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回復期リハビリテーション病棟の現状と課題

日本リハビリテーション医学会 社会保険等委員会
 担当委員 大島  峻
 委 員 長 本田 哲三
 担当理事 石田  暉

はじめに
 平成12年4月の第四次医療法改定において回復期リハビリテーション(以下,リハ)病棟が新たに導入された.改定の主目的は亜急性期または回復期に相当する患者に充実したリハサービスを提供することにある.本委員会は回復期リハ病棟の現状を把握し今後のリハ医療の課題を明らかにする目的でアンケート調査を行ったので報告する.
 調査対象および調査方法
 調査対象:日本リハ医学会研修施設333施設および回復期リハ病棟連絡協議会会員施設95施設(このうち30施設は双方に所属している),計398施設.
 調査期間:平成13年9月20日~10月15日
 調査方法:郵送によるアンケート調査(一部自由記載あり). 

結果
 1. 回収率:回収率は74.6%(297施設から回答があり)であった.
 2. 回復期リハ病棟取得施設数(表1):回答のあった297施設中79施設(26.6%)が取得済みでそのうち私立病院が69.6%(55施設)でリハ病院(50施設)がもっとも多く,次いで療養型病床群(30施設)である.しかし,一般病院(32施設)や一部の大学病院(13施設)でも導入が検討されていた.
 3. 回復期リハ病棟取得病院の推移(図1):制度の初期には療養型からの移行が多く,一般病床からの移行は全体の1/3と少ない.
 4. 回復期リハ病棟取得病院の特徴:回復期リハ病棟を取得した病院の中には一般病床のみの施設が18と療養型病床を持つ施設が61あった.一般病床が全体の50%以上を占める施設を「一般型」,療養型病床が50%以上を占める施設を「療養型」とすると各々,38施設,41施設となる.この両群を比較すると次のような差異が認められた(表2).
 ①一般型は看護補助者が多く,療養型は専従の療法士が多い,②発症から入院までの期間は一般型が短く,平均在院日数も一般型が短い,③患者構成は療養型に脳血管疾患が多く,外科手術後が少ない.一般型に整形外科疾患が多く肺炎後などが少ない,④他施設からの紹介は一般型が40%,療養型が64%であり,療養型の方が地域との結びつきが強い.回復期リハ病棟を導入した後の変化は,⑤療養型はリハの入院期間が短縮し,一般型はリハ以外の入院期間が短縮している.
 5. 回復期リハ病棟導入上の問題点(検討中の施設を対象,複数回答可)
 a) 発症後6カ月以内の症例が80%以上(46例)
 b) 専従の医師の確保(31例)
 c) 常勤の療法士の確保(21例)
 d) 施設の面積基準の確保(27例)
 e) その他(20例)
 6. 回復期リハ病棟のスタッフ:平均値で比較すると,①患者数:看護婦数は10:3.8,②患者数:看護補助者数は10:1.7,③病棟常勤配置PTは4.4人,OTは3.7人.平均52.7床の病棟で1人のリハ科専従医師が配置されている.PT及びOTは38%の病院で新規に採用し,それぞれ4.4人,3.7人を病棟に配置,専従医師の20%は新規採用で確保されている.
 7. 回復期リハ病棟の業務内容:回復期リハ病棟の現状はほぼ規定通り3:1看護,6:1看護補助,しかし,病棟内でのリハは少なく,PT,OT,ST各々平均39%,42%,32%である.それでも25%の病院では院内の療法士の間で業務格差があると訴えている.リハ看護計画書が作成されているのは91%であった.リハ病棟専従医師は平均週に1回の外来担当,週に0.6回の当直勤務を行っていた.各部門の記録の1元化を実施しているのは51.9%の施設だった.
 8. リハ病棟専従スタッフの業務負担:リハ病棟専従医の労働負担に関し21施設から回答があり,書類の増加,カンファレンスの増加,患者や家族への説明の増加が各々8件,5件,5件であった.更に11施設(52%)からは受け持ち患者数の増加,患者の重症化,急性期医療への対応など臓器専門医との連携や医療処置の対応にリハ科医としての負担が増加していると回答があった.専従の療法士の業務も52.6%の施設が増加と答えた.内容は事務量とカンファレンスである.
 9. 回復期リハ病棟の患者確保:患者の46.5%は同一施設内からの確保,53.5%が他施設からの確保であった.脳血管疾患に例を取ると発病から入院までの期間は平均48日であり,3カ月以上たってからの入院も3.5%認められた.
 10. 平均在院日数:回復期リハ病棟の平均在院日数は脳血管疾患を例に取ると74.4日,3カ月以上が34.6%を占める.
 11. 患者の機能回復の変化:60%の施設で回復期リハ病棟導入後に改善したと回答している.
 12. 病院の収入*:回復期リハ病棟を取得することで施設全体として増収となったと回答したのが81.6%,減収と回答したのが2.6%であった.増収の理由は入院単価の増加であり,減収の原因は施設全体としての入院患者数の減少であった.( *本結果は平成14年4月の診療報酬改定前の調査結果である.)  

まとめ
 1) 回復期リハ病棟は初期は施設基準を満たしやすい療養型病院が多かった.最近は急性期の患者の集めやすい急性期病院からの移行が増加する傾向がある.実際,回復期リハ病棟の患者は半数が同一医療機関内での移動である.
 2) その結果,在宅復帰率も向上している.リハ入院期間の改善とも相まって回復期病棟導入は一定の成果をあげているようにみえる.
 3) 診療報酬上も82%の施設では増収となっている*.( *本結果は平成14年4月の診療報酬改定前の調査結果である.)
 4) 一方,病棟内でのリハは相変わらず少なく当初のねらいどおりに実現されていない.記録の一元化は約半数の施設に留まっている.さらに事務作業とカンファレンスによる業務量の増加が問題となっている. 

おわりに
 医療制度改革にともない,今後ますます一般(急性期)病床の在院日数短縮と回復期リハ病棟の増加が予想される.本学会としても適切なリハを提供できる病棟の増加は好ましい傾向といえる.そのためには回復期リハ病棟本来の理念にそった制度の改変と運用が前提となる.
 本委員会は今後とも回復期病棟の質的向上が実現されていくように実施状況を見守り報告していきたい.  

リハ医学 39-7掲載