けている臨床のモットーは、とにかく患者さんを触らないと何にも分からないということです。治療手技的な基礎をBobath Centerで教えてもらったので、子どもをとにかく触りまくって、ずっと診察していました。

その後、博田節夫先生に出会い、AKA(関節運動学的アプローチ)という治療手技を習ったので、高齢者の色々な痛みの治療とかも自分でできるし、治療的評価をしながら痛みが出てくるメカニズムも分かるようになったので、患者さんの体を触るというのが臨床医としてのモットーになっています。

私にとって臨床的な意味でも、その後、いろいろなことを積み上げてきた学問的な意味でも、Bobath Centerが起点になっています。

司会:Bobath Centerで印象に残るエピソードはありましたか?

近藤:研修は結構きついし、厳しいんです。先生も。

あのころJennifer Bryce先生が校長で、それがまたすごくきつい女性で、みんなに皮肉めいたことを言ったりとか、ちょっといじめめいたことがあったりとか…クラスは、20人はセラピストで、私1人がドクターでした。そんなわけで、みんな昼間は散々ストレスを抱えている。夕方になると、「さあ、飲みに行くぞ」とほとんど毎日、授業がある日はパブに行っていました。

ただ、しゃべれないので聞くだけなんですよね。その聞くというのが、すごく大事なことでした。なぜかというと、20人いるセラピストの内、2人しか男はいなくて、18人が女性なんですよ。女性の不平不満をただ黙って、しゃべれないもんだから、ずーっと3時間くらい聞いているんですね。まあ、しゃべりたかったなとも思っていたし、でもうまくしゃべれないのがインフェリオリティーコンプレックス(inferiority complex)になって、相づち打つ程度の簡単なこと以外は話せませんでした。

ただ8週間聞き続けたら、最後の日、18人の女性に好かれているということに気づかされました。それはある意味、患者さんの話を聞くのにも通じます。失語症とか、英語をしゃべれない人間になったつもりになって話を聞くと、結構患者さんは、こっちを信頼してくれるというのは確かにあるなと思います。話したいだけ話させてあげないと、やっぱり。

リハ医は幸いなことに、結構時間をかけて話が聞けるので、話はちゃんと聞かないと駄目だろうというのはありますね。

 

 

GMFM・GMFCS誕生からの道のり

河村:先生はそのまま、英語に苦手意識のあるまま帰ってこられたんですか。

近藤:そうですね。ちょっと反省して勉強しましたね、さすがに。

河村:GMFM(gross motor function measure:粗大運動能力尺度)とか、GMFCS(gross motor function classification system:粗大運動能力分類システム)を先生が翻訳して日本に持ち込まれたそうですが、英語に苦手意識がありながら、すごいですね。

近藤:いや、やはり反省したんですよ。その後また、7年間ぐらいしてからカナダへ行って、その間はすごい勉強しましたよ。それでちょっとはしゃべれるようになりました。

カナダのMcMaster大学に行きたくて、勉強したかったので、Rosenbaum(Peter Rosenbaum)という先生に手紙を書いて。3回目ぐらいまで駄目と言われて、4回目に手紙を書いたら、「じゃあ、しようがないから俺の友達にそういうの好きなのがいるから、預かってくれるっていうから来いよ」と言われて、それでカナダへ行ったんですよ。だから、英語の手紙を書くぐらいの能力はついていたということだと思います。

河村:カナダには何年ぐらいですか?

近藤:半年です。

河村:ニューロサイエンスの教室ですか?

近藤:ではなくて、GMFMやGMFCSを作った教室で勉強したかったのです。Rosenbaum先生の友人でBar-Orという小児の体力医学をやっている先生がいらっしゃって、Children's Exercise and Nutrition Centreで毎日毎日、子どもの計測をいろいろしていたんですね。そこにRosenbaum先生が1週間に1度来てくれるので、ミーティングの時にいろいろ聞きたいことをいっぱい聞いて勉強しました。その時の英語は、今に比べればほとんどしゃべれなくて、家族も連れて行ったので結構大変だったんですけど、まあ、面白かったと言えば面白かったですね。

ある日、Rosenbaum先生が「和泉、こんな面白いものができたよ」と、原稿の束を見せてもらいました。それがGMFCSだったんです。弟子というのは師匠の偉大さがよく分かっていないから、「へえ、これ、ほんとに役に立つの?」と思いながらやっていました。

しかも、なかなか判定が難しいと言うので、コンピューターで、YES・NOで入れると、自動的にレベルが出るようなプログラムに組んだりして遊んでいたら、だんだん、信用してくれるようになって。GMFMの翻訳も喜んで「いいよ」と言ってくれました。

日本人は、一生懸命やるんですよね。「土曜日しかラボは空いていない」と言われると、「じゃあ土曜日に、空いている時間に研究しますよ」みたいな感じでやるので、結構好かれる。だから向こうでも信用されて、いろんなことを任せてもらえるようになったんですね。あれは面白かったですね。

日本に帰ってきて、GMFMを使って仕事をしたいと思いました。ちょうどそのころ、肢体不自由児施設の成果を出すために評価尺度を作ろうという、厚労省の研究班ができたんですね。

河村:佐伯先生に伺いました。平成11年から16年度、肢体不自由児施設運営協議会の厚労省研究のことですね。

近藤:そうです。よく調べてこられて、素晴らしいですね。

佐藤:20年ぐらい前ということですか。

近藤:そうですね。その時の報告書6冊分、まだ取ってありますけど、結構ね、佐伯先生と私との意見は違っていました。

佐伯先生が担当していたのは、特に知能の部分だったので、そこは長い歴史があって、わざわざ新しいものを作らなくてもよかったのですが、粗大運動能力の評価に関しては、新しいものを作らなきゃいけなかった。GMFMに対しては、最初はものすごい抵抗がありました。まあ、だんだんと認められて、普通に使われるようになってきましたが。

今は脳性麻痺だけじゃなくて、いろんな小児疾患、特に福山の筋ジストロフィーの治療薬の治験とか、これから始めようとしているのは、HAL®(Hybrid Assistive Limb)の小児用バージョンの治験の評価もGMFMでやろうということになっていますね。

河村:GMFCSもGMFMも、私たちは当たり前に使ってしまっているのですが。当時はまだ受け入れられず、その後時間をかけて広まったということですね。

近藤:そうですね。はい。

河村:すごいですね。

近藤:最初のころは、そんなふうに言わないで欲しいなということも結構ありました(笑)。今は普通に使われていますけど、当時は大変でした。

 

 

 

リハビリテーション経営で大切なこと

司会:話はガラリと変わりますが、事前にインタビュアーの先生に伺っておりました、先生に聞きたいことの一つに、療育と経営の問題が入っていました。

近藤:要は公立の肢体不自由施設はセラピストの数が少ないんですよ。大学にいる時に、リハ科の収益が上がらないので、基盤経費とセラピストが稼いでくれるお金、サラリーとか計算してみたことがあります。どうもセラピスト数のボーダーラインが、30人内外のところにあることに気づきました。

実は、最初私がここに来た時、セラピストは8人しかいなかったんですよ。

一同:ええっ。

近藤:8人のころは、本当に大赤字でした。回復期リハ病棟ができて、セラピストを徐々に増やしていき、30人超えたあたりから、医業収支率が100を切って、80、70まで来るようになりましたね。おそらく同じことが肢体不自由施設にも言えると思います。民間の病院でもセラピストの数が30人を超えているところのリハの収支は確実に黒字です。

河村:そうなんですか。

近藤:そう。もちろんそういう病院では一般のリハもやっているから、全員が子どものリハをやっているわけじゃないんですけど。でも、子どものリハスタッフ数は、60人とか70人超えているところも多い。そうするとね、利益が出るですよ。

ところが、今の公立の施設はほとんどが赤字で、赤字だからと、どんどんセラピストの数を削られたと思うのですが、そうするとますます経営は悪くなるんですよ。本当に誰かが思い切って、公立で30人を超えるような経営をしてくれたら、ちゃんと証明されるはずです。

われわれ医師は、セラピストの数を増やす代わりに、セラピストの面倒を一生懸命見るというのが大事です。例えばリスク管理とか、セラピストが不安を感じているときに、がっしりサポートしてあげることが必要です。私は幸い関節治療とか、子どものファシリテーション・テクニックが得意だけど、自分が得意な分野を一生懸命セラピストに伝えることが、すごく大事だと思いますね。

そのような経営形態にすると、まず間違いなくいけると思います。セラピストは今、年間1万7000人ずつ誕生しているのですから。

司会:そうですね、どんどん増えている。

近藤:そこをうまく利用しなきゃいけないんだけど、みんなそういう発想がない。

司会:それが取りも直さず、治療効果につながるわけですから。

近藤:そう。よりよいリハを提供できます。これは今日、一番話したかったところです。

 

 

最先端リハビリテーションと介護ロボット

司会:次の話題に進みましょう。先ほどの施設見学で、リハロボットや介護ロボットなど最先端の機器を見せていただきました。近藤先生の最新のお仕事について、教えてください。

近藤:リハ治療というものは、普通はセラピストがやりますが、自分でも子どものハンドリングをやっていて思ったのは、ファシリテーション・テクニックは基本的にそんなに長い時間は効かないんです。だいたい20分から40分ぐらいしか効かない。

体がうまく動いている時間は確かにあるんだけど、そんな短時間で運動学習は起こらないですよね。かと言って家でお母さんがセラピストの役をするのは無理でしょう。

だから最初のころは、子どもの周りの環境を変えるしかないと思って、お母さんたちと一緒に考えながら、いろいろやっていました。子どもが自然に体をいいほうに動かすような環境を作るようにお母さんに頼んで。

そこでロボットが出てきたんですが、ロボットほど運動学習にいいものはないんですよ。例えば、Lokomat®という有名な脊髄損傷のロボットがあるんですが、実はいきなりロボットがあったわけではなく、ヨーロッパでセラピストが4人ぐらいで平行棒の横に立って、トレッドミル上の患者さんの、1人は足を押さえて、1人は膝を押さえて、みたいなことを両側でやっていた。そこでLocomatが出てきたんですよ。

要するに、人間は一人で1関節しかコントロールできないんです。だけど、ロボットは多数の関節のコントロールができるのが一つ、メリットです。それから、ロボットは疲れません。疲れずに同じ動作の反復ができるというのがロボットのメリットです。今までできなかったことができるということが、ロボットに一生懸命入れ込んでいる理由ですね。

ただLokomat、HALとか、ウェルウォーク®は、それぞれ素晴らしいロボットなんですけども、治療効果の限界をそろそろ迎え始めていると思います。次はおそらくVirtual Reality(VR)とか、Augmented Reality(AR)、いわゆる仮想現実の世界ですね。

そこに今すごく興味があります。うその情報を頭の中に入れてやると、ちゃんと脳がそれに反応して、それぞれのネットワーキングの強化のパターンが変わる、その可能性はもう十分出てきているな、と思っています。

司会:先ほど見学したGRAIL(Gait Real-time Analysis Interactive Lab)(VRを用いたトレッドミル装置)のバーチャル画面は、後ろで見ているだけでフラフラしました。静止立位のはずなのに。

 

近藤:面白いんです。当院のは平面型でなく、画面で囲んでいるじゃないですか、がっちりと。平面型は、普通のVRと同じ効果しか出なくて、歩行速度が落ちて一歩一歩のばらつきが出るんですが、囲む形にすると、一歩一歩のばらつきがすごく少なくなるんですよ。だから、どのぐらい没入するかというのは、訓練効果に直結しています。

司会:インタビュアーのお二人は、体験されていかがでしたか?

河村:夢の中で飛んでいる感じでした。空を飛べている感です。

佐藤:吊り橋の板の上を歩かなきゃ落ちるんじゃないか、くらいの感覚で慎重に歩いていました。

近藤:私はシミュレーター酔いするタイプで、嫌だったんですけど、やはり効果は違うなと思います。

佐藤:先生は、もともと機械がお好きだったんですか?

近藤:そうですね。中学校のころはラジオ少年だったので、真空管でラジオを作ったりとか、割と機械好きだったんですよ。トランジスターが出始めたころだったし、そういうことにすごく興味があって。

佐藤:いろいろなロボットについて、こういう患者さんにいいかもしれないと、ひらめくのは先生からが多いんですか。

近藤:そうですね。やっぱり臨床を一生懸命見ているとね、あそこでこう困っていた、ここでこう困っていたとか蓄積していくので。一歩踏み込んで診察をして、患者さんの困りごとを聞いておかないと、良いアイデアは出てきません。

佐藤:最初は小児リハで、運動学習が効率よくできるというところから、ロボットが良いと。

近藤:そう思ったんですね。

佐藤:そこから、成人や介護の方につながったきっかけが気になります。

近藤:専門は小児と看板を上げていましたが、診ているのは8割、9割は脳卒中とか、整形外科の患者さんです。大人は診療では診ています。

佐藤:そうなんですね。小児リハのトップでやられていた先生なので、小児専門と思っていました。

近藤:リハ学会の東北地方会の私の演題を見てもらうと分かるんだけど、あらゆる発表をしていました。脳卒中でも、高次脳機能障害もあったし、バランスに興味があったので、いろいろな尺度を作ったりとか。ある意味、アヒルの上側は子どもだったんだけど、足は一生懸命、かいていて、その対象が高齢者やバランス障害みたいな感じ(笑)。

河村:もともと脊椎外科をしたいと思っていて、はまなすへ行って、今はこちらで介護ですよね。人生が凝縮していますね。

佐藤:本当にお一人の先生の歩みなのかというぐらい幅がありますね。

司会:幅が驚異的に広くて、しかも深いですよね。

近藤:看板は小児だったけど、いろんなことを陰でやっていたので、そっちも芽が吹いてきたという部分はあると思います。要するに、最初からいろんなことをやるのが好きなんですよ、多分ね。

一見つまらなそうなことの中にも結構面白いことが転がっているということは、いつも思っています。ちょっと見て、もうこれは違うと思ったら、よけるのではなくて、ちょっと口の中に入れて味わってみたほうがいいかなと思っています。

介護ロボットだって、最初はもう全然使えないと思っていたんですけど、ずーっと付き合っているうちに結構使えるのが出てくるんですよ。今日も、結構いけているのを皆に見せましたけれど、何のためにこれを作ったの、というのもあったんですけどね。でも、ちゃんとやっていると、やはり何か出てくるんですよね。

 

 

訪問リハビリテーションの意義

佐藤:見学の時、セラピストの先生から訪問リハにも行っているというお話を聞きました。こんな大きな病院で訪問リハまでやっているんですね。

訪問リハは週1回2単位とか、その程度の量なのであまり効果がないんじゃないかと昔は思っていたんです。今は地域医療で女川町に行って、訪問リハをやる病院にいます。週に1回、セラピストが会いに行ってリハビリをするというのに、すごく意義があると思えるようになりました。患者さん自身も、その先生にまた来週会えるところまで、ちゃんと自分で頑張ろうという気になって、頑張っているんだなというのを、私も訪問診療に行くので、目の当たりにすることができて。

先生は訪問リハについて、どのように思っていらっしゃいますか。

近藤:小児リハの中に、ダイナミックセオリーというのがあります。1週間に一度、セラピストの先生は40分ぐらいしかハンドリングできない。だけど、子どもがお母さんと過ごしている時間はものすごく長い。だから私はむしろ、もちろん訓練、訪問はするけど、お母さんと話をして、生活の中でどこに問題があるか、どういう環境を子どもにつくっていったらいいかというのを一生懸命やるんですよ。

当院の回復期では、ADLを無理に上げないんですよね。無理に上げちゃうと、必ず自宅へ帰ってから下がる。集中リハをやると必ず下がる。90%の完成度でやって、ちょっと残しておいて、家で習熟したほうが絶対効率的だよという話を患者さんにするんです。家の環境の中でいろんなことをやって、それで体を完成させてください、というと納得してもらえる。

それは小児リハのセオリーから来ている。要するに、環境の中でいろいろ体を使うから子どもは発達していくんですね。回復期が終わって、リハが完了した患者さんでも、やっぱり同じことが言えるんじゃないかなと思います。
最初はすごく家屋評価を一生懸命やっていました。アクセスをきちんとできるように、家の中の動線も、必ず寝ている部屋から食堂、トイレ、お風呂に行くまで、全部きれいに見て、完璧に手すりとか付けて、いろんなハザードも全部取り去って、みたいなことをやっていました。でも、もう一回、訪問してみると、その通りになっていない(笑)。

だいたい半分ぐらいしかやらないんですよね。理由を考えてみたら、やはりフォローアップが足りない。実際、患者さんが住んでみて、いろんな環境の中での不便さを見つけるほうが確かに理にかなっている。だから、回復期のアウトリーチとして訪問リハをやらないかと、みんなに提案したんです。

訪問リハで定期的に行っていれば、患者さんとご家族とケアマネさんが、なぜ提案された環境調整をしなかったか理由がわかります。環境を小まめに見られるのは訪問リハの利点で、その結果、患者さんがフィットした環境の中でいろんなことをやってくれるから、機能が保たれるわけです。

佐藤:そうですよね。

河村:家屋調査のメンバーはどんな構成で行くのですか。

近藤:全員で行きます。

河村:ドクターも?

近藤:ドクターも行きます。私も行っていました、最初のころは。ケアマネさんと戦いになったり…「自宅は無理です」と言われて、「いや、帰せる」とか、いろいろやっていました。訪問で提供されるのは2単位だけですが、それ以外の生活の中で患者さんがどのぐらいうまく体を動かしてくれるかで、機能維持ができるかどうかが決まってくる。

だから、当院の回復期は退院後3カ月のADLが変わりません。落ちないんです、全然。

佐藤:すごいです、それ。

近藤:まあ完璧に仕上げないというのが一つのポリシーだから、低めのとこで帰しているのかもしれないんですが。でも、維持されているというのはすごく大事ですよね。

患者さんにとって機能低下は喪失です。だから失敗なのね、はっきり言ってね。できなくなっちゃったって、心理的にもショックを受けるんだけど、ずっと病院と同じことができていれば、全然そういう心理的なトラブルも起きない。集中リハは悪くはないけど、ADLを仕上げるぐらいだったら、バランス能力を仕上げろと思います。

先ほど見ていただいたバランス訓練ロボットも、回復期の最後1週間のとこで投入して、大腿骨頸部骨折の患者さんのバランス能力を仕上げ、なるべく次の転倒、骨折を起こさせないということを、データを取りつつ一生懸命やっています。

今日の提言は「量だけのリハの時代は終わった。次は環境だ」でどうでしょうか(笑)。

佐藤:訪問リハのセラピストたちが、とても背中を押される言葉だと思います。セラピストが訪問先の患者さんの生きがいを見つけて、それができるようにサポートして、その方たちも自信が湧いてきて活動につながっていくというのを実際に見てみて、訪問リハは重要だと思いました。

近藤:だいたい子どもはこっちが仕向けようとしたことは絶対やってくれない。環境の中にちょっと変わったおもちゃを置いてあげただけで、一歩でも二歩でも、はってくれたりとか、そういうことが起きますから。だから患者さんの環境を整えることはすごく大事です。

司会:VRのことを今、イメージしました。

近藤:ははは(笑)、そうですか。

司会:自宅のバーチャルが実現できたらどうだろうと。

河村:自宅の写真でバーチャル空間を構築できる時代が来るかもしれないですよね。

司会:そうそう。

河村:試験外出で本当に家に帰る前にちょっとだけ、一回試せますね、そのバーチャルで。

司会:コロナで入院中の外出が制限されている、今まさにニーズがあります。

近藤:面白いでしょう。いろいろな発想が湧いてきますよね(笑)。

 

 

 

ストレス解消法と趣味

司会:本当に幅広い分野でご活躍されている先生、超多忙でいらっしゃる中で、ストレス解消法やご趣味についてはいかがでしょうか。

近藤:ストレス解消法は、うちの庭はそんなに広くないんですけど、畑があるので、そこでキュウリやナスを作ったりしています。ゴーヤの棚を作って、ネットをはわせて2階まで届かせるとか(笑)。

河村:すごい。

佐藤:ゴーヤのカーテンですね。

近藤:まだゴーヤは少ししか伸びていないんですけどね。まあ、それがストレス解消法かな。植物は素直なんで、ちゃんとやってあげればあげたなりのことはあります。時々うまくいかなくて、枯れちゃうときもありますけど。植物に肥料をあげていると、なんか心が安まる(笑)。あと、趣味は読書で、山のように本を買っています。

河村:どの分野の本ですか。

近藤:何でも読みますね。

司会:最近一番心に残ったのは?

近藤:民俗学をやっている六車先生の『驚きの介護民俗学』という本がすごく良かったです。六車先生は、面白い人ですよ。もともと大学で民俗学の研究をしていたのに、ある日、ぱっとやめて、ヘルパーの資格を取って、介護の世界に飛び込んじゃって。まだお会いしたことはないんですけど、すごいファンなんです。

「これ、いいよ」と言って、すぐ人にあげちゃうので、買ったのはもう5冊目です。

司会:すごい。

近藤:本当にお薦め。最近のヒットですね。回想法にちょっと近いところがあるんですけど、その人の個人史を聞いていって、その人が輝いている時代の話をしてもらうと、途端にみんな元気になるという話です。それを実はコミュニケーションロボットの機能として持たせたいなと思っています。

 

未来のリハビリテーション科専門医に

司会:お話は盛り上がる一方ですが、そろそろクロージングの時間になります。最後に近藤先生から、未来のリハ医に向けたメッセージをお願いいたします。

近藤:インタビュアーのお二人も、リハの深さや面白さを十分感じ取られていると思うんですが、リハ医学はまだそれほど、きちっと組み立てられたものではなく、ある意味あなた方が、この次の先端になって、無人の荒野を開拓していく役割を持っているんですね。

そこは逆にリハ医学の面白いところで、ちょっと興味があって、そこで少しとんがると専門家になれてしまいます。なって逆に責任が重くなって大変だということもあるかもしれないんですけど。でも、それをいとわなければ、いろいろ前に障壁があって進んでいくよりは、何もないところを開拓していくのが面白いという人が、リハ医に向いていると思います。

今までシステマチックに組み立てられてきた学問をたどっていって高みを目指すというのも、もちろんそれは医学の正道であって、悪いことではありません。まあ、それも面白いけども、新しいことに興味があるという人は、リハ医に向いています。そして、仕事の面白さは、患者さんと話をすることですね。

司会:根幹はそこにありますね。そして、しっかり患者さんを触ることですね。

近藤:患者さんとのコミュニケーションは、子どもの場合は遊びです。だから、一緒に遊んで楽しいというのもあるし、あとお母さんと話をして、向こうも悩みがあるし、こっちもなかなかうまく治療ができないという悩みがあって、お互い悩みを話して。でも、まあ、いいところを見つけていこう、という話ができます。そこも小児リハのとても面白い点だと思っていますね。

司会:本日は施設見学からインタビューまで、本当にありがとうございました。まとめとして、中馬先生にお言葉いただければと思います。

中馬:今日、私は、今まで近藤先生の表面しか見ていなかったというのがよく分かりました。もともとすごい先生と思っていましたが、やはりすごい先生です。先ほど先生がおっしゃったように、人を触ってちゃんと診察すること、ちゃんと患者さんのことを聞くこと、小児の場合だとお母さんのお話も聞く…そういう基本が根本にあるから、ずっと変わっていない、ぶれていないんですよね。

今日のインタビューでは、すぐに直接関係するかはわかりませんが、これからの仕事、人生に対し、多くのヒントがあったと思います。それが、リハ医学・医療の将来を担うお二人にしっかりと伝わったと私は確信しております。
近藤先生、大変貴重なお話を本当にありがとうございました。

一同:ありがとうございました。