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リハニュース No.27

2005年10月15日

  1. 特集:診療ガイドラインの動向と課題

    日本リハビリテーション医学会における診療ガイドライン策定の動向と課題・・・里宇明元

    脳卒中治療ガイドライン策定委員会・・・正門由久

    脳性麻痺リハビリテーションガイドライン策定委員会・・・岡川敏郎

    呼吸リハビリテーションガイドライン策定委員会・・・里宇明元

    安全管理・推進のためのガイドライン策定委員会・・・前田真治

  2. 第43回日本リハビリテーション医学会学術集会開催のご案内・・・宮野佐年

  3. INFORMATION

    社会保険等委員会

    認定委員会

    東北地方会

    九州地方会

  4. 医局だより:相澤病院リハビリテーション科

  5. 質問箱

  6. 発達障害者支援法

  7. 日本リハ医学会 春期・夏期医学生リハセミナーに参加して

    北海道大学

    横浜市立大学

    昭和大学

    東京大学主催:医学生とリハビリテーションを語る会

    鹿児島大学

    聖隷三方原病院

    高知大学

  8. 事務局だより

  9. 広報委員会より

特集:診療ガイドラインの動向と課題

日本リハビリテーション医学会における診療ガイドライン策定の動向と課題

診療ガイドライン委員会委員長  里宇明元 

診療ガイドラインとは
 診療ガイドラインとは、臨床家が特定の臨床上の問題に対し、適切なヘルスケアを提供することを助けるために系統的に作成された勧告である。その目的は、ヘルスケア過程の改善、臨床の均質化、医療資源利用の最適化、臨床家への最新知識の提供と科学的証拠の活用の促進にある。通常、その内容は、臨床経験、専門家の意見、研究の証拠が混合されたものである。最近では、その作成は系統的レビューに大きく依存し、レビューの方法が厳密なほど、また取り上げる研究の質が高いほどガイドラインは証拠に基づいたものとなる。取り上げる課題の選択は、頻度、もたらされる臨床的・経済的負担、利用可能な資源、科学的証拠の利用可能性、臨床に影響を与える可能性などを考慮して行われる。実地臨床でのガイドラインの利用にあたっては、どこまでが共通でどこまでが特有な部分かを見極めることが大切となる。 

診療ガイドライン委員会
 現在、多くの学会でガイドラインの策定が進められているが、リハ医学会においても、主体的、先導的にリハ医学・医療に関するガイドラインを策定・公表・普及することを目的に2004年に診療ガイドライン委員会が設置された。本委員会の前身は、脳卒中関連5学会による脳卒中治療ガイドラインの策定にあたったガイドライン策定委員会である。委員会は、活動方針の検討およびガイドライン作成にあたっての連絡・調整等を行うガイドラインコア委員会と個別のガイドライン作成のために設置される策定委員会から構成される(表1)。 

委員会の活動状況
 2005年9月現在、4つの策定委員会が設置され(図1)、脳卒中治療ガイドラインの改訂、リハ医療における安全管理・推進ガイドラインの策定(関連専門職等委員会、日本理学療法士協会、日本作業療法士協会、日本言語聴覚士協会、日本リハ看護学会、日本義肢装具士協会との合同)、呼吸リハマニュアル―患者教育・栄養指導の作成(日本呼吸器学会、日本呼吸管理学会、日本理学療法士協会との合同)が進行中であり、また、ごく最近になって脳性麻痺リハガイドラインの策定が開始された。 

今後の課題
 ガイドライン策定作業の標準化を図るために策定委員会活動ガイドラインの作成、学術集会等の開催に合わせた講習会を行う予定である。さらに学会としての重要性、社会的重要性、厚生行政や他学会の動向などをみながら、タイムリーなガイドライン策定を行うために策定すべき課題を選択していく必要がある。現在、リハ臨床研究、運動療法、関節リウマチ、脊髄損傷、転倒予防などが候補としてあげられている。質が高く、実用的なガイドラインを作成していくことはリハ医学会の重要な使命であり、学会員一人ひとりの協力が不可欠なことを改めて強調して稿を終わりたい。 

表1 診療ガイドライン委員会の役割

図1 診療ガイドライン委員会の組織図(2005年9月現在)

脳卒中治療ガイドライン策定委員会

委員長  正門 由久

脳卒中治療ガイドライン2004策定 までの経緯
 1999年、脳卒中学会および神経治療学会にて、本邦独自の脳卒中ガイドライン作成の必要性が提起され、2000年11月脳卒中関連5学会(リハ医学会、脳卒中学会、神経治療学会、神経学会、脳神経外科学会)が合同でエビデンスに基づいたガイドラインを策定することが合意された。2001年11月リハ医学会にガイドライン策定委員会が設置され、作業を開始、6回の委員会、4回の合同委員会、外部評価を経て、2003年5月に「脳卒中治療ガイドライン2003」が完成した。その後、若干の修正を経て、2004年3月に「脳卒中治療ガイドライン2004」が出版された。AGREE(Appraisal of Guidelines for Research & Evaluation instrument)による評価を受け、良好な結果であった。

改定に向けて
 脳卒中治療ガイドライン2004でカバーされているエビデンスは、2001年ごろまでのものであり、最近脳卒中関連の論文、特にRCT(ランダム化比較試験)が飛躍的に増加しており、それにガイドラインが追いついていない。そこで改訂作業を早急に具体化する必要があり、2005年4月脳卒中学会にて、リニューアルのための合同ガイドライン委員会(リハ医学会から:木村彰男常任理事)が開催された。前回、脳卒中治療ガイドライン作成に深く関わったメンバーを中心に(正門由久、越智文雄、中馬孝容、渡邉修)に診療ガイドライン委員会からのサポートメンバー(里宇明元、園田茂)も加わって小委員会が発足し、2005年5月第1回小委員会が開催され、改訂の基本的方向、タイムスケジュールを確認し、2006年4月に向けリニューアル中である。 

今後の課題
 今後取り組むべき課題としては、策定されたガイドライン公表の実務(ホームページ掲載によるパブリックコメントの募集など)、ガイドラインの普及のための改定(専門医、一般医家向け、一般市民向け)、ガイドラインのコンパクト化〔PDA端末(個人用携帯情報端末)での使用など〕などが考えられる。 また新しい医学的知見を吸収していくために、常設委員会となる必要があると考えられる。それは、得られた情報をデータベース化し、改定に向けて、常に準備を重ねていくことが必要であると思われるからである。そして、ガイドラインに対するフィードバックの集約、新たなエビデンスの収集、改訂のタイミングの判断など行っていく必要性がある。  さらにはエビデンスが欠けている領域を明確にし、取り組むべき重要な研究テーマについて、今後リハ関連職種とともに、学会主導による、大規模な多施設臨床研究を行うことが必要であろう。 

脳性麻痺リハビリテーションガイドライン策定委員会

委員長  岡川 敏郎

 脳性麻痺のリハでは、その病態像、障害像が多様であり、かつ発達期にあるお子さんを対象とするため全人的な取り組みが必要ということで「療育」の名のもとに各分野でさまざまな介入が行われてきた。しかし、近年欧米から脳性麻痺治療のエビデンスをもとにしたレビューが散見されるようになり、有効な治療オプションが紹介されている。わが国でも、とりとめのない逸話的な治療法を野放しにしないためにも(根拠のない訓練法をいつまでも子どもに強いるのは人権侵害である)、各分野で共通して用いることのできるエビデンスをもとにした「ガイドライン」が望まれる。リハのガイドラインは当学会が中心になって提唱されるべきである。

活動内容
 脳性麻痺のリハガイドラインを作成する。脳性麻痺診療では遭遇する臨床的諸問題に対して、今までの研究データの信頼性を調べて妥当性のある医療行為、ケア、サービスを適用することになるが、そのエビデンスを調べる手間を省いて最も合意のある選択ができるための「ガイドライン」を作成する。

今後の流れ
 図2のような作業の流れとなる。
 第1回のガイドライン策定委員会は9月2日に開かれたばかりで、コア委員会委員長の里宇先生からは当初の2年間でまとまったものを作り上げること、そのためには1年間で草案作成までいくことと提案があった。また関連諸学会との連携のためには「小委員会」でなく「策定委員会(案)」の呼称にしたほうが適当ということになった。
 今後の委員会活動の流れは、[1] クリニカル・クエスチョンの提起と選択(ガイドライン項目の決定)を次回の第2回委員会で終了すること、[2] 選ばれたクエスチョン項目のエビデンス収集(手分けして文献検索)、[3] 委員会のディスカッションによるエビデンスレベルの決定、[4] ファイルメーカープロを用いて「エビデンステーブル」を作成、[5] 日本の現状とエビデンスレベルを踏まえて推奨レベルを決定し「勧告の作成」にいたる。

図2 今後の流れ

関連諸学会
 協力要請は、まず長く脳性麻痺児の療育にあたってきた全国肢体不自由児施設運営協議会に協力を求め、ここを通じて関連諸学会との連携・合意形成をはかる。 

リハ医として知っておくべきこと
 よくセラピーの理念や技法、手術方法の違いが論争のまとになることがあるが、治療の目標は脳性麻痺児・者のADL能力あるいは社会参加能力・チャンスの向上にあることは論をまたない。また信頼性や妥当性のよく検討された評価法によってアウトカムは判定されるべきである。   

呼吸リハビリテーションガイドライン策定委員会

委員長  里宇明元

国際的な動向
 呼吸リハのルーツは、自身の肺結核の体験を通し慢性肺疾患に対する栄養と運動療法の意義を認めたDenisonにたどることができる。その後、Barachらによる呼吸訓練や運動療法の普及、Pettyらの効果研究などを経て、呼吸リハは慢性肺疾患の重要な治療の柱の一つとして考えられるようになり、1981年には米国胸部疾患学会により公式声明が出された(表2)。その後、呼吸リハに関するガイドラインが相次いで発表され(表3)、医療チームの連携によって効率的な管理を行おうとする包括的呼吸リハが、科学的根拠をもとに慢性閉塞性肺疾患(COPD)の重要な治療手段のひとつとして位置づけられるに至った(表4)。 

わが国における動向
 従来、肺結核後遺症に対する肺理学療法が中心であったわが国においても、COPDの増加とともに包括的呼吸リハのニーズが高まり、2001年に日本の現状を踏まえた呼吸リハの声明が発表され、呼吸リハは、「呼吸器の病気によって生じた障害を持つ患者に対して、可能な限り機能を回復、あるいは維持させ、これにより、患者自身が自立できることを継続的に支援していくための医療である」と定義された(日本呼吸管理学会誌2001;11: 321-330)。この声明の作成過程で、呼吸リハの実践に向けたマニュアルの必要性が強く認識され、これを受けて、呼吸管理学会の呼吸リハガイドライン作成委員会がワーキンググループを組織し、呼吸器学会ガイドライン施行管理委員会、理学療法士協会の参画を得て、2003年に「運動療法マニュアル」が出版された。ここまでの流れの中ではリハ医学会はまだ正式には参画しておらず、あくまで個人の資格で江藤文夫現理事長、里宇明元が参加し、声明・マニュアルの作成作業に関与してきた。現在、「運動療法マニュアル」に引き続いて、「患者教育・栄養指導マニュアル」の作成作業が進行中であるが、今回からは、診療ガイドライン委員会呼吸リハ策定委員会としてリハ医学会からも正式に参加することが決定され、2006年の出版に向けてマニュアル素案の査読作業が鋭意進められている。今後、呼吸リハの分野においてもリハ医学会サイドからの積極的な関与が望まれる。 

表3 呼吸リハビリテーションをめぐるガイドライン等の歴史 

世界 日本
1981 米国胸部疾患学会「呼吸リハに関する公式声明」  
1985   在宅酸素療法保険適応
1990 米国心血管・呼吸リハ学会ポジションペーパー「呼吸リハの科学的基礎」  
1991   厚生省/日本医師会「在宅酸素療法ガイドライン」
1993 米国心血管・呼吸リハ学会「呼吸リハプログラムのガイドライン第1版 呼吸リハプログラムのガイドライン日本語第1版
1995 ヨーロッパ呼吸学会タスクフォース「COPDの適切な評価とマネージメント」  
1996   第一回呼吸療法士認定試験
1997 ACCP/AACVPR「科学的根拠に基づく呼吸リハガイドライン」  
1999 米国心血管・呼吸リハ学会「呼吸リハプログラムのガイドライン第2版」 呼吸リハプログラムのガイドライン日本語第2版
2000 Global initiative for chronic obstructive lung disease (GOLD)  
2001   呼吸管理学会/呼吸器学会「呼吸リハに関するステートメント」
2003 GOLD update 呼吸管理学会/呼吸器学会/理学療法士協会「呼吸リハマニュアルー運動療法」
2005   呼吸管理学会/呼吸器学会/リハ医学会/理学療法士協会「呼吸リハマニュアルー患者教育・栄養指導」(作成中)

表4 呼吸リハビリテーションの効果(GOLD)

Level A ランダム化比較試験。多量のデータ
■運動能力の改善
■呼吸困難感の改善
■健康関連QOLの向上
■入院の回数と入院日数の減少
■COPDによる不安と抑うつの軽減
Level B ランダム化比較試験。限定された量のデータ
■上肢の筋力と持久力トレーニングによる上肢機能の改善
■効果はトレーニング終了後も持続
■生存率の改善
Level C 非ランダム化比較試験。観察に基づく研究報告
■呼吸筋訓練は特に全身運動トレーニングと併用すると効果的
■心理社会的介入療法が有用
安全管理・推進のためのガイドライン策定委員会

委員長  前田真治

 近年、臨床におけるリスク管理への取り組みがなされてきており、その中でリハ部門においても、急性期患者の増加、多様な合併症を持つようなハイリスク患者が増え、医療事故の防止などリスク管理の徹底が叫ばれてきている。当策定委員会ではリハ医学会関連専門職委員会の協力を得、リハ医療が安全かつ効率的に行われるためのシステムをリハ・チームを構成する関連職種とともに構築することを目的にガイドラインの策定を進めてきているので、その活動内容を紹介する。

 まず、2003年度には、リハ医学会研修認定施設(333施設)における施設全体およびリハ部門の安全管理体制、教育・研修体制、安全管理上の問題点などの実態調査を行った。また、リハ医療にかかわるリスク管理の関連文献を収集・整理した。(リハビリテーションにおけるリスクマネージメントの文献的考察.医療の質及び医療安全体制の確保に関する研究―医療事故を防止するための対策の効果的な実施および評価に関する研究―平成15年度総括研究報告書(主任研究者:千野直一)pp3-12、2004年4月)

 2004年度にはリハ医療における安全管理マニュアルの作成に着手している。まず、全国のリハ施設から送付された安全管理マニュアルを分析し、医療事故の実態と対比させ、リハ部門の特殊性を踏まえたマニュアルを検討した。その上で、個々の患者で用いるチェックシートの作成を行った。(リハビリテーション医療におけるリスクマネージメントの考え方と安全管理マニュアル作成に向けての提言.医療の質及び医療安全体制の確保に関する研究―医療事故を防止するための対策の効果的な実施および評価に関する研究―平成16年度総括研究報告書(主任研究者:千野直一)pp11-33、2005年4月)

 さらに、リハ医療における安全管理をモニターするためにインシデント―アクシデント・データベースの作成を行っている。(インシデント―アクシデント・データベースの作成.同報告書pp34-36)

 今後は、安全管理マニュアルを、リハ医学会をはじめとし、理学療法士協会、作業療法士協会、日本リハ看護学会、日本義肢装具学会などの代表者を通じホームページなどに公開し、会員の意見を得た後に、安全管理マニュアルを出版する予定である。

第43回日本リハビリテーション医学会学術集会開催のご案内

第43回日本リハビリテーション医学会学術集会 会長  宮野佐年

 2006年6月1日(木)~3日(土)の3日間、東京プリンスホテルパークタワー(東京都港区芝公園4-8-1)に於いて第43回学術集会を開催いたします。本学術集会は会員数9,600名を超え、第43回という歴史ある学会であり、特別講演・招待講演・シンポジウム・パネルディスカッション・教育講演・ランチョンセミナーを多数予定しており、一般口演・ポスター発表は800題を越えると予想されます。海外の招待者も多数予定しており、最新の知識、すぐ臨床に役立つ知識、技術を得ることのできる有意義な学術集会になるものと思われます。

 本学術集会のメーンテーマを「リハビリテーション医学の進歩と実践」といたしました。最近の医学・医療の進歩は目覚ましいものがあり、それに伴ってリハ医学も急速に進歩しております。リハ医学の進歩は、しかし、日常のリハ診療において実践が伴ってはじめて進歩していると言えるのではないかと思われます。一方で、医療事故や訴訟が毎日のように報道されており、リハ医学をどのように実践してゆくかが大きな鍵になるかと思われます。本学術集会で学んだことが、明日からの臨床にすぐに実践できるような会になればと考えております。

 特別講演として、日立製作所特別研究員の小泉英明先生に、脳機能と教育についてお話いただく予定です。また海外からの招待講演として、スウェーデンUppsala大学のJrgen Borg先生、ペンシルバニア州立大学のDavid C. Good先生、ペンシルバニア大学のJennifer Chu先生、延世大学のChang-il Park先生を予定しております。

 来年のリハ学会は「また東京か」と思う方があると思いますが、東京プリンスホテルパークタワーの会場は地下1階のワンフロアーで、メーン会場を含めて9カ所の一般口演会場・ポスター会場、そして休憩室、機器展示場もすべて同じ階で移動の時間が必要ない、素晴らしい会場を用意することができました。東京都心の港区芝公園で地下鉄三田線・大江戸線・日比谷線の駅に近く、JR浜松町駅からも徒歩10分です。羽田空港からJR浜松町まで30分、東京駅から浜松町まで5分で日本のどこからも、また都内どこからも交通の便が非常に良いところであり、隣に東京タワー・増上寺、六本木・銀座までも至近距離であり、夜の東京も満喫できるものと考えております。

 今までの東京での学術集会とはひと味違う会であります。東京に来て学術集会に参加して良かったと思える会になると自信を持っております。学会を盛り上げるのは沢山の皆様の参加が不可欠であります。会長をはじめ事務局一同皆様の多数のご参加を心よりお待ち致しております。

【シンポジウム・パネルディスカッション】以下のような内容を企画中です。

  1. 脳卒中リハの進歩と実践
  2. 脳外傷認知リハの進歩と実践
  3. 脊髄損傷リハの進歩と実践
  4. リハ工学の進歩と実践
  5. 地域リハの実践と課題
  6. 嚥下障害治療の進歩と実践
  7. 人工関節術後リハの進歩と実践
  8. 骨格筋機能の基礎研究とリハへの応用

[事務局]東京慈恵会医科大学 附属第三病院 リハビリテーション医学講座
Tel 03-3480-1151(内線3341)
Fax 03-5497-4120
E-mail : reha-med@jikei.ac.jp 

[準備室]日本コンベンションサービス(株)
Tel 03-3508-1214, Fax 03-3508-1302
E-mail : jrma2006@convention.co.jp  

INFORMATION

社会保険等委員会

 中医協診療報酬基本問題小委員会から診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会に基礎となる調査依頼がなされたのを受けて、「リハビリテーション・消炎鎮痛等処置に係る調査」が石田暉担当理事を委員長として実施され、リハ医学会の多くの会員の皆様にもご協力をいただいたおかげで報告書がまとめられ、現在厚生労働省のホームページよりダウンロードが可能です。その調査の結果として、ベッドサイドから訓練を開始すると治療実日数が短くなり、早期リハ群でADL改善率が高く、リハ科専従医師がリハ処方を行うことでアウトカム改善率の高くなること等が示されました。

 リハ医療に関わる来年度の診療報酬項目の改定希望書は既に提出がなされ、内保連に提出された項目は7月27日に、外保連の項目は8月5日に厚労省によるヒアリングが行われました。診療報酬改定において、リハ医学会から要望した項目が中医協の議論の俎上に載せられる場合、厚労省の担当官から医学会にその項目の年間実施件数や医療費に与える影響など具体的な内容が問い合わせられます。その要望に的確に対応できるように、今年度から全国の中核病院のリハ部門で活躍しておられる専門医の先生にモニター協力をお願いすることになりました。来年度からの「新リハビリテーション診療報酬体系」の基礎資料となる「リハビリテーション対象患者の全国年間推計値」をモニター専門医に協力していただき算出し、9月に厚労省の担当部局に提出できました。ご協力いただいた先生方に紙面をお借りして深くお礼申し上げます。

(委員長 田中宏太佳)

認定委員会

専門医試験での「リハビリテーション科専門医研修手帳」の扱いについて 

 リハ医の研修目標として、「日本リハ医学会専門医制度卒後研修カリキュラム」が、リハ科専門医研修手帳(以下、研修手帳)に明示されました。これに伴いまして、今年度より、専門医試験の受験資格であるリハ研修施設での合計3年以上の研修実績についての審査は、この研修手帳をもとに行われることになります。審査対象となるのは、研修施設名とその期間(研修手帳2~5頁;リハ研修証)および研修の到達レベル(研修手帳8~25頁)であり、しばらくの期間は、過去に遡ってこれらをご証明いただくことになるかと存じます。特に、研修到達レベルにつきましては、総論・各論の原則としてすべての各研修項目に関して、非常に多くの自己評価ならびに指導責任者評価が必要となりますが、専門医試験に向けての知識整理のためにも、何卒よろしくご協力のほどをお願い申し上げます。なお、臨床研修修了証(研修手帳1頁)は、臨床研修必修化に伴う2年間の臨床研修修了を審査するものであり、しばらくの間は医師免許取得後5年以上を経過していることをもって代用することとなります。ご不明な点がございましたら、学会事務局までお問い合わせください。

(委員長 長谷公隆)

東北地方会

 東北地方会では、年に2回の学術集会を開催しております。今後の開催予定は以下の通りです。奮ってご参加くださいますようお願い申し上げます。

・第18回東北地方会・生涯教育研修会
日時:2005年11月12日(土) 13時~
場所:秋田市総合保健センター大会議室
学会会長:佐山一郎先生(秋田県立リハ・精神医療センター)
問合せ先:Tel 018-892-3751/Fax 018-892-3779 

・第19回東北地方会・生涯教育研修会
日時:2006年3月25日(土) 13時~
場所:山形県生涯学習センター 遊学館
学会会長:荻野利彦先生(山形大学医学部運動機能再建・回復学)
第19回学術集会にて、総会を開催いたします。
また、本年3月26日に開催された総会で事務局が東北大学医学系研究科内部障害学分野に移行しました。連絡先は以下のとおりです。
事務局:東北大学医学系研究科内部障害学分野内 東北地方会事務局
Tel 022-717-7353、 Fax 022-717-7355
E-mail:makanaza@sm.rim.or.jp  

(代表幹事:上月正博)

九州地方会

 九州地方会では、地方会学術集会抄録のホームページ(HP)掲載に関して、現在議論をすすめているところです。その目的は、情報発信の迅速性を確保し、業務の効率化を図ることにあります。HPを活用することで、事前の抄録集印刷・住所ラベル打ち出し・封筒詰め作業・郵送等を省略することが可能となり(学術集会当日の参加者分の抄録集を準備することで済みます)、学術集会会長の人的ならびに費用負担が大幅に軽減されます。HP活用を含め、既存業務の見直しをIT化とともに進めてゆきたいと考えております。会員諸氏よりのご意見を賜りましたら幸いです。

 第19回地方会学術集会は、2006年2月19日(日)長崎にて、松坂誠應幹事(長崎大学)のお世話で開催される予定です。

(事務局担当幹事:佐伯 覚)

医局だより: 相澤病院リハビリテーション科

相澤病院リハビリテーション科

 相澤病院(463床)は、急性期医療(新型救命救急センター併設、急性期特定入院加算、平均在院日数約15日)に特化しつつ、さらに地域医療支援病院として、二次医療圏内のかかりつけ医(登録医数約400件)との連携を重点としている。リハ医療は急性期病院であるから必須との位置づけがなされ、在院日数の短縮と在宅復帰率の向上に寄与している。リハ科は、ベッド30床、医師3名、歯科医師1名、理学療法士49名(19名)、作業療法士23名(6名)、言語聴覚士10名、歯科衛生士1名(カッコ内は訪問看護ステーションに所属するローテート訪問リハ担当者数)などで構成されている。

 当リハ科の主要領域として、1) 急性期病院としての早期リハ(365日均質のリハ実施、病棟でのリハ)、2) 就労など社会的再統合を追求する高次脳機能障害のリハ、3) 摂食嚥下障害のリハ、4) 在宅訪問リハ、の4つを掲げている。

 脳卒中リハでは病型別離床プログラムとクリニカルパスを用いた早期リハを実施、平均30日の在院日数で75%の自宅復帰率(2004年度、脳外科と併せた実績、N=579)などをあげている。また自宅退院後のリハに関しては、訪問リハにて継続するシステムを作成し、在宅診療・在宅リハをくまなく網羅する地域リハモデルを年々バージョンアップしている。

 高次脳機能障害では県外からの紹介患者も多く、長野県高次脳機能障害支援事業拠点病院として診断・リハから始まり、職業センター(長野センター、幕張の総合センター)との連携を恒常化、就労への援助まで継続実施している。

 急性期病院におけるリハ科医師の存在は不可欠であり、365日切れ目なく継続する院内のリハと診療を担うことは、正直言ってしんどいものがある。一方、急性期脳卒中リハや高次脳機能障害リハの治療実績をエビデンスとしてまとめる作業も課題である。その意味からもリハ科医師確保とリハ科専門医育成は最も重要な課題と感じている。当院での初期臨床研修医の中からリハ科に興味を持つ医師を増やすことが懸案であり、今年度入職初期研修医の中にはリハ科志望医師が既に研修を開始しており、漸く曙光が差しつつあると感じる今日この頃でもある。

 今夏期セミナーに訪れたのは、リハ科と当院ER見学をセット希望する学生であった。当院独自のシステムをアピールし、地域志向のリハ科医師を育成したいと感じている。  

(原 寛美)

特定医療法人慈泉会相澤病院リハビリテーション科
〒390-8510長野県松本市本庄2-5-1
TEL 0263-33-8600, FAX 0263-33-8609
URL:http://www.ai-hosp.or.jp/

質問箱:一般用語としての認知症」と学術用語としての対応

一般用語としては、「認知症」という言葉が広まりつつありますが、学術用語としてはどのように対応したらよいのでしょうか。

A 厚生労働省では2004年12月24日付けで、一般的な用語や行政用語として『痴呆』に替わって『認知症』を用いることを決めました。これは『痴呆』という用語が侮蔑的な表現である上に、『痴呆』の実態を正確に表しておらず、早期発見・早期診断等の取り組みの支障になっていることから速やかな変更が必要であり、また『痴呆』に替わる新たな用語としては、『認知障害』『記憶症』なども検討されましたが最終的に『認知症』が最も適当であると結論しています。これに関して医学会の対応としましては、「日本老年精神医学会」は行政用語と医学用語は別個のものではあるが、全く無関係ということも問題があり、同学会内に検討委員会を設置し、2006年の総会で学会としての結論を出すとしています。また、日本認知心理学会、認知科学会、基礎心理学会では、「日本認知心理学会・認知科学会・基礎心理学会では、『認知症』という呼称に対し、その不適切さを指摘し、代案として『認知失調症』を提起する意見書を厚生労働省に提出しました」とコメントしています。日本痴呆症学会では、「本学会の対応(学会の名称を含む)は現在『日本痴呆学会あり方委員会』にて検討中であり,その提案を受けて2005年秋の第24回総会において討議する予定です」としていましたが、10月1日の総会におきまして、同日から学会名を『日本認知症学会』に変更することを決定いたしました。日本リハ医学会においてもその対応については検討中ですが、広報委員会におきましては、当面のところ、著者の意向を尊重して、『痴呆』および『認知症』の表記をさせていただいております。

 また、厚生労働省および各学会におきましても、単に名称変更のみを議論するのではなく、『痴呆』もしくは『認知症』に対する誤解や偏見の解消等に努める努力の重要性をあらためて強調しています。

(日本リハビリテーション医学会広報委員会)

発達障害者支援法

 発達障害は、近年、社会的に注目され、本学会においても、療育・小児のリハビリテーションの領域で取り上げられることが多く、会員の関心を集めている一分野である。2005年4月1日、「発達障害者支援法」が施行されたので、その内容を簡単に紹介する。

 (1)本法の目的は、発達障害者には症状の発現後、できるだけ早期の発達支援が特に重要であることを踏まえ、[1] 発達障害の早期支援を行うことに関する国および地方公共団体の責務を明らかにする、[2] 発達障害者に対し学校教育、就労等の支援を図る、[3] 発達障害者支援センターを指定すること等について定め、発達障害者の自立および社会参加に向け生活全般にわたる支援を行うことである。 

 (2)この法律における「発達障害」は、自閉症、アスペルガー症候群その他広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。

 (3)発達障害者支援に対する行政や国民の責務について、以下のように規定している。[1] 国及び地方公共団体の責務として、早期発見、早期の発達支援その他の支援の実施に向けた必要な措置を講ずること、措置に際しての、本人および保護者の意思の尊重。[2] 国民の責務として、発達障害者についての理解と社会参加への協力。

 (4)支援のための施策として、児童の発達障害の早期発見、早期発達支援、保育、教育及び放課後児童健全育成事業(学童保育)の利用、発達障害者の就労支援、地域での生活支援および権利擁護並びに家族への支援について定めている。具体的な早期発見の場については、母子保健法による1歳6カ月児および3歳児健康診査(市町村)において、発達障害の発見に十分留意するとしている。

 (5)発達障害者支援センターは、都道府県が発達障害児・者の相談・助言、発達支援の提供等を行う機関として位置づけられている。また、発達障害の診断、ケアが可能な専門的な医療機関の確保について定めている。国民や民間団体への支援、普及啓発活動、医療保健の業務の専門家に対する啓発、専門的知識を有する人材の確保、調査研究についても言及されているほか、施行後3年を経過した場合の見直し規定が追記されている。

 本法は理念法ではあるが、一つの障害領域に焦点をあて、発症からそれぞれのライフステージにおける施策の方向性を示している点が特徴的である。

 今後、法の中で示された方向性を具体化していく作業を文部科学省と連携*して行っていくとのことである。2002年度から自閉症発達障害センターの整備が進められてきたが、厚生労働省2005年度予算に発達障害者支援体制整備事業が計上され、専門的な相談支援等地域生活支援のモデル事業が開始されている。

*小、中学校の通常の学級に在籍する学習障害、注意欠陥多動性障害、高機能自閉症の子どもに対する特別支援教育体制推進事業(2005年度~)と協働。  

(障害保健福祉委員会)

日本リハ医学会 春期・夏期医学生リハセミナーに参加して

北海道大学

埼玉医科大学5年 増田智樹 

 北海道大学での春期リハセミナーに参加しましたので、セミナーの内容や感想を報告したいと思います。
 まず初日は痙性斜頸に対するフェノールブロック、内視鏡を用いた嚥下検査、運動負荷試験を見学した後、病棟で患者さんの神経学的所見や筋力テストを実際にとらせていただきました。2日目はパーキンソン病に対する経頭蓋磁気刺激の見学、眼瞼痙攣に対するボツリヌス毒素を用いたブロック療法、OT(作業療法士)とPT(理学療法士)の訓練においての説明、他科病棟への往診、PT・OT・看護師・医師が集まっての症例カンファレンスに参加しました。3日目はカンファレンス、病棟回診、嚥下造影検査、抄読会という内容でした。また、空き時間には磁気刺激やパーキンソン病のリハ、高次脳機能障害などについての講義をしていただき、充実した3日間でした。
 私は5年の実習でリハ科を回り、脳卒中のリハを見る機会に恵まれていたので、ある程度リハ科の内容に対するイメージを持っていたのですが、今回のセミナーに参加して、リハ医療の関わる範囲が想像以上に広いことに感銘を受けました。ペインクリニックでの神経ブロック療法は知っていたのですが、痙縮やジストニアなどの過剰な筋収縮に対して、その抑制と鎮痛を目的として行うこともあるということ、その他にも、てんかんやパーキンソン病に対しては磁気刺激を用いた治療、嚥下機能の評価とリハ、頭部外傷後の高次脳機能障害に至るまで、今まで医療のサービスが及びにくかった分野でリハ医として積極的に介入していくという姿勢がとても強く感じられて、今後ますますリハ医の活躍していく分野の広さと重要さを認識することができました。
 これからの医療ではリハは欠くことのできない分野になると思いますので、どの科に進むにしてもリハ医療とはどういうものかを体験しておくと良いと思います。まだ実習で病棟を回っていない学年の人達も、リハ科をみてから実習に入ると患者さんの退院後の生活様式のことまで意識できるようになり、よりよい実習になるだろうと思います。先生方は学生のレベルに応じてわかりやすく説明をしてくれますので、興味のある方は是非セミナーに参加してみると良いと思います。

 山梨大学4年 伊藤達夫

 私がリハセミナーに参加したのは、2年前に偶然インターネットでそれを見つけたことがきっかけである。一度は理学療法士をめざしたことのある私はすぐにでも参加したかったが、当時の私は教養課程を終えたばかりで医学的な知識はほぼ皆無であったことから、ある程度の知識を得てから参加すべきであろうという判断し、2、3年生の間は参加を見送ることにした。また北海道大学を選んだ理由は、山梨大学に入学する前年に北大の入学説明会に参加し、北大の学部を超えた研究体制というものに興味を持っていたことにある。
 今回の夏期セミナーは参加する学生が私1人だけということで、初めは緊張していたが、医局の先生方はリハについて基本的なことから丁寧に説明してくださったので、こちらもいろいろ質問ができた。セミナーの内容は電気生理学的評価や運動生理学的評価など一般的なものから磁気刺激を用いた治療や嚥下のリハなど、特色のあるリハ技術について実際に治療を行うところまで見学できた。また作業療法では装具の製作を、理学療法では実際に手技を学んだ。症例カンファレンスや病棟回診にも参加でき、リハ科の患者さんがどのような症例で苦しんでおられるのかを知ることができた。
 3日間という短い期間のセミナーではあったが、私の中でのリハおよびリハ科の仕事というものの意識を刷新するすばらしい機会であった。しかし今回私が新たにリハについて理解したことは、実際のリハの中のほんの一部にすぎないということは想像に難くないので、今後は更にリハについて理解を深めるための勉強を続けていきたいと考える。
 最後に、今回のリハセミナーのためにおつきあいくださった北大リハ科の皆様ならびにPT 、OT 、看護師の方々、そして診察の見学の許可をくださいました患者の皆様方に心より感謝申し上げます。

横浜市立大学

 東海大学5年 東海林明里

 私は夏期リハセミナーに参加するのは今年で2回目です。昨年度は慈恵会医科大学の夏期セミナーに参加しました。その後リハニュースで横浜市立大学では小児リハを見学させてもらえる機会があることを知り、今年度は横浜市立大学に申し込みをしました。私はもともと発達障害や脳性麻痺の子供たちと関わる環境で育ち、将来は医師として彼らと関わっていきたいと考えております。そのため、リハ科は私の将来の選択肢の一つと考えています。
 大学病院では、小児から高齢者まで幅広い疾患をみることができました。全身的な疾患のために筋力が落ちてしまっているという方も多く、リハ医はあらゆる疾患に対応できないといけないと感じました。装具外来では義肢装具士と医師と患者さんとの長い話合いがあり、一つの装具なり車椅子の設計図が出来上がる様子は、大変ではあるけれども心地のよさを感じました。しかし、装具に関して関わる法律の細かさや、書類の多さに驚いたのも事実です。  さらに今回は、横浜市立大学リハ科の関連施設である横浜市西部地域療育センターや横浜市総合リハセンターなども見学させていただきました。
 療育センターでは実際の療育現場を見ることができ、私が体験してきた10数年前とは異なる進化した療育を目の当たりにし、感激しました。障害児を受け入れている全国の普通学校や幼稚園で同じことを行うのは難しいのでしょうが、このやり方が少しでも広まっていけばいいなと思いました。また、小学校低学年の脳性麻痺の患者さんのリハを見せてもらいました。体力的にも集中力という面でも小児のリハの難しさを感じましたが、短時間の訓練でも効果がはっきりと現れており、リハの継続の重要性を強く感じました。また、医療面接にも立ち合わせていただきましたが、小児の場合、リハだけではなく児童精神科的側面も強いことに、リハ科の幅の広さを感じました。
 横浜市総合リハセンターおよび障害者スポーツ文化センター横浜ラポールは一度訪れてみたいと思っていた場所だったため、楽しみにしておりました。まさに横浜市のリハの中核といった感じで、巨大な研究所のようでした。ここでのリハはただ単に機能回復だけではなく、障害をもつ人の日々の生活、就労や就学といった社会生活、さらに生きがいや楽しみなどを含めた、障害をもちながらの新たな生活スタイルを構築すること、そして、その生活スタイルの定着と継続を大切にしていると感じました。午前中は座位保持装置クリニックを見学しました。車椅子だけではなく、学校で使う椅子やバギーなどもありました。また、午後はリハセンター主催のセミナーの講演を聴くことができ、よい勉強になりました。
 最後になりましたが、今回私の心に深く残ったことを記しておきます。実習中さまざまな場面で、先生方から患者さんの心を大事にという話を受けました。「周囲がよいと思っていることが必ずしもその人のためになるとは限らない」ということでした。医療というものは、家族やその他の誰のためでもない、医療を受ける本人が納得したものでないといけません。リハを押し付けたり、生活を勝手に変えたりすることはできません。今後、このことだけは忘れてはならないと思いました。今回のセミナーでもとても充実した時間を過ごすことができました。

福井大学3年 鈴木 毅 

 私は3年生で、大学では基礎医学を終えたばかりで、病院実習はおろか臨床系講義もこれからという段階でしたので、リハについての予備知識は一般の方々と大差ありませんでした。ただ、医師・看護師以外にOT・PT・ケースワーカーなどの専門職の方々と一緒に患者さんの治療・援助を行うチーム医療の大切さは、他の診療科ではなかなか経験できないかもしれないと思い、知識不足を承知で参加しました。
 医学生セミナーということで、当日は講義をしていただくのかと思っていましたので、白衣も持たずに教室をノックしました。ところが予想外のうれしい展開で、貸していただいた白衣に着替え、そのまま水落部長先生以下医師の方々について病棟回診。スタッフミーティングでみなさんに紹介していただき、その後部長自らリハ科の設備とその目的について説明していただきました。
 午前中は部長先生が外来の患者さんを診察されているのに同席させていただき、また患者さんの了解を得て患部に触れさせていただき、大変勉強になりました。リハ科では交通事故等で外傷を負われた方が当面の治療を終えて、不自由が残る部分をフォローしていくことが中心かと思っていましたが、午前中の診療だけでも本当にさまざまなケースの患者さんがいらっしゃいました。整形外科関連の他にも、先天性疾患や神経疾患のケースが多いと思いました。また、高齢者の方が多く、来るべき超高齢者社会に向けてリハはこれからますます必要とされる医療であると思いました。
 カンファレンスにも同席させていただきました。担当医師・PT・OTからの所見やそれに対しての先輩医師や部長からの方針説明には、わからない専門用語もありましたが、その都度わかりやすく教えていただきました。驚いたのは、みなさんがリハ科の患者さん全員の体調や状況について逐一把握していて、その上で漏れがないか情報の共有を図っていたことです。私は、ある患者さんについては担当医師・PT・OTしか状況を把握していなくて、カンファレンス等の場で初めて上席に報告しているのかと思っていました。医局員全員がリハ科の患者さん全体のことを把握していることにも、チーム医療としてのリハの底力を実感しました。
 将来どの診療科に進むかはまだ決めていませんが、どの科に進むにせよ、今回のセミナーに参加して学んだチーム医療の素晴らしさを自分の糧として、患者さんにとって良い医師になれるよう頑張っていきたいと思います。また来年もぜひ参加してみたい有意義なセミナーでした。後期の講義が始まったら、クラスメイトにもリハの素晴らしさを伝えていきたいと思っています。

昭和大学

 5年の臨床実習でもリハ科を1週間回りましたが、今回春期セミナーを受けてより一層リハ医というものの重要性について理解できました。今まではリハといえば処方をだし患者を見回る、どの医者でもできる仕事という感じがしていました。しかしながら、リハの専門医の見立て次第で大きく患者の生活が変わることがわかりました。
 また、病院においては病気を治すことが中心となっており、退院した後の生活に重点が置かれることはあまりなかったと思います。特に生活習慣病が原因で起こった障害も、その原因の改善、生活の改善、そして再発の予防が大切であると強く感じました。
 地域のリハ関係の講演にも連れていっていただき行政、開業医、病院が地域と大きく関わっていることがわかりました。このような医療の連携という考え方は他の科ではそれほど強く意識してこなかったので、一人の患者を地域でどのようにケアしていくべきか、他の医療機関とどのように連携していくべきか強く考えさせられました。
 リハという考え方はまだ統一されておらず制度上の不足、医師、看護師などの医療関係者の意識の不足、そして一般社会での認識不足など、これからまだまだ取り組みが必要であると感じました。

東京大学主催:医学生とリハビリテーションを語る会

 大学6年生

 今回の講義や見学を通して、リハ医学についての理解が深まりましたし、多彩なかたちでリハに関わっている先生方とお話ができたことで、リハは実に幅広く奥の深い世界であると感じました。先生方とお知り合いになれたことは、今後の医師としての人生の財産になると思っております。
 また、他大学の学生と情報交換をする良い機会ともなり、学生という自分と同じ立場の人は何を考えているのかを知ることができましたし、それと同時に、自分に照らし合わせることで、自身を振り返ることができました。
 本当に楽しく、有意義な時間を過ごすことができ、大変嬉しく思っています。リハについて学ぶすばらしい機会だと思いますので、大学に戻りましたら大学の友人や後輩にも紹介したいと思いますし、私自身、是非また参加させていただきたいと思っております。

訂正
「日本リハ医学会 春期・夏期医学生リハセミナーに参加して」の記述にて、「茨城県立医療大学」との記載は「東京大学主催:医学生とリハビリテーションを語る会」の誤りでした。
 謹んでお詫びいたします。 教育委員会 医学生セミナー担当 中馬孝容 

鹿児島大学

愛媛大学3年 Y.S.

 私の今回のリハセミナー参加の目的は、一つは医学部のリハ講座ではどのようなことを教育、研究されているのかを見せていただくこと、もう一つは同期編入学の2人にリハ医学の考え方に触れてもらうことでした。
 研究では脳回路の修復に対して積極的にアプローチされ、また研究に基づいた考え方でリハを実践し、機能改善の可能性に挑戦する姿に感動いたしました。
 教育に関しては、学生が授業を受けることで、どこまでリハ医学の考え方を臨床に反映できるのか考えました。
 愛媛大学にはリハ医療に関する授業がないため、同期2人にとっては、患者さんの障害構造や生活に視点をおいた医療は新鮮であったようです。鹿児島での3日間、本当に楽しく過ごすことができました。

 北海道大学6年  S.K.

 今回リハセミナーに参加しようと思ったのは、大学でのポリクリや他の病院で実習をしていく中で、リハの知識が卒業後に必要な割になかなか学生時代には学ぶ機会が少ないと感じていたためでした。自分の大学にもリハ科はありますが、他大学のリハ科、それもリハセンターを作って行われているリハがどう違うのか見てみたいという気持ちもありました。
 実際に施設の中を見て回ると、患者さん方の状態に驚きました。きちんとしたリハを行うことで、脳卒中後でもかなりの回復が見込めるという話も、実際に目の当たりにしてみると確かにと納得できます。逆に一般の病院でのリハの現状ということも考えさせられました。褥瘡予防や廃用予防を行っている姿はどの病院でも目にしますが、ちゃんとした考え方を持って、計画的・集学的にリハを行える病院はやはり少ないと感じます。鹿児島大学のリハセンターは規模も大きく、スタッフの数も相当数あるのでこのような環境で学べる鹿大生がうらやましく思いました。教授自らが先頭に立ってリハ訓練を指導している姿も印象的です。周囲に自然が多く、教授に川湯や温泉、川泳ぎなどに連れて行っていただいたのもよい思い出になりました。今回の経験を卒業後しっかり生かせるようにリハについて深く勉強していきたいと思います。

聖隷三方原病院

 信州大学6年

 これまでの臨床実習で見てきた医療現場では、疾患の診断と治療までにほぼすべての力が注がれ、患者さんの治療後については軽んじられている印象があった。しかしこのことは、次から次へと患者さんがやってくる医療現場では仕方がないことなのかと、半ば諦める気持ちもあった。
 そんなことを思いながら、参加したのが今回のリハセミナーだった。胃瘻まで造っていた患者さんが、自分の口でしっかり食べられる状態になって外来に通っている様子を見ることができた。リハ医、療法士、看護師たち医療スタッフ全員が患者さんのために、懸命に考え、働くところを見ることができた。診療スタッフを患者さんが心から信頼している姿を見ることができた。ここには患者さんを生活者として捉え、さらに元の生活者にもどす(あるいは可能な限り近づける)という医療の実践があった。このことは、取りも直さず先に述べた私の「諦め」を解消するものであった。
 このセミナーを受講するまでは将来の進路として神経内科や脳神経外科を考えていた。しかし受講後の今では、自分が本当にやりたいことはリハ医学の世界にあるのではないかという思いが湧いてきた。新たな悩みの種ができてしまった。

 山形大学6年

 リハセミナーへの参加は、今回が初めてではなかったのですが、最初にリハを見学した時の驚きとはまた違う発見がありました。昨年参加したリハセミナー(川崎医大)では、急性期を過ぎた患者の社会復帰を支援するにあたって、リハ医学が専門分野として確立されつつあるということを初めて認識できたのですが、今回はリハの実際について、さらに具体的に知ることができました。
 今回のセミナーでは、嚥下障害を持った方へのアプローチを見学させていただきました。嚥下造影検査の見学では、嚥下する食物の形状や、嚥下する際の角度を設定して、誤嚥を起こしていないか、誤嚥する危険があるのはどのような状況でなのか等、嚥下に関する評価法を詳しく知ることができました。また、検査の裏話として、選択する造影剤の種類や濃度についての話も興味深かったです。ベッドサイドでの身体の機能の評価法も、リハの視点から見る重要性が認識できました。つまり、脳卒中後のリハのために診察を行う時に、従来の神経内科的な見方では、画像と神経所見が一致しているかなど、正確な診断を目指すという印象が強く(もちろん、再発予防のための今後の治療計画にあたっては、病因の解明は重要ですが)、機能回復のためのリハ計画を立てるための診察とはなかなかなっていないように思えました。
 今回のセミナーの間にあった回診で、麻痺の評価、感覚障害、深部知覚障害の評価などを行い、どのようなリハが必要か検討していく様子を見学させていただいたことは、大変印象に残りました。

高知大学

 高知大学5年 青井二郎

 私は3月28、29日の2日間高知大学医学部リハ科にて春期セミナーに参加しました。私がリハ科に関心を持つようになったのは、私自身腰痛で苦しみ、小さい頃から選手としてやっていたテニスを途中で断念せざるをえない経験をしてからです。それまで「当たり前」のことができなくなる自分にとても納得できませんでした。
 私は今回参加してみて感じたこと2つについて書こうと思います。まず1つ目は、医療にこれからたずさわる上で私自身がこの「当たり前」という考え方を大きく変える必要があるなと感じたことです。患者さん一人ひとり、病気も症状も、また患者さん自身の性格も病気に対する考え方も異なります。その中で、患者さんにとっての「当たり前」というものは人それぞれであり、またそれは常に変化するものであるということを考えさせられました。リハ科ではそのように患者さん一人ひとりの考え方を踏まえた上で、その人に応じたリハ計画をたてるというまさにこれからの医療だと思います。
 2つ目として、患者さん自身の病気とリハについての理解がいかに重要かということです。リハはあくまで患者さん自身が時間をかけて行うことです。患者さん自身の理解度を知り、また患者さんがそれを考えていく上でのkeyとなるものをうまく提示していくこともリハの大きな課題であるのだと思いました。
 残念ながら日本全国の現状としてリハ科専門医が慢性的に不足していることを知りました。今後このセミナーを通してさらに多くの医学生が興味を抱きそしてこれからの医療を築くことができたらと思います。  

事務局だより

 今年も早や錦秋の秋とはなりました。最近の事務局について報告します。ベテランの白土幸子さんと宇野知左子さんが退職され、新たに川澄淑子さん(社会保険等・障害保健福祉・関連機器委員会、会員・会費管理)、星屋真理子さん(編集・教育委員会、生涯教育研修等)、小林亜愉子さん(認定・試験問題作成委員会、認定・試験関係)が採用されました。
 近年、専門医制度の改正、学会活動の活発化に伴い、業務量が増し往復メールも格段に多くなりました。同時に、迷惑メールが殺到し、対抗上、info@等は排除しております。また、会員の所属異動も数多い中、届けがなく会員管理上支障が出かねない状況です。ご住所・ご所属が変更になりましたら、学会誌中の変更届用紙によりFAXか封書で必ずお知らせ願います。
 さて、写真の通り、事務局は7人体制ですが、全員仕事熱心で局長が率先して休暇を取らなければと心配するほどです。就業規則等も時代に合った見直しをしなければなりません。そういえば現代の電子化社会に沿ってホームページ・会員管理・学会活動への新システム導入は今喫緊の課題でもあり、委員会でも検討作業が始まろうとしています。
 毎日多忙な事務局ですが、元気で明るく会員の皆様のために頑張っていきますのでよろしくお願いします。

(事務局長 丸山進)

広報委員会より

 長く暑い夏が過ぎ去り、秋を感じる今日この頃です。さて、今回の特集では、リハ医学会においてガイドライン策定の中心で御活躍の先生に、現状や今後の課題をわかりやすくまとめていただきました。エビデンスに基づいた医療やガイドラインがどのように具体的に形作られていくの か、そして最終的にどのような形でリハ医療の現場に生かされ発展していくのか今後の動向が楽しみです。

 ところで、9月27日~29日には、東京ビッグサイトにて第32回国際福祉機器展が開催されました。回を重ねる毎に盛況さは増すばかりで、日本が迎える少子高齢化社会そして福祉大国へという潮流を肌で感じることができました。昨年に続き、広報委員会が 中心となってリハ医学会もブース展示を行いました。おかげさまで、今年は2ブースに拡張したこともあり、連日たくさんの人でにぎわ い大盛況でした。ブース展示によって少しでもリハ医学会の活動が広く認知されることにつながればと願います。御協力ただいた方々へ改めてこの場をお借りしてお礼申し上げます。今後とも、リハニュース共々よろしくお願いします。

(大高洋平)