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リハニュース No.34

2007年7月15日

  1. 特集:米国のリハビリテーション医療制度と教育の動向について

  2. 第44回学術集会:印象記

  3. 第44回学術集会を終えて

  4. INFORMATION

    広報委員会

    社会保険等委員会

    認定委員会

    教育委員会

    編集委員会

    システム委員会

    診療ガイドライン委員会

    東北地方会

    中部・東海地方会

    中国・四国地方会

  5. 障害があるからこそスポーツを

  6. 平成19年に行われたリハビリテーション料に関する診療報酬再改定について

  7. 2006年度論文賞受賞者紹介

  8. 2006年度海外リハ医:印象記

  9. 2006年度海外研修:印象記

  10. 医学生リハセミナーに参加して

  11. REPORT:第51回日本リウマチ学会

  12. REPORT:第48回日本神経学会

  13. REPORT:第80回日本整形外科学会

  14. 医局だより:佐賀大学

  15. 広報委員会より

  16. 事務局だより

特集:米国のリハビリテーション医療制度と教育の動向について

 Jeffrey R. Basford, M.D., Ph.D.

はじめに

 2005年10月、日本を訪れて国際シンポジウムや市民公開講座などで米国のリハ医療制度と教育の動向について紹介する機会があり、米国の医療システムで起こっている変化についてお話ししました。日本と米国のリハ医療制度と教育の類似点や相違点を知ることは、リハに興味のある人たちにとって、極めて有益なことと思います。
このときの日本訪問で私自身が学んだ内容について整理する時間がありました。また今回、米国のリハ医療制度と教育の動向について、現時点での最新情報を本紙に紹介する機会をいただきました。私のゴールは、できるだけ客観的にこれらの内容を紹介することですが、特に米国の巨大で複雑な医療システムの解釈となりますので、これをまとめる私個人に依存する部分もあり、期待される客観性よりも少し選択的な内容になるという点をご理解いただきたいと思います。私自身、毎日の臨床実務を行うとともに、研究者でもあり、また、Archives of Physical Medicine & Rehabilitationの編集に携わるというバックグラウンドを持っており、できるだけ広く普遍的な視野の下で、記述したいと思います。

Rehabilitation (PM&R)の研修を完了した。20年以上Mayo Clinic PM&Rに在籍し(図1)、臨床と研究に関しては、物理療法、神経学のリハ、筋骨格系を専門としている。現在、Mayo Clinic PM&Rの教授であり、NIH Rehabilitation Research Training Centerのdirector、Mayo Clinic PM&R部門の研究委員会委員長を歴任している。複数の医学専門誌の編集委員を務めており、Archives of PM&Rの現編集長である。

医療システムとは

 国の医療システムは、国民の健康への貢献の必要性と、その国の社会的構造や将来の展望との、相互的な作用を反映するものです。米国においてもこの点は他の国と変わりません。しかしながら、米国では、医療の規模が大きく、市場性が重視されるために、財政的問題と社会的影響に極めて敏感に影響されるものとなっています。このような米国でのアプローチはそれ自体で、他の国に対して、何らかの役に立つ予測を提供する可能性があるものと言えます。

図1 ミネソタ州南東部の炉チェスターに位置するMayo Clinicの全景

米国の医療システム

 米国の医療システムは、伝統的に長い間、政府主体の健康保険制度ではなかったということが比較的よく知られていますが、引き続きこれを認識していただくことが重要です。すなわち、米国の医療システムは無計画に発展して、あたかも大きなソフトウエアプログラムのように進化しています。問題が発見されると必要に応じてパッチワークのように繕われます。その結果は有益なのですが、混乱していることも事実です。第一に、米国の医療システムはしばしば指摘されるほど、思慮がなく無秩序に変化するものではありません。定年退職者や、低所得者に対する基本的医療保障のために適正な評価を行うためのものです。しかしながら、長期ケアが必要な患者や、不十分な保険で働いている人々のケアに対する支払いに関しても有効で、適切に対応されています。第二に、米国は日本やヨーロッパと同じく、財政難と高齢化の問題に直面しています(図2)。その結果、現医療システムは、部分的な目標への到達がゴールと捉えられます。医療システムはさらに中央に集約されて、その結特集◎米国のリハ医療制度と教育の動向について果としてますます政府の方針に依存して保険料が支払われるようになっています。一方、米国から傍観すると、日本やヨーロッパでは、システムの類似点はあるものの、より競争的に効率的な方法で施行されているようにみえます。

図2(a) 医療保険(Medicare)の役割と将来予想
高齢化に伴い医療保険の需要は急速に増加し、今後も増加し続けると試算されている。

図2(b) 労働者/定年退職者の比率と将来予想
高齢化に伴い率が低下し、収入に対する支出増が懸念される。

コスト削減、在院日数の短縮

 このような傾向は米国のリハ医療の実践に、極めて直接的に、予測可能な方法で、大きな影響を与えています。これには、リハが米国の医療システム全体の中では規模が小さいということと共に、リハ医療の多くの変化は医療全体に影響を与える変化が原因となって起きているということを認識する必要があります。特に、費用の徹底的な評価により、在院日数のさらなる短縮と、患者の自宅、リハ、または、長期療養施設への、より早期の退院を実現しました(図3)。この結果として、リハユニットには以前に比べてより重症患者が入院するようになり、早期から集中的な治療が開始されるようになりました(図4)。リハ医療を提供するわれわれもまた、費用対効果の制約から、在院日数短縮と早期退院を実践しています。例えば大学病院であるMayo Clinicでは、典型的な脳卒中急性期患者では入院後3~5日でリハユニットに送られ、リハユニットでの在院日数はここ10年で、20日から11~12日へと半減しています。

図3(a) Mayo Clinic リハ科の在院日数(LOS: length of stay)の推移
1985年から1995年で半減、1995年から2005年でさらに半減しており、現在は11~12日となった。

図3(b) Mayo Clinic リハ科の年間入院者数の推移
在院日数の減少に伴いベッドの稼働率が上昇し、年間入院患者数は著しく増加した。

図4 必要とされる看護単位の推移
在院日数短縮、患者増により重症患者比率も増加し、その結果として、必要な看護単位も増加している。
1995~2002年の間に、5割増の看護力が必要となった。

急性期は一日3時間、週末もリハ 施行

 これらの変化は 医療の実践に明らかな変化を生みました。退院計画はさらに詳細となり、以前に比べてより早期から開始されるようになりました。リハ施行は少なくとも一日3時間へと増し、土曜、日曜にも行われるようになりました。入院の条件はより厳しくなり、現在はより完成度の高いものとなっています。患者家族も以前に比べてより早期から介護の負担を負わなければならなくなりました。このような変化にもかかわらず、予想外であったのは、介護への満足や在宅復帰率が悪化せずに安定しているということです。外来患者のケアについては、入院での対応に代わる費用効率のある方法を探し出すことが有益でした。すなわち、これまで入院で行っていた、入院期間を長引かせる原因となっていた抗生剤などの点滴治療を行うことができる、外来センターでの治療プログラムを活用することなどにより実現したものです。これは、かつて入院中に行われていた治療が退院後外来で行われている、人工関節置換術後や脳卒中患者において顕著です。しかしながら、このような努力でコストが削減されたが故に、さらに厳しい制限が保険金支払いに再び適応されることも事実であり、これは両刃の剣のようなものです。

JCAHOとCARFそして法制度

 医療制度は重点的に、効率、迅速さ、そして費用管理を調整する役割を担っています。米国では二つの健康保険提供者が運営する医療制度団体が特に重要です。第一は、保健医療機関資格承認合同委員会(Joint Commission on Accreditation of Healthcare Organi-zations : JCAHO)で、一般に病院とリハ医療提供者のための、ガイダンスと実施の質的基準を提供するものです。第二は、リハ施設資格承認委員会(Commission on Accreditation of Rehabilitation Facilities : CARF)で、JCAHOと似ていますが、より詳細で、とくにリハ医療提供者のための役割を担うものです。法制度は第三の力と捉 えることができます。しかしながら、法制度の医療制度の責任分担に対する焦点が時々ずれており、このような場合、医療やリハの効果が過大評価されることはありません。

治療効果と書類作成、高度に教育された労働力の必要性

 これらの効果は、日々のリハ実施にも影響を与えています。治療効果の重要性と書類の重要性が増したことで、必要な活動として、医療費を受け取るために規定の方法で記録を残さなければならず、これによって標準化された書類作成の履行が加速したことは興味ある効果です。在院日数推定値/支払い(還付)スケジュールは入院の開始で決定されるだけではなく、最新情報が一般的には週単位でマネジャー/支払者(保険者側)に送付され、定期的に更新されます。その結果、患者と医療提供者が行った治療内容により、さらに定量化されます。制度を変えてしまうことは難しいですが、多くの人が認める改善されたシステムになりました。費用効果の改善と臨床での生産性要求は、最初のうちは多くの医療施設で臨床ケアに対する研究的活動として興味を持って迎えられました。しかしながら、ケア改善のゴール到達には、より高度に教育された労働力が要求されるということが、すぐに明らかとなりました。

卒後教育の重要性と改革

 そのため、卒後教育の改革がリハ分野にも浸透しており、関連分野での改革が最も著しいものです。これは特に、PT部門で明らかであり、過去10年間で卒後3年の学位プログラム(Doctor of Physical Therapy : DPT)が、これまでの2年間のプログラムに代わり施行されるようになりました。加えて、最近卒業した多くのPTが、教育水準を向上させるために大学主催のインターネット教育システムに参加し、活用しています。OT部門においても同様の方法で教育システムを進化させようとしているところです。理学療法のDPTほど一般的ではないものの、Doctor of Occupational Therapy : DOTが現在確立しています。これらについては、例えば脊髄損傷や筋骨格系など、関連分野サブスペシャリティー研修証明の継続と発展が持続的に行われていることに注目すべきです。医師の卒後研修も変化し続けています。大学でリハ科医師として活動を続けるためには、ますますサブスペシャリティーと研究関連の研修が重要視されています。その結果、以前にも増して多くの医師がクリニカルフェローシップ(筋骨格、スポーツ、疼痛医学など)に参加するか、もしくは、研究方法や統計学の高度なトレーニングを受けています。

激動期にある米国の医療とリハ

 米国の医療とリハは、今、激動の時を経験しています。過ちもありますが、それに対し適切な対応が行われ、政府の役割や費用負担を誰が負うのかといった問題については、なおも継続的な議論が続けられています。明らかなことは、財政と社会が、これからも継続的にリハの方向性を決定して行くであろうということです。

第44回学術集会:印象記

東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座 武原 格

 2007年6月6日~8日の3日間、第44回日本リハ医学会学術集会が行われました。関西労災病院リハ診療科の住田幹男先生が会長を務め、「実学としてのリハの継承と発展」をメインテーマに神戸国際会議場と神戸国際展示場の2つの建物で開催されました。会場へは新幹線の新神戸駅からも近く、神戸空港を利用すればポートライナーでたったの8分であり、非常にアクセスは良好でした。また2つの会場も道路1本隔てただけであり、こちらのアクセスも良好でした。
今回の学会は、いくつもの特色がありました。まず800題近い一般演題がすべてポスター発表であったことが挙げられます。ポスターは3日間掲示され、ゆっくりと数多くのポスターを見ることができました。じっくりとポスターを読むことができたおかげで、ポスター発表では白熱した議論が展開され、予定時間を過ぎても終わらないところが数多く見受けられましたが、1時間の間に発表や討論が集約されていたので、少々不満が残りました。 2日目には、実際に機器を使用しての8つのハンズオンセミナーが実施されました。日本リハ医学会学術集会でハンズオンセミナーが行われたのは初めてであり、早くから申し込み締め切りになったセミナーも多く、非常に盛況でした。講師陣も有名な先生が揃い、特に「骨格筋組織の基礎と臨床」では充実した講師陣でした。他にも日本リハ看護学会・国際リハ看護研究会との共催の看護フォーラムや基礎を語る会など魅力的な企画が続きました。

 

 兵庫県こころのケアセンターの加藤寛先生の基調講演では、1995年の阪神・淡路大震災から見事な復興をとげた神戸の街には、今なおPTSDに悩まされている人々がいることや、JR福知山線脱線事故後の活動の様子などを当時の写真を交えながらお話されました。早期からの精神保健活動の導入の必要性や、身体的ケアなど生活全体への支援の重要性を改めて実感する内容でした。
教育講演やシンポジウム、ランチョンセミナーなども多数の参加者で賑わっており、非常に充実していました。また基礎を語る会ではワインがあり、ポスター会場では飲料だけでなくおいしいパンも提供され、細やかな気遣いを感じられる集会でした。期間中天候にも恵まれ、準備・運営に携わった多くの先生方のご苦労が学術集会を成功へと導いたものと思われます。個人的には、初めて訪れた神戸ですばらしい学術集会に参加できたことは、とても印象深いものとなりました。

次回の第45回日本リハ医学会学術集会は2008年6月4 ~6日、横浜にて開催予定
会長:江藤文夫・顧問:村上惠一  

第44回学術集会を終えて

会長 住田幹男

 第44回日本リハ医学会学術集会におきまして、多くの先生方に参加していただき誠にありがとうございました。天候にも恵まれ、参加者は総数3,085名と2,500名との当初の予想をはるかに上回る数になりました。最初から最後まで熱心な先生方で会場が埋め尽くされている光景を目の当たりにして、主催者として胸をなでおろしていました。また、会場各所で熱心な討論が行われ、座長、演者の先生のご苦労の賜物と感謝しています。
本学会ではいくつかの新しいことにチャレンジしました。一つ目は、リハ実学コースとして8つのハンズオンセッションを設けました。参加者には大変好評でした。ハンズオンセッションを展示場で中継上映する案もありましたが、費用の面で断念せざるを得ず大変残念でした。二つ目は、学会運営を日本リハ医学会近畿地方会で行ったことです。地方会幹事が休日を返上して準備から携わってくれました。新しい学会運営のスタイルを提案できたのではと思います。三つ目は、一般演題をすべてポスター展示として、ポスター発表時間には教育講演、シンポジウム等は行わないようにしました。ポスター発表にも大変多く先生方が参加され、かつ充実した議論が行われました。また、発表時間を集中させることで、教育講演、シンポジウム等へも参加者が分散することなく集まり、こちらでも熱心な討論が行われたように思います。ただ、ポスター発表では多くのブースでの同時進行であったため興味ある演題が聞けなかったとの声もあり、今後このような形式をとる場合の課題と思われます。

 本学術集会開催にあたりましては資金面で苦労しましたが、多くの企業の機器展示や近畿地区リハ病院の病院紹介展示による協賛をいただきました。大変感謝しています。参加者が予想をはるかに上回ったとは言え、多々至らぬ点があり参加していただいた皆様にはご迷惑をおかけしたことと思います。特に、一部の会場では十分な広さが確保できず、大変ご不便をおかけしました。この場を借りて、深くお詫びいたします。 最後に、学会を盛り上げていただいた皆様、学術集会開催にあたり貴重なご意見をいただいた理事の先生方、学術運営に携わっていただいた近畿地方会の幹事各位に感謝申し上げます。横浜での次回学術集会の成功と今後の日本リハ医学会の発展を祈願して、学会報告を終わらせていただきます。

INFORMATION

リハ科医が関わる福祉機器開発紹介を募集!「若き専門医」の福祉機器展参加を募集!!

 広報委員会では第30回国際福祉機器展から出展を開始し、今年で5回目の参加になります。一昨年からは2ブースに拡大、専門医が毎日2名常駐し、展示のほかリハ医療や専門医を紹介するパンフレットなどを配布し、リハ医療・医学、学会のアピールを行ってきました。今年は、さらにアトラクティブな展示を行う予定です。インターネットが便利になった時代ですが、「百聞は一見に如かず」は今なお有効です。参加費無料ですから、是非、皆さんもリハ医学会ブースを冷やかしに来てください。

会期:2007年10月3日(水)~5日(金)
会場:東京国際展示場「東京ビッグサイト」(江東区有明)
連絡先:(財)保健福祉広報協会 TEL 03-3580-3052
国際福祉機器展URLhttp://www.hcr.or.jp/

 今年も引き続き「リハ科医が関わる福祉機器開発紹介」のコーナーを設けますので会員の皆様から情報を募集いたします。また、開催中に私たちと広報活動に取り組んでくださる意欲のある「若きリハ科専門医」も募集します。多数の応募をお待ちしております。

□ 福祉機器開発紹介の募集 (*印は配布資料『リハ科専門医が関わっている福祉機器開発研究の一覧表』掲載予定事項)1.会員氏名、2.施設名*、3.連絡先住所、4.連絡先E-mail*(原則として会員の施設)、5.連絡先Fax*(原則として会員の施設)、6.課題名*(30字程度)、7.共同企業・施設名*(複数可)、8.開発時期*(製品化の有無を含む):(販売中、 販売予定、開発終了、開発中、開発継続中)、9.製品の特徴、開発の独自性(60字程度)、10.製品の写真*

□ 若き専門医募集 (資格取得後5年目までの専門医) 1.会員氏名、年齢、専門医取得年度、2.参加希望日、3.所属施設名、4.連絡先住所、5.連絡先E-mail(原則として会員の施設)、6.連絡先Fax、Tel(原則として会員の施設)、7.応募にあたっての自己PR(200字程度)

□ 応募先:いずれもE-mail(fukushi7@dream.com)で日本リハ医学会事務局宛にお願いいたします。

□ 締切:2007年8月末
(詳細は学会誌44巻8号または学会HPをご参照ください)

社会保険等委員会

社会保険モニターリハ科専門医の活動

 診療報酬改定において、医学会から要望した項目が中医協の議論の俎上に載せられた場合、厚生労働省の担当官から医学会に対してその項目の年間実施件数や医療費に与える影響など具体的な問合せが行われます。それに対して迅速で的確な対応が行えるように、全国で活躍しておられる一部のリハ科専門医の先生方に、社会保険モニターリハ科専門医として登録していただいています。以下に現在までモニター専門医に御協力いただいた内容について報告します。

  1. 平成17年8月に厚生労働省から、重症度別リハ対象患者数の推計依頼があり、モニター専門医の回答を基に当局に報告いたしました。
  2. 平成18年初旬に内保連を通じて回復期リハ病棟対象患者拡大に向けた要望を行った際、主な疾患のリハ対象患者数をモニター専門医の調査結果から算出し添付資料としました。
  3. 平成18年度診療報酬改定がリハ医療に大きく関係するものであったため、4月中に改定に関する具体的な問題点をモニター専門医から寄せていただき、それも参考にしてリハ医学会の「平成18年診療報酬改定におけるリハビリテーション料に関する意見書」が11月に作成されました。
  4. 平成18年10月には、「呼吸器関連の問題点」についての意見をモニター専門医から寄せていただきました。その内容は、平成20年診療報酬改定に向けた内保連への呼吸器リハに関係する提案書に広く反映させていただきました。
  5. 診療ガイドライン委員会と共同で、「脳卒中に関する臨床研究・調査のためのガイドライン」が作成された折、平成18年の年末の慌しい時期にもかかわらずモニター専門医には予備調査にご協力いただき、脳卒中の回復期の延べ訓練時間とFIM改善度や自宅復帰に必要なFIM得点などについての重要な知見を得ることができ、今後の厚生労働省とのヒアリングなどにおいて参考資料にさせていただきます。
  6. 平成19年4月にはリハ領域の診療報酬に再改定が行われることが通知されましたので、3月中に再改定内容についての問題点等に関してモニター専門医のご意見をいただきました。それをもとにリハ医学会としての意見を厚生労働省に伝えました。

 現在の社会保険等委員会においては、多くの重要な局面でモニター専門医のご意見をいただき、活動を適切に行うことができています。紙面をお借りしてご登録いただいている先生方に厚くお礼申し上げます。

(委員長 田中宏太佳)

認定委員会

1.認定臨床医のリハ科専門医への移行に関する資格審査
認定臨床医のリハ科専門医移行の経過措置期間は平成21年3月31日までとなっています。学術業績の必須項目として日本リハ医学会年次学術集会での学会抄録2編以上(主演者、共同演者の別は問いません)とリハ医学に関する論文1編以上(筆頭著者か否かは問いません)があります。経過措置期間中の年次学術集会は次回第45回日本リハ医学会学術集会(6月4~6日、横浜)が最終となりますので、専門医移行をご検討の先生で学会抄録に関する学術業績を満たされていない方は発表に向けて準備いただくようにお願いします。

2.専門医および認定臨床医の更新必須条件
すでに本学会誌およびホームページにて生涯教育基準および細則の改正についてお知らせしておりますが、改正に伴い更新に際して新たに、専門医では「年次学術集会および専門医会学術集会への参加と専門医活動報告書の作成」、認定臨床医では「年次学術集会あるいは地方会学術集会への参加」が必要となります。詳しくは学会誌(第43巻12号)または学会ホームページをご覧ください。なお、必須条件は平成24年4月1日の更新から適用されます。(学会誌第44巻3号参照) 

(委員長 菊地尚久)

教育委員会

 専門医になるには様々な疾患に関する臨床経験と種々の医療技術の習得が必要です。特定分野における知識や技能習得のために、当委員会では毎年、本医学会共催の実習研修会を計画しております。効率よい学習のために、会員の皆様には実習研修会への積極的な参加をお勧めするとともに、新規実習研修会に関する御意見を賜りたく存じます。

 現在施行されている実習研修会は、脊損尿路管理研修会、臨床筋電図・電気診断学講習会、小児のリハ(脳性麻痺を中心に)実習研修会、福祉・地域リハ研修会の4つで、今年度から新たに動作解析と運動学実習研修会が共催となります(それぞれ年1回開催)。今年度より実習研修会の参加には20単位が認定され、認定臨床医認定基準の指定教育研修会にもなっております。普段経験できない分野の知識や技能の獲得のために、これらの実習研修会を有効に活用していただければと思います。それぞれの研修会の詳細につきましては、本医学会ホームページの「研修会」の項をご参照ください。

 今後は、同一分野での年複数回開催や実習研修が有効と思われる義肢・装具や摂食・嚥下に関する分野での実習研修会の施行を検討したいと考えております。新たな分野も含めて実習研修会共催のご要望、ご提案などがございましたら、本医学会事務局まで連絡をいただければ幸いです。

(実習研修会担当 大田哲生)

編集委員会

 6月6日から8日まで第44回学術集会が神戸で盛大に行われました。この勢いを会誌「The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine」への投稿に結び付けていただきたいと思います。例年のように座長の先生方には論文の推薦をしていただきました。それをもとに投稿の依頼をお送りいたしますので、推薦を受けた先生方はぜひとも会誌へ投稿していただきますようお願いいたします。なお、投稿論文は座長推薦であっても通常の審査になりますので、ご了承をお願いします。

 本誌では投稿規定を改定し、投稿内容を、「リハビリテーション医学の進歩に寄与する」学術論文に限ることといたしました。臨床医学のみならず基礎医学の分野も対象となりますが、いずれの場合でもリハ医学の進歩にどのように寄与するのかを明確に示していただきたい、ということから出てきた改定です。また、公正さを保つため、利害衝突の可能性がある商業的事項について報告していただくことを義務付けました。報告事項はコンサルタント料、寄付金、株の所有、特許取得、物品供与などの状況です。投稿規定の詳細は、第44巻第7号または本医学会ホームページをご覧ください。なお、会誌への投稿規定掲載は今年より年2回になっておりますので、ご注意ください。

(委員長 生駒一憲)

システム委員会

 システム委員会では、リハ医学会に導入する情報管理システム全般の枠組みを検討する任務を負っています。「メーリングリストなどコミュニケーション基盤を確立して欲しい」という専門医会幹事会からのリハ医学会への要請がシステム委員会新設のきっかけとなりました。システム化はコスト面でのメリットも考えられますが、むしろ学会員間の情報共有のツールとして必須であるとの認識を持っております。

 委員会開始当初は、リハ医学会全般へのシステム導入の初段階として専門医会メンバーを対象にする仕組みを作ることを検討しておりましたが、検討が進むうちに実現しやすい機能を選んで学会員全員を対象にまず実現するという二段階案のほうが現実的であるとの結論に至りました。

 二段階の内容は討議・複数業者によるプレゼン検討などの結果、一段めが「会員ID管理・掲示板・メール・アンケート」、二段めが「研修ポイント決済、会費・研修会費等の電子決済」とまとめました。この考え方および一段め実行の承認を2007年5月6月の理事会、6月の総会で戴きました。現在要件定義を詰めているところです。

 会員ID管理では会員の皆さまのご協力をお願いすることになると思いますので宜しくお願い申し上げます。

(委員長 園田 茂)

診療ガイドライン委員会

「脳卒中リハビリテーション連携パス―基本と実践のポイント」刊行にあたって

 リハ医療の分野で大幅な改定が行われた平成18年度診療報酬改定では、「地域連携診療計画管理料」が新設された。今のところ、その対象は大腿骨頸部骨折に限られているが、診療連携ネットワークの形成を重視する流れは、ますます加速すると予想され、今後、他の疾患にも拡大されていく可能性が高い。

 特に、急性期治療の進歩、診療ガイドラインの策定、在院日数短縮の加速など大きな変貌を遂げつつある脳卒中医療においては、それぞれの地域の特性に根ざした脳卒中診療連携体制の構築が不可欠である。このような地域における診療連携を実現していくためのツールのひとつとして、連携パスに注目が集まっている。

 診療ガイドライン委員会では、これまで「脳卒中治療ガイドライン」の策定に取り組んできたが、本ガイドラインの実践版として、わが国における医療の実情を踏まえたリハ連携のありかたおよびその具体的な方法について提言・提案していくことが、重要な課題であると認識するに至った。それを受けて、平成18年8月に診療ガイドライン委員会の中に「リハビリテーション連携パス策定委員会」が設置され、その活動の一環として連携パスに関する本の出版が企画された。脳卒中医療の第一線でご活躍中の80名を超える先生方にご執筆いただき、平成19年6月の学術集会開催にあわせて、「脳卒中リハビリテーション連携パス―基本と実践のポイント」(医学書院)が刊行された。

 本書は、単なるパス集ではなく、これから読者がそれぞれの地域でリハ連携を築き上げ、実践していく上でのヒントとなることを願って、1)脳卒中診療の現状と診療連携、2)クリニカルパスの基本、3)脳卒中診療におけるクリニカルパスの動向、4)データベースとITの活用、5)連携パスの実践、6)連携相手に望むこと、いう項目から構成されている。連携パスに関しての取り組みはまだようやく始まったばかりであり、本書は連携パスの決定版を提示することを意図したものではない。むしろ、「連携パス」自体が発展途上のものであり、また、地域における実りある連携体制を実現するためのツールのひとつにしか過ぎないと位置づけている。今後は、本書に対する現場からのさまざまなフィードバックをいただきながら、継続的によりよいリハ連携のありかたを探っていきたいと考えている。

(リハ連携パス策定委員会委員長 辻 哲也)

東北地方会

 2007年3月24日(土)に、第21回日本リハ医学会東北地方会、専門医・認定医生涯教育研修会(主催責任者:財団法人太田綜合病院附属太田熱海病院 小池知治先生)が福島県郡山市・ビッグアイ7階市民プラザで開催されました。一般演題12題が発表され、活発な討議が行われました。

 次回の東北地方会・生涯教育研修会(主催責任者:弘前大学医学部保健学科 岩田 学先生)は、2007年10月20日(土)、午後1時から弘前市・弘前大学医学部保健学科総合研究棟大会議室で開催されます。教育研修講演には、弘前大学医学部整形外科准教授 石橋恭行先生「膝十字靭帯損傷治療の進歩-診断からリハまで-」、輝山会記念病院副院長 近藤和泉先生「評価尺度の実践的使用方法-小児疾患の評価を軸に-」を予定しています。

(事務局担当幹事 金澤雅之)

中部・東海地方会

 地方会幹事・顧問の任期満了に伴い、2007年4月から新体制となり、猪田邦雄先生を引き継ぎ、才藤栄一が代表幹事を担当し、藤田保健衛生大学医学部リハ医学講座に事務局(秘書:内田真実さん)を置くことになりました。これまで同様、地方会の活性化を図っていく所存ですので、是非、皆様のご支援をお願いいたします。

 この機会に、園田茂先生の全面的なバックアップを得て、地方会ウエッブを立ち上げました。http://www.fujita-hu.ac.jp/~rehabmed/chubutokai/index.htmlを参照ください。ウエッブでは、生涯教育研修会などのご案内とともに、活性化のための新企画も随時追加して行く予定ですので、ご期待ください。

 今年度は、第21回地方会を9月1日(土)に大正製薬ホールで開催します。また、12月1日(土)に一般市民向けの日本リハ医学会市民公開講座をヒルトン名古屋で開催します。市民公開講座では、著名な講師による分かりやすい講演に加え、患者さんの体験談を聴く企画も予定しています。これらの情報も是非一度、ウエッブでご覧いただければと思います。

(代表幹事 才藤栄一)

中国・四国地方会

 中国・四国地方会では、次回の第20回学術集会を2007年11月25日(日)9時~16時30分に予定しています。会場は広島大学医学部広仁会館で、はたのリハビリ整形外科院長の畑野栄治先生に大会長をお務めいただきます。特別講演(専門医・認定臨床医生涯教育研修会)は、小倉リハ病院院長の浜村明徳先生に「リハの医療から介護への移行について」を、浜松リハ病院院長の本田哲三先生に「認知症のリハ」をお話しいただくこととなっています(1講演10単位)。一般演題の発表も予定されており、会員による活発な討議が期待されます(参加10単位)。演題募集の締切は10月10日(月)で、問合せ先は次のとおりです(はたのリハビリ整形外科 畑野栄治・日川昌子、TEL:082-893-3636、E-mail:hatano@enjoy.ne.jp)。先生方の多数の応募をお待ちいたしております。なお、第25回中国・四国リハ医学研究会との同時開催を予定しておりますので、コメディカルの皆様のご出席も可能です。日本リハ医学会会員の先生方には、リハに関係する多くの方々にご出席を呼び掛けていただければ幸いに存じます。学会ならびに専門医・認定臨床医生涯教育研修会への参加についての申し込みは不要です。詳細はホームページをご覧ください。

(代表幹事 椿原彰夫)

障害があるからこそスポーツを

 障害保健福祉委員会 伊佐地隆、古澤一成

 私達が「スポーツをする」というとき、いきなり野球やサッカーの試合をしたり、マラソンを走ったりはしない。キャッチボールをしてちょっとノックをすれば野球をやったという気になり、ボールを蹴ってパスをしあえばサッカーになり、昔は昼休みに輪になってバレーや家族や友達同士でバドミントンもあった。

 「障害者スポーツ」というと、どんなイメージが湧くだろうか。車いすバスケット、車いすマラソン、義足の短距離走…そんな競技風景が浮かぶのではないだろうか。競技スポーツばかりが障害者スポーツではない。むしろそういう人たちはごくひと握り。リハビリテーションに携わる私達はそれを知ってはいるが、その他に障害者がスポーツにいそしんでいる場面をみることはそれほど多くはない。

 障害者にとっても身近なところで、手軽にできるスポーツが、レクリエーションも含めてもっともっとあってほしい。障害のための運動不足、栄養過剰からくる生活習慣病の予防や健康づくりに、障害があってもスポーツができるような環境がたくさんあってほしい。そのような喚起のために、このコラムで、気軽なスポーツ、楽しいスポーツ活動を行っている事例を紹介したい。

【事例1】デイケア・デイサービスでもスポーツができる

 プールでデイサービス(DS)を行っているところがあると聞いた。

 59歳、くも膜下出血の後遺症で右片麻痺、失語症のある女性が行っていると聞き見学に赴いた。この女性が通う自宅近くのDSでは毎日午前、午後に分けて、送迎バスで利用者を近隣のプールにお連れする。利用しているのは市営のプール。ゴミ焼却で発生する余熱を利用した温水プールと浴室の他に会議室、多目的ホールも併設されていて、障害者とその付き添いは無料で利用できる。プールに行く利用者は1回数名から10名程度で、各自が個人でプールを利用する形をとっていた。DS側は送迎と付き添いとしての介助を行うという立場である。この女性は老舗の寿司屋の女将で、もともとスポーツには縁のなかった人であるが、活動不足を補うために家族がこのDSをみつけて週2回通所を始めたところ、身体を動かす楽しさを知り、毎回の診察時にはにこにこしながらプールの様子を話してくれる。

 最近は体育学系の人たちが、高齢者や障害者の体育、スポーツ(または身体活動)に関わることが増えている。「健康科学」という分野の学科や専門学校も増えている。介護保険での介護予防の呼びかけはそれを促進している。

 体育学部を卒業後、さらに障害やリハを学んで専門的な活動ができる人材を育成するコースが、国立身体障害者リハセンターにある。「リハビリテーション体育学科」である。最近ではこの卒業生も老人保健施設や通所リハ、通所介護に入るようになり、入所者や通所者に対して、スポーツ活動を取り入れたメニューを行っている。

 立てなくても歩けなくても、いす座位で車いすでスポーツの要素を取り入れた身体活動はできる。投げる、キャッチする、打つ、入れる…ゆっくりした動きならば風船、ビーチボール、メディシンボール、通常のボールとなれば動きは順に速くそして重くなり、ピンポン、新聞紙を丸めたもの、テニスボール、ラグビーボールなど大きさも形もさまざま。動く物を目で追う、しかも空間を上下左右に予測不能に動く物を追わなければならない。移動を伴えばよりダイナミックになる。ルールを決めれば、頭も使う。点数がつけばいい点を出したいと意欲が湧く。チーム対抗になればメラメラと競争心が生じてくる。作戦を立てることも。勝負で盛り上がれば精神面心理面の刺激は、度が過ぎるほどにもなる。勝っても負けても、楽しかったね、とさりげなく流す配慮をしたり上手に仕向ければ、知らず知らずのうちに体の動きがよくなり、活気も上がる。

 先日、このようなスポーツの要素をデイケアなどの活動に取り入れるためのセミナーが、神奈川県相模原市(北里大学)で開かれた。医療体育研究会が主催、全国老人保健施設協会が後援し、4回目の今回は神奈川県の施設を対象に行われ、県内の老健やデイケアの職員が集まった。過去3回は東京、埼玉、茨城で行われた。スタッフの一人でリハ科専門医の立場で講義をした大仲功一医師(茨城県立医療大学)は「一人ひとりの障害の特徴を把握し、安全にスポーツを楽しめるように配慮していただきたい」と話していた。

 特別な障害者スポーツセンターでなくても、一般向けのプールやアスレチッククラブが利用できなくても、このような通所系サービスや入所系サービスでスポーツ的な活動が行われるようになれば、少なくとも介護保険のサービスを受けられる人たちは、生活に根ざしたところで、気軽にスポーツができるのである。

平成19年に行われたリハビリテーション料に関する診療報酬再改定について

 平成19年4月から実施されたリハ料に関する診療報酬再改定の概要は、学会誌第44巻5号において、報告として掲載されましたが、それ以降この件につき事務連絡などによって明らかにされた内容をご報告いたします。

(1)疾患別リハ医学管理料について

 介護保険によるリハを行っていた患者が平成19年4月以降介護保険におけるリハを実施していない月には、疾患別リハ医学管理料の算定対象患者で、計画的な医学管理の下に定期的なリハを行う必要がある患者であれば、疾患別リハ医学管理を受けることが可能となりました。また、疾患別リハ医学管理料を算定すべきリハ訓練の内容は疾患別リハと同様なもので、入院・通院に関係なく算定可能で、理学療法士等の従事者が1日に実施できる単位数には疾患別リハ医学管理料を算定すべき時間数も含まれることが明らかにされました。疾患別リハ医学管理料のみを算定している患者に対しては、リハ総合計画評価料は算定できません。

(2)複数の医療機関で実施する疾患別リハについて

 失語症などの言語聴覚療法を必要としている患者が、理学療法と作業療法を実施している医療機関にSTがいないために言語聴覚療法を受けられていない場合、言語聴覚療法を実施できる医療機関が少ないために、当分の間、他の保険医療機関において言語聴覚療法を実施しそのリハ料や疾患別リハ医学管理料を算定しても差し支えないことが明らかにされました。しかし、理学療法と作業療法については別の医療機関で実施することはできないことが再確認されています。
 但し満18歳未満の障害児(者)リハ対象患者においては、成長期における十分なリハを必要とする観点から、医学的に必要と判断される量のリハが一つの医療機関で確保できないなどやむを得ない場合に限り、疾患別リハ料を複数医療機関で実施することが了承されました。

(3)医療保険と介護保険のリハの併用について

 原則として、介護保険におけるリハに移行した日以降は、医療保険における疾患別リハ料は算定できませんが、患者の状態や、医療保険における疾患別リハを実施する施設とは別の施設で介護保険におけるリハを提供することになった場合など、医療保険と介護保険のリハを併用して行うことで円滑な移行が期待できる場合には、診療録と診療報酬明細書に「医療保険における疾患別リハが終了する日」を記載し、その終了する日までの1月間に限り介護保険におけるリハを行った日以外の日に医療保険による疾患別リハ料を算定してよいことが示されました。
 通所リハにおける「リハマネジメント加算」や「短期集中リハ実施加算」、介護予防通所リハにおける「運動器機能向上加算」を算定していない場合でも、通所リハおよび介護予防通所リハは介護保険におけるリハとみなされ、医療保険における疾患別リハ医学管理料は算定できません。しかし、介護保険における通所介護の「個別機能訓練加算」や理学療法士や作業療法士が行う訪問看護と、医療保険の疾患別リハは併用できます。

(4)労災保険における疾患別リハ料の取り扱いについて

 労災保険では、健康保険点数表の疾患別リハ料の逓減制は適用されません。また、すでに主治医の判断により疾患別リハの継続が必要と認められる場合には、維持期のリハも含め診療費請求内訳書に「労災リハ評価計画書」を添付することで、算定日数の上限を超えて疾患別リハを実施することが可能なので、健康保険点数表の疾患別リハ医学管理料は適用しないことが明らかにされました。

2006(平成18)年度日本リハビリテーション医学会論文賞 受賞者紹介

最優秀賞を受賞して

前島伸一郎 (埼玉医科大学国際医療センター)

 このたび、私どもの論文が最優秀論文に選ばれたこと、誠に光栄に存じます。この論文を選んでいただいた見識ある選考委員の先生方に厚くお礼を申し上げます。
展望的記憶は、あるきっかけを手がかりにして、予定した行動をタイミング良く行うための記憶で、日常生活を遂行する上できわめて重要です。本論文は、日常臨床的には“し忘れ、置き忘れ”と表現され、見過ごされることの多い展望的記憶の障害が、認知症患者の日常生活障害を引き起こす可能性を指摘したものです。この論文を通じて、丁寧な問診や診療といった基本的な診察の大切さが少しでも伝われば、非常に嬉しく思います。
私は学生時代より数々の賞を獲得してきましたが、いずれも競技スポーツによる体育会系の賞であり、勉強に関する賞をいただくのは生まれて初めての経験です。そういった意味でも、今回の受賞を心から嬉しく思っています。 共に悩み、一緒に考えてくれた共同執筆の先生方、これまでご指導いただいた重野幸次先生、土肥信之先生、椿原彰夫先生に感謝します。また、私どもに人生を預け、多くの教示を与えてくださった患者さん達とそのご家族に深謝します。今回の受賞を励みに、今後も、臨床現場で役立つ、示唆に富む論文を執筆できるよう、頑張りたいと思います。

略歴:1986年藤田保健衛生大学医学部医学科卒業、1992年同大学大学院医学研究科(リハ医学講座)修了、1994年和歌山県立医科大学脳神経外科助手、1997年米国ワシントン州立大学リハ科客員研究員、豪州シドニー大学リハ研究部門客員教授、2000年和歌山県立医科大学リハ科講師、2004年川崎医療福祉大学医療技術学部感覚矯正学科教授、2007年埼玉医科大学医学部教授、同国際医療センターリハ科診療科長

原著/前島伸一郎、種村 純、大沢愛子、川原田美保、山田裕子:高齢者における展望的記憶の検討-とくに存在想起と内容想起の違いについて-.リハ医学 2006; 43:446-453

優秀賞を受賞して

湊  純 (福島整肢療護園)

 ノミネートされただけでも光栄でしたのに、優秀賞は身に余る名誉です。
まず最初に、投稿はしてみたものの、論文としての詰めの甘さや情緒的な贅肉の削り落としに、何度も何度も適切なアドバイスをしてくださった、査読を担当してくださった先生方に感謝します。ろくに論文のトレーニングもなく大学を離れた人間にとっては本当にありがたい導きの手でした。
次に、退院後も通院してくれている6名の患者さんに感謝します。循環器の問題のため入院した1名を除いた5名に受賞を報告し、とても喜んでもらえました。彼らや彼らの家族の後押しがなければ論文を書こうという気にはなれませんでした。人工呼吸器を装着しながらも絵を描いて発表の機会を待っている1名、自分たちが中心となってNPOを立ち上げ社会活動を行っている3名、10年以上にわたって当園の園内発表の論文誌をDTPで作成してくれている2名、彼らの生き方が治療を継続する我々の支えとなっています。
最後に、この長年の取り組みにいつも協力してくれた大勢のスタッフにも感謝します。

略歴:1981年3月山形大学医学部卒業、同年4月同大学医学部整形外科入局、1986年10月福島整肢療護園に医務部長として赴任、1992年4月副園長に就任、1995年4月園長に就任、2005年4月 園長を辞任して副園長に就任

原著/湊  純、湊 治郎、湊 正美:デュシェンヌ型筋ジストロフィーの脊柱管理-脊柱の伸展位誘導の試み-.リハ医学 2006;43: 438-445

奨励賞を受賞して

笠島 悠子(済生会横浜市東部病院リハ科)

 今回、我々の論文が、奨励賞という大変立派な賞をいただくことになり、とても光栄に思います。ご指導いただいた先生方には深く御礼申し上げます。
この論文は、慢性期片麻痺患者の上肢に対する随意運動介助型電気刺激(Integrated Volitional control Electrical Stimulator:IVES)と手関節固定装具併用療法を紹介したものです。我々は、この療法をHybrid Assistive Neuromus-cular Dynamic Stimulation(HANDS)therapyと称しています。IVESは元来の電気刺激装置とは異なり、刺激電極と記録電極が同一で、随意収縮に比例した電気刺激を与えることができ、安静時は閾値以下の電気刺激を与えます。HANDS therapyでは、IVESと手関節固定装具を日中8時間、約3週間装着し、麻痺側を日常生活で使用します。その結果、麻痺側の麻痺のレベル、筋緊張、遠位だけでなく近位のROM、筆圧などの改善を認めました。我々の研究の結果、機能的にも電気生理学的にも長期的効果もあることが分かっています。よってHANDS therapyは、適応が広く簡便であり、今まで治療が困難と思われていた慢性期片麻痺患者の上肢機能に対する効果的な治療法の一つであると思われます。今後更なる研究を行っていきたいと思います。

略歴:2002年3月富山医科薬科大学(現 富山大学)医学部医学科卒業、同年4月慶應義塾大学医学部リハ医学教室入局、2004年4月独立法人国立病院機構東埼玉病院勤務、2005年4月慶應病院リハ科助手、2007年4月済生会横浜市東部病院リハ科勤務

短報/笠島悠子、藤原俊之、村岡慶裕、辻 哲也、長谷公隆、里宇明元:慢性期片麻痺患者の上肢機能に対する随意運動介助型電気刺激(Integrated Volitional control Electrical Stimulator: IVES)と手関節固定装具併用療法の試み.リハ医学 2006;43:353-357

2006(平成18)年度海外リハビリテーション医交流 印象記 *

Wen-Chung Tsai, MD, PhD

Department of Physical Medicine and Rehabilitation, Chang Gung Memorial Hospital(中国・台湾)
期間:2006年11月12日~19日

 最初の訪問は国立身体障害者リハセンターであった。見学したどの部門も大変興味深かったが、特にassistive technologyの部門に深く関心をもった。電動車椅子を障害者が使用する訓練のためのバーチャルリアリティーのシステムは本当に創造的でかつ実際に役立つ研究プログラムである。センターでは温かくもてなしていただき、雰囲気はとても心地よく感じた。

 もう一つの訪問先は東京大学医学部附属病院リハ科であった。症例カンファレンス、装具外来、スタッフ会議などに参加した。芳賀信彦教授の患者への接し方から多くのことを学んだ。翌日には国立スポーツ科学センターを見学した。トップレベルのアスリートの競技能力を向上させる目的で作られた包括的、組織的な施設である。台湾にはまだこのようなスポーツ研究所はなく、感銘を受けた。スポーツ医学・科学発展のために台湾政府に働きかけたいと思う。

 日本滞在中、私はリハ医学に関する知識を広げただけでなく日本の方々の歓待も受け、とても楽しい時を過ごした。最後に、このような貴重な機会を与えていただいたことに多大な感謝を申し上げる。

Xiao Lu, MD

Department of Rehabilitation Medicine, The First Affiliated Hospital of Nanjing Medical University (中国・南京)
期間:2006年11月26日~12月3日

 最初に国立身体障害者リハセンターを訪問し、大きな感銘を受けた。赤居正美副院長に親切に紹介をしていただきながら入院部門を見学し、先進的な装置もみせていただいた。特に、頸髄損傷の環境制御装置はとても興味深かった。次に、職業訓練センターを訪れ、障害者が技術を習得する手助けとなる多くの装置をみた。研究所では水中での動作分析、先端的な車椅子、頚髄損傷患者のためのコンピュータ制御装置などを紹介していただいた。日本のリハ工学研究は非常に進んでおり、多くの装置が開発され、障害者の自立支援に役立っている。

 次に、慶應義塾大学医学部リハ医学教室を訪問した。ここでの研究は、例えば脊髄損傷の幹細胞移植のように医学分野により多くの重点が置かれていた。慶應のリハ科医は友好的で、一生懸命に仕事に向かっていた。辻哲也講師は副専門分野としてcancer rehabilitationに取り組んでいた。これは中国では新しい領域である。辻講師からその分野について説明を受けとても関心をもった。もし機会があれば、将来さらに学びたい。

Lien Nguyen, MD

Department of Rehabilitation Medicine, Hanoi Medical University (ベトナム・ハノイ)
期間:2006年11月19日~24日

 最初の訪問先は藤田保健衛生大学リハ医学教室であった。病院内を案内してもらったが、特にリハ科に大きな関心をもった。ベトナムのそれと比較して、リハスタッフの治療内容やシステムはとても進んでいる印象を受けた。

 次に、関連施設である刈谷豊田総合病院と七栗サナトリウムを訪問した。七栗は郊外のリハ病院で、院長の園田茂教授によって全くユニークなシステムで運営されている。同院は日本の最も有名なリハ施設の1つで、優れた脳卒中の予後成績をもつ。研究発表を海外で行うのは初めてであったが、熱心に聴いていただき、質疑応答も活発で、とてもいい経験になった。

 才藤栄一教授と馬場尊教授には、すべての面でとても親切にしていただいた。名古屋の風景は美しく、食べ物もおいしかった。また、日本人はとても礼儀正しく、親しみやすく、親切であった。

 最後に、すべてのスタッフに感謝の言葉を贈りたい。今回が私の初めての海外渡航で、決して忘れないだろう。近い将来に是非、藤田を再訪したい。そのことがベトナムの障害者を助けることにつながると思う。

Fary Khan, MD

Rehabilitation Department,Royal Melbourne Hospital(オーストラリア・メルボルン)
期間:2007年3月1日~8日

 私は和歌山県立医科大学リハ医学教室および国立精神・神経センターを訪問した。講演では多発性硬化症について話し、王立メルボルン病院におけるリハプログラムなどを紹介した。日本では脊髄に多彩な障害を呈し、「西洋型」とは異なっていることが興味深かった。外傷性脊髄損傷、脳卒中、CIDP患者における診察や神経疾患の進行を考慮したリハ計画についても解説した。研究部門には多くのスタッフが配置され、研究や教育に活発に取り組んでいた。リハ部門では、リハ科医の業務は他科入院患者からのコンサルトが主で、入院ベッドはないことが興味深かった。スタッフが長時間にわたり一生懸命に働いている姿に感銘を受けた。

 訪問先では歓待を受け、昼食や夕食にも招かれ、とても親切にしていただいた。田島文博教授のアレンジで、スタッフの方々に高野山や京都も案内していただいた。

 私を招待していただいたことに感謝したい。もし機会があれば、再度日本を訪れて、いろいろな話題について話し合うことを楽しみにしている。今後メルボルンへ日本の方々を招待する機会をもちたいと思う。

*(翻訳:国際委員会 辻 哲也)

2006(平成18)年度海外研修助成 印象記

橋本 圭司

東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座

Hawaii Department of Healthの前で(向かって右から、Hawaii Rehabilitation Hospital of the Pacific 神経リハ部長Dr. Peter Rossi、著者、東京医科歯科大学 中村俊規教授)

 このたび、2006年度海外研修助成を賜り、2006年4月13日から17日の日程で、Hawaii Department of Health及びReha-bilitation Hospital of the Pacificを訪問させていただきました。

 最初に訪れたHawaii Department of Healthでは、David Fray発達障害課長から、Hawaiiにおける脳外傷者への支援の実態についてご教示いただき、日本との違いや今後にニーズなどについて、活発な討論をすることができました。

 その後、訪れたRehabilitation Hospital of the Pacificでは、神経リハ部長のPeter Rossi先生に施設の案内をしていただきました。正面玄関を入ってすぐの場所に、The Luis Vuitton Art Galleryがあり、リハを受けている患者さんたちによる芸術作品が展示されていました。これは、The Louis Vuitton Creative Arts Programと称した、絵画を描くリハプログラムの成果を、病院のロビーや廊下に展示しているもので、絵画の横には、その作者の写真やプロフィールが展示されていました。

 また、プールを利用したAqua TherapyやPet Therapy、更にはカラオケや花道など、いわゆる古典的なPT、OT、ST以外に、その隙間を埋める様々なプログラムが用意されていることに感銘を受けました。そして、何よりも、病院周辺の美しい自然が、それだけで患者さんをやさしく包み込み、見学者である我々も優しい気持ちにさせてくれました。

 その他、医療システムの制限の中で、より効率的にリハを行うために「OHANA Program」が展開されていました。OHANAとはハワイの言葉で「家族」を意味します。原則的として、発症後2カ月までしか医療サービスが受けられない同院では、早期からの家族指導を重要視しているとのこと。米国の医療システムを追随している傾向のあるわが国としても、多くの学ぶべき点があると感じました。

 最後に貴重な機会を与えていただいた日本リハ医学会の関係者の皆様に深い感謝を捧げます。

松元 秀次

鹿児島大学大学院医歯学総合研究科運動機能修復学講座機能再建医学(リハビリテーション科)

 日本からの研究留学者の多いアイオワ大学であるが、なかでもリハに所縁のある医学部神経内科臨床電気生理学部門のYamada Labo.と大学病院リハ部を、2006年6月29日~7月5日、海外研修として訪問する機会を得たので報告する。

 鹿児島から関西国際空港、シカゴ経由でセダーラピッズ空港へ到着し、見渡す限りのトウモロコシ畑に囲まれたハイウェイを抜けると、学園都市アイオワ・シティが見えてきた。広大な大学の敷地内にホテルのような内部構造をもったアイオワ大学病院があり、Division of Clinical Electrophysiology(臨床電気生理学部門)に山田徹教授を訪ねた。気さくなお人柄で研究室や検査室、病棟をご案内いただき、リハ領域で頻用される臨床的な電気生理学的手法についてお互いに話をする機会をもった。特に、SEP、誘発筋電図F波、経頭蓋磁気刺激、睡眠をテーマに熱心に討議を行った(写真上)。滞在期間中には木村淳先生もおられ、お話をする機会が得られた。

 次いで大学病院リハ部を訪問した。Bruce Miller氏に通常の理学療法(PT)室、作業療法(OT)室、スポーツPT室、心臓・呼吸リハ用PT室をご案内いただいた。設備の中の1つに温水プールがあり、リハ治療(心臓・呼吸リハが中心)に利用しており、親しみを感じるとともに日本のリハ室と大きな相違はほとんど感じなかった。在院日数が短く、急性期のリハが中心のせいか、ベッドサイドリハ中心とのことで、PT、OTが訓練室にあまりいない点が異なる点であった。

 今回の研修では、今後の研究のアイデアを得られ、非常に有意義な研修であった。滞在時には5名の日本人留学生がおり安心して訪問・質問でき、私のつたない英語でもどちらの部署でも優しく接していただいた。Yamada Labo.の訪問の際に窓口にて、「トオル Yamada」と言ったつもりであったが、「トーリ Yamada」なる女性がいらして、面食らってしまったが、実は山田教授の娘さんであった。これが唯一の失敗談といえる。

 最後に、今回研修を受け入れていただたアイオワ大学の皆様と、海外研修に選出いただき貴重な経験をさせていただきました日本リハ医学会の皆様に深謝いたします。

藤原 俊之

慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室

帰路見学に訪れたInstitute of NeurologyにてJohn Rothwell博士と筆者

 2006年9月10日より英国はスコットランドのエディンバラにて、第28回国際臨床神経生理学会(International Congress of Clinical Neurophysiology:ICCN)が開催された。直前の英国における飛行機テロ未遂事件の影響で、空港でのsecurity checkが厳しく、国内便への乗り継ぎに大きな混乱をきたす中、我々もlost baggageの災難に見舞われながら、何とかエディンバラに到着することができた。9月のエディンバラといえば、例年では上着やセーターなどを必要とする気候のはずだが、ここでも異常気象の影響で、9月としては異例の30℃近くまで気温が上がるという異常ぶりであった。何もかもが異例な状況であったが、こと学会に関しては、いつもながらの充実した内容であった。参加者もヨーロッパを中心に、北米、アジアからの多数の参加者を迎え、特に日本からの参加者の多さも目立っていた。我々慶應のリハ医学教室からも私を含めて5人の参加があった。

 私自身は“Cortical modulation of the short-term plasticity of spinal reciprocal inhibition”の演題名で発表をし、また共同演者として現在我々が慶應義塾大学で行っている、Hybrid Assistive Neuro-muscular Dynamic Stimulation (HANDS)therapyにおける電気生理学的検討を2題発表した。ポスターセッションにおけるディスカッションも充実し、教育講演もNIHのMark Hallet、IONのJohn Rothwell、トロント大学のRobert Chennなど並み居る有名どころの講演が目白押しであり非常に勉強になった。また会期中に、次回の2010年の本学会が日本の神戸で開催されることが決定した。近年はこの分野でのTMS、MEG、 tDCSなどを用いた中枢神経の可塑性の研究成果がリハの臨床においても診断、治療に応用されており、今後ますますリハ医学における臨床神経生理の重要度は増していくと思われる。2010年の我が国での開催では、リハ医の多数の参加が期待される。

 最後に、貴重な機会を与えていただいた日本リハ医学会の関係者の皆様に深謝いたします。

八幡徹太郎

金沢大学医学部附属病院リハビリテーション部

 このたび、米国Honoluluで開催されましたAAPM&R 67th Annual Assembly(2006年11月9~12日))に参加して参りましたのでご報告いたします。主催側の意図の一つに“Semicasual business wear is recommended...”とあり、その期待通りスーツ姿の参加者は極めて少なく、アロハシャツ姿の参加者はじめ、Tシャツとショートパンツ姿のラフな参加者が非常に多かったことがHonolulu開催でしか醸し出せない情緒を会場にもたらしていたように思えます。アジアからの参加も多く、とくにISPRM開催を控えている韓国からの参加者が目立ちました。

 AAPM&Rの学術集会は教育色濃厚なことが特色といえます。今回はMusculo-skeletal medicine、Neurological rehabili-tation、Practice management & Leader-ship、Rehabilitation topicsの4つを柱とした教育的スケジュールが組まれ、大部分が 90分枠のOpen sessions(自由参加)あるいはWorkshops(事前登録制)で構成されていました。Session数が比較的多かったのが「下肢機能障害」「神経破壊剤による痙性治療」「鍼治療」「電気生理学的診断」であり、またこれらの会場が常に満席近い状況であったことは、米国PM&R physicianの関心が日本のリハ科医のものとはやや異なる方向にあることを感じさせるものでした。企業的バックアップを背景としたSession構成の偏りも否定はできません。しかしながら一つ言えるのは、米国PM&R界はrehabilitation medicineのみならず、いわゆるphysical medicineの分野にも精力的であるということであり、その米国の息吹を感じ取れたことが自身にとって今回の一番の収穫であったと思っております。

今回このような貴重な機会を与えていただいた国際委員会はじめ日本リハ医学会の諸先生方には、心から感謝を申し上げる次第です。

日本リハ医学会 春期医学生リハセミナーに参加して

産業医科大学

 3月下旬の月・火曜日の2日間、産業医科大学病院リハセミナーに参加しました。今回の春季リハセミナーは2日間でしたが、1日目は高次脳機能実習・訓練室回診・装具外来、2日目は筋電図検査見学・リハ科外来・嚥下評価見学実習などとても充実した実習ができ感謝しています。大学の講義でリハについて興味をもったので今回のセミナーに参加したのですが、講義で学んだことを現場で見ることができ、また講義で学んだ以上のことを教えてくださり、とても勉強になりました。回診のときに患者さんの名前を一人ひとり呼び、素早く神経所見をとり、きめこまやかに診察し、装具外来では義足をソケット・膝・足首それぞれで合わせ、患者さんに一番合う義足を検討し、はずした後に違和感がないかをみて患者さんを一人ひとり丁寧に診察していることが印象的でした。また、リハの対象となる疾患は整形外科のものだけではなく外科や内科など多岐にわたっていることを知りました。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の方々にも実際の現場について丁寧に説明してくださいました。評価会議では理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師の方々も積極的に参加し、多職種のスタッフがそれぞれの専門領域を生かして、皆が目標に向かって努力をするというリハ科の医療現場を見ることができたと思います。今回の実習でリハ科の実際の現場を知ることにより医療におけるリハの重要性、チーム医療、連携の大切さが必要であることを学びました。

 今回、こうした機会を与えてくださった蜂須賀研二教授をはじめ産業医科大学リハ医学講座の皆様には大変お世話になりました。この場を借りて御礼申し上げます。

藤田保健衛生大学

 体験をメインとして1日で多くのことを学べました。ポリクリではなかなか経験できないことを、少人数だったので、実際に自分の手でできたことがすごく楽しかったです。リハ医の幅の広さ、奥の深さ、患者さんの病巣から社会復帰などマクロなことまで携わっていることを知れて良かったです。今回は、リハ医についてのセミナーでしたが、PT、OT、STにもついてみたかったです。

 今回のセミナーに満足できました。セミナーでは、患者さんの病気だけでなく、その背景にある家庭、社会にまで配慮することが重要であり、これこそがリハの良医なのかなと実感しました。

(教育委員会 医学生リハセミナー担当 中馬孝容)

REPORT:第51回日本リウマチ学会

大阪大学大学院医学系研究科運動器バイオマテリアル学 菅本一臣

 第51回日本リウマチ学会総会・学術集会(会長:日本大学医学部整形外科主任教授 龍順之助先生)が2007年4月26日より29日まで横浜市で開催された。日本でも関節リウマチに対する生物学的製剤の使用例の急増を反映し、インフリキシマブ、エタネルセプトに関しては、多数の施設からその治療成績や課題が報告された。またTNF阻害薬抵抗例に対するT細胞、B細胞、細胞接着分子等への介入療法いわゆる第2世代の生物学的製剤の現状展望が紹介された。なかでもCTLA4とヒトIgG1-Fcとの融合蛋白でT細胞の活性化を阻害するアパタセプトやB細胞抗原CD20に対するキメラ抗体であるリツキシマブなどが注目された。生物学的製剤を超える治療法の開発のターゲットとしては、転写調節因子NFkBやIL-15、IL-17、P糖蛋白質、ガレクチン9などが紹介された。また本邦で開発されたタクロリムスや白血球除去療法(LCAP)療法に関する治療成績も、昨年の本学会に比べ数多く報告され、関節リウマチの治療法の選択肢が急速に広がりつつあることが実感された。関節破壊機序に関する最新の知見とし活性化T細胞やIL-6 等の病態への関与が紹介され、新たな治療ターゲットとなる可能性が示唆された。第一線の臨床の現場からは、生物学的製剤使用を中心とした内科医と整形外科医の診療連携の現実と問題点についても熱心に討論され、そのシステムの確立が急務であることが報告された。

 一方、患者数が2000万人ともいわれる変形性関節症に関しては、軟骨変性の病態や評価、軟骨再生を含めた新たな治療法まで幅広く報告され、今後の治療法の開発が期待される内容であったとともに、さらなる軟骨変性の病態の解明や評価法やそれら知見に基づく治療法の開発が急務である。

REPORT:第48回日本神経学会

甲南女子大学看護リハビリテーション学部 阿部和夫

 第48回日本神経学会総会は、三重大学神経内科葛原教授が会長で、2007年5月16日~18日に名古屋で行われた。テーマは、「再び臨床神経学の原点へ」であり、神戸で開かれた第44回日本リハ医学会学術集会のテーマ、「実学としてのリハビリテーションの継承と発展」と相通じるものがあり、医科学と臨床医学との整合性および他学会との差別化に苦慮していることを感じさせた。

 リハに関する演題はそれほど多くはなかったが、リハ医学会、神経治療学会、脳卒中学会など、神経内科と関連の深い学会が多いため、発表が分散されてしまったためであろう。神経疾患に対する緩和療法、認知症に対するリハ、脳卒中のリハなどを神経内科医の立場から捉えた発表があり、神経内科医としてのリハへのかかわり方、あるいはリハ医の神経内科へのかかわり方などを考える上での参考になった。また、神経所見の取り方、補助診断法などに関する教育講演、ハンドオンセミナーも多く、会員医師の教育に果たす学会の役割を考えるための参考になった。リハ医学会も多くの教育関連のセミナーを行ってきたが、さらに充実させる必要がある。スポンサーが付いたセミナーも多くあり学会運営の大変さを感じさせたが、神経疾患の緩和医療に関するDr. Maddockの講演は、難しい問題について分かりやすく解説しており傾聴に値した。緩和医療の重要性が増しているが、正面から取り上げた演題・講演が少なく、リハ医学会でも今後の課題である。

 リハ医学会と神経学会は、関連分野の大規模な学会であるが、交流があまりなされておらず、学会印象記の掲載も今回が初めてである。両学会の間でシンポジウムや教育講演などへの互いの専門医の招聘を行うなど、もっと緊密な関係を築くべきである。

REPORT:第80回日本整形外科学会

久留米大学整形外科 佐藤公昭

 2007年5月24日(木)~27日(日)の4日間、神戸市の国際会議場を中心に、中村孝志会長(京都大学)のもと、第80回日本整形外科学会学術総会が開催されました。交通の便が良い会場で、晴天に恵まれたこともあり、多くの参加者が集まり盛況でした。

 今回のテーマは「整形外科のIdentityの確立とFrontierへの挑戦」でした。整形外科が今後さらに発展・飛躍するために求められている専門性の確立と、最先端の研究から新たな治療法の確立を目指すことを意図したプログラムが組まれていました。

 シンポジウムとパネルディスカッションが各々14セッション、13セッション、招待講演と教育研修講演が各々13講演、33講演設定されており、各分野の第一人者の先生方による最先端の知見が得られる企画となっていました。また、基調講演や英国整形外科学会(BOA)との交流を目的としたシンポジウム、厳正な査読により採択されたポスターセッション、多くの展示などもあり、魅力的で充実した内容となっていました。

 リハ関連の講演としては、初日の平成セミナー(ランチョンセミナー)で、岩谷力先生(国立身体障害者リハセンター)が「腰痛患者の運動器リハー高齢者の腰痛が日常生活に与える影響と運動療法の効果ー」、2日目の教育研修講演で住田幹男先生(関西労災病院)が「脊髄損傷のリハ」、4日目の教育研修講演で飛松好子先生(広島大学)が「装具療法の基礎と臨床」の各演題で講演されました。また、2日目には「リハ医学」、4日目にはシンポジウムで「運動器リハと健康寿命」が企画され、活発な討論が行われていました。

 次回の本学会は、「整形外科の未来を拓く」をテーマに、三浪明男会長(北海道大学)のもとで2008年5月22日(木)~25日(日)の4日間、札幌市で開催される予定です。

医局だより:佐賀大学医学部附属病院リハビリテーション部

 当院は佐賀県の県庁所在地である佐賀市に位置し、診療科24科、病床数604床、1日平均外来患者数839名の特定機能病院として、地域医療の推進に積極的に取り組んでいます。

 当部門は1981年(昭和56年)の佐賀医科大学附属病院開院時に院内措置特殊診療部門リハ部として渡邉英夫部長(整形外科教授兼任)とPT 1名の2人体制で診療が開始されました。2001年(平成13年)に佐賀医科大学附属病院特殊診療部門リハ部へ昇格し、佛淵孝夫部長(整形外科教授兼任)、医師2名(1名は兼任)、PT 2名、OT 1名、看護師1名(兼任)、耳鼻科所属のST 2名の体制となりました。現在は、黒田康夫部長(神経内科教授兼任)、医師3名(リハ科専門医のリハ部准教授兼リハ科長1名、神経内科専門医のリハ部助教1名、本年リハ科入局の医員1名)、PT 7名、OT 4名(1名は1日/週)、ST 3名(耳鼻科所属)、看護師1名(他科兼任)、博士課程大学院生3名、修士課程大学院生1名(当部門PT)となり、本年5月よりはこれまでの念願でした脳血管疾患等のリハ基準Ⅰの施設としての診療もできるようになりました。院内では横断的チームの一員として、脳卒中診療班、糖尿病教室、マンマカンファレンス、福祉用具・住宅相談業務などに関わっているほか、神経筋疾患、骨関節疾患、小児疾患、術後ICU例など多岐にわたる症例に対応しています。また、人工呼吸管理の必要な筋萎縮性側索硬化症症例や重度関節リウマチ症例などに対する在宅復帰の支援にも努めています。義肢装具分野では新しい義肢装具の開発に力を入れているほか、筋電義手訓練は小児例についても対応しています。教育面では、2004年度からの医師臨床研修制度において、2年次全研修医が2日間のリハ科必修研修を行っており、短いながらもリハ医療への興味や理解を深める機会となっています。

 

 一方、地域活動としては、佐賀県介護予防市町支援(地域リハ)や高次脳機能障害支援普及事業における活動を行っているほか、県内リハ関係職種で構成されている佐賀リハビリテーション研究会を年に2回(うち1回は市民公開講座を開催)を行っています。来年春にはこの研究会も50回を迎えることになり、記念研究会を予定しているところです。当部門はようやくリハ部門としての基本体制が整備されつつあるところでありまだ課題も多い現状ではありますが、今後さらなる充実を目指し努力していきたいと思っています。

(浅見豊子)

佐賀大学医学部附属病院リハビリテーション部
〒849-8501 佐賀県佐賀市鍋島5-1-1
Tel 0952-34-3285、Fax 0952-34-2026

広報委員会より

 賛否はありますが、日本の医療制度は米国に追従しているとしばしば指摘されます。日本も米国も高齢化と財政難により医療の激動期を迎えていますが、米国では莫大な医療支出の中で社会的格差も著しく、日本よりもさらに厳しい状況におかれています。今回の特集は、このような米国のリハ医療の実情を、できるだけ客観的に正しく紹介するという目的で企画いたしました。

 米国を代表する大学病院であるMayo Clinicリハ科のBasford教授からのご寄稿です。このような短い在院日数で大学病院・急性期病院を退院した後の患者の動向について、興味がある(気になる)ところですが、これについては別の機会に取り上げることができればと考えています。今回の特集が、われわれが今後歩むべき方向を考える上で何らかの参考になればと思います。

 最後に、今回の日本リハ医学会広報委員会からの依頼にご快諾いただきましたBasford先生に心から感謝申し上げるとともに、先生の今後のさらなるご活躍に期待いたします。

(志波直人)

最近の事務局の状況から

 今年に入り、年度末予算決算の業務、各種委員会委員の交替に係る業務、新年度当初の各種委員会、会員に対する各種通知等、総会、評議員会及び専門医会総会の準備等で職員は目まぐるしいほどの忙しさでした。6月上旬の学術集会・総会等も役員、学術集会会長及び会員の皆様のご協力により大過なく終了したことを事務局員として良かったと思っております。

 このような業務に加えて、6月27日には事務局の移転作業もありましたが、予定どおり無事に終了することができました。会員の皆様のご理解とご協力に対し厚く御礼を申し上げます。 

 最後に、学会誌でもお願いしておりますとおり、勤務先、住所変更等の場合は速やかに連絡をお願いいたします。 

 なお、移転先は下記のとおりです。

  • 〒162-0825 東京都新宿区神楽坂6丁目32番3号
  • TEL 03-5206-6011
  • FAX 03-5206-6012
  • 東西線「神楽坂」駅1番出口出てすぐ左の神楽坂ビル4階です。