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リハニュース No.24

2005年1月15日

  1. 特集:日本リハビリテーション医学会の広報活動

    広報活動の使命と戦略・・・才藤栄一

    ホームページ利用のご案内・・・根本明宜

    国際福祉機器展とリハビリテーション科医紹介リーフレット・・・水落和也

  2. 第42回日本リハビリテーション医学会学術集会 6.16~18 ― リハビリテーション医学の専門性の追求と連携 ―

  3. 医局だより

    高知大学医学部附属病院リハビリテーション部

    財団法人 宮城厚生協会 坂総合病院

  4. 脳卒中リハビリテーション・ガイドラインについて・・・診療ガイドライン委員会

  5. INFORMATION

    千野直一 前理事長が日本医師会最高優功賞を受賞

    近畿地方会

    社会保険等委員会

    評価・用語委員会

  6. REPORT

    第20回日本義肢装具学会学術大会・・・大田哲生 

    第34回日本臨床神経生理学会学術大会・・・阿部玲音

    リハビリテーション市民公開講座 in いわて '04・・・高橋 明

    日本リハビリテーション医学会主催市民公開講座報告

  7. 質問箱

    失語症患者の痴呆を評価する特別なテストバッテリーがありますか

    半側空間失認?、半側無視?、半側空間無視?

  8. 広報委員会より

特集:日本リハビリテーション医学会の広報活動

広報活動の使命と戦略

広報委員会担当理事 才藤栄一

 新年おめでとうございます
 年末には、 スマトラ島沖地震・インド洋津波という甚大な天災があり、ウエッブ上でもオンタイムでその深刻な状況が伝えられる一方、津波の監視・予報体制の不備が話題になりました。インターネットの爆発的展開は「可能なこと」を飛躍的に拡大させる一方、「しなければならないこと」も急増させています。

 本医学会は、障害を抱えた人々を援助するほぼ唯一の医学である「リハビリテーション医学・医療」を推進する中心としての社会的責任を有しています。今、その責任は緊急性を持った課題です。向こう30年に渡って進行する「高齢障害者の急増」は、まさに「予測されている未曾有の危機」だからです。
 「可能なこと」を増やすと共にそれを全国津々浦々「していること」にするためには、広報委員会の使命である「情報共有の拡張」がより一層求められます。一方、情報共有の可能性拡大は「プライバシー保護の脆弱性」をもたらします。

 現在、広報委員会では水落和也委員長を中心として数多くの企画が進行していますが、その短~中期的戦略として、以下の3点を挙げておきたいと思います。
 1)情報共有の拡張:会員と社会の両者に対して、質と量ともに、特に科学的データの共有を充実することが求められています。具体的には、社会に対してウエッブ上での「市民のページ」で、リハビリテーション医学・医療の情報提供を開始しました。主要疾患のリハビリテーションについての解説、公開講座などの開催情報、専門医やリハビリテーション科医の常駐する施設の紹介など、順調に内容の充実が図られております。会員向けのページには各委員会活動内容などがアップされていて本医学会の流れを気軽に把握できるようになっています。ここでは、今後、評価法データベースだけでなく、EBM関連データなど科学的データの提示を充実させる必要があります。
 2)冗長性の確保:本医学会が有する学会誌、リハニュース、ウエッブなど複数のメディアは、更新周期性、アクセッシビリティ、再利用性などの点でそれぞれ特徴があります。広報委員会はそのすべてを包括しているわけではないので、各メディアの特徴を考えながら該当委員会と調整し、結果として合理的かつ一定の冗長性を確保したロバスト性のある情報提示法を追求したいと考えています。
 3)プライバシー保護の確保:近年、データのデジタル化によって膨大なデータも簡単に複製できるようになり、プライバシー確保が深刻な問題になってきました。従来のスタンスのままでは容易に問題が生じてしまう事態を十分認識し、コンプライアンスの常識化とチェック体制の確認をする必要があります。広報委員会では、倫理委員会(現在、理事会で立ち上げ中です)と連動しながらこの問題について積極的に対応したいと思います。  いずれにしても、広報委員会は、その広報する内容を他部門に依存するという本質的特徴がありますので、各種委員会や理事会と十分に協調しながら積極的な活動を行いたいと考えています。また、広報委員会では、会員の皆様の忌憚のないご意見、ご参加をお待ちしています。

 今年もよろしくお願いします。

ホームページ利用のご案内

広報委員会委員 根本明宜 

 日本リハ医学会のホームページの開設は2000年1月でした。その後、ブロードバンドの普及もあり、学会への演題応募をインターネットで行うことが当たり前になったり、患者さんが医学情報をインターネットから入手するということも増えてきました。学会としてもホームページで提供する情報を適宜拡大して参りました。

 会員ページをご覧いただけると分かりますが、提供している情報が増え、フレームでは収まらなくなりタブ形式で目次を提供しております。また、学会専門医を病院で名乗るにあたり、専門医名簿へのアクセスを保証することが求められたりの外圧もありました。当初は会員に向けての情報提供を主目的にしたHPでしたが、時代の流れは患者さんに対しての情報提供をインターネットで行うことが当然のことになってきました。

 HPに対する会員の要望、患者さんや社会からの要望について広報委員会を中心に検討した結果、学会員だけへの情報提供でなく、広く市民に日本リハ医学会の情報を提供するとともに、リハ医学に関する正しい知識を普及することも必須のこととして、HPの拡充とリニューアルをいたしました。学会員向けのページと、市民の皆様向けのページ、外国からの来訪者に対するページとに大きくパートを分け、それぞれのページの内容を見直しました。

 新たに設けた市民の皆様へのページでは主な疾患に対するリハの情報を掲載しました。ホッとするイラストでなじみやすいページになったのではと広報委員会では自画自賛しておりますが、いかがでしょうか。また、専門医の広告に際し必要な専門医名簿、リハを受けたい時にリハ医の研修も可能な施設ということで研修施設の一覧を見られたり、市民向けに学会として取り組んでいる公開講座の案内が見られるようになっています。

 学会HPの最大の目的が会員向けの情報提供であることは変わりませんが、提供する項目が増えたことに対応して改修しました。

 開設以降の大きな変更点としては、認定単位を取れる研修会の掲載を充実させたこと、地方会活動の拡充により地方会プログラムの周知に利用されていること、評価法データベースや用語検索が可能になったこと、リハ学会誌の書誌情報と抄録、リハニュースのバックナンバーなどが参照可能になったことなど、大幅に機能拡充しております。是非、一度すべてのタブをクリックしてみてください。リハニュースのページでは、紙面では白黒の写真がカラーで見られるなどWebの特徴を生かした情報提供も行っております。

 英文HPについては、国際学会との連携、アジアを含む海外への情報発信などのため今後ますます拡充が期待される部分です。国際委員会にご協力いただき、学会誌の英文抄録も含め、英文での情報提供を行っています。HP開設後に設けられたHonorary Membersについてのページも用意されています。

 更新記録をご参照いただけると分かりますが、多いときには週に2回以上の更新が行われ、最新の情報を提供することを心がけております。新しい情報があるから、皆様が閲覧してくださる。閲覧してくださる方々が多いことで新しい情報が集まる。新鮮な情報があるからまた定期的に閲覧いただけるといった良い循環ができることを念頭に、学会HPの充実に努めて参ります。  
 また、学会員全員のHPですので、より良いHPにするために忌憚ないご意見、アイデアをお寄せいただけると幸いです。今後ともHPをよろしくお願いします。

国際福祉機器展とリハビリテーション科医紹介リーフレット

広報委員会委員長 水落和也

 第31回国際福祉機器展(31st. Int. Home Care & Rehabilitation Exhibition: HCR2004)は2004年10月13日から3日間、東京ビッグサイトで開催されました。広報委員会では前回に引き続き、日本リハビリテーション医学会の展示ブースを出展しました(写真上)。前回は、突然の出展決定で十分な準備期間もなく、展示会の全体像も分からないまま、大急ぎでリハ医学会の紹介パネルを製作し展示しましたが、準備不足に展示ブースが会場の隅っことなる不幸も重なり、訪れる参加者はまばらで淋しい思いをいたしました。この反省から、今回は年度当初より本展示会参加を決定し、広報委員会で展示内容を協議し、それなりの準備をして展示に望むことができました。

 本展示会は1974(昭和49)年に大手町の都立産業会館で行われた、『社会福祉施設の近代化機器展』が前身で、全国社会福祉協議会と厚生省の共催で開催されました。1975(昭和50)年の第2回から社会福祉機器展と名称を変え、さらに1986(昭和61)年からは『国際保健福祉機器展』に名称を変え、海外企業も出展するわが国最初の福祉機器の国際展示会となって現在の形に発展してきました。1990(平成2)年の第17回からは主催が保健福祉広報協会と全国社会福祉協議会の共催となり、保健福祉広報協会が運営事務を担っています。第1回の出展者数は64社、来場者数は9,641人でしたが、今年の出展社は国内568社、海外14カ国77社で、実に25,000点以上の福祉機器が展示されたとのことです。リハ医学会のような非営利団体も出展社に含まれ、日本理学療法士協会、日本作業療法士協会、日本義肢協会、日本リハビリテーション工学協会、テクノエイド協会などが参加しています。今年の来場者は主催者発表で3日間累計138,726人、うち34.7%が一般参加者でした。

 リハ医学会は本展示会の協賛団体として名を連ねているだけでなく、石神重信常任理事が保健福祉広報協会の理事を務めておられ、長くその運営に協力をされてきました。2002年までは石神先生がお一人でシンポジウムや講演会の企画をされ、リハ医学会の務めを果たして来られました。昨年から広報委員会が本展示会に向けた活動を開始したことで少しは石神理事のご負担を軽くできたのではないかと思っています。

 今回の展示は、リハ科専門医の存在を一般の方々や福祉機器業界の方々に広報する点と、リハ科専門医が福祉機器や補装具に深く関わっていることを印象付けることに重点をおきました。具体的にはリハ科医の存在をアピールする目的で、新たにリーフフレット『リハビリテーション科医って何ですか』を作成しました。すでに評議員の先生方には配布してありますが、その内容は、リハ医学の特徴、リハ科医の診療内容や研究領域、リハ医療チームの構成、リハ医学会の歩みなどを簡単に解説したもので、担当した道免委員のデザインで美しいリーフレットに仕上がりました。さらに、才藤担当理事のアイデアでリハ科専門医が関わっている福祉機器開発研究の一覧表を作成し、リハ科専門医の県別一覧表と伴に配布しました。福祉機器開発研究の一覧は学会誌で募集したところ、商品化された機器から現在開発中のものまで24件もの情報が寄せられ、立派な資料に仕上がりました。他にパネル展示として、補装具処方から製作、適用までの流れ図と、リハ科医が関わる行程について図示し、補装具、福祉機器にリハ科医が深く関わっていることを印象付ける内容にしました。

 前回は広報委員とリハ医学会事務局員で業務を行いましたが、今回は委員会メンバー以外の先生方にもご協力をいただきました。平日に休暇をとってご協力いただいた先生方に篤く御礼申し上げます。

 展示ブースは前回と違って会場中央部分にあり、手渡しできる配布資料を用意したため、前回よりも多くの参加者がブースを訪れてくれた気がいたします。リハ医学会ブースの周りは、日本PT協会、日本OT協会、日本義肢協会などの専門職団体のブースと、国立リハセンター、神奈川リハセンター、東京都高齢者福祉振興財団、労災リハ工学センター、総合せき損センターなどの公共機関の展示ブースが並び、それぞれが趣向を凝らした展示を行っていました。効果的な展示という点では他の団体に一日の長があり、展示内容については今後さらなる努力が必要と感じました。

 また、今回石神重信理事の発案で、主催者企画として、『福祉機器・リハビリ相談コーナー』を設け、日本シーティングコンサルタント協会、国立リハセンター研究所、埼玉県総合リハセンターなどの団体の協力を得て福祉機器の利用やリハビリに関する相談に、リハ科専門医、OT,PT,エンジニア、社会福祉士などが無料で相談に応じました。リハ医学会からは、石神重信理事、立野勝彦理事らが、参加者からの質問に答えていました(写真下)。我々からすると質問するのも気後れするような錚々たるメンバーなのですが、石神理事に現在のリハ医療の不満をぶつける参加者もいて、リハ科医を身近に感じていただくのに一役買っていただきました。

 この展示会に参加された患者さんやご家族が福祉機器の最新情報を仕入れ、外来受診の際に、『先生、私が使っている車椅子よりずっとかっこよい車椅子があるんですね』とか、カタログを手にして、『今度バギーを作るときはこれにしてください』などと言われて、『へー、そんな新しい製品が出たの?』なんて、患者さんに教えてもらった経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。本展示会のweb siteをご覧になれば分かりますが、インターネットも利用して、患者さんは新しい情報を容易に収集できる時代になりました。患者さんに遅れを取らないように、我々も日頃から情報収集に心がけておかないといけません。
 IT社会でのこれからの医療は、いかにユーザーに有益な情報を提供し、ユーザーからのアクセスを容易にし、ユーザーの満足するサービスを展開していくかが専門領域発展の鍵になるのではないかと思います。診察室にこもって患者さんを待っているようでは生活に密着した医療を志向するリハ科医としては失格でしょう。病院から外に出て、自らの役割と重要性を、そして専門技術の内容を広く世間に知らしめる努力が我々に求められているのです。

  • 本文で紹介したリーフレット『リハビリテーション科医って何ですか』は事務局に在庫がありますので、ご希望があれば事務局までご請求ください。待合室に置いて患者さん用に使いたい、学生教育に利用したいという意見が多ければ、増刷してより多くの方々に利用していただきたいと考えております。
  • 展示会にご協力いただいた会員の先生方、ありがとうございました。
    武原格先生、高田耕太郎先生(慈恵医大)、小川真司先生(市川市リハ病院)、鈴木亨先生(藤田保健衛生大学)、栗林環先生、武藤里佳先生、菊地尚久先生(横浜市立大学)、高柳友子先生(横浜リハセンター)、高倉朋和先生(横浜市脳血管センター)、斎藤薫先生(れいんぼう川崎)。
  • リハ相談コーナーにご協力いただいた先生方、お疲れさまでした。
    石神重信常任理事、立野勝彦理事、住田幹男理事、西村尚志先生、田島文博先生
  • 国際福祉機器展の詳しい情報は国際福祉機器展のweb site:http://www.hcr.or.jp/でご覧ください。

第42回日本リハビリテーション医学会学術集会 6.16~18 ―リハビリテーション医学の専門性の追求と連携―

 新年明けましておめでとうございます

 北陸の地は雪も降り、一層寒さも厳しい候となりましたが、来るべき学術集会の年ともなり、慌しくなってまいりました。日常業務に追われながら、目下鋭意学会の準備を進めております。

 本年6月16日(木)、17日(金)、18日(土)の3日間、金沢にて、会場は金沢駅の近傍の3会場(石川県立音楽堂、金沢全日空ホテル、日航ホテル金沢)で開催することにいたしました。3つの会場ということで会場間の行き来に何かと不便を感じるとは思いますが、交通の便は大変よい環境であります。本年は金沢駅も装いを新たに立派な駅をお見せすることができます。また県立音楽堂では、パイプオルガンを演奏し厳かな開会式にしたいと考えております。

 シンポジウム、パネルディスカッション、教育講演等につきましては、多くの先生方にご多忙のなかご承諾いただき決定いたしましたことを感謝申し上げます。またその際は連絡の不備などにより多大なご迷惑をお掛けしましたことを、心よりお詫び申し上げます。学会員がより一層の学術的な論議や発表ができる学術集会の場になりますよう努力をしておりますので、何卒今後ともよろしくお願いいたします。

 学術集会ホームページ(http://www2.convention.co.jp/jrma2005/)に、現在決定いたしました招待講演、シンポジウム、パネルディスカッション、教育講演などは適宜掲示いたしますので、是非ご覧ください。 

 一般演題の受付登録は12月2日より開始し、1月31日正午締切になっておりますが、締切日近くになりますと、混雑し、つながらないことなどのトラブルが生じる心配がありますので、どうぞ余裕を持って登録をお願いいたします。皆様方の多くの演題応募をお待ち申し上げます。

 学術集会が開催される6月中旬は、梅雨のこともあり蒸し暑く雨の多い季節ではありますが、しっとりした、百万石の金沢は学問を論じるには、最も適した都ではないかと思います。また山の幸はもとより、日本海の新鮮な魚介類を堪能され、さらに加賀の温泉、能登半島の方にも足を伸ばし、お楽しみください。皆様の多数の参加と演題登録をお待ちしております。

(第42回学術集会会長 立野勝彦)

医局だより

高知大学医学部附属病院リハビリテーション部

 当部は、1981(昭和56)年開院新設医科大学の特殊診療部の理学療法部としてスタートした。その後平成7年に新設医科大学では初めて、中央診療施設として『リハビリテーション部』が認められ、リニューアル・オープンとなった。

 施設としては、理学療法室(水治療室含む)254.4 m2、作業療法室106.4 m2、言語療法室18 m2、心疾患リハ室35.4 m2、検査室(電気診断用のシールドルーム)21.5 m2を有する。
 現在の構成メンバーは、医師として谷俊一部長(兼任)・石田健司副部長(専任)・山中紀夫助手(専任)で、コメディカルスタッフは、理学療法士(PT) 4名、看護師(Ns)(婦長ポスト) 1名の小さな部隊である。
 年間の新患患者数は、急性期症例を中心に、800症例と少数ではあるが、疾患の内訳は、脳卒中(1割)・脊髄疾患(2割)・骨関節疾患(RA含む)(2割)・神経筋疾患(1割)・呼吸疾患(開胸開腹術前術後含む)(1割)・PICU(新生児)(1割)・生活習慣病(0.5割)・切断・心疾患等と比較的多彩である。

 次年度に向け、STの採用を含めコメディカルスタッフの増員予定で、総合リハ承認施設になるべく努力しているが、それにもまして一層内容の充実が求められている。
 これまでの我々の主な院内活動および研究テーマは、1.脊髄症の回復リハと電気生理、2.股関節外来運動療法、3.PICUから介入した小児神経発達、4.乗馬ロボットと歩行解析を用いた転倒予防、5.RA症例の足底圧評価と靴の作成(身障手帳に基づいて靴の作成)、6.脳卒中機能回復と運動関連脳電位、7.開胸術前後の呼吸のリハ、8.CAGB術後のリハ、9.高知県下の義肢装具判定、等を行ってきた。院外の主な活動としては、1.高知県山間部の高齢者長寿健診、2.高校大学連携によるスポーツ指導(トレーニング法と障害・外傷予防の指導)等がある。また他大学との共同研究では、1.福祉介護機器の開発、2.他動的運動機器の開発とその臨床応用等に力を注いできた。

 今後は、県とも連携を持ちつつ、介護予防の運動プログラムの作成や地域リハへの動画を用いた遠隔地授業・遠隔地支援にも力を入れたいと考えている。
 今後とも1症例、1症例を大切に症例のADLやQOLを向上させられるように努力し、リハ医療の向上に努めて参る所存である。

(石田健司)

高知大学医学部附属病院リハビリテーション部
〒783-8505 高知県南国市岡豊町小蓮(ナンコクシ オコウチョウ コハス)
TEL 088-880-2491、FAX 088-880-2492

財団法人 宮城厚生協会 坂総合病院

 当協会は、宮城県内に4つの病院(坂総合病院、長町病院、泉病院、古川民主病院)を持ち、各々にリハ施設を有しています。2005年度に3病院が総合リハ施設になる予定です。坂・長町は、日本リハ医学会研修病院の認定を受けており、リハ医は、回復期リハ病棟を主治医として管理しています。

 また、協会全体は研修指定病院になっており、研修医も多く活気があります。他科の医師にもリハの必要性は認識されており、ほぼ全科より急性期から依頼が来ます。最近では、リハ科研修を希望する研修医も増えています。

 リハ医は、現在、専門医2人、専任医(専門医志望)3人です。他県の病院より研修に来ている医師もいます。なお、当協会には国内留学制度というものがあり、専門医の2人(水尻、冨山)は約15年前に横浜市大リハ科で研修をしてきました。筆者も、横浜市大・東海大・東北大・聖隷三方原病院の各リハ科で研修させていただきました。現在は、後輩が相澤病院などでお世話になっております。療法士は、現在、PT 30、OT 24、ST 6人で、来年度はPT 44、OT 33、ST 10人まで増員する予定です。

 当協会の特徴は、地域医療の最前線でリハ医療を幅広く展開していることです。対象疾患は、脳卒中急性期~回復期、高齢者の廃用症候群が主となりますが、訪問診療も行い、在宅患者のカンファランスも実施しています。また通所リハや訪問リハなど介護予防事業にも力を入れています。

 この間、特に取り組んできた課題は、リスク管理(転倒、深部静脈血栓など)、病棟リハ、FIMの導入、摂食嚥下リハなどです。転倒対策では、入院時及び転倒発生時に必ずカンファランスを実施しています。病棟リハは、正規の訓練以外に個別訓練メニューを計画し、訓練量の維持に努め、CI療法(強制的麻痺肢使用訓練)なども積極的に取り入れています。FIMは、研修会に看護師も参加し、病棟や通所リハで活用しています。摂食嚥下リハは、聖隷三方原病院に習って、嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査で評価しアプローチを検討、栄養士と連携し段階的な嚥下訓練食も導入しました。

 今後の課題は、脳外科とのタイアップによる脳卒中急性期リハの充実です。
 地域のニーズに応えるためには、まだまだ課題は多いですが、縦にも横にもチームワークが良く、幅広く内容の濃い研修ができるところです。

(金成建太郎)

財団法人 宮城厚生協会 坂総合病院
〒985-0024 宮城県塩釜市錦町16-5
TEL 022-365-5175、FAX 022-365-6555
http://www.m-kousei.com/

脳卒中リハビリテーション・ガイドラインについて

診療ガイドライン委員会

近年、診療ガイドライン(GL)策定の動きが加速している。この背景には、情報へのアクセスの飛躍的改善、国際標準追究の機運、説明と同意のための客観的情報へのニーズの高まり、経済情勢の変化に伴う効率的医療への指向などがあると考えられる。GLの目的は、ヘルスケアの改善、臨床の均質化、医療資源利用の最適化、臨床家への最新知識の提供と科学的証拠の活用の促進にある。リハ医学会においても、国民の健康および医療経済に与える影響が大きい脳卒中に関し、関連学会(脳卒中学会、神経治療学会、神経学会、脳外科学会)と共同して、2002年11月よりGLの策定に取り組み、2004年3月に脳卒中治療ガイドライン2004が出版された。策定作業は、日本の現状を踏まえつつ、現時点で利用可能な最良の科学的証拠に基づきGLを策定するという方針に基づき、以下のプロセスで進められた。

1. 臨床的問題の選択:GLに盛り込むべき臨床的問題を内外の教科書や総説、AHCPR Post-stroke Rehabilitation Guidelineなどを参考に選択し、項目立てを行った(表1)。

表1 ガイドラインの項目
リハの流れ 主な障害・問題点のリハ
リハの体制 運動障害
評価 歩行障害
予後予測 上肢機能障害
急性期 痙縮
病型別リハの進め方 片麻痺の肩
回復期リハ 中枢性疼痛
維持期リハ 中枢性疼痛
患者・家族教育 嚥下障害
  排尿障害
言語障害
認知障害
体力低下
骨粗鬆症
抑うつ状態

2. 証拠の収集:文献はすべてEndNoteで管理し、さらにそれをFileMakerProで作成した作業用データベースに取り込み、作業結果を蓄積・共有化した。まず、Cochrane系統的レビュー、PEDro登録のランダム化比較試験(RCT)、MEDLINEおよび医中誌検索分をデータベース化し、臨床的問題ごとに分類した。それをもとに専門医の協力を得て、漏れている研究や新たな研究を収集した。 

3. 証拠のレベル分け:収集した文献を研究デザイン、統計手法、結果のバイアス、交絡因子の有無などの観点から批判的に吟味し、合同委員会基準(表2)に従い、証拠のレベル分けを行った。  

表2 エビデンスレベルの分類(脳卒中合同ガイドライン委員会2001)
Ia RCTのメタアナリシス(RCTの結果がほぼ一致)
Ib 少なくとも一つのRCT
IIa 少なくとも一つの良くデザインされた比較研究 (非ランダム化)
IIb 少なくとも一つの良くデザインされた準実験的研究(コホート研究、ケースコントロール研究等)
III 少なくとも一つの良くデザインされた非実験的記述研究(比較・相関・症例研究)
IV 専門家の報告・意見・経験

4. エビデンステーブルの作成:書誌的事項、対象、介入、エンドポイント、結果、証拠のレベルからなる一覧表を作成した。  

5. 推奨の作成:証拠のレベル、臨床的意義、日本での適用可能性などを考慮して、各臨床的問題に関して推奨グレード(表3)を明記した推奨を作成した。一例を表4に示す。  

表3 推奨グレードの分類(脳卒中合同ガイドライン委員会2001)
A 行うよう強く勧められる(少なくとも1つのレベルIの結果)
B 行うよう勧められる(少なくとも1つのレベルIIの結果)
C1 行うことを考慮しても良いが、十分な科学的根拠がない
C2 科学的根拠がないので、勧められない
D 行わないよう勧められる
表4 推奨の一例-運動障害に対するリハビリテーション-(一部を抜粋)
【推奨】
患者層や評価時期によって効果が異なるが、機能障害および能力低下の回復をより促進するためにリハビリテーションの量を増やし、集中して行うことが勧められる (グレードB)。
【エビデンス】
9件のRCT2-4)をもとにしたMeta-analysisにより、訓練強度を増すことにより、ADLおよび麻痺などの機能障害に関し、わずかではあるが、有意な訓練効果が認められている( I a)。
2)Sivenius J et al. The significance of intensity of rehabilitation of stroke - a controlled trial. Stroke 1985; 166: 928-31

 今回、策定されたGLを現場からのフィードバックおよび新たな証拠の追加を踏まえ、定期的に改訂していく必要がある。さらに、良質な証拠自体が不足しており、証拠を創出するための多施設共同研究の推進が不可欠である。また、今回の作業で蓄積されたノウハウを生かし、他の疾患・障害のGL策定にも学会が先導的に取り組むことが急務であり、診療ガイドライン委員会に課せられた責任は大きい。今後のGL策定作業に向け、学会員各位の力強いご支援を心からお願い申し上げる次第である。

(委員長 里宇明元)

INFORMATION

千野直一 前理事長が日本医師会最高優功賞を受賞

 第57回日本医師会設立記念医学大会が、昨年11月1日に開催され、千野直一監事(前理事長)が日本医師会最高優功賞を受賞した。同賞は日本医師会の最高賞で、千野氏のわが国でのリハビリテーション医療啓発と医療関連職への貢献などが評価された。受賞者には坪井栄孝前日本医師会長、森 亘元東京大学総長など著名人が含まれている。

近畿地方会

 近畿地方会では年2回【2月、9月】の学術集会および専門医・認定臨床医生涯教育研修会を開催しています。次回第18回地方会は2月5日(土)10~17時を予定しています。会場は谷町6丁目の薬業年金会館6階です。午前は一般演題、症例検討です。午後はシンポジウムと教育講演です。シンポジウムは日本リハ医学会関連専門職委員会委員長の前田真治先生を迎え「地域で育てるリハ関連職-教育における課題と期待-」というテーマでお話をうかがいます。急増する養成校とリハ関連職種の教育の問題について、教育側より大学等養成校の方々、受け入れる側の病院医師等にお集まりいただき現状を分析し高齢化社会に対応するヒントを探りたいと考えています。多数の参加とご意見をいただければ幸いと存じます。特別講演は、東大の武藤先生のグループと長年にわたり共同研究をしてきた東京厚生年金病院リハ科部長黒柳律雄先生に「高齢者の転倒予防」というテーマで、また神戸大学医学部保健学科の佐浦隆一先生に「リウマチの最新治療とリハビリテーション」というテーマでお話いただくことになっています。多数の会員の先生方のご参加をお待ち申し上げています。

(第18回大会長 綾田裕子)

社会保険等委員会

 2006(平成18)年度には大幅な診療報酬の改定が予想されますので、それに向けて日本リハ医学会員の意見が適切に反映されるための取り組みが、重要な活動の一つです。現行の社会保険診療報酬体系に対して学会の要望をとりまとめる組織として、内保連(http://www.naihoren.jp/)と外保連(http://www.gaihoren.jp/gaihoren/)があり、本医学会はどちらの組織にも加盟し活動しています。内保連では、各領域ごとに学会を横断的につなぐ18の領域別委員会が設けられ、その1つに「リハビリテーション関連委員会」(委員長には本医学会社会保険等委員会の石田担当理事が就任)があり科学的根拠に立脚したリハ関連医療技術評価の問題などが検討されています。外保連では、根拠に基づいた診療報酬体系を「外保連方式」として公表し、個々の診療行為を検討した結果を「手術・処置・生体検査に関する試案」として作成し、現在平成18年度の改定に対応するために試案の改訂作業が行われています。

 昨今の診療報酬の議論においては、常に科学的な根拠に基づいていることを示すことが要求されますので、厚生労働省に協力する形でリハの標準化を目的としたアンケート調査を近日中に行う予定です。調査依頼のありました会員の皆様にはこの点につきご協力よろしくお願い申し上げます。

(委員長 田中宏太佳)

評価・用語委員会

  医療制度改革、福祉制度改革の渦の中で評価の意義、重要性は今まで以上に増してきております。当委員会としても、日本リハ医学会員が臨床研究に用いる評価法の選択肢を提供し、共通の評価の普及定着を目的に、1998年以降リハ関連雑誌の原著論文で採用された評価法のデータベースを作成、ホームページに掲載し、結果を学会誌上で報告してまいりました。今年度は以下の8疾患について新たに論文のエビデンスレベルも加味して、時代の流れの中から現時点で推奨できる評価法について検討し提言していく予定です。1)脳卒中、その他の脳疾患(脳外傷など)、2)脊髄損傷、その他の脊髄疾患(二分脊椎など)、3)関節リウマチ、その他の骨関節疾患(外傷を含む)、4)脳性麻痺、その他の小児疾患、5)神経および筋疾患、6)切断、7)呼吸・循環器疾患、8)その他(悪性腫瘍、末梢循環障害、熱傷など)。

 さらに、社会保険等委員会、診療ガイドライン委員会など本医学会の他の委員会との連携を深め、推奨できる評価法を提言して行く予定です。

 リハ医学用語集、ホームページ掲載内容など当委員会へのご意見、ご質問、リハニュース「質問箱」への問い合わせをお待ちしております。

(委員長 朝貝芳美)

REPORT

第20回日本義肢装具学会学術大会

慶應義塾大学月が瀬リハビリテーションセンター  大田哲生 

 20回日本義肢装具学会学術大会が高見健二大会長(労災リハビリテーション工学センター工学支援室室長)のもと、2004年11月20(土)・21(日)日、名古屋国際会議場で開催された。  20年前に日本義肢装具研究会から学会に移行してからの記念すべき第20回大会であった。本大会のメインテーマは「近未来の義肢装具」ということで、近い将来実現できそうな義肢や装具を念頭においたプログラムが組まれていた。20周年記念講演は世界的に有名なデザイナーかつ医学博士である川崎和男先生にご登壇いただき「QOLとユニバーサルデザイン」という題でご講演いただいた。ユニバーサルデザインという言葉を日本に持ちこんだ川崎先生ご自身が、ユニバーサルデザインの7原則は日本にはあてはまらず、Quality of experienceをめざしたインクルーシヴデザインというものを考えていく必要があることを強調されていた。義肢装具も新たな発展を目指し、デザインの観点からも検討することが重要と思われた。招待講演はスウェーデンからRickard Brnemark先生(写真右)をお招きしBone anchored amputation prosthesesの現状についてお話いただいた。近年の成功率は85%とのことであり、まさしく近未来の義肢であるとの印象を受けた。さらに教育講演3題、シンポジウム2題、一般演題101題、ポスター10題で構成されており、参加者は約1,500名と例年以上の人でにぎわった。今回の新たな試みとして、ランチョンセミナーが開催され、好評のうちに終了した。また、第1日目の夕刻には懇親会が商業展示場で催された。気軽に参加できる雰囲気であったため、例年以上に参加者の親睦を深めることができたと思われる。講演を聴くのに時間をとられ、日中はなかなか展示会場に足を運べなかったが、懇親会参加時に展示を見てまわることもでき、時間の有効活用にも一役買うと思われた。

 シンポジウムで山海嘉之先生(筑波大学)が発表された、人間の意志に従って筋力をサポートするロボットスーツHAL(Hybrid Assistive Limb)は機能的電気刺激とともに、リハビリ医療に応用可能と思われ興味深かった。
義肢の部品は年々進歩しているようだが、装具の分野では画期的な進歩に乏しい印象を受ける。リハ医療・デザイン・ロボット工学などの観点から、今後新たなる展開が可能と思われる。  来年は2005年11月19(土)・20(日)日に静岡市のグランシップで第21回学術大会が開催される。最新技術を応用した、義肢装具の新たなる発展をめざして活発な討議が行われることが予想され、日本リハ医学会員の積極的な参加を期待したい。

第34回日本臨床神経生理学会学術大会

市川市リハビリテーション病院  阿部玲音 

 第34回日本臨床神経生理学会学術大会が、古賀良彦大会長(杏林大学医学部精神神経科学教室教授)のもと、ホテル日航東京(東京都港区台場)にて2004年11月17日(水)~19日(金)に開催された。

 日本臨床神経生理学会とは、筋電図・脳波などを中心とした臨床的な神経生理を研究している学会で、以前は日本脳波・筋電図学会という名称だったが、2000年に名称変更されて現在に至っている。会員数は2,656人で、臨床系の会員が2,070人、そのうちリハ科の医師は135人である(2002年1月10日現在)。

 今回の学術集会は、『ここまでできる臨床神経生理 Back to Clinical Neuro-physiology』をテーマとして、一般演題以外にも、臨床神経生理を基礎から応用まで広く学べるよう、多くの教育講演やシンポジウム、ハンズオンセミナーなどが開催された。特別講演では、チューリッヒリサーチセンターのDr. Finkが空間認知について、ハーバードメディカルスクールのDr. McCarleyが統合失調症における臨床神経生理について、東京大学大学院医学系研究科の上野先生が脳磁気科学の新しい展開について、それぞれ貴重な講演をされた。

 一般演題については、ポスター形式で400もの演題が集まり、今回の演題発表は、セクションごとに座長ではなくdiscussantを設け、各発表者とdiscussant、あるいは参加者との間で熱心かつ自由な形での討論が繰り広げられていた。さらに2日目の夕方に催された懇親会の席上で、一般演題の中から優れた発表を行った方に対しての表彰があった。

 学術大会中に執り行われた総会では臨床神経生理学会における認定制度についての審議が行われた。その結果、学会の活性化や、臨床神経生理検査や研究の質の保証および水準の向上を図るために、認定制度の構築を推進することが決定された。今後近いうちに、臨床神経生理に関する認定医制度が制定されることになるため、関心のある方は留意すべきことかと思った。

 次回第35回の学術大会は、2005年11月に福岡国際会議場で開催される予定とのことである。臨床神経生理に興味のある先生方は参加を検討されてはいかがでしょうか。

リハビリテーション市民公開講座 in いわて '04

いわてリハビリテーションセンター 高橋 明

 2004年10月31日(日)10時半から、盛岡駅に隣接する盛岡市民ホールを会場として、日本リハ医学会主催「リハビリテーション市民公開講座inいわて'04」を開催した。

 「みんなで参加、みんなのリハビリ」 をスローガンに掲げ、若干くどいが 「保健・医療・福祉にわたる現代リハの全貌を提示し、本県のリハ資源を再認識するとともに、現時点における問題意識を明らかにする」を大テーマとした。これらは実行委員会や後援団体の編成にも反映され、関連する保健・ 福祉領域や行政、リハ専門医のほか、 県内10の地域リハ広域支援センターにそれぞれ得意とする部門を担当していただいた。“座学”を最小限とし、現にサービスを提供している人、されている人の生の声を前に、実際に触れて使って語り合い、トコトン納得してもらうという体験型参加型の企画を心がけたつもりである。

 プログラムの大枠は、ICFから「医学談話会」「生活機能支援」「就労支援」 とサブテーマである「在宅介護のストレス削減と社会再参加支援」関連を抽出した。ホールではまず、伊藤利之常任理事と本田恵実行委員長による主催者挨拶に続き、大堀勉岩手医科大学理事長からご祝辞をいただいた。次に、「リハビリテーション、何がどこまでよくなるの?」と銘打ち、心臓リハ、脳卒中リハ、介護予防、各制度利用に関するティーチイン。午後は介護の達人:羽成幸子氏による基調講演を受けてPD(在宅療養を支えるということ)が16時半まで行われた。

 展示場では午前中に「介護の本音トークショー」、午後は「障害と就労」のミニパネルが参会者を交えて行われ展示・相談コーナーでは福祉用具供給協会提供のデモ、建築士会などのよる住宅リフォーム相談、福祉相談センター(更生相談所と精神保健センター)は制度解説パネルと相談員の派遣、障害者と運転免許では県運転免許センターに初参加をいただき、さらに各自販のご理解を得て福祉車両も展示した。 障害者団体では、今回初めて日本オストミー協会岩手県支部の参加をいただいたがいろいろな意味で意義深かった。

 展示場でのもう一つの目玉:体験学習は、「介護のコツ」のハンズオンで、体位変換や移乗動作サポートのコツを手取り足取り教えるコーナーや失語症の在宅ケア、口腔ケア、転倒予防教室、キャップハンディ体験などを設け終始一般参会者で賑わった。記帳者だけで隣県からも含め236名、延べ500名を超える一般参会者があり、約70名のスタッフも大いに盛りあがったことを申し添えたい。

日本リハビリテーション医学会主催市民公開講座報告  市民公開講座 ―パワふる佐賀のリハビリテーション―

佐賀大学医学部附属病院リハビリテーション部 浅見豊子

 2004年3月27日(土)に、佐賀大学医学部看護学科棟の玄関前スペースおよび1階と2階フロア全体を会場とし、日本リハ医学会主催市民公開講座「パワふる佐賀のリハビリテーション」を開催いたしました。このサブタイトルの「パワふる佐賀」という言葉は、佐賀県の古川知事がホームページで使用されている言葉ですが、今回知事の許可を得て使用させていただきました。この言葉にこめられている「パワーあふれる佐賀」という佐賀の持ち味をリハの分野でも発揮したいという思いで名づけました。

 はじめに佐賀大学医学部附属病院副院長でリハ部部長の黒田康夫教授が開会の挨拶を、引き続き日本リハ医学会理事の蜂須賀研二教授にご挨拶とともに今回の市民公開講座の趣旨についてご説明いただきました。

 午前中は『佐賀のリハビリテーションを知ってみよう!』というテーマのもとに、佐賀で活躍されているリハの各分野(行政、リハ医、PT、OT、ST、PO、心理療法士、エンジニア)の先生方に佐賀で行われている種々のリハについてわかりやすく話をしていただきました。また、午後は『佐賀のリハビリテーションを試してみよう!』というテーマのもとに、参加型リハビリ教室を行いました。佐賀県内のリハ各職種(リハ医、PT、OT、ST、PO、SW、NS、心理療法士、エンジニア、薬剤師)の協力による展示・体験・相談コーナーを設置し、実際に佐賀のリハを体感していただきました。

 今回のような、一度にさまざまなリハの話が聞けて実際に体験もできるという講座の設定は、佐賀では初めての企画でした。結果として、参加者の方々にリハをより身近なものとして感じていただき、興味ももっていただけたようで、たいへんよかったと思っております。またこの講座の開催により、県内のリハ関係職種間の連携や協力体制もこれまで以上に強まったように思います。今後も、さらに県内のリハ医療連携の輪を大きく広げながら、一般の方々にリハを正しく理解していただくための活動を続けていきたいと思っております。

 最後に、市民公開講座開催という貴重な機会を与えていただき深く御礼申し上げます。

質問箱

失語症患者の痴呆を評価する特別なテストバッテリーがありますか

A 非常に難しい問題ですが、調べた限りでは、失語症患者の痴呆を評価するために開発された特別なテストバッテリーはありません。
 また、痴呆の中心をなすものは記憶障害と認知障害で、認知障害は、失語・失行・失認というかたちで現れます。痴呆の一症状としての失語は初期では語想起の低下、末期になると反響言語を呈します。痴呆症状の悪化に伴い、失語が重度になった場合も通常のテストバッテリーでは評価困難となります。さて、そうした中で、痴呆の定義を「記憶をふくめ複数の認知機能障害」と考えた場合、言語を介さずにいかに失語症を評価するかがポイントとなり、1)視覚を介する、2)日常生活動作から介助者に評価してもらう、という方法が考えられます。そこで、失語症の痴呆を評価するバッテリーとして以下のものを挙げてみました。

  1. 視覚性・視空間性記憶検査:記憶検査としては言語性と視覚性のものがありますが、視覚性検査を上手く活用することが望ましいです。日本版ウエクスラー記憶検査法(WMS-R)の視覚性記憶課題・ベントン視覚記銘検査・Rey複雑図形検査・コース立方体検査などがあります。コース立方体検査は重度でも失語症の患者さんが比較的理解しやすい検査ですが、若年の患者さんではコース立方体の結果と知能指数が相関しない場合があり、注意が必要です。  

  2. 知能検査の動作性課題のみの評価:一般的にはWAIS-R成人知能検査(WAIS-R)を使用します。通常、PIQが80以下であれば低下と考えてよいですが、失語症が重度だと、さらに低下することが予想されます。  

  3. 注意機能・前頭葉機能の課題:Trail Making Test・レーヴン色彩マトリックス検査などがあります。しかし、いずれの評価法も要求されている内容(意味)が失語症のために分からなくて、そのためにテストに対する注意力・集中力が不十分になり、テスト結果が悪くなる可能性があることも理解しておかなければなりません。ちなみに、レーヴン色彩マトリックス検査では、タイプ別失語ごとの平均±標準偏差も成書には記載されていますので、参考になると思います。  

  4. 行動面の問題(異常行動・精神症状など):神経精神科検査票(NPI:neuropsychiatric inventory) などがあります。痴呆症患者で認められる精神症候である、妄想・幻覚・興奮・うつ等、計10項目について評価します。  

  5. 日常生活活動領域の評価:機能的評価ステージ(FAST: Functional Assessment Staging)があります。ADLの障害の程度により家族に聴取しながら行います。アルツハイマー型痴呆の重症度を評価する検査で、計7段階に分類されます。  

文献
1) 石合純夫:高次脳機能障害学.医歯薬出版、東京、2003
2) 日本臨床 痴呆症学(1). 増刊号9、日本臨床社、東京、 2003 

(奈良県立医科大学神経内科  矢倉 一)

リハ医学用語集には半側空間失認、半側無視、半側空間無視が並べて掲載されています。それぞれ意味が違うのか、どれを使っても良いのか、国際的にはどの用語が一般的なのかについて教えてください。

A 一般的には半側空間無視(unilateral spatial neglect;USN, hemispatial neglect)が使用されています。これは、視空間の半側に存在するものに対して無視したり、あるいは気付かないかのように振舞ったりする現象です1)。半側空間失認(unilateral spatial agnosia)は同義語として用いられていますが、厳密には「失認」ではなく、「注意障害」と考えられていますので、半側空間無視の用語のほうが一般的です。半側無視(unilateral neglect)はあまり使われません。しかし、国際的にはunilateral spatial neglectとhemispatial neglectとともに、unilateral neglectも使用されています。

 この半側空間無視は、左大脳半球頭頂葉後部の病変による右半側空間無視も見られますが、通常は右大脳半球頭頂葉後部の病変による左半側空間無視の方が多く、右半球の脳血管障害の約4割に見られます2, 3)。この大脳半球頭頂葉後部は中大脳動脈領域であるために、多くは右中大脳動脈領域の脳梗塞により生じます。また、無視側の視野の同名半盲を伴っていることが多いのですが、半盲があれば半側空間無視を必ず生じているわけではなく、半側空間無視は半盲などの視野障害あるいは眼球運動障害が原因で起こるものではないと考えられています4, 5)。この診断には、日常生活場面での動作をよく観察することがもっとも重要です。例えば、片側に置かれた食事を食べ残すとか、片側にある障害物にぶつかったりするということが見られます。補助検査法としては、欧米ではBehavioral inattention test ( BIT )が比較的よく使用され、日本では日本語版BIT行動性無視検査として用いられています2)。検出率が高く、定量化もできて便利な検査としては“線分二等分試験”があります。この試験は20 cmくらいの水平な線分を示しニ等分させるもので、半側空間無視があると無視側と反対側に線分中点マークがずれます。ずれが1 cm以上右に偏れば無視ありとし、真の中心からマークまでの距離を線分の長さで割ってずれのパーセントを求めれば定量的にも表示できます6)。その他の検査としては、模写課題、人物像の描画や時計の文字盤記入の課題などもあります。視覚的な検索能力検査としては“Albertの消去テスト”があります。半側空間無視は日常行動の妨げになりやすい障害であり、大脳病変、とくに右側病変のある場合は、必ずこれらの検査をするほうがよいと考えられています。

 半側空間無視の予後には、病巣の広がりが最も影響すると言われています。そのほかに、片麻痺などの運動障害や感覚障害、あるいは注意機能障害や知的機能障害の影響がこれに加わります。また、年齢的には高齢者のほうが予後不良となります7)

文献
1) Heilman KM, Watson RT, Valenstein E: Neglect and related disorders.in Clinical Neuropsychology (eds by Heilman KM, Valenstein E), 3rd Ed,Oxford University Press,New York ,1993;pp279-336
2) 石合純夫(BIT日本版作製委員会代表):BIT行動性無視検査日本版.新興医学出版、東京、 1999 3) 小林一成、米本恭三:失行・失認.最新リハビリテーション医学.   (米本恭三 監修)。医歯薬出版、東京、 1999 ; pp133-139
4) Bisiach E, Luzzatti C:Unilateral neglect of representational space.Cortex 1978;14 :129-133
5) 武田克彦:半側空間無視と同名半盲.Clin Neurosci 1998;16 : 24-25
6) 岩田 誠:失認症.神経症候学を学ぶ人のために.医学書院、東京、 1994;349-351
7) 田川皓一:半側空間無視.Clin Neurosci 1997;15 :34-37 

(評価・用語委員会 浅見豊子)

広報委員会より

 あけましておめでとうございます。

 2004年は、台風、集中豪雨、地震、そして最後に大津波と、まさに自然の猛威をあらためて感じさせられた年でした。なかでも津波のニュースは年が明けても連日のように報道されていますが、地震と津波に関する基礎知識の普及や、緊急情報の迅速な伝達システムの整備などにより、多少なりともその被害を軽減できたであろうことを考えると、日頃の地道な広報活動や、情報のすみやかな提供の重要さが再認識され、広報委員としましても身の引き締まる思いがしております。

 今号ではこのリハニュースやホームページの管理などを中心として活動している広報委員会に関する特集を組ませていただきました。才藤理事も述べておられますが、まさに「高齢障害者急増の大津波」が押し寄せようとしている今、「リハ医学・医療の基礎知識の普及」は、その被害を予防・軽減するための防波堤となる最重要課題のひとつであると言えます。当委員会でも、会員の先生方を対象とした広報活動に加え、最近は一般の方々への働きかけも重視し、その活動を広げております。今後の広報活動はどうあるべきか。非常に重要で、難解な問題ではありますが、委員会一同全力を挙げて取り組んで参りますので、これを機会にホームページにもアクセスいただき、ご意見をいただければと思います。

 最後に、あらためて、被災者の方々にお見舞い申し上げますとともに、復興支援に尽力されておられる先生方に敬意を表する次第です。 

(赤星和人)