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リハニュース No.25

2005年4月15日

  1. 特集:リハビリテーション科専門医の開業-現状と未来-

    広島県広島市 はたのリハビリ整形外科・・・畑野栄治

    栃木県大田原市 だいなリハビリクリニック・・・近藤 健

    神奈川県横浜市 綱島鈴木クリニック・・・鈴木明子

  2. 第42回日本リハビリテーション医学会学術集会 6.16~18、金沢―リハビリテーション医学の専門性の追求と連携―

  3. INFORMATION

    社会保険等委員会

    認定委員会

    編集委員会

    中国・四国地方会

    九州地方会

  4. 医局だより

    群馬大学医学部附属病院リハビリテーション部

    聖隷三方原病院リハビリテーション科

  5. REPORT

    2004(平成16)年度海外研修印象記:青柳陽一郎

    2004(平成16)年度海外研修印象記:飯山 準一

    2004(平成16)年度海外研修印象記:菊地 尚久

    海外リハ医交流印象記

  6. 個人情報保護法

  7. 質問箱

    ビデオ嚥下造影の評価のポイント

    右半球損傷での症状の表現、評価について

  8. リハビリテーション科専門医 研修手帳

  9. 総会のお知らせ

  10. 広報委員会より

特集:リハビリテーション科専門医の開業-現状と未来-

広島市 はたのリハビリ整形外科

畑野栄治

 午前 9 時から午後 6 時30分頃までの毎日の外来診察終了後に顔面を触ると患者さんの唾液がベットリと付着しています。この顔で入院患者さんの回診が終了するのが午後8時30分頃になります。開業が成功している証です。原稿締切日が過ぎたと催促されてからの私は、3月16日広島転倒予防研究会の幹事会、17日介護保険主治医研修会と区地域保健・医療・福祉推進連絡協議会、18日県介護実習普及センター運営委員会と県在宅介護支援センター協議会総会、19日社会保険支払い基金審査会、20日地区救急当番医、21日NPO在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク in 広島の実行委員会、22日区地域保健対策協議会地域リハビリ専門委員会による『介護予防』冊子作成編集委員会などと地域の医療・保健・福祉分野に関連する会議が続いていました。原稿遅れの言い訳を述べたわけではありません。地域でリハ活動をしていると、このように幅広い分野と連携せざるを得ません。大学在職中よりも広く社会に向けて羽ばたいている感じがします。

開業にまつわる苦労
 開業当初は当面の費用3億円を融資してくれる金融機関の確保に苦労をしました。当時はまだリハに対しての理解が少なかったので融資担当者を食事に接待して、開業目的を説明し、また高齢化社会を迎えるので経営的にも黒字になることを同伴した公認会計士に確約していただきやっと融資を引き受けてもらいました。1992年に19床の有床診療所として開業するや、クリニック院長でありかつ「福祉の区」の実現を誓約している市議会議員までが、デイケア開設に対して『患者さんを自動車で送迎して奪い取る』と大反対されました。また、その 2 年後の訪問看護ステーション開設時には、地区医師会長から 6 カ月も開設の延期を強いられ、『要援護者の医療と介護の駆け込み寺』を目指す当法人の理念は医師会とは相容れないと思いました(現在は変わってきていますが)。

病院勤務医との違い
 大学リハ部にはリハ病棟がなかったので主導権は他科の主治医が握っており自分の思うような治療ができない、重責感(ノイエスを求められる研究、後継者を育成するなど)などから精神的ストレスとコンプレックスがありました。現在は、地域リハ活動の戦略や戦術も自分自身が思い描いているように実践できる醍醐味があります。また、大学在職当時に論文を書く際には恥をかかないように学術用語を駆使した内容を心がけていましたが、現在はこの原稿のように自分が実践していることを自分の言葉で自由に表現できる気楽さがあります。大学あるいは行政勤務なら上医(政策に影響を与えるような医師)になれる可能性があります。しかし、開業すると上医にはなれなくても、リハを専門にしているおかげで下医(病気だけを治癒する)になることなく、現在必要とされている中医(病気により障害されている生活機能の向上を目指す)には容易になれます。『楽しむ者に如かず』の孔子の言葉にもあるように、要援護者の生活機能の向上や社会参加促進のための維持期リハ・生活適応期リハは、患者さんの喜怒哀楽の生活状況が見えるだけに、生活状況が見えなかった大学時代よりは楽しみがあります。

日々診療活動の喜び
 多くの外来患者さんが待っておられる中で、チョット顔だけを診察室にのぞかせて『先生の顔を見るだけで元気がでるのです』と帰宅されるような患者さんからの言葉に元気づけられます。ヨン様とは著しく異なる私ですが、一目見るだけで安心すると言ってくださる人生の大先輩がおられることはありがたいことです。

今後の明るい未来 
 現在の高齢者は人に迷惑をかけることに対してことのほか躊躇される傾向があり、そのためにリハを行って何としてでも自立したいという意欲があります。リハ科専門医認定証を待合室に掲示しているだけで、診療所の屋上に巨大な看板を掲げているのと同じような効果があると思います。リハは正に時代のニーズに即したサービスであり、来年の介護保険制度見直しにおいては、廃用症候群などの介護予防に対しての高齢者筋力向上トレーニング事業(私は生活機能・活動の向上という言葉が好きですが)などリハ専門家の出番は多くなると思います。

 これから団塊の世代が高齢化社会に突入し、リハ前置主義の介護保険サービスはますますニーズが高まります。また、現在は支援費制度下の福祉サービスは近い将来確実に介護保険に包括されます。そこで、私は本年 5 月から身体障害者療護施設開設工事に着手します。建築物を街のシンボルにするために直径 2 mの大きな時計をつけます。従来のリハは主としてADLの改善ばかりにとらわれていましたが、よくよく考えてみると一日の内でADLに使う時間はたかだか 2 時間以下です。その他の時間は、テレビを見る、読書をする、散歩をする、友人と団らんする、街に買い物に出るなどの生活活動に費やされています。そこで、日常生活活動の充実や社会参加促進に焦点を当てたリハサービスを展開することにより、要援護者の自己実現やQOL向上の究極的なリハの目標にアプローチしてみたいと思っています。

栃木県大田原市 だいなリハビリクリニック

近藤 健

 私の開業してからの7年間の経験、試行錯誤を出来るだけ具体的に書きます。自分の行っていることが結果的にリハ科専門医の生きるモデルとなって欲しいと思いますが、その確信はありませんし、ただ、医療・介護保険制度の中で精一杯、大いなる那須の大地で自分の出来ることを実践したいと思っています。当法人のホームページhttp://dyna.gotdns.com/も参考にしてください。

開業をなぜ決意したのか?
 私の出身は大分県で、1985 年に慶応大学医学部を卒業し、リハ科に入局し旧国立塩原温泉病院に 5 年間ほど勤務していた関連で、その近くの栃木県北部の大田原市に 1998 年 5 月に開業しました。開業の決意をすることが何よりの律速段階でした。長期的なビジョンを持ち大志を抱いて開業したというより、極めて個人的な理由が大きく、開業によってリハ科専門医である妻と 2 人で 4 人の子育てをしながら、なんとかリハ専門性を活かせればいいなと思っていました。 

経営的に成り立つのか?
 開業時の自己資金が約 1000 万円しかなく、最初は在宅医療専門で開業も考えましたが、大田原赤十字病院(550 床)の近くの廃業した築 35 年の内科診療所を月 35 万円で賃借することができ、両親(小さな開拓農家)から 2000 万円を借り、内部を改装し、PTを1人雇用し理学療法 III (45 m2)の施設基準をとり開業しました。開業してすぐに外来患者は1日 30 人程度になり、順調に増加するかと思いましたが、全く期待はずれでした。また、理学療法 III での外来リハではPTの人件費にもなりませんでした。しかし、訪問診療は患者が確実に増えて、訪問リハ、訪問看護なども行い診療報酬が高く経営的には軌道に乗り、2年目には5000万円以上の収益となりました。医師 2 人で、夜も昼も 365 日拘束され、深夜も往診し、経営上のリスクを負って稼いだものですから。これが多いか少ないかは読者の判断に任せます。 
2000 年は介護保険が始まった年で、介護保険事業を行うために医療法人を設立し、空き倉庫を賃借し、デイケア(通所リハ)、居宅介護支援事業所、訪問介護事業所、訪問看護事業所を開始し、2003年6月に入院 19 床と 12 床の短期入所生活介護(ショートステイ)のリハ専門の有床診療所を開設し、2004 年にバブル期に倒産したマンション(部屋数55戸)を競売にて購入し、1階にデイサービスを開設し、高齢者に入居していただき住居、医療、介護サービスを提供する事業も開始しました。 リハ専門の有床診療所では、土曜日曜、祝祭日も休まずリハを行っていますが1人1日当たりの診療報酬の平均は 18,000 円程度です。診療も看護もリハも薬も処方も必要ない介護保険のショートステイでも1ベッド1日 15,000 円程度の収入で、差がほとんどない状況です。悪くいえば患者囲い込み、よく言えば退院後も一貫した介護保険サービス提供を見込まなければ残念ながら単独では経営は成り立ちません。診療報酬点数が上がり有床診療所単独で経営が成り立ち、有床診療所での入院リハが普及するようになってほしいと願うばかりです。 現在は、医療法人の全従業員が 100 人を越え、昨年度の収入は、約 4億6千万円で利益が約 5000 万円ほどです。介護保険による収入が医療保険による収入より大きくなっています。しかし、借入金 4 億円ほどの返済もあり、将来診療報酬、介護報酬の改定で突然 10%以上減ることも十分にあり得ますので安穏としてはいられないのが現状です。 

リハ専門性を活かせるか、やりがいはあるのか?
 小さいながら有床診療所で回復期のリハ患者を引き受け、在宅リハ、在宅生活、在宅介護へつなげ、看取りまでの総合的な医療、介護サービスを地域に密着して自前で提供できるシステムができつつあります。開設から昨年12月までの1年7カ月間に当院に退院した患者について調査した結果は、延べ人数は 226、平均年齢 77.4、平均入院日数 40.6、疾患別では、骨折・整形外科的術後 84、脳血管疾患 64、内科的疾患 27、入院後廃用 22、自宅療養廃用 19、腰痛膝痛など 5、頭部外傷 5 でした。入院元は、大田原赤十字病院 154、自宅 65、その他の医療機関 7、退院先は自宅 198、他の医療機関 13、老人保健施設 5、その他 10 でした。入院時と退院時 ADL の FIM は、入院時平均 81.5、退院時平均 96.8 でした。回復期リハ病棟に負けないリハを行っていると自負しています。 数カ月間寝たきりで、訪問診療、訪問リハ、訪問看護で徐々にADLを改善し、デイケアを利用できるようにした患者が何人もいます。年に 10 人ほど在宅で看取っていますが、癌の末期や看取り直前までリハを行ったこともあります。患者にとってのゴールは医療提供者側が設定した退院時のADLではなく、看取ったときが患者のゴールだと思っています。そのゴールまでADL、QOLを高めることに貢献でき、やりがいは十分あります。介護保険にも今以上にリハの理念を導入すれば社会貢献できることがたくさんあります。ことばで大衆を啓蒙するリハ医も、リハ医学発展のための研究するリハ医も必要ですが、地域に密着しきめ細やかにリハを実践するリハ開業医が必要です。今後20数年間は日本の老人が増え続けます。鍬を手にとって泥にまみれてリハ科専門医が開拓すべき大原野が、眼前に遥かに広がっているのが私には見えます。 

神奈川県横浜市  綱島鈴木クリニック

鈴木明子

整形外科開業と連携して
 横浜市港北区に『綱島鈴木クリニック』を開業して 6 年半になりました。横浜市立大学リハ科医師同門会で開業したのは私が第1号でしたので、今回の原稿依頼となったのだと思います。現在クリニックは整形外科医の主人のものとなり(?)、私の外来は週に 1 回のみです。その他の仕事としては週 3 回の地域療育センターでの小児リハ科外来、年 20 回ほどの横浜市立養護学校のリハ科検診をさせていただいております。かなり変則勤務の非常勤医です。
私がこのような勤務形態にたどりついた最大の要因は、子育ての事情にありました。私は一男一女の母親ですが、長男は自閉症です。彼が診断を受け、専門的療育が必要となってから、私なりに仕事を、しかも生意気ですがリハ科専門医としての仕事を続けられる方法を模索してきたように思います。横浜という土地柄にも助けられ、自分に興味のある小児リハ科の非常勤の外来や養護学校のリハ科検診の口があったことも幸せでした。 

 クリニック全体でみると、主な患者さんは、腰痛・膝関節痛などの骨関節疾患ですが、それでも一般の整形外科開業医と比べ、重度障害による福祉医療での受診がかなり多いと思います。クリニックの設計に際しては、駐車場、車椅子でのアクセスや、待合室、トイレなどのバリアフリー化に工夫したつもりですので、ハード面を評価して来院してくださる患者さんもたくさんいらっしゃいます。
クリニックでの週 1 回の私の外来は、ほとんどが障害者手帳を持っている患者さんですが、受診される方のパターンは大きく 3 つのグループに分けられます。すなわち、[1] クリニックがリハ科主治医となっている場合、[2] 別にリハ科主治医はあるが、リハ科のセカンドオピニオン、または装具作製や診断書など特定の要望のために来院する場合、[3] 障害をもつ患者さんが外傷や内科疾患で来院する場合で、[3] には往診の希望も多く含まれます。

 理学療法士はおりませんので、訓練を処方することはなく、診察と情報提供のみですが、簡単な機能評価すらも受けるチャンスのなかった方も多く、[1] の場合ではその後ずっと当クリニックがリハ科主治医として継続診療を行っています。

 [2] の場合は、大病院ほど待たずに診療を受けられる、診察時間帯の融通がきくなどの点が患者さんにメリットが大きいようです。土曜日しか来院できない患者さんやご家族は決して少なくありませんし、予定通りに受診できる方も限られていますから、外来は予約なしでいつでも受け付ける態勢をとっております。補装具の業者さんは毎週きてくださるので、込み入ったものでなければ作製可能ですし、主人も横浜市大リハ科の研修をしておりますので、彼の外来日でも身体機能障害に関する診療は可能です。

 [3] の場合は、残念なことに、障害をもつ人のちょっとした外傷の治療などが、他の開業医で断られたというケースを耳にします(卒前教育の不足でしょうか)。念のためにレントゲンを撮るだけなのに、遠くの主治医まで車を走らせなければならなかったとか、知的障害をもっていて待ち時間に騒いでしまう、あるいは医療行為が受けにくいということから、病院への受診を躊躇していた患者さんの来院も増えています。待合室ではいろいろな騒動も起こりますが、今では職員も、来院されている他の患者さんも騒動に慣れてきています。私自身も長男の経験があり、他人事ではありませんので、この分野はこれからもずっと取り組んでいきたいと考えています。

 身体障害をもつとリハ科のある大きな病院にしかかかれないというのでは患者さんに負担を強いるだけになってしまいます。患者さんが、様々な選択肢の中から自身の判断でかかりつけのリハ科医を選べる環境が早く整って欲しいと思います。

 幸い当院では、横浜市総合リハビリテーションセンターの医師やケースワーカーから、また区役所の保険福祉担当者からもリハ科専門医ということで患者さんをご紹介いただきました。それまでの私の経験にはない、リハ医学の非典型例が多く、どれだけ役に立てているのやらという感じですが、領域と領域のはざまの障害、ごく軽度の障害、障害をもつ人の一般内科的問題や整形外科的問題などもリハ科開業医の役割として積極的に関わっていきたいと思います。また、障害に対する捉えかたも社会情勢の変化の中で刻々と変化していきますが、開業医という医療の外堀でそれを感じつつ、リハ科医として社会的役割を果たしていきたいと思っています。

第42回日本リハビリテーション医学会学術集会  6. 16~18、金沢 ―リハビリテーション医学の専門性の追求と連携―

近況報告とご案内

 学術集会の開催まで後 2カ月になって参りました。前回と同様に一般演題の登録はインターネット上で受け付けましたところ、いくつかの会員番号の不備、応募者の演題登録の誤りなどがみられましたが、ほぼ順調に進行いたしました。

 一般演題数は 820 題と予想以上の応募の多さに驚いているところであります。従来より各演題 2 名のプログラム委員の先生方に査読をお願いしておりますが、今回このように多くの演題数のため査読する抄録数が増えましたことをお詫び申し上げるとともに心から感謝する次第であります。採否に関しては、査読の先生方のご意向を十分尊重し、会長にお任せいただくことでご容赦願いたいと存じます。口演 547 題、ポスター 260 題、ビデオ 8 題のご発表をいただくこととなりました。余裕を見ました会場数以上に演題数が増加いたしましたので、空き会場はなく目一杯しっかり詰まっておりますので、この点はご容赦願いたいと思います。また前回の学術集会にならいまして口演はすべて PC での発表とさせていただきます。

 初日の第 1 会場(音楽堂)の午前は開会式、会長講演、総会を予定しております。開会式にはパイプオルガンの演奏(黒瀬 恵、武蔵野音楽大学卒、ザルツブルクに留学)を厳かに行いますので是非お集まりいただきたいと思います。招待講演、シンポジウム、パネルディスカッション、ランチョンセミナーと初日午後より開始されます。2 日目はモーニングセミナーより開始され、質量とも充実したプログラムを予定しております。午後には市民公開講座、3 日目の最終日は演題の多さから午後 3 時まで教育講演、一般講演、ポスターと盛りだくさんのメニューが組まれています。

 多数の皆様方のご協力によりまして漸く開催まで一息というところであります。日本リハビリテーション医学会の更なる発展とともに、益々充実した学術集会となりますようご指導ご鞭撻の程宜しくお願い申し上げます。

第42回日本リハビリテーション医学会学術集会会長
金沢大学大学院医学系研究科リハビリテーション科学領域
立野勝彦 

総会のお知らせ

6月16日(木)午前10時30分~12時00分
石川県立音楽堂 コンサートホール(第1会場)
上記の日程で今年度の通常総会を開催いたします。
学会員の過半数の出席により成立しますので、必ず「総会出欠報告」のはがきをご投函ください。

INFORMATION

社会保険等委員会

 社会保険等委員会では、リハ医療に関わる会員の皆様が保険診療を円滑に行っていただく一助になるように、保険診療マニュアルを定期的に公表しています。現行制度の入門書として畑野栄治委員が中心となりマニュアルを作成し、リハ医学第42巻3号に掲載いたしました。

 平成18年度の診療報酬改定に対して外保連は平成17年3月までに、内保連は4月までに各学会の要望意見をまとめるように求めてきています。当委員会はこれを重要課題として作業を進めてきました。近年中医協は、提出された要望項目に対して明確にエビデンスを示すことを求めますので、平成15年度に多くの会員の皆様にもご協力いただいた「リハビリテーション患者の治療効果と診療報酬の実態調査」データの二次解析を行い、「定期的カンファレンスの実施状況とリハビリテーション患者のアウトカム―ADL改善度およびADL改善率との関連―」をリハ医学第42巻3号で、また「リハビリテーション科専門医の関与の有無と患者のアウトカム―ADL改善度、ADL改善率および自宅退院率との関連―」をリハ医学第42巻4号で報告いたしました。前者により定期的カンファレンスを実施している病院においては非実施病院に比べADL改善度・ADL改善率が大きくなる可能性が示唆されました。また後者により、リハ科専門医が関わることで患者のアウトカムは有意に良くなることを示すことができましたので、インパクトのあるリハ関連領域の要望書が提出できると確信しています。

(委員長 田中宏太佳)

認定委員会

 医療および医学教育の現状にあわせて、認定委員会では、専門医・認定臨床医制度の見直しを行って参りました。専門医・認定臨床医の生涯教育の認定は、学会参加および発表、論文、研修会受講に単位を付与して行っていますが、これらをより適正に評価することを目指して、例えば教育講演の演者に対して、そのために行った能動的な学習を評価して単位を与えるなど、現行の生涯教育基準を整備し、その重み付け等について検討しています。また、教育委員会で作成された研修手帳に基づくリハ科専門医の資格認定ならびに研修施設認定の基準についても検討していく予定です。

 平成16年度専門医・認定臨床医試験は、平成17年3月3日(筆記試験)口頭試験;専門医のみ)に実施致しました。専門医認定制機構の専門医評価基準では、筆記・口頭試験に加えて、「臨床修練記録」の評価が求められていますが、本医学会では、従来から受験者が提出した「症例報告」に基づいて専門医試験を実施してきました。今後は、リハ科専門医としての臨床経験を、「症例報告」等から的確に評価するための基準を明確にしていきたいと考えております。さらに、研修施設の年次調査、指導責任者の認定、経過措置による認定臨床医の専門医試験の実施などを引き続き行って参ります。どうぞよろしくご協力のほどをお願い申し上げます。

(委員長 長谷公隆)

編集委員会

1.電子投稿受付の試行にあたって
 最近、各学会誌におきましては、電子化の方向へ向かっており、本学会誌におきましても、校閲および審査等の編集作業の迅速化を図るために電子ファイル原稿(PDF)による投稿を本年1月より試行的に開始いたしました。つきましては、本年のリハ医学第42巻1号1ページをご参照いただき、原稿をご投稿いただきたく存じます。電子化により査読過程のさらなる迅速化などにつきまして努力していきたいと思います。積極的なご投稿をお願い申し上げます。
なお、郵送のみのご投稿も従来通り受け付けますので、よろしくお願い申し上げます。 

2. 投稿論文のお願い
 2005年に入ってから投稿論文数の伸びがやや鈍っております。上述した電子媒体を使った投稿含め、査読過程のさらなる迅速化などさらに努力していきたいと思います。積極的なご投稿をお願い申し上げます。
またそのお願いの一つとして、第42回学術集会の一般演題のなかから、優れた演題を座長の先生からご推薦いただき、学会誌への投稿論文の勧誘を行うことといたしました。ご担当のセッションのなかから、学会誌への掲載にふさわしいとお考えの演題がございましたらご推薦くださいますようお願い申し上げます。お忙しい時期に、また突然のお願いでおそれいりますが、よろしくお願い申し上げます。なお、ご投稿された論文につきま、編会として通常の査読を行わせていただきますことをご了承ください。 

3.文献データベースへの登録
 数年前より、リハ医学会は、学会誌掲載論文の認知度を高める一手段として、国立情報学研究所電子図書館サービス、民間の電子図書館であるメディカルオンライン(http://www.meteo-intergate.com)、CIRRIE (The Center for International Rehabilitation Research Information and Exchange、 http://cirrie.buffalo.edu)への登録を行っております。国立情報学研究所電子図書館サービスは、会員であれば登録するだけで利用可能になっております(申請:user-request@nii.ac.jp、HP:http://www.nii.ac.jp/els/els-j.html)。積極的な活用をお願いします。

4.委員交代
 2004年10月より赤居正美委員から小林一成委員に交代されました。退任者のこれまでの編集委員会に対する貢献に感謝するとともに、新委員のご活躍を期待いたします。  

(委員長 正門由久)

中国・四国地方会

 中国・四国地方会では、年に2回の学術集会を開催しております。第15回地方会は2005年5月29日(日)9時~17時を予定しています。会場は山陰本線米子駅前にあります米子コンベンションセンター「ビッグシップ」で、大会長は鳥取大学医学部神経内科教授の中島健二先生です。特別講演(専門医・認定臨床医生涯教育研修会、2単位)は、ボバース記念病院院長の宮井一郎先生に「脳卒中に対するニューロリハビリテーションの進歩」を、川崎医療福祉大学感覚矯正学科教授の前島伸一郎先生に「高次脳機能障害の評価と治療」をお話しいただくこととなっています。学術集会ならびに専門医・認定臨床医生研修会への参加についての申し込みは不要です。一般演題のプログラムならびにアクセス等に関する詳細は、ホームページ(http://neurol.med.tottori-u.ac.jp/riha/)をご覧ください。なお、第20回中国・四国リハビリテーション医学研究会との同時開催ですので、コメディカルの方々の参加も可能です。多数の皆様のご来場をお待ち申し上げます。

(代表幹事 椿原彰夫)

九州地方会

 九州地方会では年2回(2月、9月)の学術集会と専門医・認定臨床医生涯教育研修会を開催していますが、会員の先生方よりの問合せで多いのが、次・次々・次々々回の学術集会ならびに研修会の開催地です。会員数ならびに地域性を考慮して、福岡県5回、熊本県3回、鹿児島県2回、大分県・長崎県・佐賀県・宮崎県・沖縄県1回の比率で割り当てて開催の目安としています(2005年鹿児島・福岡、2006年長崎・宮崎、2007年福岡・熊本、2008年沖縄・福岡・・・)。正式には、前々会の地方会幹事会・総会にて開催地および主催会長が決定されます。

 本年2月の地方会・総会にて幹事・監事・顧問の改選が行われました。蜂須賀研二幹事は引き続き代表幹事に、田島直也幹事が顧問へ、他の幹事・監事は再選され、新たに、森修幹事(熊本託麻台病院・院長代行)が選出されました。また、2005年度の地方会事業計画案・予算案が承認されました。

 次回の第18回地方会学術集会および生涯教育研修会は、2005年9月18日(日)、福岡市中央区・都久志会館にて、長尾病院副院長・浅山 滉幹事のお世話で開催される予定です。

(事務局担当幹事 佐伯 覚)

医局だより

群馬大学医学部附属病院リハビリテーション部

 本院は群馬県前橋市にあります。東京から新幹線または関越自動車道で1時間の距離です。開設以来62年目を迎え、ベッド数 705 床、診療科は 27 あります。リハ部は中央診療部門として、診療科より依頼を受けて治療を行っております。

 スタッフは教授、講師、助手、医員の4名で、医員のポスト2のうち、1つが空席です。PTは 6名、OT 3 名、ST 1 名、NRS 1 名、事務員 1 名、教授秘書 1 名で、総合リハ施設の承認を受けております。MSWは医療福祉相談部に 1 名おります。その他に大学院生が 2 名おります。

 日本リハ医学会専門医が 2 名で、さらに 1 名は認定医から専門医申請中です。日本リハ医学会の研修病院の認定を受けており、床反力計付3次元動作解析装置 (Vicon 6120)、3次元機械刺激装置、Cybex II、ワークシミュレーター (Primus) が備えられております。

 昨年 1 年間のリハ依頼の診療科別内訳は、整形外科 40%、脳外科 16%、神経内科 10%、外科 11%の割合で、急性期症例を主として、骨関節疾患、脳卒中、脳腫瘍、神経筋疾患、呼吸リハ、小児疾患など多彩です。理学療法の 68%、作業療法の 65%が入院患者に対して行われました。言語療法は嚥下障害が 32%、構音障害 28%、失語 24%でした。理学療法の 47%、作業療法の 42%、言語療法は 31%が早期加算対象患者でした。

 教授、講師は整形外科学出身で、他の2名は神経内科の出身です。お互いに協力し合って臨床、研究、教育を行っています。整形外科的な臨床研究は膝関節の研究、基礎研究では結合組織の張力依存性細胞膜 Ca2+チャンネルの研究を行っています。

 臨床研究については、神経内科と協力しパーキンソン病患者の歩行障害と姿勢反射障害に対するリハ効果の研究を行っています。また脊髄小脳変性症の磁気刺激療法の効果判定を、歩行解析にて行っています。

 群馬大は国立大学としては5番目にリハ専任教授が認められましたが、他の 4 大学と異なり講座は認められませんでした。本学のように専任教授がつき、講座無し、診療科でなく中央診療部の形態をとる方式が今後の国立大学のリハ部運営のモデルになる可能性があります。国立大学にふさわしい良いリハシステムを構築するのが、我々に与えられた使命と考えています。多くの仲間が参入してくださることを望んでおります。

(清水 透)

群馬大学医学部附属病院リハビリテーション部
〒371-8511 群馬県前橋市昭和町3-39-15
TEL 027-220-7111(内線8532)
FAX 027-220- 8532
URL:http://www.med.gunma-u.ac.jp/hospital/index.html

聖隷三方原病院リハビリテーション科

 聖隷三方原病院は、急性期医療を中心とした764床の総合病院で、平均在院日数は約 15 日である。その一方でホスピス・結核・リハの病棟を有し、慢性期の医療にも力を入れている。リハ総合承認施設であり、リハ科病床は 43 で看護 A 加算、特 3 類 2: 1、看護師 20 人、看護助手 8人であり、6 人のリハ科医師と 2 人の歯科医師が勤務している。コメディカルスタッフは、PT 25 名、OT 13 名、ST 5 名、歯科衛生士3名、MSW 2 名などであり、各パートが緊密な連携を取りながら、急性期医療の中でリハ理念を実践している。

 当科では、『専門性が高く、急性期から在宅までの一貫したリハ・アプローチ』をモットーとして、[1] 発症日からの急性期リハアプローチ、[2] 摂食・嚥下障害への充実したチームアプローチ、[3] リハ科病床における亜急性期~回復期の専門的リハ、[4] 在宅復帰へ向けた地域スタッフとの連携、などを大きな柱として臨床活動を展開している。

 従来リハ医の確保に苦慮してきたが、2002年より指導体制を強化し、リハ専門医養成プログラムをスタートさせてから状況は好転している。若いリハ科医師を育て『自己再生可能な』リハ科にするとともに地域医療に貢献できるリハ医養成を目指している。研修医募集に際しては、[1] 病院全体の初期研修が充実している、[2] リハ科の臨床活動が活発で院内各科に認知されている、[3] 学生の見学を積極的に受け入れ、リハ科を志向する医学部生に認知してもらう、などの項目が大切であると考えている。現在 4 人の研修医が『入局』してスーパーローテイト方式の研修を院内各科で進めている。2005 年春からは初期研修を終えた 3 人がリハ科に帰属して、専門研修をまさに開始し、さらに新たなメンバー 2 人がマッチング制度を経て入局予定である。

 当科の特徴である摂食・嚥下障害は院内、院外から高い評価を得ているが、最近の取り組みで強調したいことは『リハ科歯科チーム』を 5 年前に結成し、現在歯科医師 2 名・歯科衛生士 3 名が活躍していることである。摂食・嚥下障害治療の一環として病院全体の口腔ケアに取り組み、全科から高い評価を得ている。  これからも一般総合病院におけるリハ科の臨床活動を充実させたいと考えている。

(高橋博達)

聖隷福祉事業団総合病院聖隷三方原病院リハビリテーション科
〒433-8558 静岡県浜松市三方原町3453
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REPORT

2004(平成16)年度海外研修印象記:青柳陽一郎

川崎医科大学リハビリテーション医学教室

 2005年10月13日から16日までカナダのモントリオールで開催された The 13th Annual Scientific Meeting of the Dysphagia Research Society (DRS)(第13回米国嚥下障害学会)に参加しました。今回は親日家であるJohns Hopkins 大学リハビリテーション科教授の Dr. Palmer が会長ということもあり、日本人向けのプログラムも用意されていた関係で 40 人以上の日本人が参加し、例年にも増して演題数が多かったとのことです。当教室からは椿原彰夫教授、阿部泰昌先生と私の 3 人が参加しました。

 10 月 13 日は日本摂食・嚥下リハビリテーション学会との共催で、pre-conference course が開催されました(写真上)。Dr. Logemann、Dr. Langmore をはじめとした豪華なメンバーによるレクチャーを拝聴することができ、摂食・嚥下の知識の整理に役立ちました。その後は藤田保健衛生大学の才藤栄一教授のご好意もあり、Institut de Réadaptation de Montréal (Rehabilitation Institute of Montreal) を見学する機会を得ました。ケベック州最大のリハ専門病院ですが、日本のリハ専門病院との差はそれ程感じませんでした。強いて言えば、リハの対象のほぼ全員が入院患者であること、全員が社会復帰を念頭に置いた患者(平均年齢40歳前後)であること、独自の義足作製室を有し、ソケット作成にコンピュータ技術を駆使している点が若干異なると感じました。

 10月14日から16日の午前中までは一会場で一般演題の口頭発表とシンポジウムが交互に行われ、最終日の午後にポスター発表が行われました。臨床のみならず基礎的な研究にも注目が集まりました。最近の動物実験により脳幹部の嚥下・呼吸に関する CPG の神経伝達物質、神経制御機構がかなり解明されたことを実感しました。

 会長の Dr. Palmer が直前のアクシデントで参加できないという事態が発生したのですが、最終日のディナーにはビデオレターに元気な姿で登場し、ジョークで会場の笑いを誘うなど和やかなムードで幕を閉じました。日本からも興味深くかつ質の高い演題がいくつか出ていましたが、日本人の Award受賞者はゼロというのが残念な結果でした。私自身は初めての DRS 参加となりましたが、最新の知識と最前線の研究を堪能することができ有意義な4日間を過ごせました。最後になりましたが、今回助成をいただいた日本リハ医学会に深謝いたします。

2004(平成16)年度海外研修印象記:飯山  準一

鹿児島大学大学院医歯学総合研究科
運動機能修復学講座機能再建医学分野

 今回、海外研修助成を受け、Journal of Rehabilitation Medicine(以下 JRM)誌主催の国際シンポジウム「リハの帰結における評価と測定」に参加して参りました。スウェーデンやノルウェーを中心に、世界 23 カ国から総勢 200 名程の参加者はリハや整形などのドクターだけでなく、PT、OT、ST、MSW、臨床心理士、統計(数学)の専門家と多彩な職種でした。

 さて、シンポジウムの具体的な内容ですが、ICFの推奨に始まり、定量的評価の質的向上の工夫へと展開し、特に帰結研究の精度をより高めるための Rasch 分析(Georg Rasch 氏の考案した統計学的手法で、順序尺度を間隔尺度に変換するひとつの方法です)の応用に関するものが、全 15 演題のうち 3 題あり興味を惹かれました。一方で定性的評価の重要性や、定量的評価の限界といったテーマについてもエキサイティングな議論が繰り広げられ、定量的評価が苦手で、つい定性的評価に偏りがちな自分としては、ほっとするところもありました。

 一般演題は 46 のポスターのみで、私は"Intestinal Absorptive Function by Warm Water Bathing-Examination by Duodenal Injection of Acetaminophen-"と"Effects of Low Temperature Sauna Bathing on Peripheral Circulation in Patients with Cerebral Palsy"と題して、全身温熱の一味違った利用法について発表して参りました。熱意を込めてプレゼンしましたが、聴衆の心をつかむにはまだまだです。

 シンポジウム終了後は、JRM 誌の編集長で、当学会の名誉会員でもあられる、Gunnar Grimby エーテボリ大学名誉教授のご紹介で、カロリンスカ大学病院のリハ科(Borg 教授)、エーテボリ大学病院のリハセンター(Sunnerhagen 教授)、オスロ大学病院のリハセンター(Stanghelle 教授)を訪ね、研究に関することだけでなく、日本とスウェーデン、ノルウェーの医療システムや大学病院の運営についてについてディスカッションができ、とても有意義な研修旅行になりました。このような機会を与えていただいたことを、この場を借りて深謝いたします。

2004(平成16)年度海外研修印象記:菊地 尚久

横浜市立大学リハビリテーション科

米国の脳外傷モデルシステム
 当初は西海岸と東海岸の2カ所を見学する予定でしたが、西海岸の施設とは日程が合わなくなり、今回はバージニアコモンウェルス大学を見学しました。リハ科は Dr. Cifu が主任教授で、米国における脳外傷脊髄損傷のモデルシステムとなっています。この大学には脳外傷専用リハ病棟があり、病棟専属のPT、OT、ST、臨床心理士、MSWがいます。印象的だったのは臨床心理士が評価・治療面で重要な位置を占めていることです。急性期においても感情や行動面における評価と管理に対して心理士の存在が重要であると感じました。 

 関連病院として退役軍人病院も見学しました。この病院には脳外傷リハ病棟があり、世界中から若い軍人が送られてきます。ここの目的はリハを行ってどのような軍の仕事に戻られるかとなっており、在宅生活がゴールの患者には手厚くないのが問題です。なかにはイラクで銃撃にあった脳外傷の患者がおり、麻痺は軽いものの強いPTSDに悩んでいました。

 研究に関しては機能的ゴールに関するもの、高次脳機能障害に対するアプローチが多くを占めています。アラバマ州にある脳外傷のデータベースを利用してそれぞれの研究を行っています。

 最後の金曜日に医局の resident とスタッフに対して1時間の講義を行い、その後に多くの質問があり、意見交換を行うことができました。

 最後になりますが今回の渡米に対して貴重な機会を提供していただいた日本リハ医学会前理事長の千野先生、現理事長の江藤先生、理事ならびに国際委員会の先生方に深謝いたします。

海外リハ医交流印象記

 2004(平成16)年度外国人リハビリテーション医交流助成では、第2回日韓合同リハカンファレンス開催にあたり、韓国リハ専門医14名を選出した。その中から3名の海外リハ医交流印象記を掲載する。

Yun Hee Kim, MD, PhD
Sangkyunkwan 大学リハビリテーション科教授(46歳、女性)
 このジョイントカンファレンスは日本のリハ医療を理解するのに非常に有益でした。日本で私と同じ研究を行っている研究者と会うことができ、今後アジアのリハ医療の発展のために共同で研究を進めることができるのではと思います。素晴らしいジョイントカンファレンスを企画されありがとうございました。

Ju Hyun Lee, MD
韓国国立リハビリテーションセンター研修医(30歳、女性)
第2回日韓ジョイントリハカンファレンスに参加できうれしく思います。日本を訪問したのは今回が初めてでした。京都は美しい町で楽しい時間を過ごしました。私を日本リハ医学会のtraveling fellowship に選んでいただきありがとうございました。しかしこの栄誉は私個人のものでなく私たちリハチームのものと考えています。日韓ジョイントリハカンファレンスがさらに友好を深め、リハ医学の分野で国際協力体制を進めていくことを期待します。

Kyu Bum Lee, MD
韓国国立リハビリテーションセンター研修医(34歳、男性)
 私の名前は Kyu Bum Lee と言い、ソウルの国立リハセンターで働いています。日本リハ医学会の traveling fellowship program に感謝するとともに、私を選んでいただき光栄に存じます。私はこの学会で韓国の Community based rehabilitation について発表しました。私は日本でも韓国でも Community based rehabilitation にもっと多くのリハ医が興味を持つことを希望します。そして多くの人がこの学会に参加し意見を交換できたことはうれしいことです。日韓ジョイントリハカンファレンスがさらに発展することを期待します。ありがとうございました。 

翻訳:越智文雄
2004年度国際委員会海外交流医担当 

個人情報保護法

 4月より個人情報保護法が実施されました。日本リハ医学会関係では一部の先進的な病院を除いては昨年 12 月に厚生労働省より「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱のためのガイドライン」が出されてようやく対応を始め、どうしようかといっている内に施行されてしまったという状況ではないでしょうか。

 もっとも医療関係では医療従事者の職業倫理として守秘義務は大切なものと認識され、それなりの対応がなされておりましたので、早急に何かをしなければいけないという状況はそれほど無いはずです。それでも、何かしなければという気持ちにつけ込んだ、鍵付きの「個人情報保護法対応診療録保管庫」等の便乗商法まがいの話も入ってきますので、現場でどうして良いか対応に困っているのも事実であるようです。

 紙面が限られますので、項目の羅列になってしまう個人情報保護法の解説は行いませんが、基本的な考え方は 1980 年に OECD のプライバシーガイドラインで示された内容です。その 8 原則を日本の状況に合わせて具体化したものです。医療に限らず全ての分野での個人情報保護法ですが、医療分野は金融・信用や情報通信の分野と共に特に適正な取扱いの厳格な実施を確保する必要がある分野とされてガイドラインが示されました。

 医療分野では保険請求事務、患者さんの紹介、処方の際の疑義紹介といった業務上必須で患者さんからも了解されていると考えられる個人情報のやりとりがあり、それらに関してまで個人情報保護法が定める取扱いをすると極めて大変なことになります。そのため、医療分野ではこれまでに定められていた守秘義務規定等を前提に、十分な院内掲示のみで拒否が無い限り同意が得られたこととしての対応が可能になるなど、他分野にはない手厚い例外処置が講じられました。適切な表示程度で診療業務そのものには大きな変更なく対応可能になっています。

 もちろん、基本的な個人情報保護、プライバシーに関する配慮は当然求められていますので、診療以外の研究業務や病院職員の個人情報についても、この機会に見直す必要はあると思われます。また、他分野にない例外処置であるからこそ、より厳格な対応が望まれ、不適切な対応が目立つ場合にはさらなる制限が待っていることは容易に予想されます。医療関係者は個人情報保護法の趣旨を理解し日常診療に当たることが求められていますので、ガイドラインを熟読することをお勧めします。

参考ホームページ
1)個人情報の保護(内閣府国民生活政策
HP)http://www5.cao.go.jp/seikatsu/kojin/index.html
2)「医療・介護関係事業者における個人
情報の適切な取扱いのためのガイドライン」(厚生労働省HP)http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/12/dl/h1227-6a.pdf

(広報委員会 根本明宜)

質問箱

ビデオ嚥下造影の評価のポイントを教えてください。

A 嚥下の口腔相、咽頭相は、それぞれの運動時間が1秒以内である。嚥下造影検査(Videofluorography、以下 VF)では、このすばやい運動を、ビデオ撮影によって繰り返し観察したり、静止させたりすることが可能である。これによって、誤嚥の同定、不顕性誤嚥の発見、効果的な体位の選択、嚥下しやすい食物形態の選択などが可能になった。

 撮影装置は、通常のデジタルビデオデッキでコマ送りが可能なもので十分である。また、リクライニング式車椅子に座面の高さ調整がついたものを用いることで、いろいろな背もたれの角度での検査が可能になる。

 検査食品は、造影剤を含んだ液体(ジュースなど)に、とろみをつけて、低粘度、高粘度のものを用意する。また、半固形物(ゼリー)、固形物を準備する。
 VFでの評価ポイントとしては、口腔相では、口唇の動き、咀嚼状態、食塊形成、口腔内残留、咽頭への送り込みなど、咽頭相では、早期咽頭流入、咽頭通過、喉頭侵入(誤嚥)の有無・タイミング・量、口腔への逆流、鼻咽腔への逆流、咽頭残留(喉頭蓋谷、梨状陥凹)、食道入口部の通過など、また、食道相では、食道残留、食道内逆流、胃食道逆流などをチェックする。さらに、誤嚥した時の咳嗽反射の有無と強さについても検討する。

 特に誤嚥は、喉頭内への造影剤の流入の時期によって、前咽頭期型、喉頭挙上期型、咽頭下降期型、混合型に分類される。前咽頭期型は嚥下反射が誘発されないか、遅延している場合に生じる。喉頭挙上期型は喉頭挙上や声帯の閉鎖が不十分である場合に生じる。咽頭下降期型は、咽頭期が終わり、喉頭が下行し、声門が開く時に生じる誤嚥で、嚥下時の咽頭内圧の不十分な上昇や食道入口部の不完全な開大のために、咽頭内に残った食塊が、喉頭が下行した際に生じる。

 また、VF中に誤嚥が認められる場合に、これを防止するための対策として考えられる手技について、同時にVFを用いて確認することができる。例えば、食物形態による変化、背もたれの角度調節、頭部の屈曲、頸部の回旋、随意的な咳嗽を促す、反復嚥下、などである。
 しかし、VFの検査は、患者に通常の食事とは異なる緊張感を与え、しかも命令による嚥下であり、食物形態も均一のものを用いているので、その結果がそのまま日常の摂食状態を反映するとは限らない。したがって、臨床所見と合わせて判断することが望まれる。

文献
1)木村彰男:摂食・嚥下障害の評価. 現代リハビリテーション医学(千野直一 編). 改訂第2版,金原出版, 東京, 2004; pp 183-188
2)小野木啓子・他:嚥下造影検査最近の知見を含めて. 臨床リハ 2002; 11: 797-803
3)谷本啓二:VF検査、摂食・嚥下リハビリテーション(金子芳洋、千野直一 監修). 医歯薬出版, 東京, 1998; pp 93-96 

(評価・用語委員会 高橋秀寿)

右半球損傷では、不注意や人格変化など、簡単には表現できない複雑な症状が見られますが、これらの症状の表現、評価について国際的に統一したものがあるのでしょうか。

A 右半球には視空間認知に関連したもの、および注意の転換や持続に関連したものの少なくとも2つの神経回路が推察されており、右半球障害による臨床症状もこの回路の障害として捉えることができます。また、右半球障害は左半球障害と異なり、症状の責任病巣の局在性がピンポイントでないことが特徴とされています。右半球損傷が関与する症状としては、半側空間無視、病態失認、構成障害、運動維持困難、地誌見当識障害などのある程度特徴を持った症状と、注意障害、せん妄、感情障害などのより高次の症状及び精神症状に分けて考えられます。

 右脳機能障害全体としての検査方法としては、標準化されているものはありませんが、個々の症状・症候に対して基準化されつつあるのが現状です。以下に代表的な右脳機能障害とよく用いられる検査法を記します。

  1. 半側空間無視:欧米では比較的よく使われているものとして Behavioral inattention test (BIT)があり、日本版BIT行動性無視検査も作成されています。下位項目としては線分抹消試験、文字抹消試験、星印抹消試験、模写試験、線分2等分試験、描画試験が含まれています。

  2. 片麻痺に対する病態失認:片麻痺の存在を無視または否認する症状で、簡便な病態失認のスコアとして Bisiach の4段階に分類する方法があります1)

  3. 構成障害:図形の模写、自発描画、マッチ棒による図形の構成、コース立方体組み合わせテスト、WAIS-R 成人知能検査の積み木問題、などの構成的課題により評価することが多く、文献的には立方体と家の絵の模写が代表的です。

  4. 運動維持困難:閉眼、開口、挺舌などの定常的動作を、指示に従って1つずつ、または2つ以上同時に維持できない症状です。Joynt が報告した検査法は、9項目の動作についてそれぞれの動作維持困難に関する検査となっています2)

  5. 運動無視:患側肢(特に上肢)を不自然な状態に放置しており使おうとせず、健側のみで動作を行おうとするものです。Fiorelli による診断基準が報告されており、拍手、ビンのふたをあける、ボタンの留めはずし、などの動作を観察します3)

    さらにより高次の機能(注意、せん妄、感情・人格など)に関する症状で、右半球に関与するものは以下のとおりです。

  6. 遂行機能障害:言語、行為、対象の認知、記憶などある程度独立性を持った高次脳機能を制御し統合する機能障害であり、いわゆる注意の障害にあたります。評価にあたっては前頭葉機能の検査バッテリーが主となりますが、特に右脳障害に関連するものとしては、選択的注意 (selective attention) の検査である Stroop 課題、非言語性の流暢性を評価するデザイン流暢性検査、があります。

  7. せん妄:左に比べて右半球障害でせん妄を生じる確率が高いとされています。用語の定義としては、DSM-IV の一般身体疾患によるせん妄の診断基準、及びせん妄自体の診断基準として Confusion Assessment Method (CAM)、などが用いられています。検査法として特別なものはなく、見当識、記憶、計算など注意の集中と持続を要する課題のほとんどに障害が見られます。

  8. 人格・感情の変化:いわゆる器質性精神障害(Organic psychiatric disorders:OPDs)として分類されています4)。ICD-10 の F07.8 には右半球器質性感情障害として定義されております。DSM-IV では OPDs はせん妄、痴呆など各認知障害の章で定義されています。

文献
1)Bisiach E, et al: Unawareness of disease of following lesions of the right hemisphere: anosognosia for hemiplegia and anosognosia for hemianopia. Neuropsychologia 1986; 24: 471-482
2)Joynt RJ, et al: Behavioral and pathological correlates of motor impersistence. Neurology 1962; 12: 876-881
3)Fiorelli M, et al: PET studies of cortical diaschisis in patients with motor hemi-neglect. J Neurol Sci 1991; 104: 135-142
4)Roedholm M, et al: Diagnostic classification of organic psychiatric disorders after aneurismal subarachnoid hemorrhage: a comparison between ICD-10, DSM-IV and the Lindqvist & Malmgren classification system. Acta Psychiatr Scand 2003; 108: 222-231 

(東京医科歯科大学神経内科 山脇正永)

リハビリテーション科専門医 研修手帳

 リハビリテーション科専門医研修手帳を作成しましたので、その運用方法を記したシートを添えて全会員に配布いたします。研修手帳はリハビリテーション科専門医育成のための指針であり、認定審査の際の重要な証明資料となるものですのでご活用ください。

総会のお知らせ

6月16日(木)午前 10:30 ~ 12:00
石川県立音楽堂 コンサートホール

学会員の過半数の出席により成立しますので、必ず「総会出欠報告」のはがきをご投函ください。

広報委員会より

 本号では「リハビリテーション科専門医の開業―現状と未来―」の特集記事を掲載いたしました。日本リハ医学会の会員も 9,500 人を越え、リハ科専門医が広告可能となり、様々な職場で専門医は活躍しております。最近では他の科と同様に開業する会員も増えてきています。そこでリハ科医として開業された先生方に開業にまつわる苦労、特色、将来の展望などについて執筆していただきました。原稿を読むと開業や仕事での苦労が伝わってきますが、仕事への喜び・満足感も感じ取れます。地域に密着した活動を実践するためには、リハ科開業医は必要です。今年度に介護保険、来年度に医療保険の見直しが待っていますが、リハ科専門医の活動する場は今後ますます広がると予想されます。

 広報委員会ではリハ医学会の会員の皆様に様々な情報を提供できるように、本年度もリハニュース、ホームページの充実に努めて参ります。また、日本福祉機器展での活動も予定しています。皆様からのご意見やご要望も宜しくお願いいたします。

(猪飼哲夫)