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平成14年度診療報酬改定における要望書

 平成14年4月1日から診療報酬の改定が行われたところですが,本医学会の研修施設を中心に実施した緊急調査の結果から,リハビリテーション料全般において削減幅が著しく大きく,早急の見直しが必要であるとの結論に至りました.そこで,去る8月6日,以下の要望書を厚生労働大臣宛に提出いたしました.
 また,8月28日には同要望書を日本医師会長にも提出いたしました.

平成14年8月6日

厚生労働大臣
   坂口 力 殿 

社団法人 日本リハビリテーション医学会
 理事長 千野 直一

要  望  書
平成14年度診療報酬改定におけるリハビリテーション料について

 平成14年度社会保険診療報酬改定概要によれば,「リハビリテーションの体系的な見直し」が行なわれ,早期リハビリテーション(以下リハビリ)の評価の充実,言語聴覚療法の新設等本学会がかねてより要望しておりました諸項目について一定の理解が得られ喜ばしく感じております.しかしながらリハビリ料全般においては診療報酬の削減幅が他の領域と比しても著しく大であり,改定後の本年6月に本学会研修施設を中心に行ないました緊急調査においても以下の項目で早急の見直しが必要であるとの結論が示されました.再検討のほど宜しくお願いいたします.

1  理学療法,作業療法は今回より「複雑」「簡単」が廃止され単位性が導入されています.しかし,単位時間(分)当たりの診療報酬で見れば大幅な削減(10%~40%程度)となり,他の領域に比べ減少幅が大きくリハビリ医療発展を抑制するものとなっています.他の領域との整合性の観点からの見直しを要求します.調査結果(2)参照
2  個別療法は最大1日18単位(6時間)となり従来の8時間に比べ大幅な実働時間の短縮になっています.調査によれば治療にあたらない間接時間は平均すれば1時間程度であり,最大1日21単位(7時間)が妥当と考えます.調査結果(3)参照
3  早期リハビリの効果が示されるため早期加算の対象疾患に含まれるべき,多発外傷,重症熱傷,慢性呼吸器疾患の急性増悪が含まれていませんのでこれらの疾患の追加を要求します.調査結果(4)参照
4  リハビリテーション総合実施計画書は脳卒中で回復期を想定して作成されており,急性期あるいは整形疾患などの運動器疾患には使用困難であるとの意見が多く寄せられています.疾患に対応し,患者・家族に理解されやすく,基本的な要素と疾患の特性を考慮した複数の計画書が必要と考えます.調査結果(5)参照  

 リハビリの診療報酬においては幾度かの改定を経る中で,徐々に改善がなされ,それに支えられるように都市部から地方へさらには過疎地へと施設の充実が進展してまいりました.その結果,従来リハビリの恩恵に浴して来なかった人々にも十分ではないが確実にリハビリが受けられるようになってまいりました.しかし欧米に比べ充実の度合いは現在でもはるかに低く,これにより急性期あるいは一般の医療機関において十分なリハビリを受けないままに在宅あるいは療養施設に移る人が少なくないのが現状であります.充実化の最も有効な手段である診療報酬面での理解は残念ながら今回の改定は反映されておりません.このことによりようやく全国的に浸透してきたリハビリ充実化の流れが停滞し,あるいは逆行することを危惧しております.今後更に進行する急性期病院における入院期間の短縮にはリハビリの充実を除いては有り得ないと当学会では考えております.

 リハビリ医療の充実・発展にご理解頂き,上記4項目に関する決定が早急に改善されることを強く要望いたします.

 

日本リハビリテーション医学会 診療報酬に関する緊急調査結果(一部)

1. 調査対象:日本リハビリテーション医学会員400名 
内訳:全評議員199名
全リハ医学会員(評議員を除く)の中から以下の人数を無作為抽出  

公的病院 38 名
大学 13 名
企業 7 名
国立 6 名
私立 137 名
計 400 名

2. 調査期間:平成14年6月1日~6月30日
 【調査結果】
 (1) 回答者数:104名(26.0%) 

 (2) 診療報酬の変化について
Q19: 「4月以降のリハ科外来部門の診療報酬は,3月以前に比べ変化したでしょうか.また,その割合はおよそ何%ですか」
理学療法 1. 減った       54名
2. 増えた 11名
3. 変化なし 6名
4. 無回答 43名
中央値-10%(-58%~707%)
作業療法 1. 減った 41 名
2. 増えた 11 名
3. 変化なし 7 名
4. 無回答 45 名
中央値-9.2%(-103%~138%)
Q19: 「4月以降のリハ科入院部門の診療報酬は,3月以前に比べ変化したでしょうか.また,その割合はおよそ何%ですか」
理学療法 1. 減った 42 名
2. 増えた 9 名
3. 変化なし 3 名
4. 無回答 50 名
中央値-10%(-64%~144%)
作業療法 1. 減った 34 名
2. 増えた 10 名
3. 変化なし 5 名
4. 無回答 49 名
中央値-10%(-91%~40%)
 (3) リハ職員の業務量の変化について
Q32: 「診療報酬上は,一人の療法士が訓練に費やせる時間は8時間から6時間になりましたが,残りの2時間の使い道を平均すると,それぞれおよそ何%ずつになりますか」
書類の記載 (%) カンファレンス(%) 単位外の訓練(%)
理学療法士
40.2±20.5 20.3±13.2 39.5±28.8
作業療法士
39.3±19.6 20.5±13.5 41.0±19.1
言語聴覚士
41.6±23.3 22.1±13.3 41.9±31.2
(4) 早期加算の疾患名について
Q 10: 「早期加算は(脳血管障害・脳外傷・脊椎疾患・脊髄損傷・関節疾患術後・大腿骨頚部骨折・下肢/骨盤骨折・上肢骨折・開胸/開腹手術後患者)に限られて認められています.追加すべき疾患名についてお伺いします(複数回答可)」
1. 必要とされる機能訓練の濃密度は,疾患名ではなく病態によるので,全ての疾患においてリハ医の判断にゆだねられるべきだ. 60名
2. 多発外傷 24
3. COPD増悪期 17
4. 重症熱傷 20
(5) 計画書の問題点
件数 %
家族への説明が煩雑で時間が取り難い 47 45.2
記入項目が多すぎる 45 43.3
項目が一部の疾患(脳卒中)に偏っている 43 41.3
評価方法が不明 43 41.3
用語が不明確 40 38.5
記入方法や使用方法が不明確 39 37.5
心理面の項目が不適切 32 30.8
項目が回復期の病棟に偏っている 20 19.2