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障がい者スポーツのリハビリテーション医学・医療

障がい者スポーツのリハビリテーション医学・医療

上出 杏里 先生
国立成育医療研究センター リハビリテーション科診療部長

【質問1】障がい者スポーツのリハビリテーション医療に興味を持ったきっかけについて

縁あって、難病や障がいのある方もない方も、一緒に楽しく1日を過ごそうというスローガンで開催されることになったイベントの企画・運営に携わることになり、誰もが安全に参加できるような仕組みづくり、医務サポートを任されたのがきっかけで、障がい者スポーツに関わるようになりました。障がい者スポーツ医資格取得後は、実際に国内外の大会医務に携わるようになって、ますますその魅力に引き込まれることとなりました。

【質問2】 実際に障がい者スポーツのリハビリテーション医療の現場に立った感想について

障がい者とスポーツを結びつける架け橋役として、リハビリテーション科専門医の責務を感じています。自分がスポーツをできる、ということ自体に気づいていなかったり、あきらめてしまっているような方々を、実際の現場につなげることができた時は、大変嬉しいものです。しかし、地域性による現場不足や競技種目の選択肢など、希望通りに進まないことが多いのも事実で、国内のスポーツの実態を憂えることもあります。スポーツに携わる一人ひとりとの出会い、経験の積み重ねが大事だと思っています。

【質問3】障がい者スポーツのリハビリテーション医療の魅力について

障がい者スポーツは、いわゆる一般的なスポーツと同様にプレイするのも観戦するのも楽しく、面白いですし、あえて一般的なスポーツと隔てて考えることはしていません。ですが、障がい者がスポーツを安全に楽しむためには、トップアスリートとなっても、本人の障がいをよく知る者の医学的ケアが必要です。それが、一般的なスポーツドクターと障がい者スポーツ医の違いであり、障がいと向き合うことを専門とするリハビリテーション科専門医だからこそやりがいを実感できるのが魅力の一つだと思います。

【質問4】患者さんやご家族などに言われて印象に残っていること

体育は見学、いつも介助型の車椅子でしか移動したことのなかった男の子を、陸上のレーサーに乗せ、トラックを走らせた時の喜びの声、風をきる笑顔が忘れられません。「これからは、息子がスポーツをできるように支えていきたい」と涙ぐまれた親御さんも印象的でした。いつの日か、大会で選手として出場するようになった姿に再会できるのを心待ちにしています。

【質問5】今後の目標や夢について
現在、特に力を入れているのは、女性アスリートのサポートです。障がいに配慮した婦人科的問題や、妊娠・出産、育児などライフスタイルの変化に合わせたサポートの問題について、最近になってわかり始めてきたことも多く、その解決に取り組んでいます。自分自身が女性であること、育児をしながら働いている経験が、女性アスリート、そしてスポーツ現場で働く女性の未来にとってプラスに役立てたらいいなと思っています。