理事長就任のご挨拶

公益社団法人日本リハビリテーション医学会理事長
京都府立医科大学大学院リハビリテーション医学教授(副学長)
久保 俊一

公益社団法人日本リハビリテーション医学会理事長:久保 俊一

このたび、私は、2016年6月8日の日本リハビリテーション医学会の理事会で新理事長に選任されましたので、皆様にご挨拶いたします。

1960年の厚生白書においてリハビリテーション医療の必要性が明記されたことをきっかけとして、1963年に整形外科と内科の学会が協力して日本リハビリテーション医学会を設立しました。当初、任意団体としてスタートした日本リハビリテーション医学会は1989年に社団法人として認可され、2012年に公益社団法人として認可されました。本学会は2013年に設立50周年を迎え、すでに半世紀以上の歴史を積み重ねてきました。

1924年に東京大学整形外科教授に就任された高木憲次先生が「療育」という言葉と概念を提唱されました。日本におけるリハビリテーション医療の始まりはこの「療育」とされています。当時のリハビリテーション医療の主な対象は、大流行したポリオや脳性麻痺などの小児疾患でした。その後、戦争での四肢切断、戦後の労働災害や交通事故での骨折や脊髄損傷などがリハビリテーション医療の対象となりました。さらに、社会の高齢化が急速に進んだ現在では、脳卒中や変形性関節症などがリハビリテーション医療の主な対象となっています。リハビリテーション医療の対象者は、時代とともに小児から高齢者まですべての年齢層に広がっていきました。

また、急速な少子高齢化は、疾病構造を複雑にしました。これに伴ってリハビリテーション医療が対象とする疾患や障害は、運動器障害、脳血管障害、循環器や呼吸器などの内部障害、摂食嚥下障害、小児疾患、がんなど幅広い領域に広がっています。さらに、不健康寿命が延びるにしたがい、病院や施設だけでなく家庭でも良質なリハビリテーション医療が求められています。このように、リハビリテーション医療に対する社会の期待は極めて大きいです。

リハビリテーション医療において訓練だけでなく、義肢・装具療法、薬物療法、生体物理刺激療法、栄養管理なども重要な治療法であり、リハビリテーション科医はこれらを適切に組み合わせながら治療します。また、リハビリテーション科医は、患者さんが積極的に治療に取り組み、できる動作を実際に行えるように支援します。そのためには多くの関係職種によるチーム医療が必要です。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの療法士、看護師、義肢装具士、薬剤師、管理栄養士、医療ソーシャルワーカー、などの専門職がチームにおいて重要な役割を果たします。リハビリテーション科医には信頼できるチームリーダーとしての責務が求められます。高齢者の多くは複数の臓器に疾患や障害を持っています。安全で効果的なリハビリテーション医療を提供するためには、リハビリテーション科医がそれぞれの疾患や障害の病態を十分に把握する必要があります。リハビリテーション科と各専門領域の診療科との密接な連携もリハビリテーション科医の重要な役割です。

リハビリテーション医療の発展には国際化が必要です。これまでの本学会の努力により、本年から英文学会誌(Progress in Rehabilitation Medicine)も刊行され、2019年のISPRM(国際リハビリテーション医学会)の日本開催が決定しました。これらをきっかけとして、学術面でも臨床面でも国際交流がさらに活発になると期待されています。また、若手医師に対する国際交流の支援も重要な課題です。国際化が進めば海外の最新情報が国内にもたらされ、わが国における素晴らしい成果を世界へ発信することもできます。

リハビリテーション医療の重要性が増すに伴って、最良の結果をもたらす治療法が求められています。従来の治療法も含めてエビデンスを積み重ね、各治療法の有用性を明らかにしていく必要があります。一方、近年では、ロボット、電気や磁気などの生体物理刺激、BMIなどの最先端機器を用いた研究が盛んに行われるようになり、医工連携あるいは産学連携の重要性が増しています。本学会は、従来の治療法を検証するだけでなく、患者のQOLを向上するため先端機器の開発をリードしていく必要があります。

人材育成も本学会の最重要課題の1つです。リハビリテーション医療の需要の増大に伴いリハビリテーション科医の不足がクローズアップされています。2010年の厚生労動省の調査では、必要とされるリハビリテーション科医の数は他の診療科と比較して明らかに多いとされています。一方、リハビリテーション科医の人材育成には、医学部教育を充実させることが重要であり、全国の医学部にリハビリテーション医学講座が設置する必要があります。また、質の高いリハビリテーション科の専門医を養成することも急務であり、系統だった専門医教育プログラムを整備することが大切です。53巻に及ぶ学会機関紙である「リハビリテーション医学(Rehabilitation Medicine)」を教育という観点からも充実させていかなければなりません。

今、多様性が組織を活性化させるダイバーシティ・マネジメント(Diversity Management)というプロセスが注目されています。リハビリテーション医学のプロセスにはDiversity Managementが含まれています。リハビリテーション科はさまざまな疾患や障害を対象とし、多くの診療科や専門職と関連します。この特徴をエネルギーに変えるべきです。多様性は多面的な社会貢献を可能にします。社会貢献の例として、障がい者スポーツの振興や障害のある人もない人も充実した人生を送れるinclusive societyの実現があります。

リハビリテーション医療が注目される現在、本学会にはたくさんの課題があります。ひとつひとつに真摯に取り組みます。会員の皆様および関係する多くの方々の今まで以上のご支援ご鞭撻をいただきますよう、心からお願いします。

2016年6月