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リハニュース No.14

2002年7月15日

  1. 診療報酬改定―その後 リハビリテーション医療の後退を憂う―診療報酬改定の影響について―

  2. 回復期リハビリテーション病棟では

  3. リハビリテーション専門病院では

  4. INFORMATION

    九州地方会

    近畿地方会

    編集委員会

    教育委員会

    国際委員会

    広報委員会

    国際委員会

  5. 専門医コーナー:第14回リハカレントトピックス&レクチャーのお知らせ

  6. 医局だより

    藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学講座

    勤医協札幌丘珠病院

  7. 平成13年度 日本リハビリテーション医学会 論文賞受賞者の紹介

  8. 第39回日本リハビリテーション医学会学術集会:印象記

  9. 第39回学術集会を終えて

  10. 第1回日韓合同カンファレンス報告

  11. 広報委員会より

  12. 事務局コーナー

診療報酬改定―その後 リハビリテーション医療の後退を憂う ―診療報酬改定の影響について―

日本リハビリテーション医学会 社会保険等委員会 担当理事
石 田  暉(東海大学医学部リハビリテーション学) 

 今回の診療報酬改定の結果に対し,リハビリテーション(以下,リハ)医療に携わる者は一様に驚きと不満・不安を隠せないでいる.小泉改革の流れ,2.7%の診療報酬削減等の報道から,ある程度の減収は覚悟していた.しかし,中医協の答申に盛り込まれた「早期リハ」「回復期リハ」を評価するという内容に僅かの望みを託していたのも事実である.しかし,フタを開けてみるとその期待は見事に打ち破られ,関連医療機関から報告されるリハのデータは2.7%減どころかその10倍以上の減収はざらという結果になっている.
 我々の大学病院(東海大学)はリハの総合承認施設(PT 16人,OT 6人,ST 3人)をとり,早期からインテンシブなリハを行ってきた.これは急性期病院における1つのモデルとして,厚生労働省が求めている内容に沿ったものとの自負があった.しかし4月以降の診療点数のデータでは,入院で昨年同月比10数%減,外来では40%を超える減収になっている.
 さらに,当院での数字はまだ良い方で,理学療法Ⅱ単独の施設あるいはⅢないしⅣの施設,すなわち理学療法主体の施設の中には50%以上の減収となったものもあると聞いている.

 リハ医療は従来から「不採算部門」と言われ,現場の者として病院(経営)側に対してはいささか肩身の狭い思いを持っている一方で,多くの患者さんからは支持を受け,それを励みに診療を行ってきた経緯がある.この間,ゆっくりではあるが着実に診療報酬面での改善がなされ,それに支えられるように大都市から地方,さらには過疎地にリハの施設が広がり,従来リハの恩恵に浴して来なかった人たちにも,十分ではないが確実にリハは拡がって来た感があった.
 しかし,急性期の医療機関,国公立病院,大学病院(私立を除く)ではまだまだリハスタッフの絶対数は少なく,入院患者に対するスタッフの比は欧米と比べ著しく低下している.この結果として急性期に十分なリハを受けないまま在宅あるいは療養施設へ移る人も少なくないのが現状である.今後急性期病院での入院期間が更に短縮すればこの傾向が加速されることは間違いない.
 また,急性期医療機関からの受皿として前回の診療報酬改定時に作られた回復期リハの整備はまだ十分でなく,学会が行ったアンケート(結果は学会誌リハ医学39巻7号359-361頁に掲載)にも改善に対する数々の要望が寄せられている.急性期病院から,より早期に重症な患者が移った場合の医師を含めたスタッフの充実等早急な対応が求められている. 

 リハ維持期の多くは医療保険の取り扱いではないが,前述のように急性期・回復期で十分なリハがなされない,すなわちリハ前置主義が徹底されないままで介護保険に移行すれば,医療のなかで到達できなかった診療の「つけ」が,ただ単に介護保険に回されるだけになり,社会的コストは一層膨らむ結果になる.
 今回の改定が公表された後にPT, OTの養成校のいくつかで採用のキャンセルがあったと聞いている.公立病院でなんとか増員要求にこぎつけたものが白紙に戻ったり,国公立の大学ではリハスタッフの増員要求がしづらくなったとの訴えがある.また急性期の病院の中には入院期間の短縮傾向により,「どうせ早期に転院するのだからリハよりもっと緊急度,収益性の高いものに投資した方が良い」というふうに考えるものもある.これらの流れは我々がかねてから訴えてきた「良質なリハ」を提供する基盤が揺るぎ始めていることを示し,今回の改定が,欧米に比べて立ち遅れ,更なる充実が求められているリハ医療の発展にブレーキをかけるのは確実である. 

 以上のようなリハ医療の厳しい局面に対し,社会保険等委員会として今後如何なる取り組みをしていくべきかについて幾つかの要点を以下に述べる.
 1) 関連団体(理学療法士協会,作業療法士協会,言語聴覚士協会,義肢装具士協会ほか)と協力して今後改定の影響を様々な視点から捉え,調査を行い,実態を明らかにしていく.
 2) 外保連,内保連を通じて改善を要望する.
 3) 緊急アンケート(会員の所属する医療機関の比率に応じて約400の施設を抽出して行う)を6月中に行い,4~5月の実績を基にデータを作成し,厚生労働省,日本医師会に要望書を提出する.
アンケートの主な項目として
 (1) 入院あるいは外来リハの減収内容
 (2) 療法士の1日あたりの単位数の上限設定の影響
 (3) 早期加算対象疾患の範囲拡大
 (4) 療養型病棟機能訓練の包括化の影響
 (5) 実施計画表の妥当性
 (6) 今後のリハ医療への影響
 (7) その他
等を予定している. 

 最後に,言語聴覚療法料の増額,作業療法の早期介入が可能,特定な疾患では合計2時間(6単位:米国の3時間ルールに近づく)まで可能など一部評価できる点は存在するが,それ以上に減額の割合が多く,殆どの医療機関ではコメディカルの人件費すらカバーできない状態となっている1).リハは「おもて」に現われた診療点数だけでなく,入院期間の短縮,患者の満足度,QOLの向上等目に見えない貢献をしている.しかし,病院(経営)サイドの評価は残念ながら「おもて」に出た数字がすべてであり,昨今の厳しい医療情勢からは,収支均衡あるいはいくらかでも収益性が示されなければリハの増員や施設の充実化にはつながらない.そればかりか採算性が悪いという理由で切り捨てや縮小化が行われないとも限らない.そういう意味で今回の改定は時代の流れに逆行し,ようやく一人立ちできそうに見えたリハに対し,その発展に水を差すものになったことは否めない.
 会員の先生方からの率直なご意見を当委員会に頂ければ幸いと考える. 

1) 椎野泰明: 急性期病院における診療報酬改定の影響. 臨床リハ2002; 11(6): 526-631 

回復期リハビリテーション病棟では

NTT東日本伊豆病院診療センター 黒沢 崇四

 当院は総病床数196床の内科系病院で,一般・精神病床を除く全100床の療養病床を回復期リハ病棟として運用している.回復期リハビリテーション(以下,リハ)の対象患者の8割以上は脳血管障害で,その紹介元は近隣の脳神経外科が主体である.平成13年実績で回復期リハ対象者が89%と回復期リハ病棟の要件を十分に満たし,対象患者の確保という点では関連急性期病院を持たない独立型の回復期リハ病院でも何とか維持可能という実績を示してきた.しかし,今回のリハ関連の診療報酬改定は当院の回復期リハ病棟の運営面で大きな影響を与えることになった.以下にその問題点と当院への影響について述べる.

 まず最も根本的な改定は,従来は単なる40分以上と時間軸のみによって評価されていた複雑・簡単の規定が,新たに20分1単位の個別および集団療法に整理されたことである.しかも個別療法は療法士1人当たり一日18単位が上限と明記されたが,これは従来の複雑換算9コマに相当し,実質10~12コマを採択できていた地域では,時間当たりリハ料が全般に引き下げられたことと共に大幅な減収の要因となる.しかし,回復期リハの対象者では個別は1日6単位まで可能とされた.このことは患者個人の能力や体力に応じてきめの細かいリハ時間が設定できるとともに,最大1日2時間(20分×6単位)まで可能となり,十分なPT・OTが配置されている病院では,リハ効果の増大とともに急性期リハ加算が可能ならば,さらに増収になる可能性がある.

 また今回の改定ではリハの急性期に対する評価が一段と進められた.早期リハ加算の期間も14日(100点),30日(80点),さらに90日以内(30点)とかなりの早さで加算額とともに逓減され,より早期になるほど手厚い急性期加算がなされた.しかし,当院では加算上有利な30日以内に転入できる患者は10%以下の少数であるのが現状で,急性期加算のメリットを享受する状況にない.

 さらに今回改定の目玉の1つとして言語聴覚療法(ST)の改定が挙げられる.STの施設基準が示されると同時に,STのリハ料がPT・OT並に引き上げられた.STが3人以上在籍する施設では,さらにSTの増員やSTのリハ時間を増やすことがPT・OTのリハ料減少を補う有力な選択となる.

 これらの今回の診療報酬改定によるメリット・デメリットを勘案して,多くの回復期リハ病棟を有する施設では,潤沢なPT・OT・STの雇用を行った結果,今年度の4~5月の実績で回復期リハ病棟の実質的な減収は1~5%にとどまるという報告がある.しかし,当院のようにPT・OT・STが十分に配置されていない施設では,多くの回復期リハ病棟でかなりの減収となった可能性が高い.実際,当院ではこの4~5月のリハ料の減少は入院で26%減,外来で19%減におよび,その結果,回復期リハの入院単金は前年同期と比較して26,577円→24,088円となり,約9.4%の減少となった.これは100床の回復期リハ病棟の入院のみで約6360万円/年の減収となり大きな痛手である.

 今後,回復期リハ病棟を有する病院において,良質なリハ医療と安定した経営を確保するためには,リハ総合承認施設と言語聴覚療法(Ⅰ)の施設基準を満たした上で,(1)早期入院・早期退院,(2)十分なPT・OT・STの雇用,(3)土日リハの実施など,患者1人当たりのリハ時間拡大の徹底につきると言える.

リハビリテーション専門病院では

神奈川リハビリテーション病院リハビリテーション科 伊藤 良介

 神奈川リハビリテーション病院は実稼働280床の総合リハビリテーション(以下,リハ)A施設で,平均在院日数60日弱のいわゆるリハ専門病院である.入院患者の疾患構成は,脊髄損傷,脳外傷,骨関節疾患がそれぞれ20~30%ずつ,その他は神経難病,小児の神経疾患,障害者の合併症治療などであり,脳卒中は10%に満たない.また発症・受傷から90日以内の入院は20~30%である.診療報酬改定が当院に与えた影響と,現時点での対応について紹介する.

 リハ料に対する影響を疾患別にみると,脊髄損傷・脳外傷については患者1人1カ月あたり30%強の収入減となる.これまでは1日に理学療法と作業療法を共に複雑なものとして行っていたが,個別療法は1日4単位までに制限され,かつ月11単位以上は減額となるためである.受傷後90日まではこのような制限はないが,算定できる場合は非常に少ない.骨関節疾患は人工関節を含む関節の手術が多く,形式的には増収が期待できる.しかし理学療法だけでは最大3単位までであり,さらにリハの内容の問題と,他の疾患の治療枠とのかねあいで常に3単位行えるわけではなく,ほぼ従来のリハの時間及び回数となっている.その他の疾患について,言語聴覚療法の点数は引き上げられたが,当院には脳卒中による失語症などは非常に少ないため,ほとんど好影響はない.外来については,単位制となったことで増収が可能であるが,一方で外来に療法士を割く余裕はなく,収入増にはつながってこない.

 以上のような状況の中でとりあえずの対策を行い,平成13年と14年の4月,5月の収支を比較した.その結果は理学療法17%減,作業療法25%減,言語聴覚療法57%増,全体としてリハ料は約17%減であった.

 今回の改定で,療法士1人1日あたり取り扱い可能患者数が12人から18単位実質9人となった.これまでも実際に限度上限の人数の治療を行っていたわけではないが,1人あたりの取り扱い患者数の減少は避けられず,療法士数が変わらなければ患者数及び訓練時間の制限が必要である.早急なPT・OTの増員,スケジュール管理の徹底などを要請中である.

 リハの診療報酬は,実施計画書などの様式にみるように,もっぱら脳血管障害を念頭においているようである.急性期の重視と回復期リハ病棟への誘導は,理念としては理解できる点もあるが当院のような合併症の多い頚髄損傷や重度の脳外傷,重度重複障害者が中心の病院にとっては現実と乖離している.今回の改定はリハ部門の大幅な収入減を招き,従来からの採算性の問題をますます深刻にした.可能な対策はきわめて限られており,このような状況が続くならば,リハサービスの低下を招くだけでなく病院そのものの存続も難しくなる.リハの対象は脳卒中や老人だけではない.多様な疾患,障害のリハに対して適正な経済的評価が望まれる.

今回の診療報酬改定記事についてのご意見をお寄せください.●編集部 r-news@capj.or.jp ● 

INFORMATION

九州地方会

 今年5月の日本リハ医学会学術集会時に開催された総会で,「地方会の充実」の方針として,日本リハ医学会会員は自動的に何れかの地方会に所属し地方会としての年会費を徴収されないこと(日本リハ医学会が地方会事務局運営費の一部を補助すること)が承認されました.地方会事務局としては今後,名簿管理,年会費の支払いのチェックや経理,入退会の手続き等の事務が大幅に簡素化され助かりますが,地方会独自の活動が制限されるのではないかと不安の声もあります.

 地方会年会費に関しては,今後徴収しない方向で事務局内の作業を進めています.しかし,既に平成14年度分の地方会年会費(1,000円)を支払われた先生方,まだ,未納の先生方もいらっしゃいます.混乱を避けるため,また,不公平にならないようにする方策を考える必要があります.地方会の会場費がおおよそ年会費と同額なので会場費を減免する等の方法もあるかもしれません.この点については,9月29日(日)に北九州市で開催予定の第12回地方会の世話人会・総会での審議事項になると思います.何かよいアイデアがありましたら,事務局までお知らせ願えれば幸いです.

 第13回の地方会は佐賀医科大学整形外科教室講師・浅見豊子先生が会長として開催されることが,前回の地方会世話人会・総会で決定されました.平成15年2月23日(日)に佐賀市での開催予定です.

(佐伯 覚/産業医大リハ医学講座)

近畿地方会

 近畿地方会では,現在25名の世話人が会合の開催ほか色々の活動を行っています.年4回の近畿地方会教育講演会を各府県の世話人が順次それぞれの府県で開催しています.認定臨床医生涯教育単位取得の機会として,この教育講演会のほか,府県等主催・地方会共催の会合(京都地域リハ研究会,大阪リハ研究会,兵庫県リハ医会ほか,年3~5回)が当てられています.年3回の学術集会は大会を1回,Clinical Rehabilitation Conference(CRC)を2回世話人持ち回りで,各地で開催しています.大会は,基礎から臨床に亘る総合的な学術集会になっています.CRCは症例ほか臨床経験の提示と討議を少し時間を掛けて進めています.リハ医療の拠り所として,基礎医学に関連分野の新知見を問うことも大切ですので,年3回のリハ基礎医学セミナーを開催しています.これらの会合については,Newsletter,また,開催ごとの案内を会員各位にお送りしています.地方会として行っているこれらの会合の内容を少しでも留めておきたく,ジャーナルを,今のところ年1回発行しています.これらが更に充実するように会員としてのご参加と各行事へのご協力をお願いいたします.

(藤原 誠/兵庫医大リハ医学)

編集委員会

 1) 論文賞選考:2回目の論文賞選考を行い,5月の第39回本学会学術集会にて表彰いたしました(本紙上で紹介).

 2) 本年度の活動計画:本誌の生命ともいえる投稿論文をいかに増やし,質と量を充実させるかということで努力を重ねております.投稿の呼びかけの拡大,査読過程のさらなる迅速化,統計処理についての専門家や英文チェックのnative speakerを委託することなどを検討しています.こうした方針のもとに年8回程度の委員会開催を予定しております.会員の皆様のご指導,ご支援を心よりお願い申し上げますとともに,皆様からのご投稿を期待いたしております.

 3) 委員および委員長交代:今年度,白土修,里宇明元両先生から志波直人,前島伸一郎両委員に交代されました.退任者のこれまでの編集委員会に対する貢献に感謝するとともに,新委員の活躍に期待しています.また里宇前委員長の後任として,今年4月より赤居正美が編集委員長に就任しています.

(委員長 赤居正美)

教育委員会

 1. 新設された教育改革検討会の意向を受けて,教育委員会は新たなる活動を展開したいと考えています.卒前教育ではモデル・コア・カリキュラムや共用試験,客観的臨床能力試験(OSCE),診療参加型実習(クリニカル・クラークシップ)の導入に対応するために,リハ医学教育のあり方を検討することが急務です.卒後教育では,臨床研修必修化に対応するための指針を打ち出す必要性があります.教育すべき疾患や病態の項目のみでなく,教育の方法やシステムに関するガイドライン作成が教育委員会に求められる課題です.会員の先生方からのご意見をお待ちしております. 2. 認定臨床医生涯教育研修単位が不足している先生方の救済措置として,本年度も2回の全国研修会(東京・大阪)を予定しています.東京での研修会は平成14年10月26日(土)~27日(日)に飯田橋レインボーホール・家の光会館で開催の予定です.認定単位は2日で計8単位を予定しています.詳しいプログラムと申し込み方法は本学会誌8月号に掲載予定です.

(委員長 椿原彰夫)

国際委員会

 第39回本学会学術集会(三上真弘会長)の総会において,平成14年度のHonorary Member候補として韓国Pochon CHA University学長Sae-il Chun, MD (現Corresponding Member),Corresponding Member候補として韓国Yonsei Universityリハ科教授Chang-il Park, MD,また海外研修助成には北海道大学の生駒一憲先生と藤田保健衛生大学の馬場尊先生が対象者として決まったことが報告されました.また,外国人リハ医交流プログラム対象者については既出のCorresponding Memberの先生方の推薦を受けられた若手リハ医の中から,米国UMDNJ-New Jersey Medical Schoolリハ科Assistant DirectorのScott F. Nadler, DO, FACSM (38歳),イスラエルSourasky Medical Centerリハ科Senior PhysicianのGalina Zhukovsky, MD, PhD (40歳)が決まりました.Nadler先生はスポーツリハ,Zhukovsky先生は転倒予防,リウマチ,電気診断に関心があり,現在,施設訪問交流・研究発表の計画を策定中です.

 国際委員会が発足してから3年半となり,4年目の区切りとして来年度の活動を見直すことといたしました.日本リハ医学会会員と交流の深い海外の著名リハ医の多くがすでにHonorary/Corresponding Memberとして選出され,これからはMemberとなられた先生方とより多くの情報交換を行っていく段階となりました.従来,海外研修助成における訪問先としての情報提供,国際交流に値するリハ医の情報提供,韓国に対しては日韓合同リハカンファレンスに絡んだ準備情報交換などを行って参りましたが,会員の先生方には交流についての更なるアイデアがございましたら,国際委員会までご連絡いただければ幸いです.また海外研修助成については応募者の減少傾向があり,若手会員の海外へ向けての積極的な活動を支援すべく,応募条件の緩和や広報の充実を図っていきます.奮ってご応募いただきたく存じます.外国人リハ医交流プログラムについても,海外リハ医学会会長に対する広報やリハ医学が発展途上にあるアジア地域への働きかけなどを行っていく予定です.

(委員長 岡島康友)

広報委員会

 今年度第1回広報委員会(5月8日)において,委員の交代が行われました.また,本学会の役員改選に伴い,担当理事の交代がありました.広報委員会立ち上げ時から抜群のリーダーシップで広報誌の発行を軌道に乗せ,ホームページ開設も難なく実現させた木村委員長が退任され,後任に水落が委員長に,新任委員に若手の赤星委員が選任されました.また,寛大なお人柄とユーモアで委員会の雰囲気を和らげていただいた竹内担当理事が立野理事に交代になりました.竹内,木村両先生のこれまでのご指導に感謝いたします.  新委員長としての抱負は,いままで以上に,会員に有益な情報を,迅速かつ正確に提供することと,委員会と会員の双方向コミュニケーションを目指すことです.留任された飛松,川手,道免,根本委員とともに努力しますのでよろしくお願いいたします.

(委員長 水落和也)

国際委員会 平成15年度 海外研修助成募集のお知らせ

 平成15年度から助成額の上限が研修地域・期間によって35万円まで引き上げられました.また,リハ医学関連学会での発表については条件が緩和され,希望者は口演抄録投稿の意思を示すことで応募できるようになりました.演題採択の可否は後日確認いたします.なお,助成対象研修期間を会計年度の問題で変更しましたのでご注意ください.会員諸氏のふるってのご応募をお待ちしています.

募集人員: 海外リハビリテーション医学関連学会での発表,海外リハビリテーション施設への短期訪問・研究発表に対し4名以内
応募資格: 応募締切日において45歳以下.詳しくはリハ医学39巻7号353頁参照.
助成対象研修期間: 平成15年4月1日~平成16年3月31日
募集期間: 平成14年8月1日~11月30日

専門医コーナー: 第14回リハカレントトピックス&レクチャーのお知らせ

 第14回リハカレントトピックス&レクチャーのお知らせ 日本リハビリテーション医学専門医会長 椿原 彰夫  第14回リハカレントトピックス&レクチャー(日本リハ医学専門医会学術集会)は,平成14年11月2日(土)~3日(日)に岡山県倉敷市の川崎医療福祉大学講義棟において開催いたします.この学術集会は専門医を中心とする研究発表の場ですが,専門医以外の方もご出席可能です.学術的な色彩の濃いプログラムを企画いたしましたので,奮ってご参加ください.出席によって,認定臨床医生涯教育研修単位(1単位)が与えられます.  参加費は事前登録がお得です(5,000円).往復葉書に住所・氏名をご記入のうえ,10月15日までに懇親会予約と併せて,大会事務局宛お申し込みください.  特別企画は右表のとおりです.特別講演,教育講演,シンポジウム,パネルディスカッションを予定しております.  一般学術演題は,専門医の先生方から公募いたします.応募要領は,ホームページをご覧ください.優秀な演題に対しては,賞を予定しております.  なお,11月2日(土)には,同時開催として,認定臨床医生涯教育研修会(2単位)を企画しています.

プログラム

11月2日
10:00~12:00 パネルディスカッション  座長:椿原彰夫
  「EBMを推進できる専門医育成のための医学教育」
   1. 中馬孝容(北海道大学大学院リハ医学)
   2. 新舎規由(防衛医科大学校リハ部)
   3. 才藤栄一(藤田保健衛生大学リハ医学講座)
   4. 竹中 晋(川崎医科大学リハ医学教室)
13:00~14:00 特別講演  司会:本田哲三
  「前頭葉の新しい検査法―遂行機能検査バッテリーと前頭葉眼窩部機能検査法―」
     鹿島晴雄(慶應義塾大学精神神経科)  
14:00~17:00 シンポジウム  座長:大橋正洋
  「外傷性脳損傷の高次脳機能障害」
   1. PETなど画像検査の可能性と限界…蒲澤秀洋(名古屋リハセンターリハ科)
   2. 神経心理学的評価の可能性と限界…先崎 章(埼玉県総合リハセンター神経科)
   3. 画像検査所見と神経心理学的検査の関連…生駒一憲(北海道大学大学院リハ医学)
   4. 脳外傷による記憶障害の診断とリハ…原 寛美(相沢病院リハ科)
   5. 脳外傷・高次脳機能障害のデータベース…都丸哲也(東京都リハ病院リハ科)
   6. 心理社会的障害と社会復帰支援…渡邊 修(東京都立保健科学大学)
11月3日
13:00~14:00 教育講演  司会:塚本芳久
  「中枢神経障害への新たな治療法―可塑性促進と移植―」川平和美(鹿児島大学リハ医学)
18:30~20:30 懇親会(事前申込み) ホテル倉敷(JR倉敷駅ビル)
認定臨床医生涯教育研修会:11月2日 14:00~16:00
  「リハ医学における積分筋電図の利用」 石田健司(高知医科大学リハ部)
  「切断者のリハ」 陳 隆明(兵庫県立総合リハセンター)

大会事務局 

〒701-0192 岡山県倉敷市松島577
川崎医科大学リハビリテーション医学教室
TEL 086-462-1111 FAX 086-462-1199
E-mail: rehamed@med.kawasaki-m.ac.jp
ホームページ: http://www.kawasaki-m.ac.jp/rehamed/AAPJ0.htm

医局だより

藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学講座

 藤田保健衛生大学では,学内リハ関連6部署,すなわち,医学部リハ医学講座,大学病院リハ部,第2病院リハ部,七栗サナトリウムリハセンター,リハ専門学校,藤田リハ医学・運動学研究会を総勢130名を超える「リハビリテーション部門」として統合し,積極的かつ有機的な活動を行っている.

 その中核であるリハ医学講座は,才藤栄一教授,園田茂教授をはじめ,27名の医局員からなる(専門医9名).学内での評価は高く毎年卒業生が1~3名入局する(平成14年は3名).また,他大学出身者も多く(学外15名,11大学),学閥にとらわれず,自由かつ活動的な医局といえる.

 臨床は,特徴ある3病院で多岐に渡るリハが展開されている.1,510床の大学病院には,救命救急45床,脳神経外科108床,整形外科108床,神経内科58床,リハ科15床などがあり,リハ対象病床数は400床,年間初診患者数は1,800例を超える.また,大学病院にもかかわらず発症から在宅まで連続して診療できる症例も多い.これらの症例の経時的データは医師・療法士共有データベースで管理され,日常診療はもちろん,研究にも活用されている.

 七栗サナトリウムリハセンターは回復期リハ病棟52床を含め約130床のリハ病床を有する.2000年より脳卒中リハとしてハード・ソフト両面を熟慮した画期的なFIT(Full-time Integrated Treatment)programを実践している.病棟にフルサイズの訓練室を配置することで,訓練室と病室での生活の較差を解消し,スタッフ間の定期的かつ確実な情報交換を行う.情報交換は,LAN上のデータベースで補強する.また,療法士複数担当制による休祭日なしの週7日訓練を実施する.最短期間で最高の訓練到達度を目指すこの「統合的高密度リハ病棟プログラム」の有効性はすでに明らかとなりつつあり,国内外より注目されている.

 研究は,脳卒中・外傷性脳損傷機能予後,装具開発,歩行分析,運動学習,嚥下障害など多岐に渡り,公的研究費獲得も多数ある.摂食・嚥下リハでは,日本摂食・嚥下リハ学会事務局が当講座内にあり,日本における中心的な存在となっている.

 当大学における卒前・卒後リハ医学教育は質量共に充実していると自負している.また,療法士教育の新しいプログラム(COSPIRE)が開始された.

 今日救えない患者を明日は救えるようになるため,私どもは,考え得る最高のリハ医学・医療の創生し,その文化を普及・発展させることで,社会,患者に貢献することを目標に活動している.入局希望は大歓迎で,問い合わせは常時受け付けている.更新性の高い当リハ部門ウエブページを是非参照されたい.

(馬場 尊)

藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学講座
〒470-1192 愛知県豊明市沓掛町田楽ヶ窪1-98
Tel 0562-93-2168,Fax 0562-95-2906,E-mail: rehabmed@fujita-hu.ac.jp
HP: http://www.fujita-hu.ac.jp/ ~rehabmed/

勤医協札幌丘珠病院

 勤医協札幌丘珠病院に在籍している医師は,精神科2名,リハ科2名,内科1名と少なく,リハ科だけの医局ではなく,全医師で医局を運営しています.

 精神科は開放病棟で,一般病床として運営していましたが,昨年10月に病床を廃止し,いまは,外来だけとなっています.精神科の病棟のところには,同一法人内からベッドを50床移動し療養病床としました.

 リハ科は回復期や慢性期の脳卒中,整形外科の手術後の患者を受け入れて,平均在院日数60日の一般病床で運営してきました.嚥下障害のある患者さんや高齢の障害者の多い病棟での60日の運営は厳しく,今年度から,リハ科も療養型病床としました.

 その結果,全館150床の医療保険型の療養病床となりました(病院の増改築を行いました).なぜ,回復期リハ病床をいれないのかと言われるかもしれませんが,リハ科の医師のどちらかは必ず病棟におり,そのほかの時間帯は外来,往診や検査などに携わっています.医療内容や地域の患者さんへの責任があります.せっかく専門医や認定医が病棟にいても回復期リハ病棟ができないところもあるのです.リハ医療の発展のために改善してもらいたいものです.

 医療保険型の療養病床は,今後,継続するのは難しくなると言われています.しかし,回復期や慢性期の患者さんを受け入れて,十分にリハ効果をあげている実績があるのです.納得できません.

 さらに,追い打ちをかけているのが今回の診療報酬の改定です.史上最悪の改定ですが,当院の4月,5月分についてリハだけでみますと,当院昨年比でPT部門61%,OT部門73%,ST部門115%です.全体で昨年比72%です.

 今後,リハは急性期と回復期リハ病棟だけで,あとは施設となってしまうような状況では,リハ医療の崩壊とともに理学療法士や作業療法士の就職口もなくなります.

 日本医師会では医療福祉への投資は,公共事業への投資より経済への波及効果も雇用人数においてもはるかに大きいことを示しています.

 健全な経営なくして患者さんのいのちや健康を守る医療はなりたちません.リハ医療だけに限らず,診療報酬の改善を強く望みます.

(岡本五十雄)

勤医協札幌丘珠病院
〒007-0880 札幌市東区丘珠町487-4
Tel 011-783-0777,Fax 011-781-7690

平成13年度 日本リハビリテーション医学会 論文賞受賞者の紹介

最優秀賞

電気刺激によるラット骨格筋筋疲労に関する研究.リハ医学2001;38:562-574 

「最優秀賞」を受賞して……………問川 博之
 このたびは最優秀賞を賜り誠に有難うございます.本研究は,月が瀬リハセンター在職中に学位論文のために着手したものでありますが,ラット用小型電極や実験台の開発に始まり,論文の作成に至るまで大変苦労した思い出がございます.論文の出来には聊かの自信もありませんでしたので,今回の受賞は全くの驚きでありますとともに,思いがけないご評価をいただきましたことを大変嬉しく思います.この受賞を励みに,今後ともリハ医学の臨床・研究・教育に精進して参りたいと存じます.
 終始適切な指導を賜りました千野直一教授,実験ならびに論文執筆に貴重な助言を賜りました岡島康友教授,研究にご協力くださいました教室の諸先生方に心からお礼申し上げます. 

略歴:平成元年筑波大学医学専門学群卒業後,慶應義塾大学医学部リハ科入局.平成6年5月慶應義塾大学月が瀬リハセンター助手,平成8年慶應義塾大学医学部リハ医学教室助手,平成10年国立療養所東埼玉病院リハ科,平成12年稲城市立病院リハ科医長,現在に至る.平成7年日本リハ医学会専門医取得.

電気刺激によるラット骨格筋筋疲労に関する研究

問 川 博 之

慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室
(受付: 2000年10月11日; 受理: 2001年6月1日)  

要 旨: ラットの前脛骨筋およびヒラメ筋を対象に,刺激針電極と表面電極列を一体化させた小型電極を用いて30秒間の持続的電気刺激を行い,等尺性張力と筋活動電位ならびに筋線維伝導速度(MFCV)との関係を検討した.またPAS染色を用いて筋線維グリコーゲンの減少状態を調べ,活動化された筋線維の広がりを形態学的に検索した.持続的強縮刺激下では,張力の減少に先行して活動電位の振幅の低下,潜時の遅延,およびMFCVの低下が認められた.振幅低下の割合は筋種と刺激周波数の違いをよく反映しており,疲労をモニターするための簡便な指標となり得ることが示唆された.筋線維グリコーゲンの消耗は刺激電極を中心に楔型の限局した範囲で生じ,本研究の刺激方法が筋内神経刺激というより直接的な筋刺激であることが確かめられた. 

キーワード: ラット骨格筋(rat skeletal muscle),電気刺激(electrical stimulation),筋疲労(muscle fatigue),筋線維伝導速度(muscle fiber conduction velocity),PAS染色(periodic-acid Schiff staining) 

優秀賞

有田元英,出江紳一,高橋 修,木村彰男,千野直一 各氏:同心円型能動電極を用いた経頭蓋磁気刺激による運動誘発電位記録法―記録法標準化の検討―.リハ医学2001;38:471-480

「優秀賞」を受賞して……………有田 元英
 このたび論文賞を戴きたいへん名誉に感じております.磁気刺激に関する研究テーマは,数年前に千野教授から与えられ,手さぐりの状態で始めました.当時,日本の磁気刺激研究は今のような治療より基礎研究や誘発電位の記録が主体でしたから,私も脳卒中患者の磁気誘発電位検出を最終目標として研究を始めました.もともと脳卒中運動障害回復の電気生理学的評価には興味がありました.しかしいざ実験を始めてみると,安全性,院内でのコンセンサス,被検者への説明,電極の問題,患者に筋収縮を制御させ集中させる工夫,実験時間,刺激域値と部位,筋電計―電極―筋電メーターの接続,誘発電位の信頼性や再現性などさまざまな問題に直面しました.健常人だけでなく,脳卒中患者が安全かつ集中して協力できる実験方法を確立するまでに,試行錯誤が繰り返されました.今回報告された実験方法は,やや煩雑に感じられるかもしれませんが,刺激条件(部位・閾値・強度)と促通条件,波形指標など磁気刺激検査では必要なものです.しかし,実際の臨床では刺激条件を少なくし表面皿電極で記録する方法を検討する必要はありそうです.
 今後は,磁気刺激の痙性麻痺に対する抑制効果,上下肢の動脈硬化を電気的に評価するシステム,リハ医学で用いられる各種評価をリアルタイムに利用できる電子カルテシステムなどを研究したいと考えております.
 能動電極を開発された才藤教授,富田教授,実験にご協力いただいた出江助教授,高橋技師長,論文作成にあたりご助言いただいた千野教授,木村教授に深謝いたします. 

略歴:平成2年慶應義塾大学医学部卒業後,同リハ科入局.東京都リハ病院,埼玉県リハセンター,東京専売病院を経て,現在,東京都リハ病院医長.

同心円型能動電極を用いた経頭蓋磁気刺激による運動誘発電位記録法—記録法標準化の検討—

有田 元英,出江 紳一, 高 橋  修,木村 彰男,千野 直一 

慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室
(受付: 2001年1月30日; 受理: 2001年5月21日)  

要 旨: 自作の同心円型能動電極を用いた経頭蓋磁気刺激による運動誘発電位を記録した. 橈側手根屈筋, 橈側手根伸筋に同心円型能動電極と皿電極を貼付し, 安静時から最大筋活動量の40%まで合計11段階を促通条件とした. 男性5名(平均29歳)において運動誘発電位の潜時, 振幅, 面積の変動係数はそれぞれ, 3.9%, 18%, 18%で安定していた. 男性13名(平均56.6歳)を対象に記録された波形から, 振幅•面積•潜時•静止期を計測した. 安静時から促通条件が増すにつれ, 振幅•面積は有意に増加し, 潜時は有意に短縮した. 最大筋活動量の40%で促通効果は最大となった. 主動筋, 拮抗筋に設置された同心円型能動電極は, その直下の筋活動を記録することができるため, 拮抗筋促通時にも主動筋で弱い促通効果があることが認められた. 経頭蓋磁気刺激, 促通条件を組み合わせた同心円型能動電極による運動誘発電位記録の一方法を確立した.  

キーワード: 経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation), 運動誘発電位(motor evoked potential), 促通(facilitation), 表面電極(surface electrode), 筋電図(electromyography) 

奨励賞

殷 祥洙,益子詔次,山内秀樹,猪飼哲夫,米本恭三 各氏:大腿骨骨萎縮の予防に関する実験的研究.リハ医学2001;38:203-210 

「奨励賞」を受賞して……………殷  祥洙
 このたび論文奨励賞を賜りましたことは,私にとって身に余る光栄なことと存じ恐縮しております.本研究のテーマである廃用症候群に関してのリハ効果について,私自身が非常に興味を持っていたところ,山内先生,益子先生から研究開始へのお導きをいただいたことが,私にとっての幸運でした.
 そもそも,各病院で見放された廃用症候群の人々が,本学リハ科でみるみるADLを獲得して社会復帰していくのを,学生時代に臨床実習で目の当たりにしたときから,私のリハドクターとしての道は始まったと思います.医師となり,安城更生病院での充実した研修プログラムを終えた後,迷わず米本前教授の門を叩きました.そこで先生から「研究というものは,小さなことの積み重ねだよ.そして研究成果を論文にまとめあげることが実験動物達の霊に報いることになるのだよ」とのお言葉をいただきました.そのご意向に沿えるよう,なんとか論文作成までこぎつけました.
 論文の作成にあたっては,宮野佐年教授,猪飼哲夫助教授の懇切丁寧なご指導を賜りました.このように多くのご支援の賜物であるこの論文に関わることができて,大変感謝しております.誠にありがとうございました. 

略歴:平成7年東京慈恵会医科大学卒業後,愛知県厚生連安城更生病院に整形外科研修医として勤務.平成9年東京慈恵会医科大学附属第三病院リハ科助手,平成11年東京都リハ病院リハ科医員,平成13年東京慈恵会医科大学附属病院リハ科助手,現在にいたる

大腿骨骨萎縮の予防に関する実験的研究

殷  祥 洙,益子 詔次,山内 秀樹,猪飼 哲夫,米本 恭三 

東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座
(受付: 2000年3月8日; 受理: 2001年2月7日)  

要 旨: 寝たきり老人における廃用性骨粗鬆症に対する,予防的なリハビリテーションが近年重要視されている.今回我々は廃用状態下のラットにおける運動負荷が,その大腿骨に及ぼす影響について検討した.廃用ラットは後肢懸垂法により作成し,期間は8週間とした.運動は骨量増加に対する有用性が認められている動的抵抗運動である,ジャンプ運動を用いた.実験の結果,後肢懸垂群では骨密度および最大曲げ荷重量が有意に低下したのに対し,後肢懸垂中にジャンプ運動を行った群では通常飼育群と差を認めなかった.したがって動的抵抗運動が廃用症候群を来す環境下での骨萎縮の予防法として有用と考えられた. 

キーワード: ジャンプ運動(jump exercise),後肢懸垂(hindlimb suspension),骨密度(bone mineral density),動的抵抗運動(dynamic resistance training),リハビリテーション(rehabilitation) 

第39回日本リハビリテーション医学会学術集会:印象記

横浜市立大学医学部附属病院 根本 明宜

 今年5月9~11日に第39回日本リハビリテーション医学会学術集会が東京国際フォーラムで開催されました.有楽町駅前で,東京駅からも徒歩圏,地下鉄も直結で交通の便は大変良く,会期中に雨もありましたが苦にならない学会でした.

 会場に入り,現代建築の粋を集めたガラスを多用した建物に見とれていると,上の方に黒とオレンジの見慣れたマークが大きく掲げられていました.リハ学会を行っていることが関係者には一目瞭然で,会場の大まかな場所がわかりました.とはいうものの,受付を済ませてからが大変で,あまりに広く,経路が複雑でCブロックに行こうと思ってもなかなか行き着けず,会長講演には若干遅刻をしてしまいました.

 Cホールに入ると,いつもの横断幕ではなく,舞台の両側に花を配した装飾でした.会長講演はプログラムに沿いながら「リハビリテーション医学の実証と発展」という学術集会の意図について話され,プログラム構成にかけられた会長の熱意を感じました(写真上).

 今回は特別講演に外人演者がなく,最新のリハの情報を聞く機会がなかったことが少し残念でしたが,木村淳先生はいつも通り大変わかりやすい講演でした.養老孟司先生のちょっと違った視点からの講演,イリザロフ法の大家であられる松下隆先生の講演も好評だったと聞いています.

 シンポジウムやパネルディスカッションは学会長の専門の義肢装具,最新の知見山盛りのロボットなど,会長講演で強調されるだけのことはある内容が目白押しでした.多くのセッションで会場に沢山の参加者があり,活発な論議がなされていました.今回のシンポジスト,パネリストではリハ科医師以外の方が例年より多いように感じました.専門の方から最新の情報をご教示いただけたのはなかなかない貴重な機会でした.ただ,リハ医学会としてのまとめに座長が苦労されていたり,議論がかみ合わないセッションも見受けられました.

 メインホールも目新しく,ポスターセッションにも工夫がみられました.ポスターを取り外し可能なボードに貼り,3カ所設けられたブースで,運んできたポスターを掲示してのプレゼンテーションでした.椅子に座って聞け,質問もしやすくなりました.ただ,ポスターと席とが離れていて,従来の形式のポスターでの発表が多かったこともあり,視力の良くない私には若干つらいところもありました.また,興味のある発表のポスターの細かな結果を他の発表をききながらじっくり見ておくということもむずかしく,ポスターセッションの良い部分が生かせていないかなとも感じました.

 また,本邦の現状で仕方がない部分とも思いますが,スライド単写の発表が若干寂しく感じました.海外の学会は以前はダブルスライドで,マルチメディア時代の昨今ではPCでのプレゼンテーションで動画の混在や表示のタイミングまで考慮したものになっています.単に機材の問題でなく,プレゼンテーションの技術も異なるようです.費用の問題は大きいですが,世界に通用するプレゼンテーション技術を習得する必要性はあり,国際化を進める学会全体として検討していただきたい事項だと存じます.

 一般演題は例年のことなのですが,リハ学会の良い点でもありますが,テーマが多岐にわたり,多くのセッションが並列で行われておりました.聞きたい発表があっても,移動時間との関係で行ったり来たりはなかなかできず,欲求不満気味であったのも例年通りでした.日本を冠した学会ですので,リハ医学の挑戦的な研究とリハ医療の積極的な展開を推し進めるには,発表形式,内容もそろそろ吟味され,演題数も制限して良い時期かもと,日本でも指折りのコンベンションセンターのガラス越しの光の中でふと思いました.

 いずれにしろ,第39回の学会は大盛会で,何よりと存じます.三上会長をはじめ主幹いただいた帝京大学の先生方にお礼申し上げます.お疲れさまでした.

第39回学術集会を終えて

第39回学術集会会長 三上 真弘

 はじめに,本学会にご参加いただいた方々とご協力くださった多くの方々に心からお礼を申し上げます.今回,学術集会を開催するにあたり心配な点が2つありました.第1はW杯サッカーのために会期を通常より約1か月早めたので,演題が集まるかということでしたが,口演,ビデオ,ポスター合わせて565題の応募をいただくことができました.第2は会場は大変交通の便のよい所ですが,会場費が高いので赤字を出さないかということでした.そのためできるだけ無駄を省き,お金をかけずアイデアと工夫とで会を運営することに心がけました.天候にはあまり恵まれませんでしたが,幸いにして2,547人(会員1,971,非会員医師54,医師以外327,セミナーのみ参加153,招待42人)の参加があり,まだ会計報告はできていませんが,大きな赤字は出さずにすんだと思っています.

 本学術集会では,各会場の前でのスライドの受付を止めて,スライドセンターを作りそこですべてのスライドを受付,返却しました.これは今回初めての試みだったので,混乱が起こらないか多少心配していましたが,大きな問題もなくうまくいったと思います.

 ポスター発表も新しい方法を取り入れました.ポスターを貼る台紙が紙製でかつ壁からはずせるため,ポスターを貼りやすいこと,また発表に際しては従来のようにポスターの前をぞろぞろ移動せず,ポスターを発表ブースに運びそこで発表してもらい,聴衆は椅子に座って聞けるという形をとりました.これについても概ね好評であったと思います.

 その他,展示会場のレイアウトも工夫し,出展業者の評判も良く,全体として大きなトラブルもなく成功裏に会を終えることができたと考えています.これも会員の方々や医局・同門会員,ご援助,ご協力くださった皆様のおかげと心より感謝申し上げます

第1回日韓合同カンファレンス報告

特別委員長 上好 昭孝(和歌山県立医科大学リハビリテーション科)

 日本リハビリテーション医学会の米本恭三前理事長,千野直一理事長,石神重信理事らの尽力により,本年から2年おきに日韓で交互に合同カンファレンスが開催されることになりました.目的は,両国の意見交換の場と若い医師の研修の場となり,明日のリハ医学の発展の場とすることであります.

 記念すべき第1回合同カンファレンスは韓国の京都として知られている慶州のHotel Hyundai Gyeongiuで,4月19(金)~20日(土)にわたりPresident Prof. JH Moon, Vice President Prof. C Parkおよび平澤泰介教授のもと開催されました.

 本会のメインテーマは「21世紀のリハビリテーションの役割」でありました.学会前日19日の夕方7時から,Welcome ReceptionがPresident Prof. MoonとVice President Prof. Parkのもとに開催され,Moon会長から歓迎の挨拶があり(写真上),続いて韓国のHonorary President Prof. JS Shinなど組織委員から歓迎の意が述べられました.謝辞をかね日本からは米本前理事長,千野理事長,組織委員がお礼とこの会への期待を順次述べられました.その後立食式の懇親会では風土食豊かな,きめ細やかな料理がだされ和気藹々と歓談の場がもたれました.

 また,Moon会長が日本からの積極的な演題応募や参加について感謝の意を述べられ,今後も続けていけるよう期待しているとの挨拶がありました.次回は2004年平澤教授のもと京都で夏頃行われることが決定しました.その後両国役員の懇談会がもたれ,日韓の親善に大いに役立ったと思います.

 翌日(20日)は午前9時からオープニングセレモニーがあり,慶州市長の歓迎の挨拶のあと,日本からは米本前理事長,韓国からはMoon会長が,日韓合同カンファレンスの将来について両国のリハ医学の発展のため開催していくことの意義についてそれぞれ挨拶されました.

 Plenary Sessionでは,Moon会長が“Past, Present and Future of Rehabilitation Medicine in Korea”と題して,韓国のリハ医学の歴史や教育システム,病院,教育機関である大学についての実態を報告されました.1958年にYonsei University College of Medicineでリハ医学の講義が始まり,1972年に韓国リハ医学会が創設されたことなどが報告されました.現在41医科大学のうち34大学でリハ科が既に独立していることなどを知ることができました.また日本を代表して千野理事長が“Past, Present and Future of Rehabilitation Medicine in Japan”と題して,本邦では1920年にcrippled childrenに高木教授が医学分野にリハ概念を初めてとりいれられたことや,1963年に日本リハ医学会が創設されたことが報告されました.そのほか専門医制度や教育,将来について紹介されました.

 11時からのシンポジウム“Stroke Rehabilitation”では,正門由久氏が“Current status of stroke rehabilitation in Japan”,Han氏が“Dysphagia management of stroke”,石神氏が“Orthotic treatment in acute stroke rehabilitation”,Kim氏が“Reorganization of motor and language network in stroke patients”と題して発表されました.

 ランチョンセミナーでは,Seoul大学のHan氏が“Medical management in osteoporosis treatment”と題して骨粗鬆症治療の重要性は骨折発生率やQOLの改善に重要なことが報告されました.午後は下の表に示すようにパネルとして3部門同時並行で行われ,4~6時は5会場に分かれ一般演題発表が行われました.

 今回の参加者は526名(日本141名)で同伴者が41名であり,一般演題が60題(日本30題),ポスターが139題(日本63題)あり,1日では消化しきれない,内容のあるものでありました.

 夜7時から民族ダンスなども盛り込まれた閉会式が開催され,参加者全員が郷土の踊りに堪能されたと思っております.

 最後に,昨年9月急遽日韓合同カンファレンス特別委員会ができ,委員の先生方には何かとご努力いただき,また各方面へ演題応募ならびに参加をお願いしたところ,多数の先生方にご協力いただき感謝申し上げます.2年後の日本開催のときにも,会員諸氏には今回以上のご協力をお願い申し上げます.

広報委員会より

  例年より早く終了したリハ医学会のあとは,ゆっくりサッカーW杯観戦といきたいところでしたが,診療報酬改定にともなう大幅な減収の中,その対策に追われた先生方も多かったことと思います.W杯決勝のキックオフに間に合わないくらい残業しても,報酬上の評価が低下してしまったリハ関係職の動揺は相当なものです.高齢化社会では,人の手で人を医学的に治療するリハ医療が,さらに重要になると思いますので,良い方向に再展開することを期待しています.この数か月,個人レベルでのやりとりでは,様々な意見が聞こえておりましたので,かわら版的な機動力をもつリハニュースでは,さっそく,診療報酬改定を特集に組みました.学会の公式の調査等を踏まえて,今後の対策は出てくると思われますが,その前に,役割の異なる病院の情報や意見を知ることができる企画になったと思います.リハニュースをきっかけに,さらに活発な議論がなされれば幸いです. ●また,リハニュース14号では,学術集会終了後の記事を会長の三上先生にお願いしました.初の試みですが,翌年以降の企画にも役に立つことと思います.今後も最新の話題に則した紙面づくりを広報委員一同考えておりますので,ご意見等ございましたら,学会宛FAXもしくはr-news@capj.or.jpにお送りください.

(道免和久)

事務局コーナー

 今年は認定臨床医の資格更新初回年と,リハ医学白書,用語集,会員名簿等の出版年であります.本年度会員名簿作成にあたり,5月に会員の皆様にお届けしました登録内容についてご確認の上,訂正,変更等のご返却をお願いしましたところ,6月末日までに,4,330通受理いたしました.今回は不掲載の各項目を設けました.その結果,住所や電話番号等不掲載のご希望が2,000通以上ありました.なお,変更届は速やかにお届けくださいますようお願い申し上げます.名簿は学会誌10月号と同時発送する計画で,現在邁進中です.

(白土幸子)

左より山本美佐子,白土幸子,桜井順子,宇野知佐子(第39回学術集会にて)