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脳卒中のリハビリテーション治療

脳卒中とは

脳卒中は脳の血管が詰まったり破れたりすることで脳細胞の壊死を生ずる疾患です。平成29年の統計(厚生労働省)では年間約11万人が脳血管疾患で死亡し、悪性新生物(腫瘍)、心疾患、肺炎に次いでわが国の死因第4位となっています。しかしながら高齢化の影響もあり、年間約30万人が新たに脳卒中となり、脳卒中患者数は約118万人(※1)でした。また、介護保険制度の要介護者のうち平成25年度では17.2%(男性は26.3%)が脳卒中で、要介護5(寝たきり患者さん)の30.8%(※2)が脳卒中後遺症によるとされています。健康管理により脳卒中の発生を予防し、救急医療により死亡率を下げ、リハビリテーション治療により身体障害を軽減することは国民的課題といえるでしょう。
※1.平成26年度調査(厚生労働省) ※2.平成28年度国民生活基礎調査(厚生労働省)

脳卒中による障害

脳卒中による身体機能障害は意識障害、認知症、失語症、失認、失行、抑うつなどの認知障害、嚥下障害、眼球運動障害、構音障害などの脳神経障害、片麻痺、運動失調などの運動障害、さらにしびれ、痛みなどの感覚障害、便秘、失禁などの自律神経障害と極めて多種多様です。脳の損傷部位によりこれらの症状が組み合わさって出現するので、症状が全く同じという患者さんは一人もいないと言ってもよいほどです。さらに初期治療に時間がかかり、長期間の臥床を強いられると、関節拘縮や筋萎縮といった使わないことによる運動障害、すなわち廃用症候群が加わり、症状はさらに複雑になります。型どおりのリハビリテーション治療ではうまくいかず、一人ひとりの患者さんに最も適したオーダーメイドの治療プログラムが必要となります。

リハビリテーション治療の役割

これらの障害が生じた方でも、歩行の自立や、日常生活をおくれるようにするための治療がリハビリテーション治療です。そのために、リハビリテーション科医が診察し、医学的な検討を加えた上で、理学療法、作業療法、言語聴覚療法などを処方します。しばしば装具療法も行います。

リハビリテーション治療の流れ

一般に脳卒中リハビリテーション治療は急性期、回復期、生活期に分けられ、急性期は発症直後から廃用症候群の予防と早期からの運動学習によるセルフケアの早期自立を最大の目標とします。回復期リハビリテーションも主治医またはリハビリテーション科医が診断の上、できるだけ早期に最大の機能回復をめざして行われ、生活期リハビリテーション治療は獲得した機能をできるだけ長期に維持するために実施されます。

リハビリテーション治療はチーム医療

リハビリテーション治療のチーム医療はリハビリテーション科医の機能評価、目標設定、疾病管理、リスク管理、リハビリテーション治療計画、リハビリテーション処方に基づき、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、リハビリテーション病棟看護師、医療ソーシャルワーカー、義肢装具士などがそれぞれの専門性を発揮し、できるだけ速やかに患者さんの最大の能力を引き出すべく効率的に行われます。

医療技術の限界

残念ながら現在の医療技術では脳卒中による機能障害を完全に回復させることは不可能ですが、多くの患者さんは日常生活が自立して行えるようになり、社会参加を果たすこともできるのです。ただし発症初期の日常生活動作(ADL)自立度が低い場合、重度の運動麻痺が残存する場合、非常に高齢である場合、半側空間無視がある場合、バランス障害が強い場合、併存疾患が多い場合は機能予後が不良で家庭復帰率が低いという研究報告があります。

2014年4月改訂

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