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特集:IT 推進へ向けた取り組み―日本リハビリテーション医学会における現状と展望―

はじめに

 リハニュース36号では電子カルテを特集いたしましたが、情報技術(IT)利用の裾野は臨床場面のみならず、私たちの周りの至るところにおいて目まぐるしい速度で拡大しつつあります。1990年代におけるインターネットの普及以来、論文データベースや学術大会への演題登録など、日々の診療、研究活動においてPCをはじめとした情報機器と向き合う機会は枚挙に暇がありません。

 ITの進歩は学会の運営、広報戦略にも大きな変革をもたらそうとしています。本号では本医学会のIT推進へ向けたこれまでの取り組みを振り返るとともに、システム委員会の主導により今年度の導入が予定されている会員用Web システムを紹介し、将来へ向けた展望をまとめてみました。

ホームページ

 インターネットという仮想空間において、本医学会ホームページ(図1)(http://www.jarm.or.jp/)は1999 年8 月26 日に産声をあげました。この年は高速大容量通信を可能とするADSLサービスがわが国において初めて商業的運用を開始された年でもあります。サイトの開設以来、本医学会ホームページはネットワーク技術の発展とともにさまざまな機能拡張を繰り返しつつ、現在も日々更新作業が続けられています。電子媒体ならではの即時性、ネットワークの双方向性を活かし、会員の皆様に向けて各委員会や事務局からのお知らせを迅速に掲載するとともに、研修会の参加受付システムや用語、評価法のデータベースを運用しています。また、一般市民に向けては「主な疾患のリハビリテーション」(図2)、「専門医一覧」などを公開し、リハ科医の存在を広く世間にアピールするための情報を発信し続けてきました。

図1 日本リハ医学会ホームページ(http://wwwsoc.nii.ac.jp/jarm/index.html)
左:トップページ、右:会員のページ

図2 市民の皆様へ「主な疾患のリハビリテーション」
各疾患におけるリハビリテーションの内容を一般向けに解説。
同じ内容を冊子にまとめたものは国際福祉機器展でも配布され、好評を博した。

 しかし、このように本医学会における広報戦略の中核ともいえる役割を担ってきたホームページですが、取り扱う情報量が増大の一途をたどる一方で新旧のコンテンツが入り交じり、最新の画面表示と文字レイアウト技術、情報更新のためのインターフェースに対応しきれないまま時代の流れに取り残され、混沌とした様相を呈しつつあるのが現状です。会員用ページに何らアクセス制限が設けられていない点を含め、ホームページの大幅な刷新は管理を担当する広報委員会においても幾度となく議論が持たれてきましたが、コスト、既存の事務処理システムとの整合性、後述する情報リテラシー(情報機器を使いこなすための知識や能力)の問題等さまざまな観点からこの案件はもはや広報委員会のみでは取り扱うことができない事案にまで膨れ上がり、抜本的な対応はこれまで見送られてきました。

専門医会答申からシステム委員会の活動に到るまで

 本紙でもコラムが連載されていますが、リハ科専門医制度の健全な運営と専門医の資質の向上を図り、リハ医学・医療の発展と普及に努めることなどを目標として、2006年6月よりリハ科専門医会(以下、専門医会)が活動を開始しました。専門医会がなすべき役割としては、専門医への広報、専門医間の交流活動、情報交換、一般市民へ向けた専門医の存在の広報などが掲げられていますが、その具体化のためには「会員同士のコミュニケーションの輪を広げ、相互に情報を交換する仕組みが不可欠である。」とした理事会への専門医会答申に基づき、学会活動の根幹に関わるシステムのあり方を検討する機関として2007年1月にシステム委員会が設置されました。

 特定の個人、もしくはグループを対象としたオンラインサービスを提供するためには、利用者を特定するための個人認証コード(ID)を管理する必要があります。2006年4月に本学会誌「リハビリテーション医学」(現 The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine) を電子ジャーナル化(図3)した際にも、閲覧権限を設定するために会員全員に対して個別のIDを配布することが検討されましたが、前述のホームページ管理との関連も含め次期尚早であると判断された経緯がありました。システム委員会は広報委員会をはじめとする関係各委員会からの代表によって構成され、ただ単に既存のホームページに機能を付加するのではなく、幅広い視野から将来へ向けた 発展性を見据え、拡張性、汎用性が高いWebシステムの構築を目指した議論が重ねられてきました。新たに検討されることになった会員用Web システムは、当初、専門医のみを対象としたものとしてスタートした企画でしたが、学会全体の利益、公平性、さらには郵送用のラベル出力やさまざまな文書類の作成、および研修施設認定といった各種の事務手続作業における個人 情報の利用にまでも視野を拡げてシステムの仕様を検討した結果、専門医に限らず全ての会員が広く利用できるシステムの構築が推奨されるにいたりました。

図3 電子ジャーナル
(http://www.jstage.jst.go.jp/browse/jjrmc/-char/ja/)
①科学技術振興機構(JST) が構築した「科学技術情報発信・流通総合システム」 (J-STAGE)を利用。②原著、短報、症例報告、総説、学術集会会長講演、学術集会 教育講演の検索、閲覧が可能(全文ダウンロードは発行後6 カ月間は会員のみに限定)。③編集委員会を中心としてオンライン査読システムの導入作業も進められています。

会員用Web システム・プレビュー

 2007年6月の通常総会でシステム委員会の構想が承認を受け、委託業者 (ダイナコム社)と正式に契約を交わした上で具体的な作業が開始されまし た。2008年3月現在、個人認証機構を中心とした基幹システムはほぼ完成し、2008年7月の運用開始へ向けて細部の調整作業が進行中です。本稿ではその開発画面をもとに会員用Webシステムの具体的機能を紹介したいと思います。

図4 認証ページ(サンプル)と利用法画面は開発中のものです。公開は2008年7月の予定です。

図5 個人用画面(サンプル)と利用法画面は開発中のものです。公開は2008年7月の予定です。

 このシステムはダイナコム社が提供している学術団体向け会員管理システムを本医学会の要望に合わせてカスタマイズしたもので、基本となるコンポ ーネントは既に数々の運用実績を有するものであり、必要かつ十分な機能を 備えています。個人情報の管理が厳しく問われる時勢ですが、データのセキュリティー管理には細心の注意を払い、通信データの暗号化、保存データのバックアップ体制はもとより、システムの細部にわたり社会通念に照らして申し分のない対策が講じられています。

図6 アンケート画面(サンプル)
紙ベースで10,000名の会員に10項目程度のアンケートを行った場合、郵送費、印刷費、事務作業に約200万円程度が必要となるが、オンラインで行えばコストを1/10以下に圧縮することが可能。集計作業も自動化できる。※画面は開発中のものです。

電子化が抱える問題

 ネットワークシステムは便利なツールである反面、運用側には悪用を許さ ないための管理責任が、ユーザー側には利用上の高いモラルが求められます。迷惑メールや“荒らし”と呼ばれ る悪意ある掲示板への書き込み行為をはじめとしたネット社会に共通する問題に対して、システムの管理運営体制 をどのように構築していくかはまだ議論の過程です。初期段階としては機能を限定してサービスを提供しつつ、ユ ーザーのニーズにあわせて拡張を図っ ていく方針です。また、グループの作成、メールの送信権限の委譲についても具体的な取り決めを審議中です。

 一方、システムが有効に機能するた めにはユーザーがネットワークシステム自体を上手く使いこなすことが求められます。ホームページを見ない(見られない)、メールを使っていない(使えない)環境にあるユーザーはシステムの恩恵に預かることなく情報から取り残されてしまいます。こうしたいわゆる“情報リテラシー”の問題は、避けて通ることができません。2008年3月現在の本医学会ホームページにおける開設以来の総閲覧回数は約50万回ですが、会員一人当たりに換算すると概ね2カ月に1回の閲覧にとどまっているのが現状です。いかに扱いやすいインターフェイスを構築するか、ユーザーを引きつけるだけの魅力あるコ ンテンツを作っていくかは今後の課題です。活用されないまま閑散としてい る掲示板もネット上では多く見かけられますが、Webシステムを利用して 闊達な情報交換が行われるために、システム運用開始のあかつきには会員各 位の積極的かつ紳士的な利用を是非お願いしたい次第です。

 ITの活用は情報交換の効率を高めるとともに、通信コストを削減する効果も期待されますが、現状では全会員のシステム利用を前提にはできないため、事務手続き等は当面、従来の紙媒体を併用せざるを得ません。2 種類の手順を用意しなければならないことは 運用コストを増大させることにつなが ります。また、本紙をはじめとした刊 行物のデジタル配信も技術的には可能 ですが、紙媒体の有用性は揺るぎないものもあり、必ずしもコストの削減に つなげることは困難です。これらの点 はまだ議論を要するところではありま すが、少なくとも前者に関しては徐々にシステムを一本化する方向で検討していきたいと考えています。

 最後に、デジタル文化特有の問題として外字の取り扱いがあります。PCで利用できない規格外の文字(﨑、邉 など)やPC の機種に依存するフォント(ローマ数字など)は画面に正しく表示されないため、個人の尊厳に関わる重要な問題ではありますが、住所や 氏名に該当する文字が含まれる場合は 必要に応じて代替文字など用いさせていただくほか、システムの一部の機能 をご利用いただけない場合もありえます。公式書類等の取り扱いについては 個別に対応を検討させていただく予定です。

今後の展望

 これまでに述べた会員用Webシステムは公開初年度にリリースされる第 一段階のもので、2009年度には第二段階として研修単位や会費・研修会費 等について電子決済の導入を検討して おり、関係各所と調整を進めています。 会員証を兼ねたクレジットカードによ る決済は他学会でも同様のシステム導 入が進められていますが、いまだ試 行錯誤の段階にあり、技術的問題をク リアできるかについて情報を収集しつつ、コスト面での実現可能性を含め慎 重な対応を協議中です。

 システム環境の構築自体は決して ハードルの高いものではありませんが、整備された情報基盤をいかに有効に活用できるかはユーザーとしての学会のアイデアと行動力に大きく左右さ れます。Webシステムはさまざまな 発展の可能性を秘めています。本医学会の関連学会では日本摂食・嚥下リハビリテーション学会が認定制度と絡め たE-learning システムの構築に着手し ています。ホームページにおける動画 配信も従来のサーバー環境では技術的 な問題から対応が困難でしたが、今後 は解決を図っていきたいと考えていま す。また、多施設共同研究に向けたデ ータベースの構築も将来的に求められ る機能の一つです。コミュニケーショ ンのためのツールとしては携帯電話で の利用を前提としたモバイルサイトの 運用も検討の余地があります。掲示板 での議論が活発なものとなれば、ユーザー同士でコミュニティーを拡張できるソーシャル・ネットワーキング・サ ービス(SNS)のような仕組みも取り 入れることが可能です。ただし、学術団体が提供するサービスとしてこれらの機能の妥当性は議論を要するところ です。

 また、会員用Web システムの導入に伴ってホームページの改編も必然的 に不可欠なものとなります。よりスタイリッシュなサイトに変貌を遂げるべ く準備を進めていますので、ご期待ください。

最後に

 電子化を推進することのメリットはさまざまありますが、今回導入される システムによってなによりも会員同士の結びつきが一層強固なものとなり、ひいてはリハ医学の発展につながることを願ってやみません。システムの開発と導入にあたっては可能な限り細心 の注意を払っていますが、予想外のトラブルはつきものであり、まだまだ乗り越えていかなければならない課題は 山積です。運用上の細かな点は実際にシステムを稼働しながら適宜修正をし ていきたいと思いますが、皆様方にはシステム運営にご理解とご協力をよろしくお願いいたします。

第45 回日本リハビリテーション医学会学術集会 6/4-6 横浜
― リハビリテーション医学の進歩“評価から治療介入へ” ―

近況報告

 第45回の学術集会は、来る6月4日(水)~6日(金)の3日間、横浜市の 「みなとみらい21」にあるパシフィコ横浜会議センター・展示ホールAにて開催されます。

 本学術集会は会長として準備を進められていた東海大学医学部専門診療学系リハ科学の石田暉教授の急逝により、学会理事長である私が会長を務め、 東海大学リハ科医局員が総力を挙げて準備に取り組んでまいりました。そして、故石田暉教授が掲げた標記のメインテーマに沿って、特別講演2題、招待講演4題、シンポジウム5題、パネルディスカッション2題、教育講 演15題を企画いたしました。さらに、 今回は教育講演に加えて特別講演と招待講演におきましても研修単位の取得を可能といたしました。

 特別講演では川人光男先生から「脳を繋ぐ研究の最前線」、岡野栄之先生から「再生医療とリハ」をご講演いただきます。

 招待講演では治療に焦点をあて、米 国のDennis Dykstra先生からボツリヌス毒素の痙縮と過活動性膀胱への 応用、米国のSteven Wolf先生から Constraint Induced Movement Therapy 、ドイツのStefan Hesse先生からトレッドミル訓練による歩行再建、英国のShaheen Hamdy先生から嚥下と経頭蓋磁気刺激に関するご講演をいただきます。

 初日のメモリアル講演では村上惠一 先生から、本学術集会のメインテーマへとつながる「故石田暉教授との歩み」をお話いただきます。

 最終日には、2部構成の市民公開講座を開催いたします。第1 部は女優小山明子さんから、脳卒中で倒れたご主人、大島渚映画監督を支えてきた体験談をお話いただきます。第2部は中途障害者の社会参加に関する横浜市独自の取り組みを紹介いただきます。さら に脳性麻痺研究会が第6 会場で同時開催されます。

 本学術集会の会場周辺は、開港150 周年に向けここ数年で、さらに魅力的な街並みへと整えられ、訪れる人々を多彩な表情で迎えてくれます。心地よい新風を感じさせる横浜の地で、皆様には思う存分、学術集会への参加を満喫していただけるものと確信しております。

 本学術集会の一般演題には798 題の応募をいただきました。リハ医学・医療に対する関心の高さが感じとれます。 医療や福祉の新しい時代に向けて、日本リハ医学会会員各位ならびに関連領域の皆様の一層のお力添えと、多数の ご参加を心よりお願い申し上げます。 (第45回学術集会会長 江藤文夫)

INFORMATION

認定委員会

1. 平成19 年度専門医・認定臨床医単位取得自己申請について
 学会誌45巻2号および学会ホームページに掲載されていますが、専門医・認定臨床医生涯教育基準細則の制度改訂に伴い、平成18年度以前と単位数、単位項目が大幅に変更されています。各単位項目に関する申請方法を確認し、 自己申請が必要な単位については必要書類を添付した上で 自己申請用紙に記載して、平成20年4月30日までに学会事務局まで提出してください。  

2. 指導責任者実績報告書の提出について
 すでに該当の先生方のお手元に届いていると思いますが、「指導責任者の認定要領」に基づき、認定期間が平成20年3月31 日までの指導責任者には、平成20年4月30日までに指導責任者実績報告書を記入・提出いただくことになります。この報告書は診療活動、教育活動、研究活動の3分野で構成されており、診療活動では疾患群別に最近1年間のリハ医療を行った患者数を記載、教育活動では 過去5 年間に指導した認定臨床医および専門医の合格者数 を記載、研究活動では過去5 年間のリハ医療・医学に関する論文あるいは日本リハ医学会年次学術集会・地方会での発表を記載します。年度末・年度明けの忙しい時期とは思 いますが、ご提出よろしくお願いいたします。  

(委員長 菊地尚久)

社会保険等委員会

 1月23日に中医協診療報酬基本問題小委員会が開催され、医療技術評価分科会で検討された新規・既存医療技術 の評価・再評価について、最終的な評価結果が報告されました。日本リハ医学会より提案書を提出した項目のうち、 保険適用する優先度が高い新規技術として「早期リハ加算」、再評価する優先度が高い既存技術として「呼吸器リハ料における関与する医療従事者の拡大」「呼吸器リハ料における算定用件の見直し」「疾患別リハ料の逓減制の撤廃」 の計4 項目が最終案として残ったことは、平成20年度の診療報酬改定に対する当医学会の要望内容について一定の 評価が得られたものと考えられます。

 2月13日には中医協答申が行われ、点数が明示された主要改定項目が提案されました。その内容には、疾患別リハ料Ⅰの減点、回復期リハ病棟料における質の評価の導入など、今後の検討課題が残されていますが、疾患別リハ料逓減制の廃止、脳血管疾患等リハにおける施設区分の3 段階制の導入、リハ医学管理料が廃止され算定除外対象とな らない場合でも維持期のリハ料が算定可能、早期リハ加算 の新設、集団コミュニケーション療法の新設、障害児( 者) リハ料の見直し等においてはリハ医学会の意見が一定程度 反映されたものとなりました。

 2月13日には中医協答申が行われ、点数が明示された 主要改定項目が提案されました。その内容には、疾患別リ ハ料Ⅰの減点、回復期リハ病棟料における質の評価の導入など、今後の検討課題が残されていますが、疾患別リハ料 逓減制の廃止、脳血管疾患等リハにおける施設区分の3 段 階制の導入、リハ医学管理料が廃止され算定除外対象とならない場合でも維持期のリハ料が算定可能、早期リハ加算 の新設、集団コミュニケーション療法の新設、障害児( 者) リハ料の見直し等においてはリハ医学会の意見が一定程度 反映されたものとなりました。

(委員長 田中宏太佳)

教育委員会

リハビリテーション医学卒前教育に関するアンケート調査

 平成13年に21世紀医学・医療懇談会により提示された 「医学教育モデル・コア・カリキュラム―教育内容ガイド ライン―」には、医学卒前教育に含めるべき内容としてリハ医学に関する項目も取り入れられています。しかしリハ 医学講座のある大学はまだ少なく、卒前教育が不十分であ る可能性があります。そこで今回、コア・カリキュラムの中のリハ医学に関する内容をより現実の医療で求められているものに近づけるべく、全国の大学医学部・医科大学80 校を対象としてアンケート調査を実施いたしました。アンケートは昨年10~12 月にかけて行い、75 校(回収率94 %)から回答を得ました。以下に結果の概略をお示しします。詳細は学会誌に掲載する予定であり、会員の皆様からご意見をいただければ幸いです。

  • 全体の75%が、コア・カリキュラムを意識して教育 内容を検討している。
  • コア・カリキュラムの項目について、全体の67%が不十分であると感じており、廃用症候群、急性心筋梗 塞、慢性閉塞性肺疾患などを追加すべきである。
  • 「卒業時までの到達目標」とされている項目のうち、「機能障害、活動制限(能力低下)、参加制約(社会的不利) の考え方」、「ADL 評価」などは臨床実習開始前に学習 が必要である。
  • 医学教育を行う上で、教員数、講義時間、実習時間の 割り当てが少ないという問題点を多くの施設が挙げている。

(委員長 芳賀信彦)

九州地方会

 第23回九州地方会学術集会が、金谷文則幹事(琉球大学整形外科)の担当で本年2月10日、沖縄コンベンションセンター(沖縄県宜野湾市)で開催され、120名余りの参加(10 年前開催時の2倍以上の参加)を得て盛会裏に 終了致しました。活発なディスカッションで盛り上がり、 沖縄のリハ医学の発展を印象付けた学術集会でした。・第24回地方会学術集会は浜村明徳幹事(小倉リハ病院・院長)の担当で、平成20 年9月7日(日)、リーガロイヤル ホテル小倉(福岡県北九州市)で開催されます。また、第25回地方会学術集会は米和徳幹事(鹿児島大学)の担当 で平成21 年2 月、鹿児島県での開催となります。・ 現在、抄録を地方会HP で公開していますが、抄録内に個人が特定されるような表現を避けるなどのご配慮をお願いします (今までのところ、問題となるケースはありません)。掲載前にも、学術集会会長ならびに地方会事務局の二重チェックで対応いたします。   

(事務局担当幹事 佐伯 覚)

東北地方会

 平成20年3月22日(土)に、第23回日本リハ医学会東 北地方会、専門医・認定医生涯教育研修会(主催責任者: 全国社会保険協会連合会東北厚生年金病院 遠藤 実先 生)が宮城県仙台市・フォレスト仙台で開催されました。 一般演題10題が発表され、活発な討議が行われました。 ・次回の東北地方会・生涯教育研修会(主催責任者:大湯 リハビリテーション温泉病院 小笠原真澄先生)は、平成 20年9月27日(土)、午後1時から秋田県総合保健セン ターで開催されます。教育研修講演の講師には、東北大学 大学院医学系研究科機能医科学講座内部障害学分野教授  上月正博先生、和歌山県立医科大学リハ医学教授 田島文博先生を予定しています。

(事務局担当幹事 金澤雅之)

中国・東北地方会

 中国・四国地方会では、次回の第21回学術集会を平成20年6月29日(日)9時-17時に予定しています。会場は高知大学 医学部附属病院臨床講義棟(南国市岡豊町小蓮)で、同病院リハ 部准教授の石田健司先生に大会長をお務めいただきます。特別講演(専門医・認定臨床医生涯教育研修会)は、埼玉医科大学総合 医療センターリハ科教授の陶山哲夫先生に「障害者のスポーツの 意義-特に脊髄障害者の意義と効果」を、国際医療福祉大学大学 院教授の木村哲彦先生に「医工連携のリハビリテーション医療への展開と遠望」をお話しいただくことになっています(1講演10 単位)。一般演題の発表も予定されており、会員による活発な討議が期待されます(参加10単位)。演題募集の締切は5月10日(土)で、お問合せ先は下記の通りです。先生方の多数の応募をお 待ちいたしております。なお、第26回中国・四国リハ医学研究 会との同時開催を予定しておりますので、コメディカルの皆様のご出席も可能です。日本リハ医学会会員の先生方には、リハに関 係する多くの方々にご参加を呼び掛けていただければ幸いに存じ ます。学術集会ならびに専門医・認定臨床医生涯教育研修会への参加についての申込みは不要です。詳細はホームページをご覧く ださい。(学術集会の問合せ先:南国市岡豊町小蓮、高知大学医 学部附属病院リハ部 石田健司、TEL:088-880-2490、E-mail: im48@kochi-u.ac.jp、HP:http://www.kochi-ms.ac.jp/news/reha/ index.html)

(代表幹事 椿原彰夫)

障害があるからこそスポーツを(4)

障害保健福祉委員会  伊佐地隆、古澤一成

 今回は、入院にてリハビリテーション(リハ)医療を受けている期間における、スポーツの話をさせていただきます。

 今からちょうど10年前に英国の Aylesbury にある Guttmann Sports Centre にて、International Stoke Mandeville Wheelchair Games ( 現World Wheelchair and Amputee Games) が 開催され、頸髄損傷の方々と参加 しました。この大会はSir Ludwig Guttmann の提唱により始まったもので、第50 回の記念大会であったた めにこの地が選ばれました。その際、 Guttmann Sports Centre に隣接する Stoke Mandeville Hospital も見学する 機会がありました。理学療法や作業療 法のための訓練室は、我々のものと大 きな違いはありませんでしたが、訓練室以外にリハ治療のための体育館やア ーチェリー道場があるのが印象的でし た。リハの導入として、最初に行われ るのがアーチェリーだということをお聞きし、非常に興味深く見せていただ いたことを思い出します。もちろん頸髄損傷による四肢麻痺の方は、弓を引くのが難しく、フックの付いた自助具を用いて理学療法士の介助にて行います。ただ、そのような状況にあっても、 体幹を回旋した状態でしっかりと座位を保つ努力をすることは、脊髄損傷者のリハ訓練の導入としては、非常に理にかなった方法という印象を受けました。開始当初は、ほとんど飛ばない弓が、少しでも的に近づくことでモチベ ーションが上がります。もちろん、ア ーチェリーが楽しくなると、車いすの 駆動やベッドと車いす間の移乗も練習 したくなります。「楽しさ」や「達成感」という要素がリハ治療に重要であることを改めて感じる光景でした。この後 は、通常のリハ訓練の他に、体育館で のスポーツが入院生活に組み込まれ、 訓練意欲が維持されます。障害をもった方々にスポーツが、実にスムーズにとけ込んでいきます。

アーチェリー風景(Stoke Mandeville Hospital にて)

 私が勤務する病院では、リハを目的に来られる4 割程度が脊髄性の麻痺の方です。他の医療機関に比べると、脊髄損傷の方も年齢が若いのが特徴で す。常日頃、患者さんには、「脊髄損 傷の方は、運動不足になりがちで、生活習慣病も生じやすいこと」「そのた めにも車いすスポーツをした方がよいこと」などをお話ししています。ただ、 運動を奨める一方で、入院中「リハ訓 練以外の運動」は、医療者側からその 機会を提供しづらい現状があります。 「リハ訓練以外の運動」を医療の中で 提供することの賛否はさておき、経過と共に訓練プログラムだけでは心身共 に持て余している若い脊髄障害の患者 さんをみると、何とかしなくてはと思 いました。リハ科医師と理学療法士、 作業療法士で相談した結果、現在週1 回、リハ訓練とは別にスポーツをする 時間を設けています。隣接する職業リハセンターの体育館を借り、車いすのバスケットボール等を行います。運動 をしている時の彼らの笑顔は輝き、再び社会で生きる力を取り戻していくか のようです。今の時代だからこそ不 採算ではあっても、このような支援をすることに価値があると感じる日々です。リハ医は、そうした部分に貢献で きる貴重な存在だと確信しています。

専門医会のコラム:第45 回日本リハビリテーション医学会学術集会
専門医会プログラムのお知らせ

 今回横浜で開催されます第45 回日本リハ医学会学術集会の中で第2日(6月5日)の15 : 30~18 : 30 に専門医会 プログラムの時間をいただきましたのでお知らせいたします。3時間の枠の中で2時間を企画に、残りの時間を総会に充てたいと考えています。

 以下にそのスケジュールと内容について示します。
 15 : 30~17 : 30 企画:専門医としていかにこの患者に対するか
 17 : 30~18 : 30 専門医会総会

■企画:専門医としていかにこの患者に対応するか 専門医に対する教育とそれぞれの専門領域に関する議論を深める目的でこの企画を行います。テーマは、リハ科専門医としてその対応に日頃からみなさんの関心があると思われるものにしました。テーマとして選んだものは以下の4つです。

  1. ALS 患者に対する在宅対応    … 横浜市障害者更生相談所 高岡 徹先生
  2. 脳外傷患者に対する復職支援    … 東京慈恵会医大リハ科 橋本圭司先生
  3. 関節リウマチ患者に対する装具対応    … 横浜市立大学リハ科 水落和也先生
  4. 終末期癌患者に対するリハ処方   … 慶應義塾大学リハ科 辻 哲也先生

 企画の進行については以下の流れで行います。
① 各テーマに対してあらかじめ担当をお願いした先生から症例を提示していただく。
② 症例内容に対する追加質問
③この症例に対してどのような対応をとるかについて、 フロアから対応案を述べる。
④ 担当の先生がどのように対応したかについて考察を含 めて示す。
⑤テーマに関連する問題についてフロアを含めて討論を行う。
⑥ 座長まとめ

 この企画により各テーマの領域に日常あまり関わることがない専門医には、討論参加、聴講により、この領域に関する教育研修ができるのではないかと思います。 各テーマの領域を専門としている専門医には議論の場が 設けられ、知識・技術の整理が行え、議論を通じて交流が 図られると思います。 参加者は専門医に限りませんので、ベテランの先生方、 これから専門医、認定臨床医の取得を目指す方など、どしどし参加して討論に参加してください。

担当幹事:菊地尚久、出江紳一

 第3回リハ科専門医会学術集会は2008年12月6~7 日、 都久志会館ホール(福岡市)で開催予定です。

質問箱

経頭蓋磁気刺激(TMS) のリハビリテーションへ の臨床応用について教えてください。

A TMSは様々な中枢神経機能の研究に用いられてきました。運動系における運動皮質と脊髄の統合や 皮質内・皮質間相互作用、反復TMSによる中枢神経系の可塑的変化が報告され、これらの知見に基づき反復TMS による片麻痺や左半側空間無視などに対する治療効果が検討されてきました。市販の機器でどのような臨床応用が可能かを脳卒中片麻痺を例に解説します。

  1. 運動誘発電位(MEP) は帰結予測に有用か:錐体路 の支配を強く受ける遠位筋ではMEP の出現が良好な予後を示唆します。急性期に完全麻痺でもMEPが記録されれば機能回復を見込めます。
  2. MEP は片麻痺重症度の客観的指標となるか:MEP の振幅、潜時、静止期は片麻痺の重症度と関係します。 ただし計測方法を標準化する必要があり、また標準化された計測を行っても個人差が大きく、回復段階を判別するには限界があります。
  3. 治療効果の判定に使えるか:片麻痺上肢の機能回復 とMEP は必ずしも相関しません。MEP が増大すれば機能も回復していますが、機能が回復してもMEPが増大しない場合があります。これはMEPが錐体路の機能を反映するのに対して、片麻痺の回復は錐体路以外も関与しうるからです。
  4. 回復の機序を説明できるか:非損傷半球のTMS による患側上肢のMEP は、回復不良群でみられやすく、同側路が回復に有利にはたらいているとはいえません。 ただし咽頭筋などは同側半球からの支配が強く、たとえば非損傷半球が嚥下障害の回復に関与しうることが報告されています。また回復に関与した部位を検索する方法 として、TMS による反応時間への干渉実験があります。 たとえば合図の100 msec 後に閾値上刺激を行って反応時間が延長すれば、その部位が当該運動に関与していることになります。
  5. 反復TMS による治療:上肢の麻痺に対して損傷 半球の高頻度刺激によって運動野をup-regulateする方法と、非損傷半球を低頻度刺激(約1 Hz)でdownregulate して、損傷半球の興奮性を増大させる方法とが あります。低頻度刺激でも、随意運動や求心性入力を併用すると運動路の興奮性が高まります。安全性について は、単発あるいは2連発刺激では問題なく、低頻度刺激であれば、刺激回数の上限を1週間に5000 発とすることが日本臨床神経生理学会から提案されています。同学会の提言は文献をご参照ください。

文献

1)Izumi SI, Kondo T, Shindo K: Transcranial magnetic stimulation synchronised with maximal movement effort of the hemiplegic hand after stroke: a doubleblinded controlled pilot study. J Rehabil Med 2008 ; 1 : 49-54
2) 磁気刺激法に関する委員会:磁気刺激法に関する委員会 報告No.10. 臨床神経生理学2006 ; 34 : 71-72
3) 磁気刺激法に関する委員会:磁気刺激法に関する委員会 からのお知らせ. 臨床神経生理学2007 ; 35 : 565

ボツリヌス毒素が近年臨床応用されるケースが増えており、近いうちに四肢の筋の痙縮にも 応用可能と聞きましたが、その際、フェノールブロックとの違い(どちらが患者にとってメ リットが大きいのか)などについて教えてください。

A 現在、脳性麻痺の痙縮に対して痙性斜頸にのみ使用が許可されていますが、脳性麻痺下肢痙縮への適応拡大が検討されています。

フェノールブロックとボツリヌス毒素注射の違い

(信濃医療福祉センター 朝貝芳美)

広報委員会より

 新年度となりましたが新人研修、診療報酬改定への対応、さらには第45回学術集会の準備と、相も変わらず慌ただしい日々が続きます。そのような最中、今号では7月からの運用開始へ向けて準備作業が急ピッチで進められている会員用Web システムについて特集させていただきました。行方不明の年金問題を巡る杜撰な情報 管理がマスコミに連日取り上げられていますが、 本医学会のシステムがうまく軌道に乗り、皆様に安心してご利用いただけるようになることを祈ってやみません。このシステムは単なる事務 手続きの効率化を目的としたものではなく、会員相互を結びつけるメディアとしての役割を担 うとともに、リハ医学を志し、わが国の医療を 支える気概をもった専門医を育成していくための基盤の一つでもあります。医師不足が声高に叫ばれる昨今、人材の確保は学会の存亡に関わ る重要な問題ですが、ホームページの内容充実、 レジデントナビなど合同説明会への出展を含め、 広報委員会としても今後の戦略を検討中です。  本紙も紙媒体としてのメリットを最大限に生かし、リハ医学の必要性、有用性、そしてその魅力をワイドに伝えるべく、新たな広報の展開へ向けて紙面の充実を図って参りたいと思います。

(山田 深)